オーディンの爺さんやティアマットが助けてくれたおかげで俺達は消耗することなく神殿にたどり着くことが出来た。
「中もそれっぽくなってんのな。」
「そうね〜。本来ならここでゲームしてたかもしれないわね。」
話している内に俺達の前に大きな扉が現れた。
「みんな、ここからは気を抜かないで行くわよ。」
リアスの言葉に全員が頷き扉を開ける。
部屋に入った途端、映像と共にディオドラの声が流れる。
『やあ、待っていたよ。各部屋に僕の下僕達が配置されている。僕はその先で待っているから頑張って倒してここ迄おいで。因みに
言い終ると映像も消える。
「外道がっ!」
吐き捨てるように呟く。
「イッセー、冷静に。どんな罠があるか分からないのだから。」
イリナに諭される。
「ああ、イリナすまん。」
どうもアーシアを狙われているせいで頭に血が上りやすくなってるみたいだな。
先に進み奥の扉を開ける。
開けた先には───
「待ってましたぜ、旦那方。」
「フリード!!」
部屋の中央にはフリードが立っていた。
「どういう事だよ!」
俺はフリードに詰め寄る。
「ああ、落ち着いてください。敵になった訳じゃねぇです。」
「焦らすなよ〜。」
俺は一息つく。
「じゃあ、どういう事なの?」
朱乃の質問にフリードが答える。
「聞いていると思いますが、潜入していた密偵ってのがあっしと他数名いまして、ディオドラに近づいて工作しながら機を伺っていたんです。」
「なんの?」
リアスが聞く。
「ディオドラに騙されて眷属にされた元聖女やシスター達を逃がす機会を、です。」
『!!』
全員が今のフリードの言葉に反応する。
「皆さんも報告聞いてると思いますが、奴は本物の外道でして、気に入った聖女やシスターを罠に嵌め籠絡して自分の眷属にしていたんでさ。」
その報告は皆も聞いている。アーシアも俺達の介入が無ければ危なかったということも。
「それで、彼女達に事情を話し説得というのをディオドラに気づかれない様に裏であっしが工作していたってことです。」
ということは
「今フリードがここにいるってことは」
「当然、ディオドラがここから出て旦那達に遊ばれている隙に逃しました。それから彼女達の駒はアジュカ様が細工をして機能を停止する予定です。保護する先は一旦グリゴリに送ってそれぞれ引き取り手を探します。グレモリー家も候補で既に交渉してて、好意的に進んでるみたいです。」
「聞かされて無いんだけど・・・。」
リアスがジト目でフリードを睨む。
「まだ確定して無いから話せなかったんですよ。」
「それでフリードはどうするんだ?」
「あっしですか?あっしは説明が終わったんでこのリング使ってトンズラさせてもらいますよ。旦那方のバトルに巻き込まれるのは命がいくつあっても足りませんからね。」
「充分強いと思うけどな〜。」
「あっしの強さは一般から見ればであって、上級クラスを相手なんて出来ませんよ。」
勝てなくても負けないと思うけどな〜。駆け引きめっちゃ上手いのに。
「まあ、そんな訳であっしは退散させていただきやす。因みに途中に有るトラップも解除しておいたんで真っ直ぐディオドラのとこに行けますぜ。では、バイチャ!」
言い終わると同時に腕に付けていたリングが輝きフリードは転送されて行った。
「やるなぁ、フリード。とはいえ結構ギリギリな作戦だった感じもするな。」
その時インカムから通信が入った。
『大丈夫か?おまえら。』
アザゼルさんだった。
「問題無いです。けど、フリードに任せた作戦危険過ぎじゃないです?」
『ああ、調査の途中で急遽組み込んだ作戦だったからな、一応間に合いそうになかったら逃げろとは言っていたんだが完遂するとはな。』
アザゼルさんも驚いてるみたいだ。
「そういえば、この結界でよく転移出来ましたね。」
『ああ、あいつらには潜入とか危険な任務を任すことが多いからな、アイテムや装備はできるだけ良いものを渡してある。あの腕輪も素材から組み込んである術式まで一級品の物だ、仮に次元の狭間からでも帰還できるぜ。』
なるほど、こういう上司だから信頼も厚いし全力で仕事で応えているのだろう。
「良い上司やってますね。普段は
『おまえなぁ・・・。まあいい、こっちも順調に作戦は進行している。お前等はお前等のする事をしろ。ただし、無理はするなよ。』
「わかりました。」
俺の返事と共に通信は切れた。
「それじゃあ、皆行くわよ!」
『はい!部長。』
リアスの言葉と同時に全員駆け出した。
一番奥の部屋でディオドラは待っていた。
「よく逃げずに待ってたな。」
明らかな怒りの表情を隠さずに
「よくもやってくれたな!私の眷属を誑かし連れ去るとは!」
「誑かしたのはお前だろうが!!おまけにアーシアにまで手を出そうとしたお前は俺が直接叩き潰してやるよ。」
「私を叩き潰す?たかだか下級悪魔で薄汚いドラゴンが上級悪魔である私に勝てる訳が無いだろう?」
俺は力を開放しつつ前に進む。
「それなら、お前の言うドラゴンの力って奴を見せてやるぜ。来なディオドラ、先手は譲ってやるよ。」
「ほざいたな!下級悪魔の分際でぇ!」
叫びながら無数の魔力弾を放ってくる。
「はあっ!!」
俺は力を開放し、その余波で全ての魔力弾を防ぐ。
「所詮他人の力で強化された強さなんてそんなもんか!ディオドラ。」
吐き捨てる様に言う。
「なめるなぁぁぁぁぁぁ!」
先程よりも強化な魔力弾を放ってくる。
俺は避けたり弾いたりしながら全てを捌く。
「やっと本気になったな。じゃあ、こっちの本気も見せてやるぜ『
『Welsh Dragon Balance Breaker!!!!』
ゴウッ
「そんなコケ脅し!」
「コケ脅しかどうか見せてやるぜ!」
言葉と同時にディオドラに高速で突っ込む。
ディオドラも先程よりも多く強化な魔力弾を放ってくるが俺は勢いを緩めず全て避けたり弾いたりして躱す。
「くらええぇぇぇぇぇ!!」
ドゴッ!
「ぐはっ!」
俺の攻撃に対応出来ずまともに拳がディオドラの腹にめり込む。
少し距離を置き
「そんなもんか。その程度で俺に勝とうなんて、一生無理だ。最後通告だ、投降しろ。」
腹を抑えながらディオドラが俺を睨み言う
「最後通告だ?ふざけるな!魔王を排出した貴族の私が投降なんてするか!貴様に負ける筈無いだろう!」
そう言って魔力の障壁を張り、無数の槍状になつた魔力の攻撃を仕掛けてくる。
攻撃を弾いて防ごうとしたがいくつかが拳を掻い潜り鎧の隙間に突き刺さる。
「はははははは!どうだ!貴様になんて負ける筈が無いんだ!」
「ホントにそう思うか?」
俺はわざと静かにディオドラに言う。
「この程度で俺にダメージ与えようなんて甘いぜ?」
実際に隙間に入り込んでいる槍状の魔力も通りきらないで止まっている。それに────
ガンッ!
俺の放った拳が障壁に止められる。
「この程度の障壁で俺を阻めると思ったら大間違いだぜ?ドライグ!!」
『おう!いくぞ相棒ドラゴンの力、見せつけてやろうじゃないか!』
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』
ピシッ
力が増幅され障壁にヒビが入る。
「ま、まさか!」
「おおおおおおおおおおお!」
バリィン!!
腕にありったけの力を込めて障壁を破壊した。
「これで限界か?それなら今度はこっちからいくぜ。反撃はさせねぇ!一方的に叩き潰す!!」
瞬時にディオドラの懐に入り込み
「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』
叫びながらディオドラに増幅された連打を叩き込む!
「らああああああああああっ!!」
ドゴオオォォォ!!
最後に殴り吹き飛ばす。
飛ばされたディオドラは後ろにあった柱数本を突き抜け部屋の壁にぶつかり崩れ落ちる。
「最後だ、ディオドラ。」
俺は止めを刺そうと右手を付き出す。
『相棒、奴は終わりだ。これ以上は───』
ガシッ
ドライグが言い終わる前にアーシアに右腕に抱き着かれた。
「お兄ちゃん!もう充分です。今のお兄ちゃんはなんだか怖いです!」
あ─────
俺は鎧のマスクを解除し、自分で頬を張る。パァンという音が響く。
そして軽く深呼吸して
「アーシア、ありがとう。アーシアが止めてくれなかったら怒りに駆られてディオドラを殺していた。」
そう言ってアーシアを軽く抱きしめる。
「あうあう・・・・・いつものお兄ちゃんです。」
一旦、アーシアを離しディオドラの元に向かう。
「ディオドラ、次は無い。冥界の裁きを大人しく受けろ!」
ガックリと項垂れるディオドラを残し戻ろうと振り返った瞬間アーシアが光に包まれた。
フリードが影で大活躍の回でした。
フリード好きなんでもっと出したいな~。
ちなみにフリードの強さは中級位の設定です。