SAO帰還者のIS   作:剣の舞姫

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すいません、キリトVSセシリアの直前までで終わります。戦いは次回に。


第八話 「戦いの準備をする戦士」

SAO帰還者のIS

 

第八話

「戦いの準備をする戦士」

 

 Aピットに戻ってきた一夏は白式を手早く待機状態に戻すと、待っていた和人達の方に歩み寄った。

 そこでは、一夏の勝利を確信して疑っていなかった和人、明日奈、百合子が笑顔で迎えてくれていて、一夏も彼等に笑顔を向ける。

 

「よう、お疲れ」

「流石白の剣士だねー、ソードスキルのキレ、全然鈍ってなかったよ」

「いえ、正直まだまだ被弾なんかしている時点で鈍ってる感がありますよ」

「それは、仕方が無いよ。ナツ君も、私達も、銃の相手と戦った事が無いから」

 

 百合子の言うとおり、ずっと剣や槍、斧などの物理武器を使う世界で戦い続け、その後も魔法を使う世界で戦ってきたが、流石に銃を使う相手との戦闘経験なんて無い。

 ずっと銃口を向けられていたスターライトの射撃を避けるのは簡単でも、ブルーティアーズの全方位からの射撃を避けるのは中々に難しいものだ。

 

「いや、やっぱレーザーって魔法より速いですね。避けるのって結構慣れるまで大変かも」

「そうか…俺もレーザーや銃弾を避ける練習した方が良いのかな?」

「キリト君の場合は避けるより斬るなんて事をしでかしそうだよねー」

「ナツ君もそれに感化されそう」

「「失敬な…あ、でもアリかも」」

 

 アリかも、ではない。

 呆れたと言わんばかりの表情をそれぞれの夫に向ける明日奈と百合子に、その夫達は顔を向き合わせて苦笑した。

 

「い、一夏!」

「ん? おう、箒か」

「ふ、ふん…まぁ、とりあえずは勝てたからな、褒めてやる」

「おう、サンキュー」

「だ、だが! 勝ったからといって慢心などするものではない! け、剣もまだまだゲームの技ばかりで心許なさそうだから、剣道の練習もしておくことだな」

「そっちはまぁ、気が向けばな」

 

 勿論、竹刀を振るというのは生身で剣技を鍛えるのに適しているので、これからも続けようとは思うが、特に剣道をしようとは思っていない一夏だった。

 寧ろ、これから考えなければならないのは新生ALOに新しく導入されたOSS(オリジナルソードスキル)を如何するかだ。

 もしもオリジナルソードスキルをALOで開発したら希望によってはISに反映させて貰えるという話も聞いているので、手札を増やす為にも色々と考えなければならない。

 

「次はキリトさんの試合ですね、でも大丈夫かな…?」

「あ~、向こうは装甲ボロボロだったもんなぁ」

 

 どうにもソードスキルは威力が絶大過ぎるようで、ISの装甲も簡単にボロボロにしてしまう威力があるようだ。

 特に大きかったのはやはりヴォーパル・ストライクとメテオブレイクのようで、この二つでブルーティアーズのダメージ値は相当なものになったらしい。

 

「桐ヶ谷君、申し訳ないんですが…」

「山田先生?」

 

 管制室に居た筈の真耶がピットに来て、和人に少し難しそうな顔を向ける。

 

「オルコットさんのISのダメージが結構大きくて、これから突貫で修理しても次の試合が出来るのは明日になりそうなんです」

「あ~、今日は無理って事ですか?」

「はい、申し訳ないんですが…」

「ナツ、お前の所為だぞ」

「…すいません」

 

 流石にあそこまでボロボロにするのは不味かったか。と、少し反省して項垂れる一夏の頭をよしよしと百合子が撫でていた。

 

「でも、俺の試合を明日にしたら、本来明日の予定になってるアスナとユリコの試合は如何するんですか? 時間的に厳しいんじゃ…」

「あ、それならキリト君、わたしはいいよ、模擬戦は中止するから」

「私も、特に代表に拘りがある訳じゃありませんから」

「おい、逃げる気かよ」

 

 まさか~、と目を逸らす明日奈と百合子に疑惑の眼差しを向ける一夏と和人だが、正直な話、セシリアに一夏が勝った以上、もう明日奈と百合子が勝負をする意味合いは無い。

 元々、明日奈と一夏と百合子の実力は百合子が無限槍を使わない限りは互角なのだから、セシリア戦の結末は見えている。

 寧ろ、無限槍を使った百合子はこの場の誰よりも、それこそ和人よりも強い。

 

「まぁ、俺も戦う意味は無いんだけどなぁ…」

「キリトさん、逃がしませんからね?」

 

 自分だけ戦って同じ男の和人は戦わないなど、一夏が許さない。まぁ、和人はどの道戦う気満々なので、その心配は無いのだが。

 

「それでは明日は桐ヶ谷君だけが試合で、結城さんと宍戸さんは辞退でよろしいですか?」

「ええ」

「はい」

 

 この場に千冬が居れば明日奈と百合子の辞退は許されなかっただろうが、彼女はまだ管制室に居る。

 なので、この場での最高権力者である真耶の判断で明日奈と百合子の辞退が承認された。

 

 

 翌日、土曜日の為、午前授業で終わった放課後、和人とセシリアの模擬戦の為、既に一夏達は第3アリーナに来ていた。

 昨日は一夏がやっていた作業を今日は和人が行っており、黒鐡のチェックを行いながら、どう戦うのかを明日奈と話し合っている。

 

「キリト君、二刀流使うの?」

「いや、使わない。流石に二刀流は切り札にしておきたいし、手の内を晒すのは嫌いだ」

 

 今日の試合は和人の試合という事で、一夏の試合ではないからと、箒は一夏を誘って観客席に行こうとしていたのだが、一夏が百合子と共にピットに残る事を選んだ為、不機嫌そうな表情でピットの隅に居た箒が、和人の台詞に疑問を持った。

 

「桐ヶ谷は二刀流でなくても戦えるのは知っているが、いくらなんでも本気を出さないのは失礼ではないのか?」

「まぁ、そうなんだろうけど、二刀流じゃなくても本気は出せるからなぁ」

「箒、キリトさんは一刀流でも俺と同じレベルの実力があるから、心配は無用だぜ?」

「む、そうは言うが…」

「寧ろ、キリト君は二刀流より一刀流の方が経験は多いから、問題ないよ」

 

 そうだ、黒の剣士キリトは元々、二刀流を手に入れるまで白の剣士ナツと同じ片手剣一本で戦ってきた。

 故に、二刀流が本気とは言え、慣れているのがどちらなのかと言われれば一刀流だと答える。

 

「それにしても、今日の管制って山田先生だけか? 千冬姉は何処行ったんだか…」

 

 一夏はピットに居る真耶の隣に千冬が居ないのを気にしている様子で、真耶がその疑問に答える。

 

「織斑先生でしたら職員会議があるので来れません。なので、今日は私だけです」

「あ、そういうこと」

 

 また和人を嫌って来なかったのかと思ったが、職員会議で来れないだけだったのかと、安心した。やはり一夏としても千冬が和人達を嫌っているのは心苦しいものがあり、何とかしたいと思っている。

 だけど、そもそも千冬がSAO関係の話を一切受け付けず、話を持ちかけようとしても絶対に聞く耳持たないという状態なので、どうすれば良いのかと、ずっと悩んでいた。

 

「そろそろ時間だな」

 

 時計を見た和人が試合時間が迫っている事に気付き、黒鐡を展開した。

 何処か、アインクラッドでキリトの着ていたコート、ブラックウィルム・コートを彷彿とさせる形の漆黒に塗られた装甲と、白式と同デザインの非固定浮遊部位(アンロックユニット)が、まるで黒の剣士キリトが現実に投影されたのかと思わせる。

 黒鐡を展開し終えた和人は右手に黒の片手剣エリュシデータを展開して、カタパルトに移動すると、一気に射出されてアリーナに飛び出す。

 

「あら、お早いのですわね?」

「少し余裕を持った方が良いと思ってな」

「ふふ、紳士的で大変よろしいですわ。やはり恋人がいらっしゃる男性は女性に対する紳士的マナーが確りしていらっしゃるのかしら?」

「さぁ、な……それより、昨日で随分と態度が激変したな」

 

 和人の言うとおり、今目の前に居るセシリアの態度は昨日までとは一変しており、その瞳も決して和人を見下したものではなく、これから対戦する相手への敬意すら窺える。

 

「ええ、織斑さんとの試合で、随分と男性という存在への印象が変わりましたわ。ですので、もう決して油断など致しませんことよ?」

「そっちの方がありがたい、油断してる相手を倒しても面白くないからな」

「あら? 中々可愛いお顔をして、過激な殿方ですわね」

「……可愛い顔は、やめてくれ、気にしてるんだから」

「……それは、申し訳ございません」

 

 正直、何がここまでセシリアを変えたのか疑問は尽きないが、これなら面白い勝負が出来そうだと、試合開始の合図が待ち遠しくなる和人だ。

 

「ユイ」

『はい、パパ』

「正直、お前にBT兵器の射撃ポイント予測とかしてもらおうと思ってたけど、キャンセルするよ。この戦い、見ているだけで良い」

『大丈夫なんですか?』

「ああ、俺だけの力で、思いっきり楽しみたくなった」

『わかりました、頑張ってくださいね、パパ』

 

 ウインドウに映し出された愛娘が激励の言葉を伝えて消えた。恐らくアスナの瞬光かスマートフォンにでも移動したのだろう。

 

「今のは、サポートAIですの?」

「まぁ、似たようなものだ」

「しかし、AIにパパと呼ばせるのは…如何なものでしょう?」

「う……」

 

 確かに、和人も明日奈もユイの事は目に入れても痛くない程可愛い、まるで天使か妖精の如く愛らしい愛娘と認識しているが、やはり普通の人からするとAIにパパと呼ばせている変態としか映らないようだ。

 

「色々事情があるんだよ、ユイには…」

「ちょっと興味が湧いてきますわね、先ほどのAI…ユイさんと仰るんですの?」

「ああ、俺とアスナの可愛い娘さ」

「確かに、可愛らしいお顔とお声でしたわ…娘と仰るという事はVRMMOでもお会い出来るんですの?」

「ああ、ALO…アルヴヘイム・オンラインっていうゲームで実際に会えるぜ?」

 

 今度、アミュスフィアを購入してみましょうか…? などと呟くセシリアに、何となく気分が良くなる。もしかしたら彼女もALOで仲間になれるのかもしれない、そうなればALOの仲間を紹介しようとも考えた。

 

「そろそろ、時間ですわ」

「だな」

 

 試合開始のカウントが始まった。

 10、9、8、7、とカウントが減っていき、エリュシデータを構えた和人とスターライトmkⅢを構えたセシリアが静かに睨みあう。

 そして、カウントが遂に3、2、1、0になった瞬間…。

 

【試合、開始】

「行きますわ!!」

「行くぜ!!」

 

 蒼と黒がぶつかった。




次回、キリトVSセシリアが本格的にスタート。
せっしーALOプレイフラグが立ちました。せっしーの種族は何が良いですかねぇ?

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