SAO帰還者のIS   作:剣の舞姫

16 / 132
たいっへんお待たせしました~!!
スランプを乗り越え、年末年始の仕事の忙しさを乗り越え、漸く更新です!


第十四話 「激突する中国と日本の戦士」

SAO帰還者のIS

 

第十四話

「激突する中国と日本の戦士」

 

 クラス対抗リーグ戦初日、第一試合は一夏が代表を務める1組と、鈴音が代表を務める2組の試合となった。

 既にアリーナに出て白式を纏った一夏がトワイライトフィニッシャーを、中国第三世代型IS“甲龍(シェエンロン)”を纏った鈴音が青竜刀型武装、双天牙月を構えて向かい合っている。

 

「いくわよ一夏、あんたが寝てる間に身につけたアタシの力、見せてあげる」

「ああ、俺も寝ている2年間で手に入れた実力ってやつを、見せてやるぜ」

 

 試合開始の合図と共に鈴音が動いた。

 双天牙月を振り上げ、一気に一夏へと突っ込んできて渾身の力を持ってして肉厚で巨大な刃を振り下ろす。

 しかし、大振りの攻撃など一夏にとってみれば見慣れたもの、アインクラッドのボスモンスターよりも遅い攻撃など当たる道理も無く、紙一重で避けて見せた一夏は逆にトワイライトフィニッシャーで双天牙月を思いっきり弾き返した。

 

「なっ!?」

 

 細身の片手用直剣であるトワイライトフィニッシャーで重量もそこそこある双天牙月を弾いた事に驚いたのか、鈴音の動きが一瞬だが止まる。

 勿論、ただ弾いても逆にトワイライトフィニッシャーが負けてしまうが、一夏は双天牙月の重さを利用し、振り下ろした事で発生する刃の遠心力に上乗せする形でトワイライトフィニッシャーの刀身を当てて、鈴音を前のめりにしたのだ。

 当然だが、前のめりになりそうになって慌てて体制を整えようと動きを止めた鈴音の隙を突いて一夏はトワイライトフィニッシャーの切っ先を向けると、腰の捻りを加えた渾身の刺突にて鈴音を思いっきり吹き飛ばした。

 

「きゃああああ!?」

「まだまだぁ!」

 

 パワー系ではなくスピード系ISの長所は攻撃から次への動作の動きがスムーズで、迅速な行動が出来る点にある。

 白式もまた、スピード系のISであるため、攻撃直後からの移動という動作の流れをスムーズに行い、吹き飛ばされた甲龍(シェンロン)を追って行った。

 

「せぁあああああ!」

 

 即座に接近され、大振りでしか扱えない大型武器である双天牙月を渾身の力で振り上げるしか出来ない鈴音は、振り上げた双天牙月を容易に避けられ、更なる一撃を受けて地面に叩き付けれた。

 更に追って来た一夏を見上げ、鈴音はもう少し隠しておこうと思っていた切り札を、切らざるを得ないと判断する。

 

「くらいなさい! これが中国の第三世代兵器の味よ!!」

「っ! ぐぅっ!?」

 

 鈴音に接近しようとした一夏が、見えない何かの直撃を受けて弾き飛ばされた。

 見ればシールドエネルギーも減っており、明らかに何か攻撃を受けたのは間違い無いのだが、生憎一夏の肉眼でも、ハイパーセンサーでも一夏に攻撃をしたモノの正体を捉えることは出来なかった。

 

「今のは…弾丸か?」

「そうよ、中国が開発した第三世代兵器、龍咆はね、空間を圧縮・固定して見えない砲身と弾丸を作るの」

「見えない弾丸か…」

 

 衝撃砲、一般的にはそう言われる兵器だ。空間という不可視のものを圧縮・固定し、弾丸として撃ち出すので、基本的に肉眼で視認する事も、ハイパーセンサーで捉えることも出来ない。

 更に、甲龍(シェンロン)非固定浮遊部位(アンロックユニット)から放たれるソレは、360度全ての方向へ向けて発射可能なので、事実上の死角は存在していない事になる。

 

「真下や真上なんて論外よ、衝撃砲はアタシの両腕にも装備されてるんだから」

 

 左右の非固定浮遊部位(アンロックユニット)と両腕の合計4門存在する衝撃砲は360度周囲だけでなく上下すらも射程に捉えている。

 つまり、見えない弾丸を何とかしない限り、これ以降一夏が鈴音に接近して攻撃する手段は無いという事になったのだ。

 

「なるほどな……面白い」

 

 だけど、そんな状況下であっても、一夏の表情に焦りは無かった。寧ろ喜んですらいる。

 相手が強敵ならば尚の事。SAO時代ならば焦りもしただろうが、命賭けのSAOが終わって、ALOという命懸けではない戦いをするようになった弊害か、若干だが一夏は命懸けにならないなら強敵相手に燃えるという驕りが出てしまうようになった。

 

「いいぜ鈴、ならば突破してやるさ……!」

 

 再度、宙に浮き上がりながら衝撃砲を放ってくる鈴音に対し、一夏は数あるソードスキルの中からこの状況に対し最適なスキルを選択し、モーションを起こした。

 一夏のモーションによって選択されたスキルを脳波からキャッチした白式が自身のシールドエネルギーをトワイライトフィニッシャーの刀身へと伝達させ、その身をライトエフェクトによって輝きかせる。

 黄色の輝きを放つトワイライトフィニッシャーを上段に構え、瞬時加速(イグニッションブースト)も併用して突撃する。片手剣ソードスキル、ソニックリープだ。

 同じ突進、突撃系のレイジ・スパイクやヴォーパル・ストライクより射程こそ短いものの、上空の敵に対しても有効なスキルであり、射程の短さは瞬時加速(イグニッションブースト)によってある程度解決出来る問題なので、現状最も最適だと、このスキルを選択した。

 

「おおおおおおぁああああああああ!!!」

 

 迫り来る衝撃砲を半ば直感で避けて、時には掠り、足や腕、腹などにも直撃を受けながらも真っ直ぐ直進しながら一夏はトワイライトフィニッシャーの刃を鈴音の胸目掛けて振り下ろそうとする。

 迫り来る刃を防御しようとした鈴音だったが、直撃する前に、一夏の口元がニヤリと歪み、そのまま刃の向かう先が胸から上へ……左の非固定浮遊部位(アンロックユニット)にある衝撃砲の発射口を斬り裂いた。

 

「なっ!?」

「まだだ!」

 

 トワイライトフィニッシャーがによって斬り裂かれ爆発を起こした左の衝撃砲は使い物にならなくなっただろう。

 更に畳み掛けるように一夏の左手に展開した白式に搭載されているもう一本の剣……雪片弐型を甲龍(シェンロン)の右非固定浮遊部位(アンロックユニット)に突き刺した。

 

「これで、小細工無しのガチバトルだ」

 

 再度、トワイライトフィニッシャーを構え、回収した雪片を量子化して格納した一夏は改めて鈴音と向き直る。

 鈴音も威力が非固定浮遊部位(アンロックユニット)に搭載されていた物よりも劣る両腕の衝撃砲を使うつもりは無いのか、双天牙月を構えて一夏の誘いに乗った。

 彼女自身も、こういったガチバトルというのは好みらしい。

 

「単純明快ね。好きよ、そういうの」

「だよな、お前は昔っからそうだ」

 

 お互いにニヤリと笑いながら、次の瞬間には再び刃を交えた。

 トワイライトフィニッシャーと双天牙月の刀身が火花を散らし、白式と甲龍がハイスピードで動きながら付かず離れず一定の距離を保ち、時には急接近して再度刃を交わす。

 銃器や特殊兵装を一切用いない原始的な戦闘方法ではあるが、見応えのある戦いに観客席のボルテージも最高潮へと達して、正にこれから熱くなるという時だった。

 

「「っ!?」」

 

 再び接近しようとした二人の間に一筋のレーザーが振り、何かがシールドをぶち破ってアリーナに落下してきた。

 落下物はアリーナの地面に激突して大きく土煙を昇らせ、その姿を隠してしまうが、白式と甲龍のハイパーセンサーは未確認のIS反応を捕らえている。

 

「侵入者か?」

 

 既に非常警報がアリーナに響き渡り、生徒達や来客の避難が始まっている。

 ただ二人、アリーナに居る一夏と鈴音はお互いの武器を構えて未だ晴れない土煙を睨み付けて、何が来ても対処出来るようにしていた。

 

「煙が晴れるわよ!」

「さて、鬼が出るか蛇が出るか……」

 

 土煙が晴れて、姿を現したのはやはりISだった。

 しかし、そのISは一夏や鈴音の知る物とは大きく違っている。全身装甲(フルスキン)タイプという一般的には見ないタイプのISで、大きな腕が特徴的な機械兵士という言葉が似合いそうな姿だ。

 

「何者よアンタ! どこの所属!?」

 

 所属不明ISからの応答は無い。代わりに腕を上げて拳を一夏達に向けたかと思うと、そこからレーザーを放ってきた。

 間一髪、一夏が鈴音の前に飛び出てトワイライトフィニッシャーを一閃。和人がセシリアとの戦いの際に見せた光線破壊(レーザーブラスト)を見事に再現してみせる。

 

「い、一夏!? あ、アンタ今!?」

「いや~、やれば出来るもんだなぁ」

 

 勿論、普通は無理だ。恐らく光線破壊(レーザーブラスト)などというデタラメを可能にするのは世界広しと言えど一夏と和人、千冬くらいしか出来まい。

 

『織斑君! 凰さん! 今すぐ避難してください!』

 

 真耶からの通信が入ったが、正直避難は難しそうだ。

 既に所属不明機は動き出し、レーザーを連射してきていて、一夏も鈴音もそれを避けるのに精一杯。とてもではないが避難している暇など無いだろうし、未だ避難が終わって居ない観客席を見れば、自分達で避難誘導が終わるまでの時間を稼がなければ危険だという事を理解している。

 

「山田先生! 避難誘導が終わるまで俺達は逃げられませんよ。それより、そっちにユリコやキリトさん、アスナさんが居ると思うんで、今すぐアリーナに来てもらうよう言ってください!」

『なっ!? 駄目ですよ!? もう直ぐ先生方が到着しますから、生徒のお二人に危険な事をさせる訳には……』

「そのもう直ぐなんて待ってられません! 兎に角早く!」

 

 それだけ言って通信を遮断すると、一夏はトワイライトフィニッシャーを構えて刀身をライトエフェクトによって輝かせる。

 

「ちょっと一夏、何で助っ人なんて呼んだのよ?」

「あ~……正直、このまま俺と鈴だけで戦うのは厳しいから、俺とコンビ組みなれてるあの3人が来てくれれば大分楽になるんだよ」

 

 何せ、アインクラッドでは何度もPTを組み、コンビを入れ替えながらボス戦に挑んできたのだ。

 一夏と百合子、和人と明日奈、この鉄板コンビは勿論だが、一夏と和人、明日奈と百合子というペアや、一夏と明日奈、和人と百合子というペアで共に戦った事だって何度となくある。

 

「兎に角、3人が来るまで時間を稼ぐぞ鈴!」

「あ~もう! やってやろうじゃない!!」

 

 高速機動をしながらレーザーを放ってくる所属不明機へ向かって、一夏と鈴音は飛び出して行く。

 双天牙月による重い斬撃と、トワイライトフィニッシャーから放たれるソードスキルが、所属不明機の拳とぶつかり合い、火花を散らした。

 

「頼むぜ白式!」

 

 一夏の言葉に応えるかの様に、白式から送られたエネルギーがトワイライトフィニッシャーの刀身を更に輝かせた。




次回はゴーレム戦。
リアルで遂にアインクラッド最強の2大コンビが復活!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。