SAO帰還者のIS   作:剣の舞姫

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スランプまだ抜け出せませんが、何とか形になったので投稿します。
あ~でも、まだまだ駄目だなぁ、全然次の話が思い浮かばない……。


学園祭編
第六十七話 「クロエ・クロニクル」


SAO帰還者のIS

 

第六十七話

「クロエ・クロニクル」

 

 長かった夏休みが遂に終わりを迎え、IS学園2学期が始まった。2学期初日は全学年の生徒が講堂に集められ全校集会が行われる事になっており、そこで一年生は生徒会長との初対面が待っている。

 勿論、一年生の一部は既に生徒会長と会った事があり、それなりの関係を築いている者も居るのだが、大半がまだ生徒会長の顔を知らない。

 

「さて、一年生は顔を見た事がある子も居るかもしれないけど、ちゃんとした挨拶はこれが初めてね。私の名前は更識楯無、この学園の、君達生徒の長よ。以後よろしく!」

 

 講堂の壇上に立つ楯無の挨拶が始まった。今日こうして全校生徒が集められて行われる集会の議題となるのは今月行われる学園祭の事についてだ。

 

「今月行われる学園祭だけど、各学年各クラス、及び各部活動でそれぞれ出し物を決めて貰います。勿論、クラスの方は強制だけど部活動の出し物は希望した部のみです。当日まで期間は短いですが、クラス、部活、それぞれ皆で頑張って出し物を決めるように!」

 

 バッと楯無が開いた扇子には達筆な筆文字で「締切間近」と書かれている。

 

「もし出し物が決まったクラス、部活動は速やかに担任教師、顧問へ了承を取って申請書及び必要経費などを計算して生徒会へ報告をお願いね?」

 

 それから、集会ではもう一つ重大な発表があった。それは、二学期からという中途半端な時期にはなってしまったが、新任の教師が赴任するという話だ。

 

「たぶん、みんな絶対に驚くと思うけど、騒がないようにね? じゃあ、篠ノ之先生お願いします」

「はいは~い! ご紹介に預かりました新任教師の篠ノ之束で~す! いや~先生って呼ばれるのって何か嬉しいもんだね~」

 

 今までは博士やらドクター篠ノ之、とばかり呼ばれてたから新鮮だよ! なんて壇上で軽快に喋って千冬に背後から殴られている新任教師。

 程なくして講堂は大混乱に陥った。当然だろう、突然ISの開発者が教師として赴任してきたなんて話、驚くなという方が無理だろうから。

 

「因みに時期が中途半端だから私は担任とか副担任をやるのは来年から! なので今年度は整備科の2~3年生の授業と、1年生の後期選択授業にある整備講座及び実習の講師を務めるからね~」

 

 それとVR研究部の副顧問にもなりました。とのことだ。

 とまぁ、色々と騒ぎにはなったが、これで一先ず集会は終わりと相成り、生徒達はそれぞれ自分達の教室に戻りHRが行われる事となった。

 各クラスの担任は束の赴任による会議が急遽行われる事となったので、HRは全クラスが副担任が受け持って早速だが学園祭の話し合いが行われる事になる。

 

 

「え~、というわけで我が1組でも学園祭の出し物を決める為にアンケートを取った訳だが……」

 

 現在、1年1組ではクラス代表の一夏と副代表の明日奈が壇上に立って学園祭の出し物を決める為の話し合いを全員でしているのだが、一夏と明日奈が電子黒板に書かれたそれぞれの案を読み上げて笑顔を浮かべながら青筋浮かべて口元を引き攣らせていた。

 

「この、織斑一夏と桐ヶ谷和人によるツイスターゲームってのは、何だ? 発案者の夜竹」

「その名の通りお客さんと織斑君か桐ヶ谷君がツイスターゲームをするの!」

「じゃあ、織斑一夏と桐ヶ谷和人によるポッキーゲームって何かなー? 発案者の相川さん」

「その名の通り織斑君と桐ヶ谷君が(以下略)」

 

 その他にも「織斑一夏と桐ヶ谷和人によるホストクラブ」とか、「織斑一夏と桐ヶ谷和人による野球拳」とか、まぁとりあえず……。

 

「「出来るかアホォオオオオオ!!!!」」

 

 男二人、魂の叫びだった。当然、女子全員(百合子、明日奈を除く)からブーイングの嵐到来。

 

「つうかな! 彼女居る男にやらせる事じゃねぇだろ!!」

「それはそうだけど、でも織斑君も桐ヶ谷君も宍戸さんや結城さんの彼氏であるのと同時に私達クラスの共有財産だよ!」

「……(にっこり)」

「ごめんなさい」

 

 まぁ、お馬鹿な発言した女子は壇上に立つ明日奈の満面の笑顔を向けられた瞬間、顔を真っ青にして土下座していた。明日奈の手にランベントライト(1/1スケール)が握られていたのも、理由の一つだろうが。

 

「メイド喫茶など、どうだろうか?」

 

 そのときだった。全く持って意外な人物から、これまた意外な提案が飛び出てきたのは。

 クラス中の視線がその声の主に集中する。そこには挙手のポーズのまま目を閉じているラウラの姿があり、本人は至って真面目に意見したとでも言いた気だ。

 

「ラウラちゃん、メイド喫茶やりたいの?」

「やりたい、というより提案だ。メイド喫茶ならば客受けはまず良いだろうし、飲食店ならば経費も回収出来る」

 

 成程、確かにラウラの言う通りだ。昨近の喫茶店というものは、やれメイド喫茶だの、やれメイド喫茶だの、とにかくイロモノが多いが人気も高いという話をちらほら耳にした事もある。

 そして何より経費の回収が出来るというのは学園としても有難い話だろうから客受けだけではなく学校受けも間違いなく良い筈だ。

 

「うん、良いんじゃないかな? 一夏と和人さんは執事の格好をするか厨房を担当して貰えば良いもんね」

 

 クラスの良心、シャルロットも賛成した事を切欠にクラス全体がメイド喫茶に賛同し始める。執事、という点に物申したくなる男子二人だが、まさか女装してメイド服着ろなんて言われないのであれば、まぁ我慢出来るので、これで決めてしまっても良いかもしれない。

 

「では、ご奉仕喫茶で決まりですね!」

 

 静寐の一声で全員賛成してくれたのだが……、とりあえず一夏は一言だけ言いたい。

 

「セシリアは厨房禁止な」

「な、何故ですのーーーっ!?」

 

 保健所に来られては大問題だからである。

 

 

 HRが終わり、一時間目はまだ職員会議が終わっていないため全クラス自習という事になり、一夏と百合子は3組の教師前に来ていた。

 実は昨夜の話になるのだが、一夏の部屋に束が尋ねて来て、束の娘が本日3組に編入する事になったからHRが終わってからでも良いので顔を出してあげて欲しいとお願いされたのだ。

 一夏としても束の娘という事もあり無下にする気は無いし、もし困っている事があれば絶対に助けてあげようと思っていたから当然頷いたので、こうして百合子と共に3組まで来たという訳だった。

 

「あ、ちょっと良いか?」

「え、お、織斑君!? ど、どうしたの3組に!」

 

 丁度教室から出てきた女子に声を掛けてみれば大騒ぎになってしまった。当然か、普段知り合いの居ない組に顔を出す事は全く無かったのもあるから、3組の生徒とは殆どが初対面みたいなものだ。

 

「すまんけど、今日編入したクロニクルさん呼んで貰って良いか?」

「クロニクルさん? ちょっと待ってね」

 

 女子生徒が教室に入って少しすると、教室から一人の少女が出てきた。

 フリルをあしらった制服に身を包んだ銀髪の少女は、その瞳を閉じたまま杖一本付いて転ぶ事も無く一夏と百合子の前まで歩み寄る。

 

「えっと、クロエ・クロニクルで、合ってるよな? 束さんの娘の……」

「はい、クロエは私です」

「そっか、束さんに聞いてると思うけど、俺は……」

「織斑一夏さん、宍戸百合子さん。お二人とも束様からお話は伺っています……」

「ん、よろしくね」

「はい」

 

 それにしても、と一夏は思った。クロエは誰かに似ている気がしてならない。それもよく知る身近な誰かに。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒに似ている……そう仰りたいのですね」

「っ!? そ、そっか、誰かに似ていると思ったらラウラに」

「確かに……似てる」

「それは当然です。私は彼女と同じ生まれの存在……完成系のラウラ・ボーデヴィッヒになれなかった者ですから」

 

 ラウラの生まれについては一夏も百合子も聞いている。ドイツが行っていた胸糞悪くなる実験……遺伝子強化試験体を生み出す為に作られた試験管ベビー。

 つまり、このクロエという少女もまた、ラウラと同じという事は……。

 

「じゃあ、君も……」

「はい。私は出来損ないとして廃棄処分されそうになった所を束様に救って頂き、そして束様はそんな私を娘だと言って下さいました」

「そっか」

 

 生まれがどうとか、そんな事はどうでも良い。ただ、今この場で間違いなく言える事は唯一つ。

 

「改めて、俺は織斑一夏だ。君のお母さんには凄くお世話になったよ……よろしくな、クロエ」

 

 この少女は、篠ノ之束の娘、クロエ・クロニクルという一人の少女だという事だけだ。

 

「……?」

 

 差し出された一夏の手を不思議そうに首を傾げながら見つめる(目は閉じているが)クロエに苦笑した一夏は、そのまま差し出していた手をクロエの頭の上に持ってきた。

 

「! ……?」

 

 ラウラと同じ、身長の低い彼女の頭は丁度良い位置にあって実に撫でやすかった。

 きっと、束もこうしてクロエの頭を撫でているのだろうなぁなんて思いながら首を傾げたまま見上げてくるクロエに笑いかける。

 

「あの……」

「あ、ああ……まぁ、なんだ。何か困った事があったら遠慮しないで俺や百合子に言ってくれ」

「うん、私もナツも、クロエが困ってたら必ず助けるから」

「はぁ、ありがとう……ございます?」

 

 因みに、この光景を廊下の片隅から見つめている一人の女性が居た。

 いつもの機械で出来たウサ耳はそのままに、ぴっしりとスーツに身を包んだ束が、娘と、そして弟と言っても過言ではない存在と、その恋人が、仲良くしている光景に、自然と涙を浮かべている。

 

「ありがとう、いっくん、ゆーちゃん……くーちゃんも、良かったね」

 

 母であるが故か、束には不思議そうな顔で一夏を見上げているクロエが、どこか嬉しそうにしているのが手に取るようにわかる。

 

「本当に、この学園にくーちゃんを連れてきて良かったよ~」

「ああ、あの光景を見れば私でもそう思う」

「ちーちゃん……」

「どうだ? 私の弟は凄いだろう」

「そんなの、最初から知ってたよ……いっくんなら、きっとくーちゃんとも仲良くなれるって、信じてたからね」

「そうか……なら、もう用事は無いな?」

「……え゛?」

「職員会議の途中で抜け出してこんな所に居るどこぞの馬鹿が居てなぁ……さて、私がこれから何をしようとしているのか、当ててみろ」

 

 次の瞬間、学園中に一人の女性の悲鳴が響き渡ったのだが、真相は闇の中に葬り去られる事となった。




少年少女は出会う。二人にとって運命と呼べる出会い。
幼き運命、残酷な現実の道標となる運命の出会いは、未来へと繋がってゆく。
少年は、少女は、幼き運命に、どう向き合うことになるのか。
次回、SAO帰還者のIS。
「K」
未来への第一歩が、始まる。


え~突然ですがこの話を持って今月の投稿はお終いにします。
次の投稿は恐らく……来月ですね。
引越しのための荷造りとか色々手続きしなきゃで忙しいもので、引越しも3月10日に決まったものの、ネット環境を整えなければならないというのもあり、下手したら4月にならにと投稿出来ない可能性も一応考慮してます。
なので、次回投稿が大変遅くなること、どうぞご了承ください。

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