ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》 作:ブイズ使い
UBの出現と同時にアローラの地へと戻ってきたシンジ。ウツロイドとの交戦中、親友でありライバルでもあるグラジオと合流し、共闘してウツロイドとのバトルを再開していた。
「ニンフィア!シャドーボール!」
『フィーア!』
『ジェップ!』
ニンフィアはシャドーボールで攻撃するも、ウツロイドはミラーコートでその攻撃を反射する。ミラーコートは相手の使った特殊技の威力を2倍にして相手に跳ね返す強力な技だ。
凄まじい勢いで反射されたシャドーボールはニンフィアに直接向かっていく。ニンフィアはその攻撃を当たる寸前のところで回避する。
しかしその行動はこちらにとってピンチからチャンスへと変わる瞬間でもあった。
「隙だらけだ!シルヴァディ!ブレイククロー!」
『シィヴァ!』
ミラーコートが終わった瞬間の隙を狙い、シルヴァディは自慢の鋭い爪による一撃、ブレイククローを放つ。これは直撃したと思ったグラジオだが、ウツロイドはその特徴的なふわりとした動きでシルヴァディの攻撃を後ろに回避する。
「なに!?」
まさかあの状況で避けられると思わなかったグラジオは驚きの声をあげる。そして今度は逆にシルヴァディの攻撃の後隙を狙いウツロイドはパワージェムを放つ。
当然空中で自由の利かないシルヴァディに避けるのは難しく、パワージェムの直撃を受けてしまう。
「シルヴァディ!?大丈夫か!」
『シヴァ!』
シルヴァディはウツロイドの攻撃の直撃を受けるも、グラジオの声に答え立ち上がる。ダメージは見られるがまだ戦いに支障はない程度のようである。
その後もウツロイドの容赦ない攻撃が続く。ウツロイドは溶解力の高い毒液、アシッドボムで追撃を仕掛ける。アシッドボムは威力は低いものの直撃した相手の特殊防御を下げる効果のある危険な技だ。
シンジとグラジオはパートナーに回避の指示を出し、ニンフィアとシルヴァディはその攻撃を同時にバックジャンプして回避する。さすがに今の攻撃をまともに喰らうわけにはいかない。
『ジェルプ!』
ウツロイドは続けてパワージェムで再度追撃する。
「ニンフィア!ようせいのかぜ!」
「シルヴァディ!エアスラッシュ!」
『フィアー!』
『シヴァヴァヴァ!』
ニンフィアはようせいのかぜ、シルヴァディはエアスラッシュでパワージェムに対抗する。パワージェムは2人の攻撃で上手く相殺することが出来たが、このままでは間違いなく体力的にこちらが持ちそうにない。
とはいえウツロイドは未知の力によって能力が本来よりも上昇している。普通に攻撃してもダメージはあまり期待できないだろう。
「グラジオ!」
「……ああ、分かった!」
シンジはグラジオと視線を合わせ、グラジオはシンジの意図を理解し頷きながら答える。いかにしてこの状況を打破するつもりなのだろうか。
「ニンフィア!もう一度シャドーボール!」
『フィア!』
『ジェップ!』
ニンフィアはシャドーボールで攻撃を仕掛けるが、ウツロイドはその攻撃を先ほどと同様にミラーコートで反射する。だがその攻撃をニンフィアはジャンプすることで回避する。来ることが分かっていればどれだけ強力な攻撃でも回避することは容易である。
「今だ!ムーンフォース!」
ジャンプしたニンフィアは力を体内に溜め込み、一気に解放することで自身最大の技、ムーンフォースを放つ。ムーンフォースはウツロイドに接近するも、ウツロイドはふわりと浮かび上がり空中へと回避する。
「ふっ、甘い!シルヴァディ!マルチアタック!」
『シヴァア!』
シルヴァディはマルチアタックで攻撃する。しかしその攻撃対象はウツロイドではなく、ウツロイドが回避したニンフィアのムーンフォースであった。シルヴァディは隙を見てウツロイドの背後へと周り、この瞬間を待っていたのだ。
さらにシルヴァディの尾の色は赤色へと変化していた。シルヴァディは自身の特性“ARシステム”により通常のノーマルタイプからほのおタイプに変更していたのだ。
シルヴァディの特性であるARシステムは、専用のメモリーをシルヴァディの頭部にインプットさせることで、シルヴァディのタイプを特定のタイプに変更させることが出来る特性だ。UBに対抗するために生み出されたシルヴァディだからこそ所有している専用の特性である。
ほのおタイプになったシルヴァディにフェアリー技は効果が薄い。それに加えシルヴァディ専用の技、マルチアタックもARシステムによって変更したタイプに変わる特徴を有している。これによりニンフィアの強力なフェアリー技のムーンフォースも少ないデメリットで受けられるというわけだ。
シルヴァディはムーンフォースにマルチアタックをぶつける。するとマルチアタックはムーンフォースを反射し、更なる勢いをつけてウツロイド目掛けて発射される。
『ジェップ!?』
さすがのウツロイドもこの攻撃に対応することが出来ず、ムーンフォースの直撃を受ける。通常のムーンフォースに加えシルヴァディのマルチアタックにより威力の増した攻撃には流石にダメージの色を隠せない。ウツロイドの表情は全く分からないが、それでも少しずつ高度を下げ不安定にゆらゆらとしているところを見ると、今の攻撃が通ったことはすぐに分かった。
「今だ!ブレイククロー!」
『シルヴァ!』
シルヴァディはその隙を見逃さず、勢いよく飛びかかりブレイククローで追撃する。ニンフィアとの連携攻撃により怯んだウツロイドは無抵抗のままシルヴァディのブレイククローを受ける。さしものウツロイドも無抵抗で立て続けに強力な攻撃を受けてしまっては一溜りもない。
『ジェップ……』
「よし、ダメージはあるみたいだな。このまま……!?」
「あ、あれって……ウルトラホール!?」
更に畳みかけて追い込もうとするグラジオだが、その瞬間に重傷を負ったウツロイドの背後から見覚えのある空間が姿を現した。それは紛れもなくUBたちの世界へと繋がっているウルトラホールであった。
ウツロイドは突如として現れたウルトラホールに姿を消した。追いかけたいところだが、自分たちだけの力ではウルトラホールに侵入することは不可能であるため断念することにする。
「逃がしてしまったが奴も重傷を負っている。暫く姿を現すこともないだろう。」
「うん……」
彼らが何を目的でこの世界にやってきたのかは分からないが、何故か彼らから悪意は感じられなかったどころかどことなく悲しい感情を感じたシンジは思い悩む。しかし放置してしまえば先ほど助けた新人トレーナーの様に被害者が出ないとも限らないため戦わないわけにもいかない。複雑な感情が彼の中で蠢いていた。
「ところでグラジオ、どうして君はここに。」
「ああ、お前にウツロイドと戦うの頼んだのはオレだからな。UBと戦うのに一人で戦うのは難しいと思って駆けつけたんだ。」
シンジの質問に対しグラジオはそう答えた。グラジオの言う通り、あのままではシンジもただでは済まなかったかもしれない。現にグラジオがいたおかげでウツロイドの撃退に成功したのだ。シンジはグラジオに感謝し、グラジオもシンジの言葉に『気にするな』と一言だけ答える。
「これからどうするの?」
「知っていると思うが今アローラ中の腕利きのトレーナーたちをエーテルパラダイスに招集しているところだ。リーリエも向かっていると思うが、合流次第UBたちの対策やこれからの対応を伝えるように信頼のおける秘書に任せている。」
グラジオの言う信頼できる秘書とは間違いなくビッケの事であろう。彼女ならば自分も信頼できるだろうと安心して任せることが出来る。エーテル財団には一部信頼することのできない人物が約一名存在するが。
「そこでお前には別の役目を頼みたい。」
「別の役目?」
「ああ。ウツロイドを始めとしてウルトラホールが各地に出現し始めている。その噂を聞いたアローラの人々は現在パニック状態だ。アローラの混乱を解くにはお前の力が必要だ。」
「僕の力?僕はなにをすればいいの?」
シンジの力が必要だと語るグラジオは、彼がこれから何をすべきなのかを説明する。
「まず今までアローラのチャンピオンであるお前は少しの間不在だった。それはニュースを通じてアローラの人々が知っている。だから今度はお前がアローラに戻ってきたことを伝えるんだ。チャンピオンが戻ってきたことがアローラに広がれば、みんな安心して自ずと混乱は鎮まるだろう。」
シンジはグラジオの言葉に納得する。みんなが現在混乱している原因の一つとして最強のトレーナーであるチャンピオンが不在の中、アローラに未知の危険が迫っているかもしれないと考えパニックに陥ってしまう。だが逆に、チャンピオンが帰ってきたと伝え現在起きている状況を説明することで彼らの不安は次第に和らぐだろう。それだけチャンピオンの存在は多くの人たちに勇気や力を与え程大きなものなのだ。
「テレビ局には既に連絡がついている。お前はこれからハウオリシティに向かってくれ。オレはもう一度空間研究所に戻り、バーネット博士とこれからの事を話し合うつもりだ。」
「うん、分かった」
「あとこれを持っていくといい」
グラジオはシンジに腕時計に似た何かを手渡す。シンジがそれが何なのかを尋ねると、グラジオは簡易的な連絡用の通話機なのだと説明する。
「それがあれば同じ通話機を持っている者同士で連絡を取り合うことが出来る。使えるのは今回の様な非常事態時のみだが、連絡が取れるに越したことはないだろう。」
「ありがとう。じゃあ僕は先に行くよ!」
シンジはグラジオから受け取った通話機を腕につけると、早速ハウオリシティに向かって走り出した。自分もやるべきことをやるかと、グラジオはバーネットが待つ空間研究所へと足を運ぶのであった。
シンジたちがウツロイドと戦っている一方、リーリエ、ハウ、ヨウの3人は案内されたエーテルパラダイスにやってきていた。
グラジオが招集しているという部屋までやってくると、そこには見覚えのあるトレーナーたちの顔ぶれが揃っていた。その中の一人、ミヅキはリーリエの顔を見るとすぐさま笑顔で手を振り小走りで近寄ってきた。
「リーリエ~!」
「ミヅキさん!」
「久しぶり!元気にしてた!」
「はい!ミヅキさんもお元気そうで安心しました!」
「おいおい、俺たちもいるんだけど?」
「久しぶりー!ミヅキー!」
「あっ!ヨウとハウもいたんだ!おかえりー!」
久しぶりに帰還したリーリエを笑顔で迎えるミヅキ。その後後ろから顔を出したヨウとハウの事も向かえ4人で久しぶりの再会を喜ぶ。そんな彼女たちの姿を見たある人物も、ゆっくりと近付き声をかけてきた。
「よう、久しぶりじゃねえか。ハウ。」
「?あっ、グズマさん」
その正体は元スカル団のボスであるグズマであった。元々ハウの祖父であるハラの元で修行していたグズマとは顔見知りのようで、ハウともいくらか面識があるようだ。
だがハウの様子はいつもと違い、笑顔を崩してはいないもののどこか緊張した様子を見せている。ハウ自身グズマの事は苦手なようだ。彼の今までの素行を知っていれば当然かもしれないが。
「……ハッ!相変わらず何考えてるかわからねぇ面だな。」
ハウの緊張を吹き飛ばすかのようにグズマは笑い飛ばした。
「安心しな。今の俺はお前の知っている俺じゃねえよ。」
「え?」
「ここに集まったトレーナーの面をよく見てみな。」
グズマの言葉に従いハウたちはここに集まったトレーナーを見渡す。そこにいたのはミヅキ、グズマを始めイリマ、カキ、マオ、スイレン、マーマネ、マーレインだ。逆にこの場にいないのは四天王であるハラ、ライチ、アセロラ、カヒリ、ウラウラ島のしまキングクチナシ、ポニ島のしまクイーンハプウ、それとチャンピオンのシンジである。
殆どの人が見覚えのある顔で、そのトレーナーたちにはとある共通点があった。それは全てのトレーナーが各島のキャプテン、及びしまキングとしまクイーンを務めているのである。間違いなくアローラでは名前が知られている強者たちばかりだ。
「あたいのことも忘れて貰っちゃ困るね」
リーリエたちがトレーナーたちの顔ぶれを確認し終えた頃に、彼女の背後から聞き覚えのある女性の声が聞こえた。ふと振り向くと、そこには見覚えのある濃いアイラインのメイクをした女性の姿があった。
「ぷ、プルメリさん!?」
「久しぶりだねお姫様。随分見ない間に成長したみたいじゃないか。」
その人物はグズマと同じ元スカル団の幹部を務めていた女性、プルメリであった。ウラウラ島でリーリエをさらう手筈を踏んだものの、ルザミーネを助けに行く際にスカル団の下っ端たちに囲まれたとき、助けてくれたのがこのプルメリだ。そのためリーリエも少しではあるが面識はあった。
「なんだ、お前も来たのか。」
「なんだはないんじゃないか?グズマ。あたいはグラジオの坊やに頼まれたから来てやっただけさ。それよりあんたこそここにいるなんてどういう風の吹き回しだい?」
「……チッ、俺はただ目障りな奴をぶっ壊しにきただけだ。」
「そうかい。あたいはてっきりアローラを救う手伝いにでも来たのかと思ったよ。」
グズマは『勝手に言ってろ』と言うが、その言葉からは以前のような怖さは感じられず、どことなく彼なりの照れ隠しの様に感じられた。久しぶりに会ったハウは、あの人も変わったのかなと先ほどの緊張が嘘のように飛んでいったのであった。
全員が室内に集合すると、グラジオに代理として頼まれたビッケがその場に姿を現す。
「皆さん集まりましたね。ではこれより、グラジオ代表より代理として仰せつかった私、ビッケが対UBのための作戦を皆さんにお伝えいたします。」
ビッケはそう言って話を進める。はじめクチナシやもう一人のキャプテン、マツリカにも声をかけたが、クチナシは面倒だからと言って集会をパス、マツリカは連絡がつかなかったためこの場にはいないようだ。
四天王たちはそれぞれアローラの中心部でもあるポケモンリーグにて待機。シンジはチャンピオンとしての別行動に出て貰っているようである。
「現在アローラ各地にてウルトラホールが出現し始めています。その中でも、特にウルトラオーラの反応が強い場所が地図に示してある場所です。」
そう言ってビッケは地図のデータを投影し、地図の至る所に赤い点が表記される。その赤い点が表記されている部分にUBが出現する可能性が高いようだ。
メレメレ島ではメレメレの花園、茂みの洞窟、アーカラ島ではジェードジャングル、ウラウラ島ではマリエ庭園、ハイナ砂漠となっている。
「彼らの力は未だ未知数。皆さんにはそれぞれ協力し合いながら分担して交戦していただきます。」
どの場所に誰を配置するかは決めているそうだ。ビッケはその配置を発表する。
まずはメレメレ島。花園にはヨウとハウの2人、茂みの洞窟にはイリマ、リーリエ、ミヅキの3人だ。ヨウとハウは持ち前のコンビネーションが信頼に値し、実力も申し分ないだろうという判断で任せ、イリマは茂みの洞窟を担当しているキャプテンであり、リーリエとミヅキはその仲の良さからバトルでも充分活かすことが出来るだろうという事だそうだ。
次にアーカラ島のジェードジャングルは、同じアーカラ島のキャプテンであるカキ、スイレン、マオである。この3人の組み合わせは言わずもがな。
そしてウラウラ島のマリエ庭園にはグズマとプルメリの2人。そしてハイナ砂漠にはマーレインとマーマネである。グズマとプルメリは元スカル団の組み合わせという事で認知され、マーマネとマーレインは家族も同じ関係であるため心配ないだろう。
「それと、皆さんにはこちらの二つをお渡ししておきます。」
ビッケはこの場にいる全員に同じアイテムセットを手渡す。一つはシンジに渡した通話機と同じもの。もう一つは見たことの無い青いモンスターボールであった。
「それはウルトラボール。ウルトラビーストをゲットするために作った専用のモンスターボールです。」
「という事はUBさんたちをゲットするってことですか?」
リーリエの質問にビッケは頷き回答を続けた。
「ですがUBたちはその後元の世界に返すつもりです。彼らは決して自分たちから害を成すためにこの地にやってきたわけではありまんせんので。」
それを聞きこの場にいる全員が納得する。
「UBたちからアローラを救うための精鋭部隊……差し詰めウルトラガーディアンズとでも名付けましょうか。」
選りすぐりの精鋭部隊の呼び名がないのは少々不便だと感じたビッケは端的にそう名付ける。そして遂に、ウルトラガーディアンズ最初の指令が下されるのであった。
「ウルトラガーディアンズ、出撃してください!」
『おー!』
皆、それぞれに与えられた使命を熟すためにエーテルパラダイスを後にする。アローラの命運は、ウルトラガーディアンズの肩にかかっているのである。
ウルトラガーディアンズが結成され、彼らが出撃した一方、エーテルパラダイスの地下では――
「この機を逃すわけには参りません。この機を逃せば、私は永遠に出世できません。」
1人の男はぶつぶつとそう呟きながら目の前にある機会を弄る。立派な機械だが、みただけでは何をするものなのかは見当もつかない。
だがその機械の頭部からは、小さく火花が出ており何か嫌な雰囲気を与えるものであった。
「UBたちの力……ウルトラオーラを扱うことが出来れば、必ず私の目的は成功します。」
お構いなしにそう言いながら作業を続ける男性。そして彼は最後にニヤッと笑いながらこう告げた。
「精々頑張ってください。ウルトラガーディアンズの諸君……。」
カメラにはウルトラガーディアンズの面々がそれぞれエーテルパラダイスから出撃している様子が映っていた。この男性の目的とは一体何なのだろうか?謎が謎を呼ぶ新章、UBとの戦いが遂に開幕だ!
次回からウルトラビーストの本格的なバトルに入っていくことになると思います。順番に消化していくので少々時間かかりそうですがUB編自体はプロローグみたいな話のつもりなのであまり長引かない予定です。まだどうなるかは不明ですが……。
USUMにてフェアリー♀統一パとレッド様パ作りました。次は原作のグラジオパでも作ろうかなと思ってたりします。
遂に明日ポケモン剣盾のポケモンライブカメラが放送される日ですね。今から楽しみですが、新ポケの発表とかはされるんですかね?