四葉のもう一人の後継者   作:fallere

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皆様、明日が何の日かご存知ですか? 成人の日です。
明日になった瞬間に、番外編二話が投稿されます。
では皆さま、どうぞお楽しみに。


入学編 十一節

俺は気絶させた三人の内二人の処理を家のものに任せて、

 

残りの一人を九重寺に電話して八雲さんに引き取ってもらい、

 

雫たちと喫茶店に入った。

 

「で、何か反省は?」

 

「「「ホントッッッにごめんなさいッ!」」」

 

雫たち三人は申し訳なさそうに頭を下げている。

 

「ったく、特にエイミィ、面倒ごとに首突っ込むなって言っただろ?」

 

「ヴ!」

 

「今回はナルが教えてくれたからよかったものの、

もし誰も気づかなかったらどうすんだよ?」

 

三人ともうつむいて答えない。

 

「まぁ、過ぎたことを言っても仕方がない。二度と同じことするなよ、いいな?」

 

「「「はい・・・」」」

 

これでいいだろう。三人とも反省はしているし、

 

そもそもグチグチ説教するキャラでもないし。お母様? あれは別問題。

 

「まぁ何だ、怖がらせてしまった礼としてこの場は奢ってやる」

 

「え、いいの?」

 

「いいんだよ、どちらにしろ俺も怖がられたみたいだしな。

それに、ちゃんと反省してるだろ? ならたーんと食え」

 

その後は、ケーキを食べながらなぜあの状況になったのかを聞き出した。

 

どうやら剣道部主将の司甲を追っていたら誘導されたらしい。

 

腕を確認したところ、エガリテのリストバンドをしていた。

 

まあ一応脅しは入れておいた。これ以上手を出さなければ俺も手を出すつもりはない。

 

反魔法主義者でも、適当に潰せばそれが魔法師に向かい風になるかもしれないからだ。

 

そんなこんなで今日と言う日も過ぎていく・・・。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

翌日の放課後、昨日の夜に拷問などなかったかのように俺は過ごしていたのだが、

 

『生徒の皆さん!』

 

ハウリング寸前の大音量でスピーカーから声が聞こえる。

 

「いったいなんだ? 今日は昼寝日和だから寝ようと思ってたのに」

 

「いや、昼夜、学校って寝るところじゃないと思うよ・・・」

 

鋼、学校で寝るって背徳感があっていいぞ。もちろん授業中以外だが。

 

『失礼しました。全校生徒の皆さん!』

 

今度は程よい音量で、何かしらの連絡が再開される。

 

『僕たちは学内の差別撤廃を目指す有志同盟です!』

 

「? 差別と言ってもこの学校には一つしかないと思うが・・・

わざわざ生徒会役員の制限のためにこんなことをするとは・・・中々やるな」

 

鋼とエイミィが一つの差別に対して聞いてきたので答えてやる、が・・・

 

『魔法教育は実力主義、それを否定するつもりはありません』

 

いい心がけだ。

 

『しかし校内の差別は魔法実習以外にも及んでいます。

例えば、魔法競技系の部活は他の部活よりも予算を多めに割り当てられています!』

 

「まぁ、そう言うわなぁ・・・」

 

勝手に淡い期待を抱いてみたものの、その期待が実現することはなかった。

 

「んじゃ、鋼、エイミィ、風紀委員で呼ばれたから行ってくるわ」

 

「「行ってらっしゃい」」

 

その後も放送は続き、

 

『僕たちは魔法師を目指して魔法を学ぶものです。

ですが同時に僕らは高校生です! 魔法だけが僕たちの全てではありません!

僕たちはこの差別に対して生徒会と部活連に対して対等な立場の交渉を要求します!』

 

後は大体繰り返しだ。こんなつまらないことに付き合わないといけないなんてな。

 

 

 

で、俺たちは放送室前にいる。さて、どうしたものか・・・。

 

「昼夜君、何かいいアイデアはあるかしら?」

 

「そうですね、一つ思い浮かんだものが」

 

「おお、それは是非聞きたい」

 

「委員長と会長がご所望でしたら。

まずは放送室内の電源はカットされていますね。

次に俺の魔法で室内の気圧を低下させ、さらに室温を低下させます。

こうすれば一人くらいおなかの調子が悪くなり、

トイレに行くために出た瞬間に突撃、全員を捕縛します」

 

「「・・・・・・」」

 

我ながら、相手と設備への被害も少ないいい作戦だと思う。

 

腹痛になる人の精神への被害を除けば。

 

「・・・昼夜君、ほかに何かないかしら?」

 

「そうですね、なら中をサウナ状態にして同じことをするとか・・・

最終手段としては扉を俺の魔法で出来る限り破損なく破壊するかですね」

 

サウナは熱中症による生徒への被害が、

 

扉の破壊は設備への被害が甚大だから先ほどのを説明したのだが・・・。

 

へ? 生徒の精神被害? 知ったこっちゃない。

 

「さて、克人さんはどのように?」

 

丁度やってきた克人さんに尋ねる。

 

「要求は聞き入れていいと思っている。もとより言いがかりだ。

しっかり反論することが憂いになるだろう」

 

「ではこの場は待機するべきでしょうか?」

 

「それについては決断しかねている。

不法行為を許すわけにはいかんが、

設備を壊してまで性急に解決すべき程犯罪性が高い物でもない」

 

要するに強引な事態収束は計らないという事だ。

 

すると達也は、携帯端末を取り出し、電話を掛けだした。

 

「・・・壬生先輩ですか? 司波です」

 

結構な視線が達也に突き刺さる。

 

「今どちらに? 放送室にいるのですか・・・それは・・・お気の毒に」

 

その後達也は顔を顰める。大声で文句を言われでもしたのだろう。

 

最早完全というほどの遮音性を実現した携帯では推測することしかできない。

 

「十文字会頭は交渉に応じると仰っています。

生徒会長の意向は未確認ですが・・・いえ、生徒会長も同様です」

 

この場にいた会長がジェスチャーで達也に伝えた。

 

「と言うことで、交渉の日時を打合せしたいのですが・・・。

はい、今すぐです。学校からの横やりが入らないうちに・・・。

先輩の自由は保障しますよ。

我々は警察ではないので牢屋に入れる権限はありません・・・では」

 

達也は電話を切って委員長に報告する。

 

「すぐ出てくるそうです」

 

「今のは壬生紗耶香か?」

 

「いや~、言葉攻めはしてないって言ってたのに手が早いね~」

 

「誤解だ、それより態勢を整えるべきかと」

 

「態勢?」

 

なんのだという顔で尋ねる委員長に、俺は何を言ってるのだという顔で答える。

 

「拘束する態勢です。立てこもりまでするんですから、

CADの持ち込みは確実です。他の武器を所持している可能性もあります。

達也も保証すると言ったのは壬生先輩だけですし、

誰も達也が風紀委員を代表して交渉してるなんて言ってませんよ?」

 

この場で俺、達也、深雪以外が呆気にとられる。

 

「悪い人ですね、お兄様も昼夜も」

 

「今更だな、深雪」「俺は善人だなんて言ってないぜ」

 

「フフ、そうですね」

 

 

 

そんな会話もつかの間、出てきた生徒を壬生さん以外拘束する。

 

壬生さんはCADの没収にとどまった。委員長が達也の名誉に考慮した結果だ。

 

達也としてはこんな口約束を律儀に守るつもりもなかっただろうが。

 

「あたしたちを騙したのね!」

 

壬生さんの手は達也の胸元に伸びていて、その手首を達也に捕まれている。

 

「司波はお前を騙してなどいない」

 

「十文字会頭・・・」

 

「お前たちの言い分は聞く。交渉にも応じる。

だが、それととった手段を認めることは別問題だ」

 

「その通りなんだけど、彼らを離してもらえないかしら?」

 

達也と壬生さんの間に入ったのは真由美さんだった。

 

「七草?」

 

「だが、真由美」

 

「言いたいことは理解しているつもりよ、摩利。

でも、壬生さん一人では交渉の段取りもできないでしょう。

当校の生徒なのだから逃げることもできないのだし・・・」

 

「あたしたちは逃げません!」

 

真由美さんの言葉に壬生さんは噛みつくが、真由美さんはそれをスルーして、

 

「生活主任の先生と話し合ってきました。

鍵の盗用及び放送施設の無断使用に対する措置は生徒会にゆだねるとのことです」

 

端的に、彼らのおかれている状況の説明をした。

 

その後、真由美さんが段取りする生徒を連れて行って、この場は解散となった。

 

 

 

「達也、どうなると思う?」

 

帰り道、俺は達也と深雪と駅まで一緒に帰ることにした。

 

「どうなるも何も、俺よりも昼夜の方が会長には詳しいだろう?」

 

「違う、俺が言ってるのは交渉の後だ」

 

昨日の事を俺は達也と深雪に説明する。

 

「成程な、なら間違いなく交渉は誘導だろう」

 

「同じ結論だな。深雪も気をつけろよ?」

 

「ええ、心配してくれてありがとう。ところで昼夜?

美少女三人と一緒に喫茶店に入ってしかも奢ったってどういう事かしら?」

 

「どうもこうもそのままの意その関節はそっちには曲がらない‼」

 

深雪が俺の腕を取ってありもしない方向に曲げようとしてくる。

 

あれ? 一応力は俺の方があるはずなんだけどな・・・?

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

翌日、クラスにつくと交渉についての話で盛り上がっていた。

 

「あ、昼夜、昨日はどうだった?」

 

「どうもこうも、くだらない理論を聞かされるだけの無駄足みたいなもんさ」

 

クラスでは俺の声に勘違いして賛同する奴が山ほどいた。

 

「昼夜は同盟の主義についてはどう思うの?」

 

「甘すぎる。その一言に尽きる」

 

鋼とエイミィは頭にはてなマークを浮かべる。

 

「評価して欲しいなら結果を出すのが先だ。

魔法以外で評価して欲しいなら魔法以外で結果を出すべきだ。

平等じゃないから評価を上げろというのは結果を出している人にぶら下がってるだけ。

才能がないなら努力するのが筋だし、努力してもどうにもならないなら諦めるべきだ。

酷いって言われるかもしれないが、それがこの世界の現実だ。

誰もが平等に扱われる世界があるとすれば、それは誰もが冷遇される世界だけだ」

 

現に、俺は才能がなくてもひたすら努力する人を見てきた。

 

達也は深雪を守るために、亜夜子ちゃんは自分の適性を見つけるために。

 

ここにいる鋼も、その特性から苦労してきただろうから、俺の意見に軽くうなずいた。

 

「でも、昼夜って意外と容赦ないんだね」

 

全く同意と言った感じに、鋼は再び首を振る。

 

「おう、誰が四葉昼夜は優しい善人だなんて言った?」

 

二人は笑ってくれた。冗談だと思っているだろうが、人殺しが善人なわけがない。

 

さて、明日は討論会だ。まあそっちの結果は見えている。

 

問題はその後だ。人形は大量に用意した。せめて面白い相手が出ればいい。

 

「さぁ、一嵐やってくるぞ・・・」

 

 




昼「全く、あれだけ脅したのに手を引かないのか」
しょうがないですよ。達也君のトラブル体質が働いてますもん。
達「何か言ったか?」
昼・主「なんでもありません⁉」
達「そうか。主、次回はどうなる予定だ?」
はい、モブざ・・・森崎君が出る予定です。
モ(訂正:森「おい! これでも僕は名家の人間だぞ!」
落ち着いてください・・・怒ると幸せが逃げますよ。
昼「森崎君がモブ崎なんて言われるのは怒ってるからじゃないか?」
森「いいだろう、主。僕の力見せてやる・・・」
え? ちょ? ・・・いいだろう。この世には筆は剣よりも強しって言葉があるんだよ‼

             しばらくお待ちください・・・

う~・・・CADは反則だ・・・ましてや筆じゃなくてパソコンだった・・・。
昼「おーおー、これはまた派手にやられたな、主」
畜生、次回までに森崎に地の分の有難さと素晴らしさを教えてやる!
昼・達「頑張れよ」
今回は賑やかになりましたが・・・
昼・達・森・主「お読みくださりありがとうございました!」






昼「と言うか今の名前の順番見るだけでも主の地位が分かるな」
悲しいこと言わないで!

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