四葉のもう一人の後継者   作:fallere

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皆さん、成人の日ですよ。
この文章は前日に仕上げています。
来年以降も、この物語が完結するまで成人の日はbad endの未来を描きます。
原作の進み具合で内容は変化する予定です。
では、未来の悲しき成人式を覗くとしましょう。

昼「魔法はなくなり・・・世界はきっと新たな魔法を作り出す・・・
  どうかその魔法が・・・再び争いの火種にならないように・・・」


魔法の無い成人式 bad√

深雪side

 

 

遂に私もお兄様や高校時代の仲間と成人式を迎えた。

 

だけど、その中に私や他にも皆が愛した従弟の姿はない。

 

彼は死んだからだ。この世から魔法と言うものを消し去って。

 

「深雪、大丈夫か?」

 

「ええ、お兄様。少し昼夜の事を考えておりました・・・」

 

「ああ、昼夜は一体何を思っていたのだろうな」

 

お兄様は、ある程度感情を取り戻している。これも昼夜のお陰だ。

 

「何故、昼夜は今まで生きることが敵わなかったのでしょう・・・?」

 

「俺にもわからない・・・

だが、昼夜が生きていればもっと賑やかな成人式だったと思う」

 

お兄様はそれを言ってから黙っている。

 

私の中には昼夜を奪った世界に対する憎しみがあふれている。

 

昔なら、それだけで周りに冷気が発生した。

 

でも今は、冷気どころか想子さえも感じることはできない。

 

「・・・すまない。昼夜じゃなくて俺が犠牲になればよかったのに・・・」

 

それは考えなかったことではない。

 

でも、それはどんなに考えても無駄だと思った。

 

お兄様と昼夜はとある計画で宇宙に連れ去られそうになった。

 

だがその計画は、魔法師を道具として扱うものだった。

 

その計画に、お兄様は勿論、昼夜も合意はしなかった。

 

だが、国は、世界は、二人の参加を求めた。

 

お兄様は魔法師が道具や兵器であることを良しとしない。

 

そして昼夜は、自分の事を兵器であると言っても、

 

他の魔法師を、特に周りの仲間を兵器や道具にしようとは思わなかった。

 

昼夜は、さらに自分が仲間や家族を守れなくなることを恐れた。

 

ある種の自己中かもしれない。だけど、昼夜にとって自分の扱いは二の次であった。

 

彼は、個人として世界に宣戦布告をした。

 

魔法師の未来を守るために、仲間の未来を守るために。

 

「深雪・・・きっと私たちが心配をかけすぎたせいだよ・・・」

 

「ごめんね、深雪・・・私たちが昼夜さんの仲間だったばっかりに・・・」

 

皆はそんな風に自分の責任であるというばかりだった。

 

自分が昼夜の傍にいるのにふさわしくなかったから・・・。

 

自分が昼夜の傍にいるには力が足りなかったから・・・。

 

でも、私でさえも彼の隣にいるには力不足だったのだろうか・・・?

 

お兄様でさえも、私たちを支えるのには力不足だったのだろうか・・・?

 

仲間の中で一番長く付き合いがあった私たちでさえ、認められなかったのに、

 

一体誰なら、彼は自分の横に立つことを、

代わりに仲間を支えることを許したのだろうか?

 

 

成人式が終わり、高校時代の仲間たちと食事に向かった。

 

だが、このメンバーだと矢張り、昼夜がもういないのを痛感してしまう。

 

「深雪、とりあえず注文しよ?」

 

「エリカ、今は別にいいわ。ドリンクバーだけお願い・・・」

 

「ん、分かった」

 

皆だってショックを受けなかったわけじゃない。

 

この場にいない他の仲間、

 

年下では水波ちゃんや泉美ちゃんや香澄ちゃん、亜夜子ちゃんと文弥君。

 

年上では中条先輩や市原先輩や服部先輩、七草先輩や十文字先輩に渡辺先輩。

 

とにかく全員が彼がいなくなったことに多大なショックを受けた。

 

叔母様も、昼夜がいなくなってから部屋にこもってばかりだ。

 

「取り合えず、皆、ジュースは持った? じゃあ乾杯‼」

 

「「「「「「乾杯‼」」」」」」

 

全員が、昼夜の事を思い出さないように注意して会話する。

 

それだけ昼夜は私たちの中で大きなものになっていた。

 

だけど・・・完全に隠しおおせるものではなかった。

 

このメンバーだとどうしても高校の話になるのは分かり切っていた。

 

思い出すのが嫌なら、このメンバーで集まらなければよかったのだ。

 

なのに、仲の良かったメンバー全員が集まった。

 

集まらないことは、逃げることだと思ったから。

 

昼夜は、世界を相手にしても逃げなかったから。

 

「なんで・・・昼夜は自分の命より私たちの未来を取ったのでしょうか」

 

つい口から出てしまった。これは私の失態だ。

 

「ごめんなさい・・・」

 

全員が首を横に振る。許さないではなく、仕方ないと。

 

「昼夜は分かっていたんだ。

自分たちが計画に乗れば、今後も魔法師は道具として扱われると・・・」

 

そう。きっと一度許してしまえばあの時勢力の強かった反魔法派は、

 

それを成功例として同じことを続けるだろう。

 

「でも、それは他の魔法師たちも分かっていたはずだと思います・・・」

 

「きっと、大きな国に立ち向かう勇気がなかったんだよ。

私も人の事言えないけど・・・」

 

他の国、そして日本の魔法師にも、昼夜の賛同者はゼロではなかった。

 

だが、反対意見を持つ魔法師はすぐさま投獄された。

 

四葉家さえ、ほとぼりを埋められ動けなくなるほどに。

 

私たちも抵抗しようとしたが、あらゆる魔法師が国などの管理下に収められた。

 

魔法師のひな鳥であっても例外ではなかった。

 

結果、昼夜は私たちをお兄様に任せて一人で戦場に向かった。

 

その時の昼夜は、人体構造干渉と@¥*+Φ∀によって、魔法師としてほぼ完成していた。

 

ありとあらゆる世界の事象を自分の起こしたいときに起こせるレベルで。

 

「昼夜は、力をつけたのは皆を守るためだって言っていた・・・」

 

「でもさ、少しくらいは私たちを頼ってくれてもよかったのにね・・・」

 

戦闘は太平洋で行われていた。

 

昼夜は封印された伝説の魔法により、ムー大陸を呼び起こした。

 

そこを自分の要塞として、ありとあらゆる敵と戦った。

 

それでも、昼夜は劣勢だった。一人で世界の戦力全てを相手にするのは不可能だった。

 

いざとなれば『永光熱線(グロリアス・レイ)』を世界の主要都市に撃つこともでき

た。

 

だが、昼夜はそれでは関係ない人まで巻き添えになるからとしなかった。

 

昼夜は悪魔で自分に手を出した相手だけと戦った。

 

上層部の司令官などは遠隔魔法で仕留めたりしていたが。

 

昼夜の兵士は、@!$*&¥として覚醒したペットのナルとホロだけだった。

 

二羽は、動物でありながら魔法を使い、昼夜とともに戦っていた。

 

「あの時、昼夜の奴は何度も世界中に計画の真実を言ってたのにな・・・」

 

「きっと、新ソ連とUSNAが組んでいたから何処も抵抗できなかったんだ・・・」

 

「そうですけど、あの戦いが終わってどっちの国も解体しましたしね・・・」

 

あの戦いが終わり、世界から魔法が無くなると、

 

新ソ連やUSNA、大亜連合のような巨大な国は分裂を抑える事が出来なくなった。

 

魔法は抑止力でもあったからだ。

 

技術が魔法に置き換えられようとしていたところだったから、その影響は甚大だった。

 

結果、今の地図は100年前とほとんど同じになってしまった。

 

戦いの末期、昼夜はペットのナルとホロを憑代に@¥*+Φ∀を発動した。

 

@!$*&¥であるナルとホロを憑代に使われた@¥*+Φ∀の効果は、

 

世界との@¥*+Φ∀であった。

 

その情報量は、人間一人の精神で耐えきれるものではなかった。

 

だが、昼夜は@¥*+Φ∀によって既に一人ではなかった。

 

昼夜はそれらの情報を複数の精神で処理して、@!$*&¥のようなものになった。

 

近づくものには爆雷を、業火を、烈風を、大滝を・・・。

 

想子切れを狙って、各国は核ミサイルなどを次々に放った。

 

だが、昼夜の想子はもはや人の量ではなかった。

 

どんなにミサイルを放ってもやられない。魔法は発動し続ける。

 

全世界が諦めかけたその時だった、昼夜は情報を処理しきれなくなっていた。

 

いくら精神を複数持って処理能力が異常でも、世界を支配するのは無理があった。

 

各国は、魔法師、非魔法師に限らず攻撃をし、あと一歩まで追い込んだ。

 

しかし、ある意味ではその形が最後に昼夜を満足させたのかもしれない。

 

魔法師と非魔法師が協力し、一つの巨大な敵と戦った。

 

その結果で満足したのか、昼夜は最後の魔法を発動する。

 

それは、人体構造干渉であり、精神構造干渉であった。

 

まず、世界の自分以外の生物から魔法に関連する遺伝子を抜き去った。

 

そして、世界の精神の構造に干渉し、人の世界を改変する手段を消し去った。

 

この二つの魔法によって、この世界からは魔法は消えた。

 

昼夜が一人立っていたムー大陸は沈み、昼夜の死体も見つからなかった。

 

そして、世界は魔法師を失い分裂する。

 

日本の十師族なども解体され、表の仕事が本業となった。

 

魔法に関するデータは全て謎の事故で失われ、魔法師開発のデータも同じく。

 

推測される彼の情報を聞いた吉田君は、

 

『@!$*&¥を憑代にしたから、きっと彼の魂は冥界と言われるところにもいかず、

さらには輪廻転生の輪からも外れているだろう』

 

と言った。八雲先生も同じ意見だった。

 

昼夜の魂は、もうこの世界で芽生えることはない。

 

例え、私たちが死んでもあの世で昼夜と会うことはできない。

 

例え、他の生物、鳥、魚、虫、草花・・・そのどれとしても昼夜は戻ってこない。

 

名前だけを残して、四葉昼夜はこの世界から完全に消えたのだ。

 

昼夜は、最後の魔法の前に世界中に声を送った。

 

『もしかしたらこの先も@!$*&¥が降りて人間に魔法を授けるかもしれない。

その時は、今回と同じ運命を紡ぐことはないように願うよ』

 

私たちが聞いた声も、その声が最後だった。

 

日本は被害を受けなかったかと言うと、昼夜が最初に個人として宣戦布告したこと、

 

それによって日本を責めるのを筋違いと言う事を始めに宣言した。

 

だから私たちは、傷ひとつ受けることなく今生きている。

 

お兄様に出兵の声がかからなかったわけではない。

 

だが、昼夜は再生を封印したうえでお兄様に大怪我負わせて帰らせた。

 

結果、お兄様は途中で戦線離脱して今ここにいる。

 

そして、昼夜の言う新しい魔法を授ける神はまだ現れていない。

 

私たちは、きっと昼夜に世界を託されたのだろう。

 

私たちは昼夜が生きていた方が世界はいい方に向かったと思っている。

 

だが、過去はどんなに嘆いても変わらない。

 

 

世界ではこのわずか一年足らずの戦争を『第四次世界大戦』と呼ぶ。

 

 




どうも、毎回成人の日にこんな文章書くのか・・・キツイナ。
こんなシリアスを書くのはしんどいです。
ですが、成人式となるとキャラクターがかかわるのは未来ですから、
こういう話にならざるを得ないのですよね・・・。
取り合えず来年のネタも考えておきますので・・・。
では皆さま、番外編二話 成人の日、これにておしまいです。

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