SAO帰還者のIS   作:剣の舞姫

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今回、亡国機業の首領が登場します。オリキャラです。
声のイメージは若本さんを脳内再生していただければ。


番外編2 「亡国機業の日常」

SAO帰還者のIS

 

番外編2

「亡国企業の日常」

 

 某国某所にある地下巨大施設、そこは100年以上も昔から存在し、裏社会で暗躍する秘密結社、亡国機業(ファントム・タスク)の基地だった。

 多くの構成員がその施設では暮らしており、日夜訓練などに励んでいるというのは、どこぞの軍施設と何ら変わりない。

 そして、その施設内にある大会議場、そこには組織の幹部達が集まって定例会議がたった今、行われようとしていた。

 

「首領遅ぇな」

「どうせまたどっかで飲んでるんだろ」

「チクショウ! 俺も誘ってくれれば一緒に行けたのに!」

 

 会議が始まったというのに、姿を見せない首領に幹部達は慌てる様子も無く、むしろいつものことだと言わんばかりの態度で、この場で最も首領に近しい人物である金髪美女……幹部の一人であるスコールへと目を向けた。

 

「あ~はいはい、じゃあ首領(飲んだくれジジイ)が来るまでの間、司会進行は私がするわね」

『いいとも~!』

 

 随分とノリの良い幹部達だった。

 会議にて話し合われる内容は主に今後の予定だ。テロ計画、IS強奪計画、某国で起きている内戦への介入などなど、様々な話し合いが行われ、どの幹部の部下がそれを実行するのか、など役割分担などもこの会議にて話し合われていたのだが、会議が始まって1時間経った頃になってようやく首領が会議室に入ってきたのだ。

 しかも、随分と具合悪そうに。

 

「あ~、二日酔いで頭いてぇな~」

「首領……また夕べはお飲みになってたみたいですね」

「おおう、キャバクラの姉ちゃん達とな? そりゃあもう朝まで飲み比べしてたんだけんどよ、おじさんその所為で二日酔いなのよ」

「あのですね首領……組織のお金でキャバクラ行くなって何度言わせれば気が済むんですが!!」

「あ~もう大声だすなってヴぁ! 二日酔いで頭いてぇんだって~の! 仕方あんめぇ、自分の金でキャバクラ行ったら女房に怒られるし、娘に白い目で見られるんだからよ~お? パパ大嫌いなんて言われたらおじさん、思わず某国の核ミサイル盗んで撃ち出すかもしれねぇしよ?」

 

 このスコールに怒られているサングラスを掛けた初老の男こそ、現在の亡国機業(ファントム・タスク)の首領にして、若き日は幹部でナンバー1の実力者とまで謳われた凄腕なのだが、今はもう昔の面影など見る由も無いスケベな飲んだくれのオッサンと化していた。

 

「それで首領、先ほどまで話し合われていた内容ですが」

「あ~いいよ別に、おめぇたちの好きにやんな」

「……あのですね、一応首領の承認が必要な案件もあるのですが」

「承認だぁあ? んなもん勝手にやりゃあ良いだろうがよ、おじさんこれから行くとこあるのよ」

「行くところ、ですか?」

「ああ、これは特S級の任務になるやもしれん」

「それほどの!? 一体、首領自ら赴かれるほどの任務とは……何なのですか?」

「それはなぁ……」

「それは……?」

 

 スコールのみならず、他の幹部達もゴクリと息を呑んで首領の言葉を待つ。

 

「今日これから、娘が彼氏とデートだっつうんだよ! しかも! チャラ男が彼氏だっつうじゃねぇか! 大事に育ててきた娘の彼氏がチャラ男なんてパパりんぜってぇ認めねぇからよ、ちょっくら娘の彼氏、抹殺してくるんだってヴぁ!!!」

『仕事しろーーーー!!!』

 

 結局、首領は他の幹部連中に縄で縛られて執務室の椅子から動けなくなり、スコール監視の下、仕事をさせられる羽目になった。

 執務室で仕事を黙々と続けている首領を、鋭い眼光で監視するスコールは、ふと目の前にいる男と出会った過去を思い出したのだが、命を救われて、一時期惚れていたなど、一時の気の迷いだろうと、頭を振る。

 

「スコール」

「何ですか?」

「おめぇんとこで匿ってる科学者……名前はなんて言った?」

「……須郷伸之ですわ」

「あ~、んな名前だったかぁ? まぁ、いい。それでよぉお? その男の研究、どれくらい進んでるんだ?」

「現段階で70%ほどですね、人体実験を行わないと、これ以上は進まないかと」

「そこはおめぇに任せる。ただまぁ、気をつけろぃ」

「気をつける……ですか?」

「あの男には一度会ったがなぁ、何ともキナ臭ぇ感じがしたんだよ。それに、随分と誰かを恨んでいるみてぇだしな、私怨で動くのはマドっちで慣れてっけんどよ? ありゃあマドっち以上に厄介かもしれねぇよ」

 

 たった一度会っただけで、そこまで見抜いている首領の観察眼には、恐れ入った。

 普段はただの飲んだくれスケベジジイなのに、やはりこの男は組織の首領として、見るべき所は確りと見ているようだ。

 

「ところでよ、おじさん喉が乾いちゃったから、茶ぁ入れてくれい」

「かしこまりました……」

 

 首領の頼みとあらば、部屋に備え付けの簡易キッチンで出来るだけ美味しい紅茶を用意してみせようとキッチンに立ち、紅茶を淹れて戻ってきてみれば……。

 

「……」

 

 首領の姿は何処にも無く、デスクの上にはいつの間に書いたのか書置きが残されていた。

 

『仕事に飽きたから昼キャバ行ってくる。戻ってきたら続きやるから許してちょ☆』

「……あ、の……っ! 駄目親父ぃいいいいいいいい!!!!!」

 

 亡国機業幹部、スコール・ミューゼル。首領のお目付け役まで押し付けられ、ストレスで胃薬のお世話になる毎日を送る苦労人として、組織内では有名になっているのだが、残念ながら彼女の立場を交代しようという者は、一人も居なかった。




超短いですが、まぁ筆休めに書いただけですので、ご容赦を。

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