ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

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久しぶりに本編の進行。新章、UB編のプロローグ的回です。

リーリエを書きたいといいながらリーリエの出番は少ないというジレンマ。流れ的に話の内容を変えず3パターン程ありましたが今回のような展開にしました。

ククイ博士の口調がアニメと違って丁寧だったりするから難しいのはいい思い出。
因みに今更ですがリーリエのグラジオ、ルザミーネ呼びはアニメと同じお兄様、お母様です。原作では兄さまや母さまですが気付いたときにはこれで統一されてて今更戻すのも面倒なので……。


UB再来編
アローラ!懐かしの地、懐かしき仲間!


カントーから出た船に乗り遠き地、アローラにたどり着いたシンジたち。船着き場には、前もって連絡を貰っていたククイが彼らのために出迎えてくれたのだった。

 

「やあ!シンジ!リーリエ!久しぶり!」

「ククイ博士!お久しぶりです!」

「お久しぶりです、ククイ博士!」

 

久しぶりに会うククイと挨拶を交わすシンジとリーリエ。そんな2人にククイも久しぶりだと嬉しそうに微笑んだ。

 

そんなククイは2人の後ろにいるもう2人の少年、ヨウとハウに気付いた。

 

「おっ、ヨウとハウも一緒だったのか!立派に成長したみたいだね!」

「はい!修行から戻ってきた帰りにシンジたちと会ったんです!」

「ククイ博士ひさしぶりー!聞いてた通りシンジたちはすっごく強かったよー!」

 

ヨウとハウも含み旅先での話や思い出話で盛り上がりたいところではあるが、今はそれどころではないためククイは気持ちを切り替え早速本題の入るのであった。

 

「ヨウとハウも聞いていると思うが、先日UBたちの世界へと繋がっているウルトラホールが現れた。今グラジオが協力者となるトレーナーたちをエーテルパラダイスに召集しているそうだ。急いで向かってほしい。」

 

ククイのその言葉に返事をしエーテル財団へと向かおうとするシンジたち。しかしそんな時、ククイの持つ電話が鳴りククイは彼らに一言断りを入れて電話に出る。

 

「もしもし、ククイですが」

『ククイ博士。俺です。グラジオです。』

 

その通話の相手は現在エーテル財団の代表を代理として務めているグラジオであった。ククイはグラジオから電話があった=何かあったと判断しグラジオに用件を尋ねる。

 

グラジオの口調はいつも通り冷静な印象であったが、どことなく焦っているようにも感じさせるものだった。グラジオはククイの質問に答える。

 

『……ウルトラオーラの反応が強くなってきました。もうすぐUBがウルトラホールから姿を現してしまう可能性があります。』

「!?それは本当か?」

 

グラジオは肯定の言葉をククイに返す。その後、グラジオはある頼みごとをククイにする。ククイも背に腹は代えられないと彼の頼みを承諾し通話を終了した。

 

「ククイ博士、何かあったんですか?」

「ああ、グラジオからね。」

「お兄様から!?」

 

もしかして兄の身に何かあったのではないかと焦るリーリエであったが、ククイは心配する彼女にその心配はないと安堵の言葉をかける。

 

「まもなくウルトラビーストがこちらの世界にやってくる可能性があるらしい。」

 

ククイの言葉に4人が驚愕する。グラジオに言われていた予定よりも遥かに早くまだ対策もできていないためだ。戻ってきて早々ですまないと思いつつも、ククイは彼らに今からするべき行動を伝える。

 

「先ほども言ったようにグラジオがエーテルパラダイスにアローラ中のトレーナーを招集している。君たちには予定と変わらずエーテルパラダイスに向かってほしい。」

 

ククイの言葉に全員が頷いて承諾する。なにはともあれ強大な存在でもあるUBには無策で挑むことは非常に危険だ。例え非常事態であっても慌てて行動することは得策とは言えない。

 

皆はエーテルパラダイスから迎えの船が来ているときき急いで目的地へと向かおうと乗り込もうとする。だがククイがシンジだけを呼び止め、ある頼みごとをする。

 

「シンジ、頼みがあるんだけどいいかな?」

「僕ですか?」

 

ククイはグラジオから頼まれたことをそのままシンジに伝える。シンジはその頼みごとに躊躇することなく『分かりました』と一言だけ答え一人別のボートへと乗り込んだのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはアーカラ島に存在するカンタイシティ。そのカンタイシティにあるポケモンセンターには多くのトレーナーたちが集まり情報交換などを行っていた。

 

カンタイシティは島巡りをするトレーナーたちが最初に訪れ、新米トレーナーたちが情報交換をすることが多い。今まさに旅立ったばかりのトレーナーたちがポケモンセンターに集結し会話をしているところだ。

 

そんな平和な時間が過ぎていたポケモンセンターであったが、1人の少年が傷ついたポケモンを抱え青ざめた様子で駆け込んできたため室内には一時の静寂が訪れた。

 

「ジョーイさん!僕のヤングースを診てください!」

「酷い傷!すぐに集中治療室へ運んで!」

『ハピナッ!』

 

少年の抱えていたポケモン、ヤングースは通常のバトルで傷付いたとは思えない程の重傷を負っていた。その姿を見たジョーイは至急助手であるハピナスに指示を出す。ハピナスはヤングースを担架に乗せて奥の部屋へと運んでいった。

 

その様子に気になった他のトレーナーが、会話を切り上げヤングースのトレーナーに話しかける。

 

「一体何があったの?」

「……僕とヤングースが新しくポケモンを捕まえようとすぐ近くの森に入ったんだ。その時、空からみたことないポケモンが現れたんだけど……」

 

そのトレーナーが辛そうに話す姿を見ると新米のトレーナーでもその後に何があったのかを察することができた。しかし謎のポケモンの正体も気になりもしかしたら新発見のポケモンの可能性もあるため、ここにいるトレーナーたちは続々と集まり彼の話を喉の鳴る音が聞こえる程静かに聞いていた。

 

「でもそのポケモン、とんでもない強さで僕のヤングースが一方的にやられちゃったんだ。」

「その見たことのないポケモンのトレーナーはいなかったの?」

「ううん。多分いないと思う。あのポケモン、抵抗できない僕のヤングースに容赦なかったし、そもそもあんなポケモン聞いたこともないから。」

 

もしかしたらまだ誰も見たことの無い未知のポケモンかもしれない。そう考えたトレーナーたちは一斉にポケモンセンターを飛び出す。『そのポケモンは自分が捕まえる』や『まだ近くにいるはずだ』などの強気のセリフを吐きながら。それは新米であっても自分のポケモンが負けるはずないと自信を持ち、ポケモンの事を信頼しているからだ。だが間違いなくそれは無謀な行為、ベテランのトレーナーがいれば無理をしてでも止めるであろう。

 

トレーナーのいないポケモンとの戦闘は当然危険が伴う。何故なら公式の試合ではない上に止める者が誰もいないからだ。それが未知のポケモンであればなおさらだ。

 

しかしここにいるトレーナーたちはそれを知らない者たち、言ってしまえば小童同然の経験が浅すぎる子どもたちだ。危険知らずの彼らはジョーイの抑制を聞く由もなく未知のポケモンを捕まえるために意気揚々と飛び出してしまったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「探すはいいものの、みたことの無いポケモンってどこにいるんだろう?」

『ワン……』

「絶対僕たちが先に見つけてゲットしようね!」

『ワン!』

 

先ほどポケモンセンターに駆け込んできたトレーナーの話を聞いた少年とそのパートナーであるイワンコ。彼らは誰よりも早くゲットしようとイワンコと共に張り切って探索を続ける。

 

しかしいくら探しても未知のポケモンらしい姿は一匹もいない。いるのはどこにでもいるような野生のポケモンばかりである。今はそれらのポケモンを捕まえ無駄に体力を消耗させるよりも、お目当てのポケモンゲットまで体力を温存しておくべきだと判断しゲットしたい気持ちを抑える。

 

「キャアアアアアア!!」

「!?悲鳴!」

 

その時、森の奥から誰か女性の叫び声が聞こえる。誰かの悲鳴が聞こえ少年はそちらの方まで走っていく。すると正面から一人の少女が傷ついたポケモン、アママイコを抱えて走ってくる。

 

「どうしたの!?」

「どうしたもこうしたもないよ!私たちの手に負える相手ではないわ!悪い事は言わないからあなたも逃げなさい!」

 

少女はそう言い残しポケモンセンターの方へと走っていく。少年はその少女の慌てぶりに恐怖を感じながら彼女の走っていく姿を見つめる。

 

少年の額には冷や汗が流れ、手汗で掌は湿っていた。少年の不安な気持ちが伝わり、イワンコの声も自然と小さくなる。

 

その時、彼の背後から何か寒気のするような気配が感じられた。恐る恐る彼はゆっくりと振り向く。その心臓はバクバクと鳴り、静かな森に響き渡る錯覚さえ覚えさせるほどであった。

 

少年が背後を見ると、少し上の方に白い触手が見えた。そのまま視線を変えず上の方を見上げると、そこには得体のしれない異形なポケモンの姿があった。

 

だがこれをポケモンと判別してもいいかは少々疑問に思う姿であった。そのポケモンは異形すぎる程であり、ドククラゲにも近いがポケモンとは全く別の雰囲気を出している気さえした。あの少年の言った通り、こんな姿をしたポケモンは見たことが無い。

 

そのポケモンの姿を見た瞬間、少年には鳥肌が立つほどの寒気が走った。恐怖から頭が真っ白になり、足が震えてしまうほどである。少年は訳が分からなくなってしまい、気付けばイワンコに攻撃の指示を出していた。

 

「い、イワンコ!かみつく!」

『ワン!』

 

イワンコはトレーナーの指示に従いかみつくで攻撃を仕掛ける。しかしこの判断は素人目から見ても悪手だ。

 

自分の知らないポケモンが相手となると何をしてくるのか不明なのは明白。そんな相手になんの手も打たずに近接攻撃を仕掛ければ返り討ちに会ってしまう可能性が高い。それも実力が上の相手であればなおさらである。

 

結果はその通り、イワンコの攻撃は触手にあっさりと弾返され近くに木にぶつけられてしまう。背を思いっきり打ち付けてしまったイワンコはダメージを負い、立つことが困難となってしまう。

 

未知のポケモンは動けないイワンコに対し容赦なく追撃を仕掛ける。そのポケモンの周囲には細かい岩が複数浮かび上がり、イワンコ目掛けて飛んでいく。いわタイプの特殊技であるパワージェムだ。

 

イワンコは当然避けることが出来ず、パワージェムの直撃を受けてしまう。その直撃によりイワンコは先ほどのヤングースやアママイコの様に傷ついてしまい立ち上がることが出来ない状態となってしまう。

 

対象のポケモンの想像以上の強さに少年は震えが止まらず腰を抜かして動けなくなってしまう。そのポケモンは動けなくなったイワンコを見て次は少年にターゲットを向けてゆっくりと近付いてきた。

 

少年は近付いてくるポケモンに怯えるもの尻餅をついた状態から動けないでいる。そのポケモンが触手を伸ばしながら近づいてくるのを見て死すら覚悟した少年は、涙を流して眼を瞑り誰かが助けてくれないかという最後の希望を胸にする。

 

「ようせいのかぜ!」

 

少年の願いが届いたのか、目の前をヒラヒラと温かな風が通り過ぎそのポケモンを妨害する。その技はフェアリータイプの技であるようせいのかぜだ。一体だれが助けてくれたのかとゆっくりと目を開ける。

 

すると少年の目の前には1人の男性がピンク色の体色をしたポケモンと共に自分を守るように立っていた。その男性の姿を見た少年は、あまりの衝撃に驚き目を見開いた。

 

「ちゃ、チャンピオン!?」

 

そう、その男性の正体はアローラ初代チャンピオンであるシンジ。そして隣にいるのは彼の相棒であるニンフィアだ。トレーナーたちの憧れでもあり雲の上にいるような存在のチャンピオンが目の前にいればどのような状況でも驚かずにはいられないだろう。

 

「ウツロイド……やっぱり君だったか……」

「えっ?ウツロイド?」

 

シンジが口にしたウツロイドという名前が気になり少年は呟くように聞き返す。見たこともなければ聞いたこともないその名前に興味を引かれたからだ。しかし今の状況を考えれば少年の質問に答えている余裕はない。

 

「君、そこの傷付いているイワンコを連れて早くここから離れるんだ。」

「え?で、でも……」

「いいから早く行くんだ!」

「は、はいっ!?」

 

例えチャンピオンとは言え一人でこの場に残すのはさすがに危険ではないかと渋る少年だが、そんな少年にシンジは珍しく声を荒げこの場を離れるように警告を促す。少年はそんなチャンピオンの形相に慌ててイワンコを回収しその場を立ち去っていく。

 

間違いなく新人の彼がここにいても正直足手まといになるだけだろう。それに彼を守りながら戦うのはさすがのシンジでも厳しい状況になるのは想像に難くない。それに傷付いたイワンコをそのまま放置してしまってはより危険な状況になることは明白だ。だからこそ怒鳴ってでも彼をこの場から離れさせたのである。

 

「ククイ博士には倒す必要はなく時間を稼ぐだけでいいって言われたけど、こういう事だったんだね。」

 

未知のポケモンがいればゲットしたくなるのはトレーナーとしての性。それも新人トレーナーであればよりその感情は大きいものとなる。そのことになんとなく予想がついていたククイは一大事となる前にシンジに時間稼ぎのお願いをしたのだ。最も、これは彼の親友でもあるグラジオの願いでもあるのだが。

 

「ウツロイドを一人で相手するのは厳しいけど、やるしかないね。行くよ!ニンフィア!」

『フィア!』

『ジェルップ!』

 

ウツロイドは次にニンフィアを攻撃対象として定め、先ほどの様にパワージェムで攻撃を仕掛けてくる。

 

「ニンフィア!躱してシャドーボール!」

『フィーア!』

 

ニンフィアはそのパワージェムを回避しシャドーボールを放つ。しかしそのシャドーボールはウツロイドに直撃するも、ウツロイドはビクともしていない。全く効いていないわけではないだろうが、ウツロイドが頑丈であるのはまず間違いない。

 

よく見るとウツロイドは周囲にオーラを纏っているのが確認できた。まるでぬしポケモンのようなそのオーラは、ウツロイドの能力を上げるものであろう。ウツロイドが予想よりも頑丈なのはそのためだとシンジは予想する。

 

そう考えている間もウツロイドの攻撃は容赦なくニンフィアを襲う。油断していたわけではないが、推察していたために判断が遅れてしまいウツロイドの放ったパワージェムがニンフィアに接近する。

 

「シルヴァディ!エアスラッシュ!」

『シヴァ!』

 

危ないと慌ててニンフィアの名を呼ぶシンジの横から、聞き覚えのある声が聞こえた。そこには白い体のポケモンが頭部から衝撃波を放ちウツロイドの攻撃を妨害する姿があり、その方角を見ると服の中央にファスナーの着いた黒服を来た少年が彼の傍に近づいてきた。

 

「ふっ、少し腕が鈍ったんじゃないか?」

「ぐ、グラジオ!?」

 

そこには自分の親友でもありかつて腕を競い合ったライバルのグラジオの姿があった。グラジオはいつもの左手でシュバッと眼を隠すようなキザなポーズをとり久しぶりにあった親友にそう問いかける。

 

「ははっ、そんなわけないでしょ。僕は君に負けるわけには行かないんだから。」

「言ってくれるな。」

 

相変わらず見た目とは裏腹に口の減らない奴だなと心の中で思うグラジオ。久しぶりの再会に思わず握手を交わす2人だが、妨害したとは言えウツロイドは未だ戦闘態勢を解くことなくこちらを凝視している。

 

「……思い出話をしている場合ではなさそうだな。」

「うん。今はこの状況を打開しよう。」

「ふっ、さっきみたいにボーっとして足を引っ張るんじゃないぞ?」

「ふふ、それはこちらのセリフだよ!」

 

お互い積もる話もあるだろうが、今は目の前の脅威に対抗するほかないだろうと考え、両者ともウツロイドと戦う態勢をとる。

 

強力な助っ人の加入により形成を逆転するチャンスを掴んだシンジ。2人は横に並び、UBのウツロイドと対峙する。

 

『よし!行くぞ!』

 

2人は息と声を合わせウツロイドとの戦闘を再開する。今、アローラにおける最強タッグと未知の敵であるウツロイドとの戦いが幕を開けたのであった。




というわけでシンジとグラジオの共闘という展開にしました。実際この流れ自体はカントー編を書いている途中でなんとなく考えていたので比較的楽に書けましたが、それでも予想よりは長くなりました。本来モブの話は入れる予定なくあくまでプロローグ的展開で終わらせようとしたのですが……。

戦闘シーンを少しとリーリエサイドの話を書く予定ですのでお楽しみに!ではではノシ

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