SAO帰還者のIS   作:剣の舞姫

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結構アンチ? って言う意見が多いので、この場で説明をさせて頂きます。
当作品はアンチ作品ではありません。特にアンチだと言われそうな千冬の態度ですが、彼女のSAO被害者家族という立場を考えると、結構普通の反応なんですよね。実際、アスナの母である結城京子さんが似たような反応してますし。


第五話 「戦士達に鎧を」

SAO帰還者のIS

 

第五話

「戦士達に鎧を」

 

 入学二日目の放課後、一夏達は昨日言われた通りにIS整備室に訪れていた。時刻としては16時50分、専用機の搬入予定時刻の10分前に到着したので、十分余裕がある。

 そして、先に来ていたレクト社と倉持技研の社員と詳しい専用機受け渡しに関する話をしている内に10分はあっという間に過ぎ、遂に専用機が整備室に運び込まれてきた。

 

「ではまず一つずつ説明します、織斑さんの機体がこちら、白式です」

 

 レクト社員の男性が一夏に紹介した一夏の専用機、白式。全体を白の装甲で覆った白の剣士たる一夏に相応しい色合いの機体だ。

 

「それから桐ヶ谷さんの機体はこれですね、黒鐡です」

 

 和人の専用機は姿形は白式と酷似し、真逆の色合いの機体、全身余すところ無く漆黒の装甲は正に黒の剣士の名を体現している。

 

「明日奈お嬢様の機体はこちら、瞬光ですね」

 

 明日奈の機体は一夏や和人の機体より装甲がやや薄く、少ないスリムな機体だ。スピードを意識しているのか、防御をほぼ捨てたかのような印象を受ける白と紅で彩られた機体だった。

 

「最後に、宍戸さんの機体がこちら、槍陣です」

 

 最後に紹介された百合子の機体は明日奈よりは装甲が厚く、多くなっているものの、それでも和人や一夏の機体より薄く、少ない装甲となっており、抜群のスピードと申し訳程度の防御力で槍による神速の攻撃を意識した機体となっている。

 機体の色は明日奈の機体と同じ白と紅なのだが、白が多い明日奈の機体とは逆に紅が多い色合いとなっていた。

 

「それでは、これから最適化(フィッティング)を行いますので、皆さん乗り込んでください」

 

 倉持技研の社員に言われた通り、それぞれの専用機に乗り込むと、その周囲に技術者達が集まって早速だが最適化(フィッティング)の作業が行われる。

 時間にして30分少々だろうか、それくらいで作業は完全に終わり、4機とも一次移行(ファースト・シフト)が完了して装甲の形などが若干だが変わった。

 

「では皆さん、武器など問題無いか確認をお願いします」

 

 まず武器を取り出す前に搭載されている武装を確認する。

 注文通り、一夏の白式には片手用直剣が一本、和人の黒鐡には片手用直剣が二本、明日奈の瞬光には細剣が一本、百合子の槍陣には長槍が一本と短槍が拡張領域(バススロット)の最大容量ギリギリまで搭載されていた。

 更に、明日奈の機体以外全てに投擲用ピックが十数本搭載されていて、それについては拡張領域(バススロット)ではなく、腰周りの装甲内部に収納されており、必要なときに装甲が開いてピックが取り出せるようにしてあった。

 

「あれ? すいません、俺の機体、注文してない武装が搭載されてるんですけど…」

「ああ、すいません説明していませんでしたね。白式に搭載されている武装で一つだけ開発初期から搭載予定だった武装が入っています。雪片弐型、あなたのお姉さんが暮桜で使用していた雪片の後継武装ですよ」

 

 試しに実体化してみると、確かに形は若干だが変わっているが、その見た目は間違いなく姉が嘗て世界最強に輝いた時に使用していた武装、雪片だった。

 

「う~ん…でも雪片だとソードスキル発動しないな、これは」

 

 一夏の戦い方が出来ないので、恐らく搭載していても使う事は無いだろうと、量子化してもう一本の注文していた剣を実体化した。

 それは、アインクラッドにて白の剣士ナツが最終決戦まで愛用した刀身から柄まで全てが純白の鍛冶師リズベット作プレイヤーメイドの片手用直剣、トワイライトフィニッシャーそのままの姿だ。

 

「すげぇ、トワイライトフィニッシャーそのままだ…感じる重さも、問題ないな」

「ナツ、こっち見てみろよ」

「お、キリトさんも忠実に再現されてますね」

 

 和人の方を見れば、彼の両手には黒の片手剣エリュシデータと、白の片手剣ダークリパルサーが握られていた。

 明日奈の右手にも彼女の愛剣だったランベントライトが握られており、百合子も最後まで使用していた深紅の槍、ルー・セタンタを展開している。

 

「何だか、こうしてあの頃と同じ武器を皆で持っていると、SAO時代を思い出すねー」

「はい、懐かしいです…思えば4人で何度も模擬戦をしていましたね」

 

 各員、それぞれ思い思いに武器を素振りしながら具合を確かめつつ、SAO時代に戻ってきたかの様な錯覚を覚えて懐かしさに頬が緩む。

 最後にソードスキルシステムのチェックという事になり、簡単なソードスキルの発動をそれぞれ行う事になった。

 

「じゃあ、キリトさん、俺から行きます」

「おう」

「……はぁあああっ!!」

 

 一夏が使ったのは片手剣ソードスキル“レイジスパイク”だ。片手剣スキルでも比較的簡単なスキルで、初期から使えるスキルの一つだ。

 トワイライトフィニッシャーの刀身がライトエフェクトまで再現して放たれたレイジスパイクは空を斬りながらも、光の軌跡を描き、それは美しい光景だった。

 

「ナツが片手剣スキル使ったし、俺は二刀流スキルでも使うか…」

 

 和人が選んだのは二刀流ソードスキル“ダブルサーキュラー”、二刀を使った突進スキルで、やはりこちらもエリュシデータとダークリパルサーの刀身がライトエフェクトによって輝いていた。

 

「じゃあ私も行くね」

 

 次に明日奈が使ったのは彼女の最も得意とした細剣スキル、リニアーだ。こちらも問題なく発動したのがランベントライトの刀身がライトエフェクトによって輝いた事で確認出来る。

 

「最後は私ですか」

 

 最後、百合子が選んだのは槍スキル“ツイン・スラスト”という2連続刺突技だ。

 槍全体がライトエフェクトに輝いていたので、こちらも何も問題は無さそうなので、これでチェック項目の全てを確認し終えた事になる。

 

「チェックはこれで終わりです。それでは皆さん、ISを待機状態にしていただけますか?」

 

 倉持技研の研究者に言われた通り、ISを解除する事で待機状態にする。

 白式は白いガントレッドになって一夏の右手首に、黒鐡は黒い指輪となって和人の右手薬指に瞬光は白い指輪となって明日奈の右手薬指に、槍陣は紅いガントレッドとなって百合子の右手首に、それぞれ装着された。

 

「はい、無事に待機状態になりましたね。それとこれを皆さんお読みになっておいてください、専用機所持に関する各種決まりごとやマニュアルなどが書かれてます」

 

 手渡された分厚い本、読んでおいてくださいと言うが、ちょっと遠慮したい分厚さだ。勿論、文句を言う訳にもいかないので、後ほど読む事になるのだが。

 

「以上で全て終わりましたので、私どもは帰ります。それでは織斑さん、桐ヶ谷さん、お嬢様、宍戸さん、頑張ってください」

「「「「ありがとうございました」」」」

 

 レクト社員、倉持技研社員および研究員が帰っていったので、一夏達も早々に整備室を出る事にした。

 途中、整備室の一角でこちらを覗き見ていた水色の髪の眼鏡を掛けた少女が居た事に気付いていたが、特に気にした事ではないので、そのまま出て行く。

 

「あの4機の所為で…打鉄弐式が……」

 

 

 

 寮に帰宅する一夏達は早速だが渡された専用機についてそれぞれの感想を話していた。

 どの機体も彼等の要望通りのスペックとなっており、武器に関しても、名目上第3世代技術に分類するソードスキルシステムについても満足出来る仕上がりになっていて、4人とも大変満足している。

 

「そういえばキリトさんは、決闘の時二刀流使うんですか?」

「あ~…必要にならない限りは使わないつもりだ、だから暫くは一夏と同じ片手剣スキルだけで戦う事になるだろうな」

『パパは二刀流を使えば最強ですから、能ある鷹は爪を隠す、ですよ』

 

 急に、4人ではない別の少女の細い銀糸を鳴らすような愛らしい声が聞こえた。

 だが、4人とも慌てる事無く和人が取り出した携帯端末の画面に目を向けており、その画面には黒い髪の少女が映っていて、ニコニコと笑顔を振り撒いている。

 

「ユイ、それは言いすぎだって」

「えー、でもユイちゃんの言うことも一理あると思うなー」

『です! ユイのパパは二刀流を使えば世界最強です!』

 

 この少女の名はユイ、和人と明日奈の娘にして、嘗てSAOのメンタルヘルスカウンセリングプログラムという立場を持っていたトップダウン型の最先端を行くAIだ。

 

「でもな、俺も片手剣一本だとナツと殆ど実力は変わらないぞ?」

「いや、確かにキリトさんが剣一本なら俺も良い勝負出来る自信ありますけど、二刀流使われたら手も足も出ませんって」

『ナツお兄さんも強いですけど、やっぱりパパが一番ですね』

 

 パパ大好きを地で行くユイはキリトを世界最強だと言って疑わない。愛娘の揺るがない信頼に和人も満更ではないのか、否定しつつも、やはり何処か嬉しそうだ。

 

「お義兄さん、やっぱり親馬鹿だね」

「アスナさんも、な」

 

 一夏、百合子の二人は親子で和気藹々とする和人、明日奈、ユイに、人間とAIの差があれど、間違いなくこの3人は本物の親子だと、改めて思う。

 

『ところで、パパ、クラインおじさんからメールが入ってますよ?』

「お、そうか…何々?」

 

 曰く、IS学園入学して初日に何の連絡も寄越さないたぁどういう了見だこの野郎! この幸せハーレム野郎羨ましいぜ! あと、近いうちオフやろうぜ。との事だ。

 

「オフの連絡がついでみたいに書くなよな…」

「あ、あははー…クラインさん、相変わらずなのかな?」

「大方、女の花園に俺とナツだけ自由に出入り出来て羨ましいって事じゃないのか? アイツ、モテないし」

「もう、失礼だよキリト君」

 

 でもクラインがモテないのは事実だ。人間としては凄く出来た良い人なのだが、如何せんモテたいという願望が前面に出すぎるきらいがあるのが駄目なのだ。

 

「お、俺の方にもエギルさんからメール着てますね…何々? クラインの奴がまともなメール送ってないだろうから俺が代わりに詳細を送らせて貰う。近いうち、アインクラッド攻略記念パーティーをダイシー・カフェで行う企画をリズベット主催で立てているから、参加して欲しい…へぇ」

 

 参加者は一夏達4人とクライン、エギル、リズベット、シリカ、シンカー、ユリエール、ヨルコ、カインズ、シュミットなど、SAO時代に一夏と和人達が知り合った交友のある人物達だ。

 

「良いね、ナツ君達が行くなら私も行く」

「わたしも勿論参加するよ」

「そうだな、そうだ! 折角だからスグも誘うか、アスナ救出にはスグにも世話になったし」

 

 和人の妹、桐ヶ谷直葉はALOに明日奈が捕らえられていた時、助けに行く和人、一夏、百合子に多大な協力をしてくれた。ならば、参加させても誰一人文句を言う者は居ないだろう。

 

「集まれるとしたら、クラス対抗リーグが終わった後だな、それまでは結構忙しいみたいだし、アスナのリハビリもそれまでには良いとこまで行くだろ?」

「うん、この学園の施設が凄過ぎてリハビリが前以上に進むよー、もしかしたら後数週間で杖無しでも歩ける様になるかも」

 

 それは良い事だ。

 この分ならアインクラッド攻略記念パーティーは同時に明日奈の回復祝いにも出来そうだと、早速一夏はエギルにこのことをメールで返信する。

 

「お、流石エギルさん、返信が早い…何々? それは結構な事だ、無理しない程度に、頑張って元気に歩く姿を見せてくれ、ですって」

「そっか…エギルさんに頑張るって伝えておかなくちゃ」

 

 やはり、クラインもエギルも、この4人にとっては本当に頼りになる、優しい兄貴分だ。嘗ての仲間達に元気な姿を見せる為にも、翌日より明日奈はより一層リハビリに専念するようになるのだった。




次回、箒との剣道対決からクラス代表決定戦直前まで行きたいと思います。

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