SAO帰還者のIS   作:剣の舞姫

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今回の話に、後々重要になる内容が含まれています。


第二十五話 「白と閃光、黒と無限、最強ペア結成」

SAO帰還者のIS

 

第二十五話

「白と閃光、黒と無限、最強ペア結成」

 

 これはラウラとセシリア、それから鈴音が医務室に運ばれた後の話だ。

 一夏から説教を受けた後、千冬は直ぐに今回の一件を学園に報告、セシリア達の状況と、解析が終わり、VTシステムの存在が確認されたシュヴァルツェア・レーゲンのことも説明した。

 そして、学園からすぐさまイギリス、中国、ドイツへと話が行き、話は大きく荒れることになる。

 まず、中国とイギリスがドイツへ賠償を要求、挑発に乗ったセシリアと鈴音も問題だが、そもそも先に挑発したのはラウラであることから、ドイツの立場は弱く、更にイグニッション・プランの為の試作中の機体でもあるブルーティアーズを、大破させたことからイギリスはドイツがイギリスのイグニッション・プラン参加を妨害しようとしているのではないか、とまで言い出したものだから、更に話が大きくなってしまったのだ。

 中国としても、最新鋭の機体である甲龍を大破されたことでドイツを非難、そこに加えて中国とイギリスはシュヴァルツェア・レーゲンにVTシステムが搭載されていたことも問題視した。

 そもそも国際法で使用及び製造、研究が禁止されている代物がドイツ代表候補生の、それも他国のISが多く集まるIS学園へ転入したラウラの専用機に搭載されていたのだから、ドイツがIS学園を乗っ取り、支配下に置こうとしたのではという憶測まで出てしまった。

 結果として、ドイツは世界中からの非難を浴びる形となり、トカゲの尻尾切りの意味も込めてラウラの意識が戻り次第、即座にドイツへ帰国させ、帰国した段階で拘束、軍施設へ収容後すぐに処刑すると千冬たちの前で断言したのだが、それに待ったを掛けたのは、千冬だ。

 彼女としては、ラウラは昔も、そして今も教え子だ。教え子を死なせるという結末を回避する為に、日本国家代表時代のコネと、ドイツ軍教官時代のコネを利用し、頭を下げてラウラの処刑回避及び、日本への亡命の許可を求めた。

 

「しかしね織斑くん、ボーデヴィッヒ嬢を我が国に亡命させようにも、彼女は一度問題を起こしている。その彼女を我々は何の条件も無く受け入れるつもりは無いよ?」

「わかっています。ですので、ボーデヴィッヒが何か問題を起こせば、それ相応の責任を取りたいと思っています」

 

 総理大臣の言葉に千冬はそう返した。

 そして、結果として条件を呑むことでラウラの日本亡命は認められ、IS学園にも残れる事となる。

 更に、未婚である千冬が身元引受人となるための条件も加えられた。その条件というのが……。

 

・ラウラ・ボーデヴィッヒが何か問題を起こした際、事の大小を問わずその責任を本人及び身元引受人となる織斑千冬が取る事とする。

 

・今後、ラウラ・ボーデヴィッヒの代表候補生資格取得を認めない。

 

・今後5年間、ラウラ・ボーデヴィッヒのISへの搭乗を禁止する。

 

・織斑一夏がIS学園卒業後、織斑千冬は3年間、日本の航空自衛隊IS部隊の教官を行う事とする。

 

・ラウラ・ボーデヴィッヒのIS学園卒業後の進路に自衛隊及び警察を選択する事を認めない。

 

 以上、これらの条件となる。

 勿論、もしラウラが問題を起こせば即座にラウラはIS学園を退学、日本政府により拘束され、然るべき施設へ入れられる事となり、千冬はIS学園の教員を辞する事になっている。

 

「我々日本政府が与えられる温情は、これが限界だ。織斑くん、くれぐれも……分かっているね?」

「重々……承知しています」

 

 それだけ言い残し、通信は終わった。

 通信室のモニターの前に立っていた千冬は重々しい溜息を零すと、踵を返して通信室の扉の前まで向かい、ふと回収したシュヴァルツェア・レーゲンに残されていた交戦記録を思い出す。

 

「まだ、チェックしてなかったな」

 

 ついでなのでチェックしておこうと思い、通信室を出ると、そのままシュヴァルツェア・レーゲンの修理が行われている機密ドックへ向かった。

 ドックでは無人機械によるシュヴァルツェア・レーゲンの修理が行われており、それを尻目に千冬は回収された交戦記録を端末から呼び出し、空間投影デスプレイで先のVTシステムによる暴走前から、その後までの記録映像を見始める。

 映っているのはシュヴァルツェア・レーゲンを纏ったラウラが鈴音とセシリアを撃破し、セシリアがラウラに最後の一撃を加え、その後一夏が攻撃してくる姿だ。

 

「……」

 

 戦闘は続き、一夏がヴォーパルストライクでAICを使用不可能にして、和人達と共にラウラを取り囲むところになった。

 

「あんなシステムを使わずとも、今の一夏であれば雪片と、零落白夜でもっと早く終わらせる事が出来るだろうに……」

 

 ソードスキルよりも零落白夜の方が優秀だと、ソードスキルを使う事が戦闘において時間を無駄にしていると、そう評価した。

 今の一夏の実力なら零落白夜を使う事でもっと早く、ソードスキルを使うより早く戦闘を終わらせる事が出来るはずなのに、それをしない、ソードスキルに頼っていると、そう思う千冬だ。

 

「む?」

 

 すると、映像はVTシステムが発動した所に切り替わり、そして……二刀流で戦う和人が映し出された。

 

「二刀流……奴め、今まで本気ではなかったという事か、小賢しい小僧だ」

 

 二刀流で戦う和人の姿は、今まで何度か見た一刀流で戦うときより数倍強いと思った。否、間違いなく強いのだろうと、そう思う。

 

「そもそも、何故日本政府は一夏よりこんな小僧を優先したがる。世界各国も、委員会も、一夏を優先したがっているのに、何故日本政府だけはこの小僧を優先するんだ」

 

 散々、世界各国やIS委員会は和人よりも一夏を優遇するべきだと、寧ろ和人を実験に使わせろとまで言っているのに、日本がそれを拒んでいる。

 日本政府にとって、特に総務省にとって優先すべきは、優遇すべきは一夏ではなく、和人なのだという事は、千冬も知っていた。だからこそ、それが気に食わない。

 このままでは、一夏が、弟が日本政府によってISの実験材料として差し出されるのではないかと、そう思ってしまった。

 

「一夏に、何があろうと零落白夜を使わせなければ……あの力はソードスキルとやらよりも強い。あの力で、一夏が私の跡を継ぐほどの実力を身に付ければ、一夏はISの世界で誰にも手出し出来ない存在になれる。日本政府も、そうなれば理解するはずだ……あの小僧より、一夏の方が有能だと。その為にも、一夏には日本代表候補生になってもらって、ゆくゆくは日本国家代表としてモンド・グロッソに出場し、そして嘗ての私のように、総合優勝してもらわなければ」

 

 嘗て、自身が立ったあの表彰台に、今度はその跡を継いで弟が立つ姿は、さぞ誇らしいのだろう。

その姿を、いつか見てみたい。

 

「秋にある日本代表候補生選抜試験、一夏に受けさせるべきだな……」

 

 そう呟きながら、千冬は映像を切って、ドックを出て行くのだった。

 

 

 ラウラの騒動が終わった後、一夏達はシャルロットも交えて学園施設内にあるカフェに来ていた。

 ケーキと紅茶を注文し、話す内容は今度行われるタッグマッチトーナメントについてだ。

 

「タッグマッチ、どうするか……」

「ナツはユリコと組むつもりだろ?」

「そう、思ってるんですけど、それだと面白くないんですよねぇ」

 

 因みに、シャルロットはタッグマッチに参加しないらしい。

 亡命する際、フランスの代表候補生資格も無くなったので、専用機であるラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡもフランスへ返却しなければならないため、その手続きをするのに不参加という事になっている。

 

「そういえば、シャルルは日本国籍を正式に取った後はどうするんだ?」

「一応、改めて女として転入し直すよ? 結城シャルロットとして」

「そうそう、それにレクト社所属として、わたし達と同じレクト社専属テストパイロットって扱いになるんだー」

「そうなると、専用機、も……?」

「ううん、それはまだ。秋にある日本代表候補生選抜試験を受けて、日本代表候補生になれたら正式にレクトから専用機を受け取ることになってるんだ」

 

 そう、シャルロットはこの秋に行われる日本代表候補生選抜試験を受ける事にしていた。

 元々、フランスで代表候補生になっていたので、知識や技量に関しては特に問題は無いだろうから、一夏たちの予想では間違いなく合格するだろうと思っている。

 

「それより、僕の事はいいとして、皆はどうするの? タッグマッチのペア申請、確か明日までだった筈だよ?」

「あ~……そうだなぁ」

 

 シャルロットに言われて、再び悩んだ一夏だったが、ふと何かを閃いた。

 

「アスナさん、良ければ組みませんか?」

「え、ナツ君と?」

「ええ、それでキリトさんがユリコと組んで参加するんです」

「私がキリトお義兄さんと?」

「へぇ……面白そうだな」

 

 普段、タッグを組むときは一夏と百合子、和人と明日奈で組むのが普通だった。

 勿論、今一夏が提案したペアは組んだことが無いわけじゃない。寧ろSAOに居た頃は何度かやっている組み合わせだ。

 

「閃光のアスナと白の剣士ナツが相手か……こりゃ二刀流使わざるを得ないか」

「私も、無限槍を使う事になりそう」

 

 二刀流と無限槍、アインクラッドに3人しか居なかったユニークスキル使いの内の二人がペアを組むというのは、中々に悪夢なのだが、一夏と明日奈のペアも中々に凶悪なのだ。

 

「わたし達、敏捷ステ振りペアに、翻弄されないでね?」

「やるからには、俺もアスナさんも、本気で動きますから」

「うへぇ、捕まえるの大変そうだ」

「大丈夫、私の無限槍の面制圧力は、敏捷ステ振りペアを捉えられる」

 

 こうして、ユニークスキルペアと、敏捷ステ振りペアという、アインクラッドを一度は震撼させた凶悪ペアがここに再び蘇えるのだった。




ちょい、千冬を悪役に感じる方がいるかもしれませんが、今回の千冬の考えが今後の和解イベントにおいて、重要な内容になります。

そして、ユニークスキルペアと敏捷ステ振りペア、その激突はトーナメントで!

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