四葉のもう一人の後継者   作:fallere

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実は文章書いてるのはたいてい夜中。
誰か、徹夜しても眠くない魔法を考えてください。


入学編 四節

あの後、深雪の説得には時間がかかった。

 

理由はただ、四葉として東京に引っ越したので、

 

挨拶に行かなければならいだけなのだが、何故か『特別な関係』ではないのかと、

 

しつこく聞かれた。そもそも特別な関係がわからん。

 

何をもって特別と言うのだろう?

 

それでも説得には成功して家に帰った。

 

家では水波が待っていてくれ・・・なかった。

 

どうにも近辺の散策に行っているようだ。

 

そう言えばお菓子が食べたくなった。なら作ろう。

 

因みにおなかがすいたからではない。

 

そして再生は俺の成長のエネルギーをも奪っているのか沖縄戦から背が伸びない。

 

あの頃は達也と大して変わらなかった身長差が今では15cm以上だ。

 

原因は分かり切っている。あのとき跳弾を胸に受けたからだ。

 

元々食事で得たエネルギーの一部を回収する魔法だ。

 

それでも達也と同じくらいに伸びてたからかなりよく伸びた方だろう。

 

だが、あのせいで本能がより多く回復するために食事のエネルギーのほとんど、

 

具体的には次の食事まで大丈夫な分とほんの僅かを除いて回収される。

 

この魔法は俺の本能に焼き付けた魔法故、割合の変更は不可能だ。

 

回復の遺伝子をリセットするという手もあるが、

あの日の事が死の直前として本能にある以上同じことになるだろう。

 

それ以上にその魔法が無くなった時情報次元のエネルギーはどうなるか。

 

俺の回復による安定が無くなり張り付いている情報、俺に吸収される。

 

結果俺はとんでもなく太る。そんなことにはなりたくないので消せないのだ。

 

さて、この家にはいろいろな調理器具があるのでいろいろ作れる。

 

取り敢えずはマカロンでも作るか。カスタードでも挟んで。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「ただいま戻りました」

 

「お、水波、おかえり。お菓子作ったけど食べるか?」

 

「よろしいのでしたらいただきます」

 

そうして丁度出来上がったマカロンを二人で食べる。

 

因みに魔法を使って時間短縮した。

 

「おいしいですね、よく作るのですか?」

 

「一度作ってからお母様にせがまれる」

 

「成程」

 

さて、本題に移るとするか。自分で考えても答えが出なかったし。

 

「水波、質問があるのだが」

 

「なんでしょうか?」

 

「まぁ、その前にだ、もう少し言葉軽くしていいぞ」

 

「と言いますと?」

 

「それだ」

 

「でしたら、と言われますと?」

 

うん、ダメだこりゃ。

 

「ならせめて昼夜様じゃなくて昼夜さんにしてくれ」

 

この調子では呼び捨ては不可能だろう。

 

「? まぁ、出来る限り善処します」

 

同じことを言う政治家を聞いたことがある。

 

「まぁ、質問なんだが『特別な関係』ってなんだ?」

 

この瞬間、水波の顔は真っ赤に染まった。

 

 

 

水波side

 

 

(いったい何を言ってるんですかこの主人は⁉)

 

少し今までの状況を整理してみましょう。

 

遠回しに敬語をやめろと言われた。

 

様付けではなくさん付けにしろと言われた。

 

『特別な関係』について聞かれた。

 

(まるでメイドものの恋愛小説のような事態が高速で起こっている‼)

 

まさか一ガーディアンである私がこんなことに⁉

 

思い出してみれば確か猫のぬいぐるみもプレゼントされていた。

 

サンタクロースなどと嘘をついたが昼夜さん以外ありえない。

 

って、何私は様付けを直しているのです!

 

取り合えず、優しい人でも悪い人でも私が、

 

何より昼夜さn・・・昼夜様が見逃すはずがない!

 

よってこれは確実に昼夜様がプレゼントしてくれたものである。

 

「水波、大丈夫か? 顔が真っ赤だぞ?」

 

(あなたのせいですからね⁉)

 

もう一度冷静に考えよう。今度は昼夜様の立場で。

 

まず考慮すべきは当主様の存在。当主様は物凄い親バカである。

 

ならばこれまで恋愛は・・・させなかっただろう。

 

そもそもほぼずっと本邸にいたとのことなので相手がいなかったのだろう。

 

可能性があれば深雪様や亜夜子様だが、私は直接会ったことがないのでわからない。

 

そして、関係する書物は・・・下手したら制限をかけられていた可能性がある。

 

今の時代紙の本はほとんどない。

 

ネットでの検索もそれらのものを制限したら見れなくなるだろう。

 

そして中学まで学校に行ったことがなくそういう話もしなかった。

 

いや、確か十師族になる権利がある家だけの会合には参加していたはずだ。

 

だが同時に、そこでその件に関して話されるだろう話は政略結婚のみである。

 

愛のない結婚、自分もするならそうなるだろう。

 

そして、それらの環境で育った結果・・・

 

(まさか本当に恋愛と言うものすら知らない⁉)

 

私はその結果に唖然とした。身長は低いとはいえイケメンで、

 

地位も身分も申し分なく、お菓子を作れるくらいに家庭的で、

 

あってすぐの私と打ち解け合うくらいに社交性の高いこの主人が恋愛を知らない。

 

(御当主様、きっと教育を間違えてますよ)

 

まず思ったのはこれだった。

 

 

 

昼夜side

 

 

さっきから水波は黙ったままだ。そして唖然とした顔をしたあと、こちらを向いて、

 

「昼夜様、この漢字を何と読みますか?」

 

「さん付けにして欲しいんだが・・・どれどれ?」

 

因みに家にはメモ用紙が山ほどある。媒体がある方が便利なことも少なくないのだ。

 

そこに書かれている文字は『恋愛』。

 

「・・・・・・」

 

「昼夜様?」

 

・・・ヤバい、何と読むのだろう? 

 

お母様がくれた漢字ドリルや辞典にはこんな漢字は両方ともなかった。

 

俺の漢字の学力は漢検一級クラスだ。その俺が知らないとなると・・・

 

「はぁ、水波もしょうもないことするんだな」

 

水波は矢張りかと言う反応を示す。俺の漢字力を量ったのか?

 

「こんな漢字、及び熟語は存在しないだ!」

 

恐らく『恋』は『亦』に『心』を組み合わせて字を創作したのだろう。

 

そして『愛』は『受』に『優』のように間に心を入れたのだろう。

 

だが甘いな、俺は自分で言うのもなんだが英才教育を受けてきた。

 

この俺に勉学で死角はない!

 

「昼夜様、間違いです。この漢字は実在します」

 

「バカなっ!」

 

そんなはずはない! お母様は確かにこれで必要な漢字は全部覚えたわね、と言った。

 

「そうか、普段はなかなか使わない漢字か。

水波は漢字が得意なのか? まさか俺が知らない漢字を知ってるとは・・・」

 

「いえ、同年代の会話では結構出るものだと思います」

 

なんだと⁉そんなはずはない、こともないか。俺は本邸にずっといたから。

 

「降参だ、俺にはわからない。まさか本邸にいたのが仇になるなんてな」

 

「おそらくそれが原因ではないかと・・・」

 

「原因は何だっていい。答えを教えてくれないか?」

 

「分かりました、正解は・・・!」

 

水波は正解を言おうとした瞬間に強張ってしまう。

 

再び黙って、同じようにしばらくして顔を上げた。

 

「まさかここまで聞かれるとは思ってませんでした!

昼夜様正解ですよ!こんな漢字はありません!では私はこれで失礼します!」

 

ご丁寧にメモ帳まで持って行ったのは証拠を残さないためだろう。徹底している。

 

もし今度四葉の任務が来た時、連れて行ってもいいかもしれない。

 

そう言って早足に(自己加速術式まで使って)部屋に帰っていった。

 

この漢字は・・・明日鋼かエイミィにでも聞いてみよう。

 

形は覚えたから聞けば結果がわかるだろう。

 

 

 

水「もしこのことが御当主様に知られたら私はガーディアン除名・・・

  だけでは絶対に済まない! 一体どうしたらいいのですか!」

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

翌日

 

 

水波は俺が起きてもまだ寝ていた。昨日は何故か夜遅くまで声が聞こえていた。

 

『何時来ても大丈夫なように・・・』とか『私はまだ死にたくないですから・・・』、

 

とか聞こえてきた。大方、地震の対策をしているのだろう。

 

台風などはガラスの強化や建築技術の向上で最早過去の災害だが、

地震は屋内にも振動が少なからず伝わるので棚などは非常に危険だ。

 

水波に見習って俺も部屋の棚などの置き方を変更したが、

そう言うところに気づく当たり、さすがお母様が送ってくれたガーディアンだ。

 

「だけどそれで寝てるのはな・・・」

 

この時間になっても起きてないのは流石に問題だ。

 

四葉の家となると侵入を試みる輩は少なくない。ましてや俺は戦略級魔法師だ。

 

・・・待てよ・・・そんなことあってはならない!

 

俺は急いで水波の部屋に向かう。鍵がかかっていたがマスターキーで開けた。

 

「水波!・・・って、あれ?」

 

そこには部屋の中心でぐったりと倒れている水波がいた。

 

部屋は荒らされた形跡はない。落ち着いて水波に脈があるか調べる。

 

「脈はある、外傷も・・・ないな」

 

恐らく昨日のうちに脅迫状でも来たのだろう。

 

俺が返ってきていなかったのは情報を集めるためだ。

 

その時に家から出るところを見られたのだろう。さらに外で襲われた。

 

それなら、昨日の夜の声も理解できる。それなのに俺はそれに気づかずに・・・。

 

とりあえず俺にできることは・・・。

 

「水波! 起きろ!」

 

「ひゃっ! 何ですか! ついに私を・・・!」

 

「やっぱりか! なんで言わなかったんだ!」

 

「え? 昼夜様? そうかきっと御当主様が・・・」

 

「水波、今日は一高の図書室にいろ。そこならすぐに助けられる」

 

「え? 一体何のことですか?」

 

「もう隠さなくていい。いいから俺の言う通りにしてくれ」

 

「?・・・わかりました」

 

それから俺は学校に理由の説明と図書室の使用許可をもらった。

 

因みに水波の学校は来週からなのでまだ時間に余裕はある。

 

それまでに水波に手を出したやつを仕留めないと。

 

 




今回のお話終わり!
盛大に勘違いが交差してますね。
そして気づいている方もいるかもしれませんが、実は水波も勘違いしています。
ヒントは『追憶編 四節』です。
これに気づいた方は昼夜が非常に不安定だということが分かるでしょう。
そして次回、当作品の時点で原作で『達也より強い』と表記されている、
あの人と昼夜君が会いまみえます。完全なとばっちりで。
さて、次回のお話はこれくらいにしましょう。
次回の投稿は何時になるでしょうか?
(午後までに出なければ来年だと思います)

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