まぁ、まだスランプ脱してないのと、仕事に慣れるまで忙しいので続きはまた時間掛かるかもです。
SAO帰還者のIS
第六十八話
「K」
学園祭の出し物は凡そのクラス、部活動で決まった為、最近の学園内は学園祭準備で大賑わいだった。
1年1組も例に漏れず喫茶店の準備を開始しており、メニュー及びその値段の話し合い、当日のシフトスケジュール、キッチン担当を誰にするのか、食器類、衣装、店内の装飾、一夏と明日奈を先頭に滞りなく進められている。
因みに、和人はホールでの接客オンリーに決まっていて、一夏はキッチンとホールを交互に行う事になっていた。1組の料理上手として名高いスリートップである一夏、シャルロット、明日奈は全員に料理を期待されているのだ。
そして現在、授業も終わり、学園祭準備をしていた一夏と百合子は買い出しを行うのにモノレールでショッピングモールまで来ている。
「テーブルクロス、花瓶、色画用紙、ナプキン……後は何があったっけ?」
「ん、買い物じゃないけど、食器類で何か良いのが無いか見てきてって」
「となると……お、モール内にティーカップ専門店があるみたいだな、行ってみるか?」
「うん」
大型ショッピングモール「レゾナンス」、その品揃えは本当に凄いものだ。まさかティーカップ専門店まで出しているとは。
「へぇ、結構な種類があるもんだ」
「あ、これ可愛い……」
来てみればなるほど、専門店というだけあって相当な数、種類のティーカップが並べられている。中にはティーカップとしての役割を果たせないだろうという感想を抱きたくなるような奇抜な物まであるので、興味深い。
「つか、これなんてそもそもティーカップって言って良いのか? ……ビールジョッキ型ティーカップって、まんまビールジョッキじゃん!」
「こっちには網目のティーカップ……注げないよね? 注いだ瞬間に漏れちゃうよね?」
因みに網目のティーカップには但し書きで「使用する時は一回り大きいカップの中に入れてから御使用ください」などと書いてある。
他にもトイレの便座型ティーカップ(和風バージョンと洋風バージョンでのペア)や、ドラム缶型やら。
「普通ので、良いよな」
「それが無難」
一先ず目ぼしいのを吟味してから店を出る。何故だろうか、店に入る前より疲れてしまった気がしてならない。
「とりあえず凡その目的は完了したかな」
「帰ろう?」
「ん~……少し寄り道してこうぜ?」
「ん」
という訳で寄り道デートと洒落込む事にして、レゾナンスから少し歩いた所にある公園まで来た。夕方の時間帯なので人は居ないが、逆にその静かな空気が二人の好みに合っている。
「そろそろかな」
「だね」
公園の真ん中辺りで立ち止まった二人はISの
「いい加減に出て来いよ。レゾナンスからずっと追けていたのは知ってるぜ」
「何の用なの?」
すると、茂みが動いて中から一人の人間が出てきた。出てきたのは一人の少女、それもまだ5~6歳くらいの黒い髪が特徴の幼子だ。
普通ならこんな年齢の幼子が出てきたら剣や槍を降ろすのだろうが、二人とも降ろさない。何故なら少女の手には銃が、それも明らかに本物の銃が握られていて、一夏と百合子に殺気を向けているのだから。
「女権団体か、それとも」
「
「……任務、失敗。逃亡のため、迎撃する」
その瞬間、二人が左右に分かれてその場を飛びのくと、一発の銃弾が二人の居た場所を穿った。少女の手にある銃からは硝煙が昇っていて、銃口は二人の居た場所に向けられている。
「あの銃、ベレッタM84か……女性でも扱える反動の少ない銃だけど、あんな幼い子が使ったら普通は肩が外れるし衝撃に負けるはずなのに……」
いくら少女の銃が女性でも扱えるとはいえ、5~6歳程の少女が簡単に扱えるような銃ではない。なのに、その少女は平然と片手撃ち、どうにも普通の少女ではないのは確かだ。
「女権団体じゃないか、となれば
「ナツ!」
「っ! チッ!」
銃口を向けられているのに気づいて慌てて銃口の向きから外れようとしたが、少し遅かったらしく右肩を掠った。
「GGOみたいに銃弾斬るなんて真似、リアルじゃ出来ないなぁ」
当たり前だ。
「あなたは、何者なの?」
「私は、K……いずれ、織斑一夏と篠ノ之束を殺す者」
少女……Kが一夏に気を取られている隙に百合子がヴェガルダ・ボウ(1/1サイズ)を出して投擲、それを少女が避けた瞬間に近づいてルー・セタンタで銃を弾き飛ばして、更に一夏が接近しトワイライトフィニッシャーの刃を少女の首に添える。
観念したらしいKに百合子が名を尋ねてみれば、その名はどうにも名前とは思えないアルファベット一文字のみという怪しさ満点のもの。
「コードネームか何かだな……それで、お前は何故、俺と束さんを狙う?」
「織斑一夏と篠ノ之束は、私を捨てた……だから、私はお前達を許さない」
「捨て、た……?」
Kが何を言っているのか、理解出来ない。捨てたなどと人聞きの悪い事を言っているが、一夏と束が、このKという少女を捨てたなんてありえない。
「俺はお前とは初対面だ。なのに何で俺と束さんがお前を捨てたなんて話になる?」
「初対面のはずが無い……私は、生まれて直ぐに、二人に捨てられた」
生まれて直ぐ、という事は5~6年前という事になるが、その頃には既に束は行方知れずになっているかIS学園の3年生だった筈だ。
当然だが、その頃に一夏と束が会った事は一度だって無い。ましてや、その頃に一夏が赤ん坊と直接関わった事など一度も無い。
「ナツ」
「ん、ああ……とりあえず、お前にはIS学園まで来てもらう。拘束する事になるが、抵抗するなよ?」
「……油断、大敵」
「なっ!?」
「ナツ!?」
一瞬の出来事だった。Kの姿が突然光りだしたかと思えば、Kはイタリアの第2世代型量産ISテンペスタを纏っていて、その場から一気に離脱したのだ。
流石に速さを売りにしているイタリアの機体、第2世代であってもその速度は相当なもので、もう見えなくなる距離まで逃げてしまった。
「逃げられたか……」
「ナツ、あの子の言ってた事……」
「わからない……一応、帰ったら束さんにも聞いてみるか」
とりあえず、Kの事は後ほど報告するということにして、銃声で騒がしくなってきたから早々にその場を立ち去りIS学園へ帰る事にした。
IS学園に帰宅して直ぐ、一夏は百合子に荷物を教室へ持っていって貰い、自分は職員室に居る束の所に来ていた。
少し大事な話があると説明したら、束と、それから念のため千冬も一緒に生徒指導室へ行き、中に入ってドアをロックする。
「それでいっくん、お話って?」
「これを」
見せた映像は白式に保存しておいたKの映像。あの時、念のためにと白式の記録保存機能を起動させて映像記録としてKの姿を残しておいたのだ。
「この少女に見覚えはありますか?」
「……無い、かなぁ。ちーちゃんは?」
「いや、私にも無い」
「K、この少女は自分をそう名乗っていました……俺と、束さんを殺す者だとも」
どういう事なのかと、二人の視線が語っていたので、先ほどの襲撃について説明し、更に少女が一夏と束に捨てられたと発言した事も話す。
「束さんといっくんが捨てた、ねぇ……年齢的に5~6歳、生まれて直ぐに捨てたって言うけど、覚えが無いよ」
「もちろん、この馬鹿が妊娠していたなどということも無い」
束に今も処女だとカミングアウトもされたが、それはどうでも良い情報なのでスルー。しかし、ならばこの少女は一体何者なのか。
「ん、待て……この娘、何処となく束に似てる気がしないでもないな」
「え? ……ホントだ。確かに似てるね~」
「それに、どこか一夏の面影もあるな」
「マジか?」
確かに、一夏と束、二人の面影がある。だが全く身に覚えが無いし、5~6年前に一夏と束がそういう関係になったという事実も無い。
先ほど束も自分が処女だとカミングアウトしていたし、一夏自身もそういう関係になった相手は百合子以外に居ないのだ。
「束、お前の両親は何処に居るのか把握しているか?」
「え? う、うん……一応、お父さんもお母さんも現在の居場所くらいは」
「一応、お前の両親に確認してみろ……6~7年前くらいに、何か異変が起きたかどうか」
「……もしかして、ちーちゃん達の親?」
「ああ、奴らが生きていたら、もしかしたらと考えてな……もし、生きていて
「……今夜、確認してみる」
この日の夜、束は10年ぶりに両親に連絡を取り、話をした。
最初こそ両親共に歓迎するような口調ではなかったが、事情を話すと真剣に聞いてくれて、そして6~7年前に何か無かったかという質問には特に何も無く平穏だったと答えた。
結局、千冬の抱いていた疑惑は外れという事になったのだが、そうなれば一夏と束の面影を持つKという少女の正体は一体なんなのか、謎は暗礁に乗り上げる。
学園祭、それは生徒達の祭りであり、招待された者にとっての出会いの場。
戦士達を見守ってきた侍もまた、一人の女性との出会いが運命となる。
そして近づく闇と、それを迎え撃つ為に立ち上がる戦士達。
戦いの舞台は、もう間もなくやって来る。
次回、SAO帰還者のIS。
「学園祭開始」
一組の男女が運命と出会う。