SAO帰還者のIS   作:剣の舞姫

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大変、大変お待たせしました。
サルベージが全く進まず、結局1から書き直しました。


第百六話 「青春のぶつかり合い」

SAO帰還者のIS

 

第百六話

「青春のぶつかり合い」

 

 ついに始まったIS学園体育祭。

 それは青春の汗と汗のぶつかり合い、体力の限界まで魂を燃やし、熱き血潮滾る白熱のバトル。

 

『さあ! そんな訳で始まりました体育祭! 実況はこの私、新聞部部長の黛 薫子と!』

『はぁい♪ いつもニコニコ貴方の隣に這い寄るお姉さん、解説の生徒会長、更識 楯無よん♪』

 

 現在、IS学園は体育祭が開催されていた。

 只今、行われている競技は100m走、1年1組からは明日奈が出場する競技であり、2組からはアメリカ代表候補生のティナ・ハミルトンも出ている。

 

「あのレクト社の社長令嬢とこうして対決出来るなんて、光栄ね」

「こっちも、アメリカのHMTエレクトロニクスのCEO令嬢と競えるなんて光栄よ」

 

 スタート位置に隣り合わせで立つ明日奈とティナは大企業の元CEO令嬢と現CEO令嬢、お嬢様対決となった100m走は3組と4組が空気の状態だ。

 

「位置について」

 

 スターターの教師が右手に持ったスタートピストルを天空へ向けたのと同時に、スタートラインに立つ全員がクラウチングスタートの体勢に入った。

 因みに、明日奈は元々運動神経が良い方ではなかった。幼い頃から母の指導でエリートコースの道を歩んできた彼女は勉強が第一で、運動など学校の体育の時くらいしか縁が無かったのだ。

 しかし、SAOがクリアされ、ALOの檻から開放されてからリハビリや剣技の練習などで身体を動かすようになった今、明日奈の身体能力は昔とは比べ物にならない程に向上している。

 そして、その最たるものが……。

 

「よーい」

「っ!」

 

 パン! という音と共に、明日奈は誰よりも早く駆け出した。そう、SAOで戦い続け、現実に帰還してから運動を続けた明日奈が最も鍛え上げたのは瞬発力だ。

 閃光のアスナと呼ばれていた当時の彼女は、SAOで最も瞬発力のある存在だった。その瞬発力は黒の剣士や白の剣士すら上回り、SAO最強の聖騎士すらも一目置いていた程。

 

「は、はやっ!?」

 

 結果、明日奈は序盤で一気に3名を引き離して1位でのゴール、2位にはティナが着いた。

 

「ふぅ……リハビリの効果あったねー」

「いや、ホントにリハビリ明けの人間の瞬発力なのかしら」

「筋トレもしてるからねぇ」

 

 でなければ明日奈の歳不相応に整った抜群のスタイルを維持出来る訳が無い。彼女の持つ並のモデルや女優すらも霞む程のスタイル維持は、やはり大変なのだ。

 当然、その筋トレの影響は運動神経にも出ていて、昔とは比べ物にならない程の運動神経を明日奈は手に入れていた。

 

『いやぁ、結城さんのスピード、凄かったですねぇ』

『それはそうよ、明日奈さんは瞬発力に関しては学年1位と言っても良いし、足も速いというか……そうね、身体の動かし方が上手なのよ』

『身体の動かし方?』

『そうね、薫子ちゃんは走る時にどんな風に身体を動かしたら速く走れるかって考えて走った事はある?』

『それは、まぁ一度くらいは。腕の振り方とか足の幅とか?』

『明日奈さんの場合、それを考えずに自然と上手に動かせるのよ、それも日常的に』

 

 楯無の言う通り、明日奈は幼い頃から良家の令嬢という立場から作法というものを叩き込まれてきた。それこそ綺麗な作法を意図しなくとも出来るように。

 勿論、それならお嬢様と呼ばれるような者なら誰でも出来るのではないかと思われるが、明日奈の場合は桁が違う。

 彼女の作法を厳しすぎる程に鍛え上げてきたのは母であり、明日奈の母は元々は田舎出身だったという事もあってか結城家という良家に嫁いで苦労してきた分、娘の明日奈には礼儀作法について鬼の様に厳しかった。

 一切の妥協を許さず、国内最高レベルの礼儀作法を明日奈に身に付けさせるべく教育してきた成果は、こうして明日奈が身体の動かし方を場面に合わせて自然と上手に行える程になったのだ。

 

『ほほう……さて、そろそろ100m走も終わりのようですね。続いての競技は!』

『200m走と400m走よん♪』

 

 200m走は百合子と箒が出場する競技、400m走は和人、シャルロットが出場する競技だ。

 

「百合子! 箒! 今日は負けないわよ」

「鈴……200m走だったんだ」

「ホントは100mの予定だったんだけどね、事情があって200mの方に移ったのよ」

「なるほど、ならば相手にとって不足は無いな百合子、どうやら直接対決はお前のようだ」

「うん、負けない」

 

 鈴音の隣には百合子が、その後ろには箒が次の走者として立っている。しかし、と鈴音は箒と百合子を交互に見つめた。

 

「それにしても、あんた達って随分と仲良くなったわね」

「む、まぁ確かに前は一夏の件で私が一方的に嫌っていたが……」

「今は仲良いよね」

「うむ、この前なんか学園の喫茶店で一緒にケーキを食べにも行ったな」

「タッグを組んだのが良い方向に向かったのかしら?」

 

 最近の1年生女子ALOプレイヤー組みは仲の良いペアが決まってきている。鈴音とセシリア、シャルロットとラウラといった感じに、箒と百合子、明日奈と簪といった具合だ。

 

「そろそろ私と鈴の番」

「そのようね……負けないわよ」

「ん」

 

 200m走、スタートラインにて百合子と鈴音を含めた1組から4組までの生徒がクラウチングスタートの体勢に入る。

 方や専用機を持つ代表候補生、方や同じ専用機持ちであってもSAO事件の被害者という事で2年間眠りっぱなしだった元寝たきりの企業代表のテストパイロット、お互いに訓練やリハビリで身体を日常的に動かす者同士、一般生徒の3組や4組など眼中に無いようだ。

 

「よーい!」

 

 ピストルが鳴った瞬間、鈴音と百合子が真っ先に飛び出した。

 序盤は百合子が制したものの、50m付近の段階で鈴音が抜いてトップを走り、150mまではそのままだったが、そこから百合子が更に追い上げて鈴音と並ぶ。

 

「っ!」

「負ける、かぁ!!」

 

 並んだ状態では胸囲の差で百合子が勝ってしまう。己の貧乳を理解している鈴音は最後の力を振り絞って僅かに百合子の前に出た。

 

「いよっしゃあああ!!!!」

「負け、た……はぁ、はぁ」

 

 鈴音のラストスパートによって、結果は鈴音が1位、百合子が2位に終わった。

 この後、箒の番になったが、箒自身は運動神経で言えば一般生徒よりも高い為か問題なく1位でゴール、これで点数的には1組が総合1位で2組と4組が僅差で追い駆けている状態だ。

 

「次は俺とシャルだな、俺達二人で1位を独占すれば総合で1組が圧倒できる」

「うん、頑張ろう!」

 

 遂に全校生徒が待ち望んだ男子生徒の出番が来た。

 中性的な顔とクールな性格、そして優しさを感じさせる雰囲気が人気を博している男子、桐ヶ谷和人はしなやかな四肢の筋肉をTシャツ短パンで晒しながらゆっくりストレッチをしている。

 そんな姿に女子生徒達は黄色い歓声を上げていて、1組の席では一人の生徒が専用機の撮影機能をフル稼働させながら和人の姿を撮影していた。

 

「きゃーー!! キリト君カッコイイよー! キリト君ステキだよー! キリト君愛してるよー!!」

「ちょ、明日奈さん落ち着いてくださいまし!」

「うぅ、キリト君の二の腕、太もも……hshs」

「だ、誰かー! 明日奈さんが変態さんになってしまいましたわー!? ゆ、ユイさんはいらっしゃいませんの!?」

『パパー! パパカッコイイですー! パパ大好きですー!!』

「親が親なら子も子でしたわ!?」

 

 ガッデム! と言わんばかりにセシリアが絶叫しながらも何とか明日奈とユイを落ち着かせようとしているものの、効果は無さそうだった。

 そして、結果としてシャルロットと和人がそれぞれ1位になったとき、明日奈とユイのテンションが天元突破してしまい、発見されたセシリアがグロッキー状態になっていたのは言うまでもない。

 

「セシリア、大丈夫か……?」

「バカップル……こわいですわ」




次回は軍事障害物競走に出場するセシリアとラウラ、本音のお話と、ついに始まるコスプレ競争……中の人ネタが溢れます。一夏以外は。

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