夏休みの予定と・・・
ティアマットと使い魔の契約をしてから数日後の放課後、俺達はミーティングルームに集まって夏休みについてのスケジュールの確認をしていた。
「まずは冥界に移動したら新しく眷属になったメンバーはグレモリー家の人達に挨拶だな。それから若手悪魔同士で顔合わせがあるんだったな。その後は個人個人の修行になるな。」
大まかなスケジュールを朱璃さんが説明する。
「若手悪魔同士の顔合わせって何ですか?」
「お前らと同世代で実力が高い若手の悪魔同士で会合するのさ。毎年やっているらしいぞ?」
なるほど、そういうのがあるのか。俺達ってどれくらいなんだろう?
この疑問にアザゼルさんが答えてくれた。
「お前達は一番注目されていて下馬評でもトップだな。個々でも強い上にチームワークも悪くない、その上この間黒歌も眷属になったからな。しかも今迄の戦闘でまともに力を見せてるのがイッセー中心だからな。ゲームでは何が起こるか分からないとはいえ、そうそう負けることはないだろう。」
そこまで言われるとは。
「だが、他の若手悪魔達も強いからな、所詮下馬評だ、油断していると足下をすくわれかねんぞ?サイラオーグはかなりの手練だと聞くし戦術如何ではお前らでも負けは充分ありうると思っておけ。」
さすが、朱璃さんきっちり締めてくるな。
「今の口ぶりだとゲームやるってこと?」
イリナの言葉でアザゼルさんと朱璃さんがしまったっていう顔をしている。
「あ〜、向こうに着いてから言う予定だったんだがまぁ、今更か。」
「まだ予定段階だがな。若手悪魔同士でゲームを計画している。だが、お前等には制限が付くかもしれん。」
「制限?」
部長が聞く。
「お前達は強すぎるんだよ。イッセーを筆頭に上級から最上級悪魔クラスが揃っているんだ、年齢から考えて破格すぎるんだよ。今の所イッセー、イリナ、朱乃、黒歌の4人の中から2人ずつ参戦出来る予定だ。ゲーム毎に入れ替えは可能にはなってはいるがな。」
分からなくはないが、人数減るのか〜。
「それとギャスパーの停止能力も禁止だ、これは制御がまだ上手く出来ないことが起因している。」
更に制限とか!とはいえギャスパーの場合は仕方無いか。まだきっちり制御出来る訳じゃないしな。
「まあ、確定では無くて話し合っている所だ、実際の状況になってから考えても遅くはないだろう。」
「そうですね。でも、俺や黒歌はともかく朱乃やイリナもですか?」
朱乃やイリナは今迄の戦闘でそんなに目立って無いはずなんだけどな?
「ああ、それは俺が朱乃とイリナの実力を言ったからだ。イッセーと黒歌どっちかだけだと他の若手悪魔だと多分敵わないだろうと思ったからだ。それにだ、朱乃とイリナは下手すりゃ黒歌より強いからな、その辺のバランスを考慮してのことだ。」
そう言われると何も言えないよな〜。
「細かい調整はこれからだからどうなるかはまだはっきり言えないがな。」
でもここ迄話すって事はほぼ決まりじゃないか?
「話が脱線してしまったが、スケジュールはこんな感じになる。あと数日で夏休みだからしっかり用意しとくようにな。」
朱璃さんの言葉で解散になった。
その日の夜、なんとなく寝れなかった俺は屋上に1人で夕涼みをしていた。
「あら、イッセーもいたのね。」
何も考えないでボーっと夜空を眺めていたら部長もやってきた。
「部長も寝れないんですか?」
「ちょっと考え事をしていて疲れたから夜空を眺めに来たの。そういうイッセーは?」
「なんとなく寝れなかったんでちょっと気分転換に夜空でもボーっと眺めようかな?と。」
部長も俺の隣に並んで夜空を眺めながら俺に聞いてくる。
「前から気になっていたのだけど悪魔になって後悔とかしてない?今更かもしれないけれど。」
「ぷっ、ほんと今更ですね。そもそも眷属にしてくれって頼んだのは俺達ですよ?」
「そうなのだけれど、イッセーが眷属になってから色々あったじゃない?そういうのがあっても今でも後悔してないのかな?って考えちゃって。」
確かに色々あったけれども・・・
「後悔はしてませんよ。そもそも悪魔になってなくてもコカビエルの件と和平の件に関しては身内が絡んでましたからおそらく巻き込まれていた可能性大です。あ~おそらくドーナシークの件も間違いなく関わっていたでしょうし。そう考えると大して変わらなかったような気もしますね。」
俺の話しに部長は少し微笑んで
「ふふっ、そう言われるとそうね。朱乃のお父様はアザゼルだし、イリナのお父様は教会の関係者だったわね。」
「どの道アザゼルさんにこき使われていた未来しか想像できませんね。前からそうだったし。部長はどうなんです?」
「私は貴方達が眷属になってくれて毎日楽しいわよ?確かに色々大変な事もあったけれど、今では眷属も揃ってみんなも楽しそうに生活してくれているし、祐斗や小猫の過去の問題も全部ではないけれど解決してくれたわ。この辺はイッセーが眷属に入ってくれたから解決出来たと思っているわ。だから感謝こそすれ後悔なんてないわね。」
「そんな大層な事はしてないですよ。なんとなく思った通りに行動したらうまくいった感じだと思ってるんだけど。」
感謝とか照れるからやめて欲しい。割と考え無しで突っ走った記憶しかないし。
「ふふふっ、イッセーらしいわね。そんな貴方だから私は・・・。」
そう言って俺に近づいてくる部長。ちょ、それ以上近づくと・・・
「ちゅっ」
部長にキスされた!?どどどど、どういうこと!?
戸惑う俺を見て部長はおかしそうに笑って
「ふふふっ、私はイッセーが好きよ。朱乃とイリナから奪おうとか考えている訳でも今の関係を壊そうとか思ってるわけじゃないけれど・・・我慢できなくてキスしちゃった。」
かわいい・・・・じゃなくて、ええっ!俺の事を!薄々そうなんじゃないかと思った事はあったけれど・・・俺はどうしたらいいんだ?
「ごめんなさいね、イッセーが戸惑うのもわかるから返事は聞かないわ。ただ、あなたに私の気持ちを知っていてもらいたかったの。それじゃあ私は先に戻るわね。」
そう言って部長は部屋に戻っていった。返事は聞かないって言われてもなぁ~・・・。
更に悶々として眠れないじゃないか!
「で?イッセーはどうするの?」
「気になるわね。」
「あああああ朱乃!イリナ!いつの間に!てか聞いてたのか!?」
いつの間にか朱乃とイリナが来ていた。
「イッセーの部屋に行ったらいないから屋上に来たら部長との会話聞こえちゃって。」
気配感じなかったんですけど?
「で、どうするの?」
「どうするって言われてもな~・・・どうしよ?」
「私達に聞いてどうするのよ!」
確かに!?突然すぎて頭回ってない!
「私は前にも言ったけど、部長ならいいんじゃない?悪魔って一夫多妻なんだし。」
「このままだと部長だけじゃなくなりそうだしね。」
「いや、そういう問題なのか?って部長だけじゃないとか!」
「イッセーも多少はわかってるんでしょ?超鈍感なイッセーでも。」
「超鈍感とか・・・否定できないけども!まぁ、なんとなくそうなのかな~?位は。」
「分かってるなら考えたほうがいいわよ~?今みたいに慌てた対応とかかっこ悪いわよ?」
「そんなこと言われてもな。」
「でも、実際部長に告白されてるわけだしそうも言ってられなくなると思うわよ?」
「ん~・・・てか朱乃とイリナはいいのか?」
「良くないわよ?でもイッセーの周りにいる女の子とだったら上手くやれるかな?とか考えた時点で私の負けかな~?なんて考えちゃって。」
「惚れた弱みってやつかしら?それにそうなってもイッセーならみんな平等にしてくれるかな?なんて思ってね。」
朱乃もイリナも俺の事過大評価してね?
「俺そんなに器用な人間じゃないんだけど?」
「そうかしら?で、答え聞いてないんだけど・・・どうするの?」
ん~・・・正直部長のことは嫌いじゃない、ていうか好きだ!と言える位には自覚はある。他の子達に関しても好意は当然ある。でもなぁ・・・。
「イッセーが私達に義理立てしてくれるのは嬉しいわよ?でも、私達も部長やみんなのことは好きだから幸せになってくれるならそれでもいいかな?とも思っているわよ。」
「そうね。私も朱乃と同じかしら。私達は前の世界から一緒だし特別に思ってくれているのもわかるわ、でも今はこの世界で生きているんだし、そういうのもいいんじゃない?」
いいのか!?う~あ~・・・。
「なにも全員にイッセーから告白しろとか言ってないんだけど・・・。」
「そうね~、別に人数増やして欲しいわけでもないしね。ただ、気持ちをぶつけてきた女の子に対して返事しないのもね~。浮気を推奨してるわけじゃないのは分かってるわよね?」
「そんなことするかっ!そもそも朱乃とイリナで充分です!・・・だったんだけどな~、実際気持ちをぶつけてくれた部長のこと考えるとな~・・・。」
「ヘタレね。」
「ヘタレだわ。」
「お前らひどいな!あながち間違ってない事にも腹が立つ!」
「で?部長の事どうするの?」
「好きなの?」
「ああ、好きだよ!今の状況を変えたくなくて保留してるヘタレだよ!」
「ふ~ん、だって!部長。」
は?朱乃の言葉に固まる。
「イッセー・・・。」
部長が屋上の入り口に立っていた。
「くくっ、あはははははは!イッセーの顔!」
「ふふっ、これは面白い顔見れたわね。そもそも部長とすれ違わないでここにいられると思うの?」
ああああああ!言われてみればあああああ!動揺しててそれどころじゃなかったし!
「朱乃、イリナ・・・・。」
部長がこっちに来て朱乃とイリナに申し訳なさそうに声を掛ける。
「私達の気持ちは今言った通りですよ。イリナもでしょ?」
「そうね、結構前からこうなるんじゃないかって思ってたしいいんじゃない?」
朱乃とイリナが軽そうに答える・・・軽くじゃないんだろうけど、2人の気持ちも無碍に出来ないし部長の事は好きだ。覚悟決めますか!
「朱乃、イリナ、私はそんなつもりじゃなかったんだけど・・・。」
「部長!告白までしておいて今更それは無いでしょう?」
「それとも独り占めしたいですか?それなら私も朱乃も負けませんけど?」
「独り占めなんて・・・ただ、貴女達に申し訳なくて。」
「ん~、そもそも元から私達って3人で付き合ってますからね。ある意味今更なのかしら?」
「朱乃、思考がちょっとおかしくない?今更って。」
「ちょっとイリナ、おかしいとかひどくない?」
朱乃とイリナの掛け合いがおかしかったのか部長が笑っている。
「ふふっ、朱乃、イリナ、ありがとう。でもほんとにいいの?嫉妬とかしない?」
「「します!」」
するんか!いや、そのほうが普通だよな。それでいいのか。
「するけど、今までも私とイリナの間でもあったことだしね~。」
「そうなったらイッセーにいっぱい構ってもらえばいいわ。」
言われてみればそういうのあったような?
「なので後はイッセーと部長次第ですよ。」
「と、いうわけなんで後は2人で話して下さい。イッセー、ちゃんとするのよ?」
「わかってるよ。今更だしな。」
朱乃とイリナは俺の言葉に納得したのか戻って行った。
続きは次話で。