SAO帰還者のIS   作:剣の舞姫

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え~、今回のお話は、下種が脱獄したときの話を載せるべきだという声を参考にし、番外編という形で作ったものです。


番外編1 「最悪と最悪が最悪と手を結ぶ時」

SAO帰還者のIS

 

番外編1

「最悪と最悪が最悪と手を結ぶ時」

 

 これは、一夏達がIS学園に入学する少し前の話。

 世界初の男性IS操縦者が二人、見つかったという事で、世間が騒がしくなったばかりの頃の事だ。

 数ヶ月前、レクト・プログレスにて管理運営をしていたVRMMORPGゲーム、アルヴヘイム・オンラインことALOにて非道な人体実験を行っていた事と、某病院駐車場で傷害事件を起こした事により罪に問われ、警察の留置所に留置されている男がそのニュースを聞いたのは殆ど偶然だった。

 

「おい、聞いたか? 男がISを動かしたんだってよ」

「うそっ! マジかよ?」

「ああ、しかもその動かした男ってのが二人居て、その内の一人はブリュンヒルデの弟、織斑一夏なんだってさ」

「へぇ……血なのかねぇ?」

 

 留置所の看守をしている警察官の話を、牢獄の中で聞いていた男は、出て来た名前を聞いた瞬間、今まで身動きせず顔を俯かせていたのに、一瞬だがピクリと動いた。

 

「それで、もう一人は?」

「それがさ、この前留置所に入った男が起こした傷害事件の被害者だったんだよ、俺ビックリしたわ」

「うわぁ、偶然って怖いなぁ」

 

 その犯人が聞いているというのに、無遠慮に話を続ける警官達だが、気付いているだろうか。先ほどからその男が表情を歪め、カリカリと自分の爪を齧り続けているのを。

 

「(間違い無い、あの小僧共だ……ちくしょう! 何で、何でこの天才である僕がこんな罪人みたいな扱いを受けているのに、あの凡人の極みみたいな小僧共が世界に注目を受けているんだ……っ)」

 

 それはある意味、嫉妬だった。

 見下すべき凡人が世に注目され、本来世の注目と脚光を浴びるべき自分が罪人として留置されているという現状が、男の心にドス黒く醜い感情を湧き立てている。

 

「そうだ……本来、僕はこんな所に居る筈じゃないんだ」

「そうね、貴方はこんな所で潰すには惜しい才能を持っているわ」

 

 突如、男の独り言に答える声が聞こえ、俯いていた男は顔を上げた。

 そこには金髪の女性が一人、恐らくはアメリカ辺りの出身らしき美女が立っていた。しかも、その彼女の足元には先ほどまで話をしていたであろう二人の警察官が倒れている。

 

「Mr.須郷、貴方を迎えに来たわ」

「僕を、迎えにだと?」

「ええ、貴方の才能を、大いに発揮できる場所へご案内しに来たのよ」

 

 彼女の口ぶりから、この拘置所から脱獄する手助けをするという事だろう。つまり、彼女は警察関係者ではない。

 

「申し遅れました。私、亡国機業が幹部の一人、スコール・ミューゼルと申します。以後、お見知りおきを、Mr.須郷」

「ぼ、亡国機業だと!? あの、50年以上も前から裏社会で暗躍している、秘密組織の……」

「流石はMr.須郷ですわ。私たちの事も既にご存知とは……そうです、その亡国機業が、貴方の才能を是非欲しているのです。貴方の才能は、こんな所で腐らせるには余りにも惜し過ぎる」

 

 男……須郷伸之にとってこれはチャンスだった。

 あらゆる手段を考えては無罪を勝ち取る事が出来ず、このままでは刑務所へと入れられることになると思っていたのだから、これを逃せば自由の身になる機会は訪れないかもしれない。

 

「僕の才能が欲しいと言ったね」

「ええ」

「良いだろう、僕を連れて行け。僕はこんな所に居るべき人間じゃない! 必ずや世界中に僕の研究の素晴らしさを見せ付け、いずれはこの世界の神にも等しい人間になるんだ!! その為なら、亡国機業だろうと何だろうと、利用させてもらおうじゃないか」

「素晴らしい野心ですわ。その野心、我々の組織にとっても役立ちましょう」

 

 この日、ALO事件の首謀者たる須郷伸之が留置所から脱獄した。

 この事を知った日本政府は、彼の逮捕に最も貢献した少年、桐ヶ谷和人には詳しい事が判明するまで、伏せておく事を決定し、調査が進められる事となる。

 

 

 亡国機業幹部、スコール・ミューゼルが日本での活動拠点としている某所にある高級ホテル、そこのスイートルーム全てを借りているスコールは早速だが連れてきた男、須郷伸之を自分の部下達に紹介するため、部屋へ部下達を呼び出した。

 呼び出しをして集まってきたのは5人の人物。一人は黒髪のロングヘアーが美しい美女、もう一人は同じく黒髪のまだ10代と思しき少女、それから膝下まであるポンチョを被り顔を窺い知ることが出来ない男3人だ。

 

「紹介するわMr.須郷、彼女達と、それから彼らが私の部下、左からオータム、M、Poh、ジョニー・ブラック、ザザよ。特にPoh達三人は同じ日本で最近スカウトしたばかりだから、仲良くして頂戴」

「ケッ、研究者風情が役に立つのか? スコール」

 

 須郷の事は予め紹介されていたのだろう、本人を目の前にオータムが見下した態度で須郷が役に立つのかをスコールに問うてきた。

 

「彼には実働部隊としてではなく、バックアップとして動いてもらう予定よ。それと、彼の研究も進めてもらうわ……M、アレは用意してあるわね?」

「ああ、アミュスフィア……言われた通り100機、隣の部屋に用意してある。それと、ナーヴギアも回収先から50機ほどだが、盗み出して同じく隣の部屋に」

 

 須郷の研究に必要不可欠なVRマシン、アミュスフィアと、それから既に製造禁止、回収処分を受けているナーヴギアまでもが揃っている。

 更に須郷に用意された部屋には彼がレクト・プログレスに勤めていた時の研究室並の設備が整えられているので、研究を進めるのには十分な環境が整えられていた。

 

「それで、僕は先ず何をやれば良いんだ?」

「そうねぇ……貴方という最高の頭脳を手に入れたことだし、今まで計画していて、決定打に欠けるから実行出来なかったことをやりましょうか」

「ほう……それは僕が居ることで成功するというのかね?」

「ええ」

 

 その計画とは、少しばかり興味が湧いたのか、須郷はその先を促す。

 

「篠ノ之束博士の居場所を突き止めて、襲撃するわ……そこで、出来れば博士の身柄を、無理でも博士が作っているかもしれない未登録のコアかISを頂いちゃいましょう。実働部隊はオータム、M、Poh、ザザ、ジョニーブラック、お願いね」

「はっ! オレ一人でも十分なんだけどな」

「そう思うならお前一人で行け……篠ノ之束を甘く見ていると大怪我をするぞ」

 

 睨み合うオータムとMの隣で、同じく実働部隊になったPoh、ザザ、ジョニー・ブラックの三人は、特に何も言わず不敵に哂っている。

 彼らはこの人選に特に異があるわけではないらしい。

 

「所でよスコールさんや、篠ノ之博士以外に人が居たら殺して良いのかい?」

「それはザザの好きになさい。必要なのは博士の身柄か、コア、もしくはISそのものなのだから」

「ありがてぇ! ヘッド! 早速オレ達の力を試せますぜ!」

「Wow……ああ、楽しい楽しいショータイムの、始まりだぜぇ……笑う棺桶(ラフィン・コフィン)現実世界での復活だ」

 

 かつて、SAO事件にて浮遊城アインクラッドを震撼させた殺人集団、笑う棺桶(ラフィン・コフィン)が亡国機業に拾われたのは偶然だった。

 元々、彼らはSAO事件が終結して被害者が現実世界に意識を取り戻した後、政府の調べで積極的殺人暦アリという事でカウンセリングと経過観察を受けていたのだが、その事を何処で調べたのかスコールがスカウトに現れたというのがそもそもの始まりだ。

 

「上手く事を運べれば貴方達にも素敵な玩具をプレゼントするわ……Mr.須郷と協力して、必ず成功させて頂戴。オータムはアラクネを、Mはサイレント・ゼフィルスを使用して、恐らくは居るでしょう防衛を突破して頂戴ね」

「任せな」

「了解した……」

 

 この数日後、篠ノ之束の隠れ家は須郷の手によって暴かれ、襲撃を受ける。

 迎撃に当たったゴーレムⅠ、ゴーレムⅡ、ゴーレムⅢの内、ゴーレムⅡが大破、ⅠとⅢが中破状態で亡国機業に奪取されてしまった。

 隠れ家襲撃において、ゴーレム以外の防衛措置が施されていたが、その全てを篠ノ之束を上回るハッキング技術を持つ須郷により無効化され、進入した笑う棺桶(ラフィン・コフィン)によってクロエ・クロニクルが重傷、篠ノ之束は無傷だが、クロエ・クロニクルを連れて隠れ家を放棄する事になる。




ここらで、束と須郷、それから茅場の力関係について解説。

まず、電脳関係(ハッキングやVR技術など)はこちら

茅場>須郷>束

続いてIS作成などの工学関係

束>茅場>須郷

おまけで下種度合い

須郷>>>(超えられない壁)>>>束&茅場

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