四葉のもう一人の後継者   作:fallere

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追憶編 八節

特製CADをもらってから二日が経過した。

 

CADの調整はほとんどなかったが、入れる魔法で結構悩んでしまった。

 

とは言えもうやることもないのだから、残りの一週間は深雪と仲良く過ごそう。

 

そう思って朝食を済ませた矢先に、警報機が鳴りだした。

 

情報元は国防軍、潜水ミサイル艦が主力の敵に侵攻されているとのことだ。

 

その時、スマホが鳴った。相手は・・・案の定お母様だった。

 

「もしも・・・」

 

『昼夜!大丈夫⁉怪我は無い⁉今すぐお母さんがそっちに行って・・・!』

 

まだ相手は本島に上陸していないのに俺はケガをしないといけないのか?

 

「お母さん、落ち着いて・・・とりあえずお願いがあるんだけど」

 

『何かしら?お母さんにそばにいて欲しい?なら今すぐ仕事を葉山さんに押し付けて』

 

この母が当主で四葉は大丈夫なのだろうか?

 

「そうじゃなくて、単純に便宜を図ってほしいの。

そうだね・・・恩納基地にでも連絡しておいてほしい。」

 

『分かったわ。私もできる限り早く行くから』

 

「うん、別に来なくても大丈夫だから。

これくらい乗り切れないと四葉家次期当主筆頭候補は名乗れないでしょ?

それと、服に仕掛けられていた盗聴器の件だけど・・・」

 

           ツーーー ツーーー・・・

 

電話を切られたか。まぁ仕方がない。

 

暫くすると風間大尉から連絡がって基地のシェルターへのお誘いが来た。

 

俺たちは手配してもらった装甲車で基地に向かう事となった。

 

装甲車の中で俺は視界を広げる。

 

水際で押しとどめていると言っていたが、どうにも劣勢のようだ。

 

この調子だと数時間もすれば本島への上陸を許すことになるだろう。

 

「・・・昼夜?その目、どうしたの?」

 

話しかけてきたのは深雪だった。

 

「どうしたって?」

 

「いえ、さっきまで目が透明になっていたから・・・」

 

「ああ、そのことか。それは俺の魔法『光学の眼(オプチカル・サイト)』の効果だね。

光を媒体にする遠視系の魔法だよ。発動中は光を取り込みやすくするため目が透明になる」

 

俺の眼は別にこれ一つではないのだが・・・それはそれとして、

 

この眼による捜査力と、圧倒的魔法力で俺はいくつもの難題をクリアしてきた。

 

だから・・・もし深雪たちが殺されそうになったら俺が・・・殺サナイト。

 

 

 

基地に入ると、既に数百人の人が避難していた。

 

俺たちは待機部屋の一つに、ほかの家族五人とともに入れられた。

 

その部屋で暫く待っていたが・・・

 

「・・・達也、桜井さん、聞こえました?」

 

「ああ、銃声だ。それも恐らくフルオートのアサルトライフル」

 

「敵が侵入してきたのでしょうか?」

 

「それならまだいいんですが・・・」

 

もしもそれと異なる答えならここはかなり危険だ。

 

俺は情報を得るために視界を広げてみるが・・・。

 

「ダメだ、どうにも壁に魔法を妨害する結界があるみたいだ」

 

「昼夜に同じく、室内で使う分には問題なさそうだが・・・」

 

そこで俺は、震えた手でCADを持っている深雪に気づいた。

 

「深雪、落ち着いて。とりあえずこれでも食べなよ」

 

俺は持ってきていた果物を魔法でフローズンフルーツにして渡す。

 

「あ、ありがとう昼夜」

 

「何かあっても、俺と達也が絶対に守るから、深雪はドンと構えてればいいんだよ」

 

スプーン?当然持ってきている。ついでに達也たちの分も作った。

 

腹が減っては何とやらだ。そこに・・・

 

「おい、君たちは魔法師なのかね?それなら外の様子を見てきたまえ」

 

・・・俺の最も気に入らない人種が話しかけて来やがった。

 

「俺たちは基地関係者じゃないけど?」

 

「それがどうした?魔法師は人間に奉仕するために作られた『モノ』だろう?

だったら軍属かどうかなんて関係ないはずだ」

 

・・・呆れた。と言うか今時こんな思想の人がいるのか。

 

ここで言い返さないわけにはいかない。魔法師の将来のためにも。

 

「確かに俺たちは作られた存在かもしれない」

 

現に俺は半分作られた、もう半分は自ら作った魔法師だ。

 

「それでもあんた個人に奉仕する義務はない。

魔法師は社会に奉仕する存在であって一個人奉仕する義務はない。

それよりあんた、自分の子供の前でそんなこと言って恥ずかしくないのか?」

 

こいつは慌てて自分たちの子供を見る。

 

子供たちはこいつを軽蔑のまなざしで見つめていた。

 

そこに達也が追い打ちをかける。

 

「それに、この国の魔法師の約八割は血統交配と潜在能力開発です。

生物学的に作られたのは二割にも満ちません」

 

「達也」

 

この場を沈めたのは意外にも叔母様だった。

 

「達也、悪いけど外の様子を見てきてくれるかしら?」

 

「ですが、今の俺の実力では離れたところから深雪を守ることは・・・」

 

「・・・達也、深雪は俺に任せておけ。絶対に傷ひとつさえつけない」

 

「昼夜まで・・・わかった、深雪を任せたぞ」

 

そう言って達也は部屋から出ていった。

 

「・・・とは言ったものを、かなりヤバい予感がするんですが・・・

言うならば・・・王手ってところですよ」

 

「確かに嫌な予感はするけど、ここには飛車角より強い駒があるから大丈夫でしょ?」

 

「まぁ、お母様とも約束しましたしね・・・」

 

何があっても死にはしない。そもそも俺はそう簡単に死ねない。

 

自分でそういう体にした。自分で殺すための魔法を身につけた。

 

迷いはない。後悔もない。あるのは、最強であるという決心だけ。

 

自分の周りを守るための最強の強さ。それだけでいい。

 

その時、扉から声が聞こえてきた。

 

「失礼します!空挺第二中隊の金城一等兵であります!

皆様を地下のシェルターにご案内に参りました!」

 

この声に俺と叔母様を除いて緊張感が緩んだ。

 

逆に俺たち二人はむしろ今まで以上に警戒した。

 

金城は扉を開けて入ってきた。さて、どうしたものか・・・?

 

「すみません、連れが一人外の様子を見に行ってまして・・・」

 

なるほど、その手があったか。達也には悪いがここはこの状況を利用させてもらおう。

 

「しかし、すでに敵の一部が基地の奥深くに侵入しています」

 

「なら、こっちのオジサンたちだけ連れて行っておいてください。

あいつを置いて行くことなんかできませんから」

 

深雪は安心したような顔を浮かべている。

 

俺もだが、達也を置いて行くという選択肢はないからだろう。

 

「しかし・・・」

 

金城たちは三人の仲間たちと相談を始めた。

 

「達也君でしたら風間大尉に頼めば合流できると思いますが?」

 

「勿論達也のことは心配だけど、これは十分の一以下は建前だよ」

 

「では?」

 

「勘よ」

 

俺の代わりに答えたのは叔母様だった。

 

その言葉一つで、桜井さんと深雪も警戒を取り戻した。

 

なんたって忘却の川の支配者(レテ・ミストレス)と言われる叔母様の勘だ。

 

「申し訳ありませんがこの部屋に置いて行くわけにはいきません。

お連れの方は我々が責任をもって案内しますので・・・」

 

しつこく言ってくる金城、次はどう断ろうと考えたとき扉が開いた。

 

「ディック!」

 

部屋に入ってきたのは桧垣だった。そして金城は桧垣に発砲した。

 

それと同時に金城グループの一人が指輪を突き出す。

 

「させるか!」

 

予想通り、指輪はサイオンのノイズを発生させた。

 

そしてそれが俺たちに届く前に、キャストアクティベートが完成する。

 

ジャミングは相殺され、桜井さんは障壁魔法で叔母様と深雪を守る。

 

「チッ、ガキが!」

 

金城グループは俺に銃口を向ける。

 

俺はベクトル反転の障壁魔法を発動して弾丸を防ぐ。

 

俺は攻撃用の魔法を組み立てようするが、何分アクティベートは複雑な為手を抜けない。

 

比較的容易なドライブリザードを発動するが、アクティベートと障壁が弱まる。

 

俺の後ろに深雪がいる。桜井さんの障壁はあるがあまり負担をかけたくない。

 

俺は防御を最低限にした。具体的には障壁を頭部と胸部に限定した。

 

腕に弾が当たる。それを引き抜くと弾丸で空いた穴が治っていく。

 

その間にも俺のドライブリザードは敵を制圧していく。

 

「チィッ!死ねエェ‼」

 

金城はマシンガンを俺に向けた圧倒的な数の弾が来る。

 

それらは防いだはずだった。しかし、跳弾が障壁の横から弾丸が俺の胸に命中した。

 

それと同時、ドライブリザードは完全に金城グループを制圧した。

 

 

 

深雪side

 

 

昼夜はキャストジャミングと防御、攻撃をすべて同時にこなして敵を制圧した。

 

しかし、それと同時に昼夜は倒れてしまった。私はすぐに昼夜に駆け寄った。

 

「昼夜!大丈夫⁉」

 

「ああ、ヤバいなぁ・・・さすがにこれは直せないわ・・・」

 

よく見ると、昼夜は所々に傷があるが、それらはたちまち治っていく。

 

だが、胸の傷だけは治らない・・・。そこから血があふれてくる。

 

「流石に・・・ここだけ・・・は、無理がある・・・みたいだね・・・」

 

「昼夜・・・だめ・・・しゃべっちゃだめよ・・・お兄様が来たら治るから!」

 

「深雪が無事なら・・・大丈夫・・・だ・・・・・・よ・・・」

 

昼夜の眼が閉じられていく。何故だかこの目が閉じてしまったら全てが終わる気がし

た。

 

「深雪!」

 

その時、あらゆる事象改変を元に戻せるあの人の声が聞こえてた。

 

「お兄様!昼夜が!」

 

使わせてはいけないとわかっていた。それでも、兄の力に頼るしかなかった。

 

「よくやった、昼夜!」

 

お兄様は昼夜に左手で握った拳銃型のCADを向けていた。

 

 

 




どうもー、投稿また遅くなりました・・・。ごめんなさい。
後、前半部分を適当に書いてしまい申し訳ございません。
データが消えたせいで面倒になってしまい、こうした次第でございます。
実際重要なことがあるわけでもないですし・・・いいよね?
まあ、もしかしたら今後こういう手抜きが増えていくかもしれません。
下手したら次回の文が
(前略)
(中略)
(後略)
で終わってるかもしれません(さすがにそれはないか・・・)。
次回は昼夜が戦略級と認められるシーンなので頑張って戦闘シーンを描写します。
あんまりうまい自信はないですが・・・。
それと、一応言うと昼夜の再生能力は『再生』とは異なります。
これも次回説明する予定なので昼夜無双を暇つぶしにでも見てください。

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