SAO帰還者のIS   作:剣の舞姫

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筆休めに番外編の第4段!
そして、今回の番外編は本編とリンクしています。


番外編4 「亡国の陰謀計画」

SAO帰還者のIS

 

番外編4

「亡国の陰謀計画」

 

 某国某所の地下にある広大な秘密基地、そこは世界の裏の更に裏に属する巨大組織、亡国機業(ファントム・タスク)の本拠地だ。

 首領をトップに10名の幹部を添えて、1000人を超える構成員で結成された組織は、世界各地でテロや暗殺、買収などの犯罪を手掛けている。

 勿論、1000人も超える人間が全員基地に居るわけではなく、その殆どが世界中に散って潜入任務を行っており、軍や政府、財閥や巨大企業などに諜報員として潜り込んでいるのだ。

 

「ふぅううい……あ~、暇だなぁ、暇過ぎておじさん思わず暴れたくなっちゃうな~、暴れちゃおうかなあ~ぃ」

 

 そして、このブランデー片手にタバコを吸っているサングラスを掛けた初老の男こそ、亡国機業(ファントム・タスク)の首領であり、若き日は幹部のナンバー1で『デストロイヤー』の異名で知られる今なお現役の生きた伝説、コードネーム:スカイだ。

 

「首領、貴方が暴れたら小国が一つ滅びますからご自重ください」

「なんでぇいノリが悪ぃなぁスコールはよぉ」

 

 首領室のソファーに腰掛けるスカイの向かいの席に座って、同じくブランデーを傾けるスコールは冷や汗を流しながらスカイが暴れるのを何とか阻止していた。

 何を隠そうスカイという男、若い頃に大暴れして本当に小国を一つ、滅ぼした事があるのだから冗談では済まされないのだ。

 

「そんで? 今日は一体どういう風の吹き回しだ~? オータムの嬢ちゃんとマドっちまで引き連れて来るたぁ、何か話があんだろ?」

「ご推察痛み入ります……実は、近々計画している作戦の実行許可を頂きたく参りました」

「作戦だぁ~? 話してみろぃ」

 

 スコールの言う作戦とは、IS学園で夏休み明けに行われる学園祭にて、スコール率いる部隊を襲撃させるというものだ。

 作戦決行前に学園祭が行われているIS学園にオータムと、後一名を潜入させて事を起こし、学園外に待機させた他のメンバーが同時に襲撃する。

 

「目的は織斑一夏の持つ白式と可能であれば篠ノ之箒の持つ紅椿の奪取及び、桐ヶ谷和人の暗殺と結城明日奈の誘拐です」

「はぁん、白式と紅椿の奪取はまぁわかるが……後者は須郷の計画だな」

「はい、彼はやはり必要以上に桐ヶ谷和人と結城明日奈に拘っている模様で……」

「チッ、だから私怨で動く小物は嫌ぇなんだよ、おじさんは」

 

 一応頭脳は優秀なので欠番になっていた幹部の椅子を一つ与えたが、スカイは須郷という男の事は一切信用も信頼もしていない。

 あの手の男は必ず裏切るだろう。裏切り、そして自分こそが首領に相応しいだの何だのと言ってスカイを殺して亡国機業(ファントム・タスク)トップの座を奪おうとするはず。

 

「ケッ、安心しろオッサン、あの男とラフコフの連中には俺とM、それにKが目を光らせてっからよ」

「あ~それは安心だ、それよりKはどうしたぃ? 来てねぇみてぇじゃん」

「アイツはもう寝た。今何時だと思っている?」

 

 Mと呼ばれた少女がスカイの疑問に答え、スカイも時計に目を向ければなるほど、今は夜の11時だ。

 

「ガキは夜更かししないでベッドへってな、俺が無理やり寝かしつけた」

「そうかい、オータムの嬢ちゃんにもそんな一面があったたぁな……んぐっ、ぷぁああ~! おうスコール、注いでくれぃ」

「どうぞ」

 

 空になったグラスにスコールがブランデーを注ぐと、スカイは口を付けるでもなく、ただそれを眼前に持ってきて琥珀色の液体の向こう側に透けて見える景色を眺めた。

 

「作戦については構わねぇぜ、好きにやんな……ただ、もし須郷が一緒に行くってんなら、奴の動向については逐一監視して報告しろぃ」

「はっ!」

「まぁ奴も、今の段階で尻尾掴ませるようなマヌケは演じないだろうが……そうさな、須郷監視用にオーガスト連れて行け、奴にゃあ俺から話を通しておいてやんよ」

「オーガストを、ですか? しかし彼は今、確か中東へ潜入している筈では……」

「IS学園の学園祭までには帰ってくるさ、心配すんな」

 

 ならば大丈夫だろうと判断したスコールはグラスに残ったブランデーを飲み干してオータムに注がせる。

 手元に置いてある資料に書かれたIS学園襲撃作戦の事はこれで良しとして、次の資料をテーブルの上に置き、それをスカイに見せた。

 

「こちらを」

「あ~ん? ……ほぅ」

「首領……スカイ様専用機の開発計画の進行報告ですわ」

「作業進行率30%……先月始めたばかりにしちゃあ順調じゃあねぇの」

 

 それは、亡国機業(ファントム・タスク)最強の男の為のISを作成する企画だった。

 開発計画の責任者は組織のナンバー2であるスプリングの名前が記入されており、開発主任として須郷の名前もある。

 

「世代としては第4世代を目標としていますが、ベースはどうしても現状第3世代にせざるを得ないそうです……これで白式か紅椿が手に入れば間違いなく第4世代機として完成するのですが」

「それは後の話だな、だがオッサンの要望通りの武装や特殊兵装を用意してある」

「ほう……良いじゃねぇか、実に俺好みの機体だ」

 

 そこに書かれた予定スペックや搭載予定の武装について読んでいくにつれて、スカイの顔に笑みが浮かぶ。

 心の弱い者が見れば、間違いなく恐怖に失禁してしまうような、そんな恐ろしい笑みではあったが。

 

「機体の開発コードは『デストロイヤー』、正式名称をトーデストリープと名づけました」

「破壊衝動か……おじさんにピッタリな名前だ、気に入った!」

 

 その名の通り、万物あらゆる物を破壊する事を前提とした機体、それがスカイの専用機となる機体だ。

 今はまだ未完成だが、それが完成した時、恐らく世界は……恐怖と混乱、そして混沌の海へと誘われる事となるだろう。

 

「最高の機体をご用意いたしますので、完成まで楽しみにしていてくださいませ」

「おうよ! ん~気分が良くなってきちゃったなぁ、おじさん今サイッコーにハッピーな気分~! マドっち、おめぇも仏頂面してねぇでこっち来な!」

 

 バンバン! と隣に座れと催促してくるスカイに、Mは溜息を零しながらてこてこ歩いてスカイの隣に座ると、スカイが何処からかオレンジジュースを取り出してMの前に置いた。

 差し出されたのを飲まないというのも失礼な話なので、ちびちび飲みながら豪快に笑う酔っ払い親父に相槌を打っていたのだが、そろそろ頭をガシガシ撫でるのは止めて欲しかったりする。

 

「……ひゃぅ!? ジジイ! 頭撫でるのはまだ良いとしても、お尻を撫でるのを許した覚えは無いぞ!!」

「ガハハハハハ!! ロリっ娘マドっちも随分と女らしい尻になったでねぇの~、胸も尻も大分おじさん好みn」

 

 スカイの頭にファイルがめり込んだ。血飛沫を噴水のように噴出しながらスカイは犯人の方を振り向く。

 そこには素敵な笑顔を浮かべながらも額に太っい青筋を浮かべたスコールと、そのスコールを見て顔を青くしながら距離を取るオータムの姿があった。

 

「首領? まだ未成年のMにセクハラとは良い度胸ですわね」

「カァッ! こちとらテロ組織の首領やってんでぇい! セクハラなんざ軽いテロもお手のもんでなぁにが悪い!!」

「未成年にするなと言ってるのよクソジジィ!!!」

 

 未成年じゃなければ良いのか、と思ったオータムだったが、それはスコールのセクハラするなら自分にしろという無意識のアプローチである事には気づかなかった。

 とりあえず、睨み合うスカイとスコールに挟まれて、スカイに触られたお尻を押さえながら涙目で助けを求めるMに、普段はいけ好かないガキだから嫌っているという事も忘れて救出する事にした。

 

 

 スコールとスカイの睨み合いが何とか終わって再び報告の方へと話が軌道修正された。

 元々話を逸らしたのはスカイだが、そこはスカイだから仕方が無いと強引に納得し、スコールは最後の資料をスカイの前に差し出す。

 

「……おい、スコール……こいつぁマジなんだろうな?」

「はい」

「そうかい……あ~あ、全く困ったもんだなぁ、おじさん困っちゃったなぁ~……」

 

 資料に書かれているのは、篠ノ之束がIS学園の教師になる事が正式に決定したという情報だった。

 前々から、亡国機業(ファントム・タスク)は束を組織にスカウトする事を検討していたのだが、その束がIS学園に所属する事になってしまっては、迂闊に手を出せなくなってしまう。

 

「如何いたしますか? もし首領がご命令下されば襲撃の折に博士の身柄も押さえますが」

「……確か篠ノ之束にはデザインベビーの助手が居たな」

「はい、ドイツのデザインベビー計画の失敗作として破棄されたものを保護したという話です」

「丁度良い、彼女が学園に居るのならそのデザインベビーもIS学園に入るだろうから……持って来い」

「了解ですわ」

 

 クロエという少女を、まるで物のように話すスカイに対し、スコールも同じように返した。

 

「邪魔が入れば殺せ、学園の生徒だろうと関係無い」

「よろしいので?」

「カッ! 平和ボケしたガキどもにゃあ良い薬になるだろう?」

 

 こうして、亡国機業(ファントム・タスク)の企みは正式に首領の承認を得て動き出す。IS学園の夏休みが明けて、学園祭が始まれば……学園は戦場となるだろう。

 

「んじゃあこれで話は終わりだな」

「はい」

「うっしゃああ!!! それじゃあおじさん、これから出掛けr」

「キャバクラでしたら行かせませんよ」

「ばっきゃろい!!! んなとこ今の時間やってるわけねぇでしょうが!! おじさんが行くのはおっぱい大きい姉ちゃんが居るお店だ!」

「おっ○ブもこの時間にやってるわけないでしょうがエロジジィ!!!!!!!」

 

 結局、二人を止める役をする事になったオータムとMが就寝したのは朝日が昇り始めてからになってしまう。

 二人はもう二度とスコールとスカイの話し合いには同席しないと心に誓い、ベッドに沈みながら襲い来る睡魔の誘惑に身を委ねるのだった。




あ、亡国機業の組織図みたいなの載せますので、そちらもご覧くださいね~。

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