SAO帰還者のIS   作:剣の舞姫

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は~い! 今回から夏休み編の目玉イベント! Extra Edition編スタート!


第六十一話 「目指せ、海底ダンジョン」

SAO帰還者のIS

 

第六十一話

「目指せ、海底ダンジョン」

 

 夏休みが中盤に差し掛かった7月25日、和人は政府の菊岡に呼び出されているので現在不在で、明日奈と百合子は直葉の水泳の練習に付き合うため、里香、珪子と共にSAO生還者の支援学校にあるプールへ行っている。

 残る一夏はというと、VR研究室の部室で以前から作成していたオリジナルゲーム作成の作業をしていた。

 部室には部員である簪や本音も来ていて、他にも部員ではないが手伝いという事で鈴音や箒、シャルロットにラウラも来ている。

 

「……」

「箒、どうしたのよ?」

「っ!?」

 

 作業に没頭して只管キーボードを打つ一夏の姿を、電子工学関係の資料を整頓していた手を止めて、呆然とした表情で眺めていた箒に気づいた鈴音が声を掛ける。

 すると、我に返ったのか箒が止めていた手を慌てて動かした。

 

「あ、そっか、箒ってば此処に来るのは初めてよね」

「ああ、その……一夏はあんなことも出来るのだな」

「アタシも初めて見た時は驚いたわ、アイツってばいつの間にあんな芸当が出来るようになったんだか」

 

 正直、今一夏が行っている作業や、一心不乱に見つめている画面を見たところで、箒や鈴音には何一つ理解出来ない。

 恐らく、この場で理解出来るのは簪と、本音くらいだろうか。

 

「あれ? でも僕が一夏の同室になったときは部屋に電子工学の本があったけど、箒はそれ知ってるよね?」

「む、ああ……だが知っているのと実際に見るのとでは全然違うものだな」

「うむ、あれほどの技術力は16という歳を考えても十分過ぎるものだ、どこぞの軍に勤めていたなら電子関係で相当な地位に登りつめていただろう」

 

 すると、ずっとキーボードを叩きながら画面と向き合っていた一夏が作業を止めて伸びをすると、掛けていたブルーライト遮断用眼鏡を外して目頭を揉みつつ本音が差し出した紅茶を一口飲んだ。

 

「ふぅ……」

「お疲れだね~、おりむ~」

「まぁなぁ……基幹プログラム群の形成は凡そ完了して、細かな微調整してたんだけど、やっぱ何箇所かエラーあったみたいだから、その修正がな」

「わ~、それは大変だ~」

「……手伝う?」

「いや、修正そのものはもう終わるんだ。それより簪はグラフィック関係に集中してくれると助かるかな」

「ん、わかった」

 

 簪が作業に戻ったので、一夏も眼鏡を掛け直すと、残りのエラー修正作業へ戻った。

 因みに、三人の会話の内容については、他の皆には一切チンプンカンプンで、三人の存在が何処か遠く感じられたりもしたのだが、気にするほどではない。

 

「やっほ~い! いっくん! 愛しのお姉ちゃんが来たよ~!!」

「……束さん、あなたは箒の姉であって俺の姉じゃないでしょうに」

「え~! だって束さんにとっては、いっくんだって大事な大事な弟君だよ~!」

「いや、そう言ってくれるのは嬉しいんですけど」

 

 昔から束は隙あらば一夏を自分の弟にしようとしては千冬と喧嘩していたのを思い出す。

 まぁ、確かに昔は……それこそ一夏が幼い頃、姉の親友である束は、いつも一夏に優しくしてくれて、一緒に遊んでくれて、千冬不在時はご飯を作ってくれて、剣道の手解きもしてくれた美人で憧れのお姉さんだったが、今は流石に恥ずかしいものがあるのだ。

 

「もう、昔は一緒にお風呂にも入ってくれたのに~」

「だから昔の話ですってば!」

 

 因みにこのお姉さん、当時小学生の頃から既に同学年より発育が良くて、今思い出すと……ここに居ない筈の百合子から殺気を感じた気がするので止める。

 

「おやおや~? おお~!? ねえねえ! これっていっくんが全部組んだの!?」

「いや、流石に全部じゃないですよ、ザ・シードにあった旧SAOの基幹プログラム群を参考に色々と手を加えながら組んだり、いくつか流用したりしましたから」

 

 束が一夏の組んだプログラムを見て関心したような声を出した。どうやら天才の目には一夏の仕事はお気に召す出来で映ったらしい。

 

「あ、でもここ」

「え?」

「ちょっと気づきにくいかもしれないけど、ここに小さなエラーがあるから修正した方が良いよ? じゃないと後々にエラー蓄積してバグを起こすから」

「うわ! マジですかそれ……いや~やっぱ束さんに比べると俺もまだまだかぁ」

「でも本当に気づきにくい所だから、たぶんプロでも気づけないよ。アマチュアでここまで出来れば十分天才って言っても通用するレベルだよ?」

 

 本物の天才からの言葉は実に重みがあるというか、実感が篭っていた。

 

「ねぇいっくん、VR研究部の顧問って誰?」

「山田先生ですけど」

「あ~、あのおっぱいか……よし、じゃあ二学期から束さんが副顧問になっていっくんやかず君に束さんが直々に電子工学や機械工学について教えてあげるよ!」

「マジですか!?」

 

 それは、正直本気で嬉しい。

 元々IS学園に入学した事で独学を覚悟していたのだが、天才である束が直々に教えてくれるというのは本当に助かるのだ。

 

「よっしゃああ! テンション上がってきたぁ!!」

 

 おかげで、一夏のテンションは天元突破、先ほど以上の速度でキータッチをしてエラー修正作業を進めるのだった。

 

 

 同日、リアルでは夜になるという時間だがALOのウンディーネ領から南にあるトゥーレ島と呼ばれる島の海岸は真昼間だった。

 そして、まさにその海岸では海に入って遊ぶ美しき妖精達の姿があり、ビーチに居る男達には実に眼福な光景が広がっている。

 

「うりゃうりゃあ! STR型のパワー全開!」

「くぅ! 負けませんよ! ピナ! バブルブレス!!」

「きゅあ~!」

「はっしゃー!」

 

 一方ではリズとシリカが水を掛けあって遊んでおり、ピナにはピクシー姿となったユイが騎乗して実に楽しそうにしている。

 他にも……。

 

「ほらハーゼ、そっち行ったよ!」

「任せろラファール! はぁあ!」

「ツバキ!」

「くぅっ! この! スズ今だ!」

「まっかせなさい!」

 

 ハーゼ、ラファール、スズ、そして新参のツバキと呼ばれた火妖精族(サラマンダー)の少女がビーチバレーをしている。

 因みにツバキと呼ばれた少女は最近になってALOを始めたばかりの箒のアバターであり、姿は火妖精族(サラマンダー)特有の赤い髪をポニーテールにしたナイスバディーの美少女だ。

 

「ユリコ、これ」

「ん……カンザシ、ナイス」

 

 それからユリコとカンザシの大人しいコンビは貝殻を拾っては鑑定してストレージに保管するという意味不明な行為をしていて、その近くではアスナに指導されながら息継ぎの練習をするリーファの姿があった。

 

「おいキリト、マジなんだろうな? 今回のクエストにクジラが出るってのは、ユイちゃんすっげぇ楽しみにしてたぞ? これで巨大クラゲとかクリオネとかだったら洒落になんねぇぞ」

「巨大クリオネだったら、ちょっと見てみたいけどな」

「いやいやキリトさん、クリオネってあれで凶暴ですよ? 食事シーンを動画で見たことありますけど、あれはグロイ」

「ああ、あれは俺も見たぜ……女房なんざクリオネの幻想壊れたって落ち込んでた」

 

 今回、こうしてALOに皆が集まったのには理由があった。

 それは、昨日ユイがクジラを見たいと言ったのが始まりで、現実でもクジラを見る事は出来るだろうが、なんとユイはクジラに乗ってみたいと言い出したらしい。

 それで親馬鹿なキリトとアスナはユイの願いを聞き入れるべく、巨大クジラが出現するというクエストが近くにあるというトゥーレ島に仲間を集めたという訳だ。

 

「問題はそのクエストがレイドで挑めるのかって事ですが……エギルさん、その辺はどうですか?」

「一応情報は集めてきたが、なんせこんなワールドマップの端っこにあるクエストだから、知ってる奴自体少なくてな、まぁレイドで挑めるって事と、そのクエストの最後にどえらいサイズの水棲型モンスターが出現するってのは確かだ」

「お! そりゃ期待出来るんでねぇの!?」

 

 まぁ、その巨大な水棲型モンスターの正体がクジラなのかはともかく、レイドで挑めるというのは助かる。

 今回集まったメンツは合計で14人、1パーティーの人数制限が7人なので、どうしても2パーティーに分けなければならなかった。

 レイドで挑めるという事は、1パーティー7人の2パーティーレイドでクエストに参加出来るという事なので、今回集まった全員でクエスト攻略が出来る。

 

「クライン、ツバキの方はどうだ?」

「おう、元々剣道してるって話だからそれなりに近接戦闘は出来てたからな、剣道の太刀筋を実戦向けに方向修正させてソードスキルもいくつか習得させたから、少なくとも戦闘で足引っ張ることは無いぜ……まぁ、まだ随意飛行は出来ないみたいだけどな」

 

 今回のクエストは水中クエストなので随意飛行が出来ないというのは特に問題ではないから、戦闘について問題が無いのならツバキもクエストに参加して大丈夫そうだ。

 

「ま、そういうこったから、そろそろ行こうぜ! みなさーん!! そろそろ出発の時間ですよー!!」

「はーい! 今行きまーす!!」

 

 少女達が海から上がってキリト達の所へ歩き出す。

 水着という薄着姿なので、全員その身体のラインがはっきりと判るからか、クラインは次第に鼻の下を伸ばしていくが、少女達が水着から武装へと衣装を変更すると、クラインが呆然としてしまった。

 

「あ、あの……みなさん? 今日はその格好で?」

「あったりまえでしょー? 戦闘するんだから」

 

 クラインがorzの格好で涙を流した。

 そして、いつの間にか同じように戦闘用装備に切り替えていたキリト、ナツ、エギルの所に少女達が集まると、今回のレイドリーダーを務めるキリトが口を開く。

 

「え~、僭越ながら今日は俺がレイドリーダーを勤めさせて頂きます。クエストの途中で、目的の大クジラが出てきた場合は、俺の指示に従ってください」

「それから、今回はこういったクエスト初体験のツバキが居るので、後方支援のメンバーはなるべくツバキを気に掛けておいてください、前衛組でもサポートするけど、ツバキは無理だけしないように」

「わ、わかった」

「よし、じゃあこのお礼はいつか精神的に……それじゃみんな、頑張ろう!」

『おー!!』

 

 こうして一行は目的の海域目指して飛行を始めた。

 目指すは目的地、海底ダンジョン。ユイが望む巨大クジラを見つけて、絶対にユイの可愛らしい願いを叶えようと、一同張り切って飛んでいく……クラインを残して。




深き海底に眠るダンジョン。
そこは水棲型モンスターが溢れる巣窟だった。
奥に眠る秘宝目指し、戦士達は剣を取り戦いに挑む。
次回、SAO帰還者のIS
「深海の戦い」
火妖精族(サラマンダー)の少女はこの戦いに何を見るのか。



はい、というわけで始まりましたExtra Edition編
今作ではオリジナル要素として深海クエストをレイド攻略可能という要素を加えました。
因みにパーティー編成は

キリトパーティー

・キリト
・アスナ
・リーファ
・クライン
・エギル
・シリカ
・リズ

ナツパーティー

・ナツ
・ユリコ
・ツバキ
・スズ
・ラファール
・ハーゼ
・カンザシ

以上が今回のレイド内容です。

それと、ツバキの装備ですが。
所謂剣道小町みたいな衣装で、下は紺、上は白の道着に似た服装に胸にライトアーマー、手には籠手に似たガントレットを、武器はリズベット作の刀を使用したスタイルです。

では、年内の更新はこれでお終い! 正月三が日はゆっくり休みますので執筆はしない予定です。
なので、みなさん来年またお会いしましょう! よいお年を。

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