SAO帰還者のIS   作:剣の舞姫

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大変、たいっへんお待たせしました!!
トラブルなどもあり、中々執筆が進まなかったのですが、ようやく書き終わりました。
次回は、いつになるかな……ちょっと、仕事で宮古島まで2週間ほど出張しなければならないので、遅れるのは確定です。


第百七話 「真のコスプレとは」

SAO帰還者のIS

 

第百七話

「真のコスプレとは」

 

 午前最後の競技は軍事障害物競走だ。内容としては普通の障害物競走に軍事らしくライフルの組み立て、組み立てたら的を狙って射撃が加えられたものであり、足の速さだけではなく銃の組み立て技術や射撃技術までもを必要とする中々に難しい競技なのだ。

 

「お~い! おりむ~!!」

「んぉ? おお、のほほんさんだ」

「わたし~、この競技なんだよ~」

「そっか、頑張れ」

「えへへ~、頑張るよー」

 

 軍事障害物競走に参加する一組の生徒は布仏本音、夜竹さゆか、国津玲美の三人だ。

 因みに結果だけを言うなら夜竹は3位、玲美は2位でゴール、そして本音はライフルの組み立てこそ瞬時に終わらせて1位になったかと思われていたものの、彼女の狙撃能力の皆無さが原因で全く的に中らず、結果的に本音は最下位ゴールとなってしまった。

 

 

「これで四組に追い付かれて、二組には僅差で抜かれたか……不味いな、この後の仮装競争で何とか挽回せねば」

 

 昼食を終えて午後の競技が始まる前、一組の席で得点板を見つめていた一夏はそう呟くと、膝を叩いて立ち上がる。次の競技は今言った仮装競争……つまり、一夏が出場する競技だ。

 

「織斑一夏、出陣する!」

 

 肩に掛けてあったジャージの上着を投げ捨てていざ、一夏は戦場(グラウンド)へと歩みを進めた。

 それは正に命を賭して戦う戦士が己の戦場へと向かうが如く。

 

「こらこらーナツ君、熱血禁止だよー」

 

 もっとも、直ぐに後ろから明日奈にハリセンで打っ叩かれてしまって鎮火してしまったのだが。

 

 

 グラウンドのスタートラインに立ったのは一夏を始めとする一年生の専用機持ち全員だった。まさか、鈴音と簪までもがこの仮装競争に出場するとは思わなかったが、だが三組が出場していない上に二組からは鈴音だけ、四組からは簪だけならば、勝率は上がる。何故なら一組は専用機持ち全員+ラウラが出場しているのだから。

 

『あ、因みに一夏君ってば勘違いしているみたいだから言うと、仮装競争に得点は入らないわよん』

「っ!? な、なんですと!?」

『当たり前じゃないの、数を数えなさいな』

 

 確かに、一組の人数が圧倒的に多いのに得点を与えてしまっては、余りにも一組に有利過ぎる。

 

『え~この仮装競争はあくまでレクリエーションみたいなものとお考えください。では、全員揃った所で競技説明に入ります』

 

 薫子が一夏と楯無のやり取りに呆れつつ手元の紙に書かれているルール説明を読み始めた。

 内容は簡単、全長500メートルの徒競走になっており、50メートル地点に設置してある仮装ボックスの中に入る。中にはそれぞれが用意したコスプレ衣装が入っているので、そこで着替えて着替え終えた者からボックスを出て残りを走り切るというものだ。

 因みに本来はくじ引きをして他人が選んだコスプレを着るという内容になっていたのだが、それを知った一夏からの猛反発を受けて楯無が泣く泣くルール変更をしたらしい。

 

「それでは位置に着きましたね~」

 

 スタート台には真耶が立っており、ピストルを天高く向けている。スタート位置には既に一夏達が立ち並んでおり、スタートの構えに入っていた。

 

「よ~い……っ!」

 

 パンッ! という小気味良い音と共に各者が一斉に走り出す。

 先ず最初に前に出たのはやはりと言うか、瞬発力に最も優れた明日奈だ。それを追う形で鈴音と箒が続き、ラウラと一夏、和人、セシリア、シャルロット、簪、百合子の順番で続く。

 

「っ!」

 

 そして、明日奈が自分の名前が書かれたボックスの入り口に飛び込んだ直ぐ後に、後続の全員が同じようにそれぞれの名前のボックスに入った。

 中からは服を脱ぐ音やゴソゴソとしている音が聞こえるので、全員着替えを行っているのだろう。

 

『さぁーて! 全員ボックスに入りました!! さてたっちゃん、皆はどんなコスプレをするのでしょうねぇ?』

『さぁ? でもそんなに変なコスプレじゃないと……思いたいわ』

 

 そう言えば一人変なテンションなの(一夏)が居た事を思い出したのか、楯無は特に一夏がどんなコスプレを披露するのか気が気ではなかった。

 そんな中、真っ先に着替え終えてカーテンから飛び出してきた者が一名、鈴音だ。

 その小柄な身体を包む衣装は黄土色のブレザーと白いブラウス、茶色のチェックのスカートに胸元の赤いリボン姿、そしていつものツインテールをやや後ろにリボンではなくゴムで結っている。

 

「やっほ~! 津田コトミで~す! 好きな科目は保健体育の保健の方です!」

『や、やりやがったぁ~!!!? こ、これガチのコスプレ!? え、マジ!?』

「おい、待たんかコトミ!」

『って、また一人ガチ!?』

 

 続いて出てきたのは最初の一人と同じ制服姿に身を包む箒だった。ポニーテールを下ろしてストレートヘアーにした姿で、普段と変わらぬ凛々しさを感じさせる。

 

「む、桜才学園生徒会長、天草シノだ。よろしく頼む」

『何なのこの二人!? マジでなんなの!?』

『あらシノっち、元気そうね』

『たっちゃん!? って、あんた誰!?』

『あら、私? 英稜高校生徒会長の魚見です』

 

 何故か薫子の隣に座っている楯無が箒と鈴音のコスプレを見ていつの間にか自身までコスプレをしていた。

 そんな愉快な事になっている実況席はさておき、次々と選手がカーテンの向こうから出てくる。

 

「じゃじゃじゃ~ん!、乃木さん家の園子で~す」

「そのっち、挨拶は後よ。早く走らないと」

「あ~、待ってよ~わっしー」

 

 紫色の戦闘服らしき衣装に身を包むシャルロットと、同じく白と蒼の戦闘服らしき衣装を見に纏う簪、それぞれ手には槍と狙撃銃を持っていた。

 

「ナンバーズⅤ、チンク・ナカジマ出るぞ!」

 

 出てきたラウラはというと、青いボディースーツの上に外套を羽織り、いつもの眼帯を逆の目に着けて出てきた。

 

「行くぞ、東洋方面第一巡航艦隊旗艦、大戦艦コンゴウ出撃」

 

 ラウラの後から出てくるのはいつもの金髪をピッグテールにして、漆黒のドレスを纏ったセシリアだ。

 その冷たい眼光に睨まれれば、一部の人間にはご褒美待った無しである。

 

「否定するわ~、こんな格好で出てくる自身を、私は否定するわ」

 

 更に、黒い着物姿の明日奈が花の付いた扇子片手に登場、その表情は普段の彼女からは信じられない程に皮肉気だ。

 

「ほらさっさと走れましろ!」

「空太、強引だわ」

「強引でも何でも頼むから走ってくれ!! 走ってくれたら今度ハシモトベーカリーの究極メロンパン食わせてやるから!」

「遅いわ空太」

「って、走れるなら最初から走れぇええ!!!」

 

 謎の掛け合いと共に登場したのは青いのブレザーと赤いネクタイ姿の和人と百合子だ。

 普段のクールな一面はどこに行ったのやら、ツッコミにキレのある和人と、どうにもやる気の見られない無表情な百合子という、珍しい姿がそこにあった。

 

『え~、本気でガチなコスプレを見せる方々ばかりですが……おっとぉ? 織斑君はまだ出てこないのか?』

『いいえ、来たようよ』

 

 楯無がそう言うや否や、閉じたままだったカーテンが開き、中から一人の人物が姿を現した。

 

「騒がしいぞ、貴様ら!」

『って、織斑先生!?!?!?』

 

 何と、出てきたのは一夏ではなく、黒いスーツ姿の千冬だった。一夏が入ったはずのボックスから何故千冬が出てくるのか、と思った生徒達だが、教員席を見て驚愕する。

 何故ならそこには、白いジャージ姿の千冬が目を見開いて、珍しく驚愕した表情で椅子に座っていたのだから。

 

『え、あそこに織斑先生が座ってる? え、でもボックスから出てきたのも織斑先生で……えええええ!?』

 

 織斑一夏、彼のお得意とする十八番のコスプレは……実の姉のコスプレだった。しかも、本人瓜二つ、声まで同じにするなど、謎のこだわりを見せていた。




さて、コスプレ内容ですが。
箒→天草シノ
セシリア→コンゴウ
鈴音→津田コトミ
シャルロット→乃木園子
ラウラ→チンク・ナカジマ
簪→東郷美森
明日奈→否定姫
百合子→椎名ましろ
和人→神田空太
一夏→織斑千冬

因みに、一夏が千冬の声を出しているのは、メラニー法をこの為だけに習得して千冬の声真似を練習したからという謎のこだわり設定。

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