SAO帰還者のIS   作:剣の舞姫

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お待たせしました!
今回はシャルの秘密を公開です。


第二十一話 「貴公子の秘密を暴く戦士」

SAO帰還者のIS

 

第二十一話

「貴公子の秘密を暴く戦士」

 

 部活申請も無事に終わり、寮に帰ってきた一夏は部屋に戻る途中で真耶に会った。

 顧問になってくれたことの礼を述べると、彼女は気にしなくて良いとほわほわ笑いながら言ってくれて、ついでに何か用なのかと聞くと、驚くべきことを口にする。

 

「実は、篠ノ之さんにはお引越しをしてもらうことになりまして」

「引越し?」

「はい、デュノア君が転校してきたので、織斑君と同室になって貰おうと思いまして、それで篠ノ之さんには鷹月さんと同室になって貰うことになりました」

 

 成る程、いつまでも男子と女子が同室というのは不味いと判断し、元々恋人である和人と明日奈より恋人ではなく唯の幼馴染というだけの一夏と箒の同室を解除する事にしたのだろう。

 一夏の部屋に着き、早速帰ってきていた箒に真耶がそのことを伝えると、彼女は思いのほか狼狽し、まるで助けを求めるかのような目を一夏に向けてきた。

 

「別に可笑しな話じゃないだろ? 元々男子と女子が同室ってのに問題があったんだし」

「し、しかし桐ヶ谷さんと結城さんも同室ではないか!」

「あの二人は恋人同士だし、まぁ問題が無いとは言わないけど、それでも恋人でもない男女の同室よりはまだ健全だよ」

 

 恋人でもない男女、その言葉が箒の癪に障った。

 まるで恋人じゃないからいつまでも同室でいるつもりは無いとでも言われたような気がして、それでは一夏の恋人を自称する百合子が同室だったのなら、問題は無かったとでも言いたいのかと、そう邪推してしまう。

 

「それでは、篠ノ之さん? 荷物を纏めるの手伝いますので、お引越し、お願いしますね」

「……はい」

 

 渋々引越しを了承した箒は荷物を纏め、その間も何やらPCの前に座って作業をしている一夏へとチラチラ目線を送っていた。

 少しは期待していたのだ。一夏なら、もしかしたら引き止めてくれるのではないか、幼馴染と同室なら少しは気楽だから引越しを無しにして欲しいと真耶へ進言してくれるのではないか、と……。

 だが、結局荷物を纏め終えて箒が部屋を出るまで、一夏が引き止める事は無く、箒は消沈したまま新しい部屋へと向かう事になるのだった。

 

 

 箒が部屋を出て少ししてから、部屋に入ってくる者が居た。

 今回、新しく一夏と同室になる転校生、シャルル・デュノアだ。彼は部屋に入ってくるなりPCの前に座っていた一夏を見つけると、その隣まで来て挨拶をする。

 

「一夏、今日から同室だね。よろしく」

「おう、よろしく」

「うん! ……ところで、何してるの?」

「うん? これか……ちょいとな」

 

 シャルルがPCの画面に目を向けると、何やら難しいプログラムが組まれている途中だった。

 ISのOSではない。では何なのかが気になり、一夏に答えを求めると、少々驚きの答えが返ってくる。

 

「今日、俺やキリトさんが作った部活があるんだけど、その部活で作ろうと思ってるVRゲームのプログラムを試作してるんだ」

「ゲームのプログラム!? それって学生個人で出来るの!?」

「出来るさ、相応の知識とか必要だけど、簡単なゲームなら個人でも作れるぜ」

 

 勿論、今一夏が行っているのはそのレベルを遥かに超越しているのだが、ゲームを作るという事自体は個人で出来ないというわけではないのだ。

 

「ん~と、ベースはザ・シードを使うから必要なのは基幹プログラムとかその辺か……えっと、そうなると……」

 

 カタカタとキーボードを叩き続ける一夏を見て、シャルルは一夏が凄い人間なのではと思えてきた。

 そもそもVRゲームを作るなど学生個人で出来るものではないという事くらいシャルルだって理解している。

 勿論、相応の知識と環境があれば出来るのだろうが、一夏はシャルルと同じ15歳の少年だ。そんな彼にそのような芸当が出来るのかと少々疑ってしまう。

 しかし、一夏の手付きといい、PC画面上に映し出されている複雑なプログラムといい、これは既に高校生のレベルではない。

 よく見れば本棚には一夏の物であろう本が並んでいるのだが、そのタイトルからしてシャルルには内容が理解出来そうにない代物ばかりだ。

 

「うわぁ……電子工学理論とか絶対読んでも僕じゃ理解出来なさそう」

 

 試しに本を手にとって開いてみたのだが、思った通り1ページ読んだだけで降参してしまった。

 

「あはは、やっぱ難しいだろ? それ」

「うん、ていうか一夏は理解出来るの?」

「そりゃあ、この分野を目指して勉強したからなぁ」

 

 SAOから帰って来てからというもの、リハビリをしながら電子工学の勉強をしていた。だから今の一夏にとってシャルルが理解出来ないと断念した電子工学理論の本の内容を理解するなど朝飯前なのだ。

 

「それに、IS学園卒業したらアメリカの大学へ留学しようと思ってるしな」

「え……? 一夏、IS操縦者にならないの?」

「ん~、興味無いなぁ。正直、ISに関わる前からこの道に進もうって思ってたし、ISに関わったからって夢を捨ててまでISに一生関わるつもりは無いよ」

「でも、世界初の男性IS操縦者なんだから、絶対周りが許してくれないんじゃないかな?」

「まぁ、そうだろうけど、でもさ……俺の人生だぜ? 周りに決められる謂れは無いな。俺は将来、VR技術の研究者になろうって決めてるんだ、だからISに関わるのはIS学園に居る間だけ。卒業したらもう二度とISに関わるつもりは無い。俺の人生を決めて良いのは、俺だけだ」

 

 確固たる意思を感じて、シャルルは何も言えなくなった。

 確かに、一夏の人生を決めて良いのは一夏本人だけだろう。他の誰かが強要して良いものではない。

 だけど、一夏はその立場上、それが許されないのも事実だ。

 世界で最初に発見された男性IS操縦者、ブリュンヒルデの弟、それだけでも世界中が一夏を一生ISの世界へ縛りつけようとするだろうし、VR研究者という道など許しはしないだろう。

 

「それよりさ」

「ん? どうしたの?」

「シャルルはいつまで男装してるつもりだ?」

「っ!? ……え?」

「こう言えば判るか? いつまでシャルル・デュノアを演じてる(・・・・)つもりだ? フランス代表候補生、シャルロット・デュノア」

 

 シャルルへと振り向いた一夏の後ろにあるPCの画面には、フランス代表候補生の名簿から抜粋したであろう一人の少女の顔写真が映し出されていた。

 そう、紛れもなくシャルル・デュノア本人の顔が、本名と共に。

 

「な、何で……それを」

「ん? ああ、デュノア社がフランス政府に言って名簿から消したんだっけ……まぁ、そんなもの簡単に見つけられるさ」

 

 一瞬だが、一夏のPC画面の縁にピンクの服を着た黒いストレートヘアーの少女が妖精のような羽を羽ばたかせながらチラリとこちらを見た気がした。

 

「シャルロット・デュノア。デュノア社社長の娘であり、正妻との子ではなく愛人との子供。実の母は既に鬼籍に入っており、現在の親権は父親であるデュノア社社長にある……まぁ、此処まで情報が出て来たらIS学園に来た理由なんて簡単に予想出来るわな」

「……言い逃れは出来ないね。そうだよ、僕は父に命令されて男と偽り入学してきたんだ」

「目的は俺やキリトさん、もしくはその専用機である白式と黒鐡だな?」

「うん」

 

 デュノア社が経営難になっているのは有名な話だ。

 つまり、シャルル……シャルロットは社長に命令され、白式や黒鐡のデータを盗むのが目的で入学したということになる。

 男と偽ったのは広告塔の意味合いが一つと、一夏やキリトに近づき易くするため。

 

「あ~あ、結構自信あったのになぁ」

「まぁ、歩き方とか結構男のものを再現してたけどさ、所々で不自然な点が出てたし、何より色々と怪し過ぎ」

「だよねぇ」

 

 苦笑しながらシャルロットは自分に割り当てられた窓際のベッドに腰掛けた。

 

「まぁ、別に実害があった訳じゃないし、俺はお前を責めるつもりは無いよ」

「……どうして? 僕は君たちを欺いていたんだよ?」

「言っただろ? 実害があった訳じゃない」

 

 だから責める必要も無いし、そもそも命令だったのだから欺いた事を責めるのはお門違いだ。

 

「その様子だと、親父さんとは上手くいってないんだろ」

「……うん、直接会話したのは2回だけ。本妻の人には泥棒猫の娘が! って言われて殴られたよ……跡取り息子になんてレイプされ掛けたし」

「そりゃ……ひでぇな」

「仕方ない、とは言いたくないけど、でも……僕の立場上、何かを言う権利は無かったからね」

 

 確かに、仕方ないで済ませて良い問題ではないが、彼女の立場上ではどうしても泣き寝入りするしか無かったのだろう。

 

「シャルル、お前はさ……今の境遇に少しでも不満があるなら、自由になりたいって思わないか?」

「なれるならね。でも無理だよ、バレた以上、僕は国に強制送還。良くても牢獄行きだろうから」

「無理じゃないぜ。お前が本当に自由を望むなら、俺は力を貸せる。自由にしてやることが出来る」

「……どうやって?」

 

 絶対の自信を持って言う一夏に怪訝そうな表情を向けるシャルロットだが、一夏は変わらず自信に満ちた表情でシャルロットを見返した。

 

「その前に、答えてくれ。お前は、自由になりたいか? 助けが欲しいか? 手を伸ばす勇気はあるか?」

「……本当に、自由にして、くれるの?」

「ああ」

「……なら、一夏、お願い……助けてぇ」

 

 涙ながらに助けを請うシャルロットに、一夏はPC画面へ目を向ける事で答えとした。

 画面にはいつの間にか黒髪の可憐な少女が映し出されており、一夏は何の疑問を抱く事無くその少女へと口を開く。

 

「と、いう訳だからさ、ユイちゃん」

『合点承知です! 既にパパとママにもお知らせして許可は頂いてますので、目一杯やってきますね!』

「おう! 俺やキリトさんを利用しようとした馬鹿共に一発くれてあげようか!」

『はい!』

「あの、一夏? この子は……?」

「ああ、この子はキリトさんの専用機とアスナさんの専用機でサポートAIを務めてるユイちゃんだ。あの二人の可愛い娘」

「AI!? え、こんなに高性能なAIがあるなんて……っていうか、娘?」

『はじめまして、パパとママの娘のユイです。今回はナツお兄さんのお願いという事でシャルロットさんのご実家へハッキングして国際IS委員会へ今回の件を全て公開してきますね』

 

 細い銀糸を弾いたような可憐な声で物騒な事を口走るユイに一夏は口元を引き攣らせる。

 まぁ、一夏がお願いした事なので間違ってないのだが、あまり妙な事を覚えさせてしまうと彼女の母が鬼の様に恐ろしくなるので、少しは自重しようと心に決めるのだった。




今回、一夏が自分の希望している進路と将来の夢について語りました。
この話は今後の話において結構重要になってくるので、今後読んでいく方は覚えておくことをお勧めします。

あ、それと百合子のイメージが出来ない方に。
百合子のモデルはハイスクールD×Dのセラフォルー・レヴィアタンです。
彼女をツインテールではなくストレートヘアーにして、真面目な表情にした感じをイメージしてください。

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