ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

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リクエスト回その3です。サブタイトルは思いつきませんでした……。

とりあえず自分なりに頑張っていちゃつかせました。むむむ、やはりこういう回は難しいですな……。


シンジとリーリエ、マサラデート!

カントー地方の旅が終わり、マサラタウンへと帰ってきたシンジとリーリエ。旅の疲れを癒すため、彼らは今日もマサラタウンでのんびりと過ごしていた。

 

そんなある日の朝、リーリエは1人ルザミーネに呼び出されある話を持ち掛けられた。

 

「お母様、私に用とは何かあったんですか?」

「ええ、あなたにちょっと用件……と言うか頼み事みたいなことがあってね。」

「頼み事ですか?」

 

リーリエは母親が自分に頼み事とは珍しいと思いながらルザミーネに用件を尋ねる。ルザミーネはその質問に頷いて率直に答えた。

 

「あなた、シンジ君とデートしてきなさい。」

「…………え!?」

 

予想外の回答にリーリエは思考停止気味に困惑しながら驚きの声をあげる。その単語を聞いただけでリーリエは自分でも分かるほど顔に熱を持った。

 

リーリエはルザミーネの突然な発言に困惑しながらも疑問を抱いていると、その疑問に答えるかのようにルザミーネが口を開いた。

 

「たまにはそういう日があってもいいでしょう。それに、あんまりのんびりしてると誰かに取られてしまうわよ?」

「!?お、お母様!何言ってるんですか!」

 

ルザミーネは意地の悪い顔でリーリエにそう告げる。その言葉を聞いたリーリエは慌てて声を荒げて返答してしまう。もはや母親の思惑通りの反応をしてしまっているリーリエである。

 

「冗談はさておき、偶にはシンジ君と2人で出かけるのも大切よ。カントーを旅してた時はゆっくり観光する余裕なんかなかったでしょう?アローラに戻ったらシンジ君、中々時間が取れなくなると思うわよ?」

 

ルザミーネの言葉にリーリエもハッとなり冷静に考える。

 

確かに自分は今までカントーを旅していた時は目先のジム戦やライバルとの戦いに集中していて二人きりの時間を楽しむ余裕はあまりなかったかもしれない。

 

それにこれからは島巡りに挑戦すると決めたためアローラにまた戻る予定だ。今までとは違い、シンジもアローラではチャンピオンとしての務めがあるためこれまでのような関係は難しくなるだろう。そうなれば会える時間も間違いなく今までより少なくなってしまう。

 

先ほどは意地の悪い様子でからかっていたルザミーネだが、この件は彼女なりに気を遣っての提案だったのかもしれない。

 

「……そうですね。確かにお母様の言うことにも一理あります。分かりました!私、頑張ってシンジさんを誘ってみようと思います!」

 

そう言ってリーリエは手をギュッと握りしめて決意する。ルザミーネもそんな娘の姿を見て優しい顔に切り替わる。

 

「ええ。頑張りなさい、リーリエ。」

「はい!ありがとうございます!お母様!」

 

応援してくれる母親に感謝の言葉を告げ早速シンジの元へと向かいリーリエは家を出る。娘の後ろ姿を見届けたルザミーネは心の中で思っていたことを口にした。

 

「こうでもしないと、積極的になりきれない2人じゃこの先進展しなさそうなのよね。」

 

そう言って第三者から見たらじれったい2人の様子を見て呆れて溜息を漏らすルザミーネなのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お母様にシンジさんをデートに誘うよう言われ家を出ましたけど……いざ誘うとなるとどう切り出していいかわかりません。普段であれば普通に会話できるのですが、一度意識し始めると緊張して会話すらできない気がします……。

 

恐らく今シンジさんはオーキド博士の研究所にいると思います。とりあえず一先ずはシンジさんの元に向かいましょう。

 

私がそう決めオーキド研究所に向かうことにしました。しかしその道中、見覚えのある人物たちの姿が見えました。その人物たちは私の姿を確認すると、女性の方が手を振りながら私の元へと走ってきました。

 

「リーリエ!」

「コウミさん!」

 

その人物とはコウミさんでした。もう一人の方は当然コウタさんです。

 

「コウミさんとコウタさんは今日も特訓してたんですか?」

「ううん。私たちはオーキド博士に用事があったからその帰り!」

「リーリエもオーキド博士に用でもあるのか?」

 

私はコウタさんにそう尋ねられたので、これまでの経緯を説明しました。

 

「そうなんだ。シンジさんならオーキド研究所の庭でポケモンのお世話をしてたよ。」

「そうですか。ありがとうございます。」

「頑張ってねー♪」

 

コウミさんが私に声援を送りながらお母様のような笑顔で手を振られました。私はそんなコウミさんに顔を赤くしながら頷きました。

 

……それにしてもなぜお母様といい皆さんニヤニヤと笑うのでしょうか?

 

「?なんで頑張ってなんて言ったんだ?」

「……コウタには一生分かんないと思うよ。」

「???」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コウミさんに言われた通り私は研究所の庭にやってきました。ここには多くのポケモンさんが元気に遊んでいる姿が確認できます。殆どのポケモンさんがトレーナーの預けたポケモンさんだそうです。

 

「シンジさんは……」

 

私はシンジさんを探すために辺りを見渡します。するとそこには屈んでポケモンさんの頭を撫でている姿がありました。私は声を掛けるためにシンジさんに近づきました。

 

「シンジさん」

「リーリエ?どうしたの?」

 

私が声を掛けるとポケモンさんから手を離しシンジさんは立ち上がりました。頭を撫でられていたポケモンさん……ナゾノクサさんは笑顔のままその場を離れていきました。

 

「ごめんなさい、お邪魔してしまいましたか?」

「ううん、大丈夫だよ。それより僕に何か用事?」

 

シンジさんはそう言って心優しく私に用件を尋ねられました。

 

「えっと……その///」

「?どうしたの?」

 

肝心の用件を言おうとして緊張してしまい口籠ってしまう私に、シンジさんは首を傾げて疑問符を浮かべました。い、いつもと違って顔を見て話すことができません///

 

「あ、あの……もしよかったら、なんですけど……私と一緒に……その///」

 

私が重要な部分を告げようと――俯きながら――必死に声を絞り出そうとすると、シンジさんは疑問符を浮かべるのをやめ、先に声を掛けてくださいました。

 

「お出かけ?」

「え、えっと……はい///」

 

私はシンジさんの回答に赤面状態で頷いて答えました。シンジさんの優しさに救われましたが、自分から言い出せない自分自身が不甲斐ないです。

 

いや、それもこれもお母様がで、デートと言ったのが原因な気もしますけど……。

 

「うん、もちろんいいよ。僕も丁度リーリエと出かけたいと思ってたところだし。」

「え///そ、そうなんですか?」

 

シンジさんの想定外の返答に思わず一瞬だけ上ずった声をあげてしまいましたが、シンジさんにそう言われて私は少しうれしくなりました。

 

「早速出かける?」

「あっ、ちょっとだけ待っていただいてもいいですか?少し準備したいことがありますので……」

「うん、分かった。じゃあまた後で集合しようか。」

 

折角気遣ってくれたシンジさんのために、私もなにかしたいと感じたのでシンジさんに待っていただくことにしました。しばらくしたらまたここに集合ということになりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シンジさん!お待たせしました!」

「うん、じゃあ行こうか。」

 

数時間後、丁度お昼前の時間帯にシンジさんと研究所にて集合いたしました。お出かけする準備は整えてきましたので準備万端です。……と思っていたのですが、シンジさんの次の言葉で焦ることになってしまいました。

 

「そういえばこれから行く場所は決めてる?」

「あっ……。その……ご、ごめんなさい……。」

 

そういえばシンジさんとお出かけできることで頭いっぱいだったので出かける場所まで考えていませんでした……。

 

言い訳になってしまいそうですが、私は男性と二人で出かける経験が一切なかったので肝心な部分を失念していました。

 

「だったら僕のおススメの場所に行ってもいいかな?」

「おススメの場所ですか?」

「折角だからリーリエにも見てほしいからさ。」

 

非は行く場所を考えてなかった私にありますので断る理由はありません。それにシンジさんの選ぶ場所であれば間違いはないと思います。なので私の答えは決まってます。

 

私はシンジさんの提案に賛成し、シンジさんの言うおススメの場所へと向かうことにしました。

 

「すみません。私から出かけましょうと誘ったのに……。」

「別に気にしなくていいよ。僕はリーリエと出かけられるだけで楽しいし。」

 

シンジさんはその後、「それに」と付け加えて照れくさそうにしながら言葉を続けました。

 

「その……男は好きな女の子をエスコートするものだって聞いたことあるからさ///」

 

私はその言葉を聞いて体の体温が上がっていくのがハッキリと分かりました。女の子は好きな人からそう言われるのに弱いものだと思います。

 

「そ、その///ありがとうございます///」

 

まさかシンジさんから直接そんな言葉を聞くとは思いませんでした。あまりの展開になんだかデートどころではなくなってしまいそうです。

 

「つ、ついたよ!」

 

シンジさんがそう言って案内してくださったのは、研究所の近くにある森でした。研究所の近くにこのような森があるのは知ってはいましたが、自分が立ち寄る機会はありませんでした。

 

聞いた話ではここには野生のポケモンさんも生息しているのだそうです。この森はポケモンさんが生活するには充分な環境が揃っているようで、カントー地方で見ることのできるポケモンさんの自然な姿が観察できるそうです。

 

「じゃあ行こうか、リーリエ。」

「はい!」

 

私はシンジさんの後についていき、一緒に森の中へと入っていきました。

 

話で聞いた通り、ここには色んな種類のポケモンさんを見ることが出来ました。今まで旅をしてきてあらゆるところで確認できるポケモンさんから、あまり見ることのできない珍しいポケモンさんまで、その種類は様々でした。あまり広い森には見えないのに、これだけの種類のポケモンさんがいるのはここの環境がどれだけ適しているかがよく分かります。

 

シンジさんの話ではもう少し先に見せたい場所があるのだそうです。これだけ多くのポケモンさんが見られるのに、それとはまた別に見せたいものがあるというのは一体何なんでしょうか。

 

私はシンジさんの見せたいものの正体を考えながら歩いていると、その先に木々の間から光が差し込んでいるのが分かりました。それは森の終わりを意味しています。

 

そしてその先を抜けると、驚くべき光景が私の目の前に広がっていました。

 

「こ、これは……」

「うん。ここがリーリエに見せたかった場所だよ。」

 

私の目に映った光景は、綺麗な白い花が辺り一面に広がっているお花畑でした。その光景はまるで現実とは思えないような光景で、まさに幻想的という言葉が相応しい場所でした。

 

特に先ほどの森と雰囲気がまるで違い、お花畑中央に木漏れ日のように光が差し込んでいるのがより一層美しさを際立たせているように思えます。

 

また、森で見たポケモンさんたち以外もこのお花畑で確認できました。ここにいるポケモンさんたちは誰もが笑顔で、活き活きとしている様子を見るとまさらにポケモンさんたち的には楽園に相応しい場所なのだと感じました。

 

「すごい……綺麗です……」

 

正直それしか言葉が浮かびません。マサラタウンの近くにこんなに綺麗な場所があるなんて思いもしませんでした。

 

「シンジさん、ありがとうございます。こんな素敵な場所を紹介していただいて、私嬉しいです!」

「リーリエが喜んでくれて僕も嬉しいよ。」

 

シンジさんはそう言って私を見ながら微笑んでくれました。私はこの人の優しさにどれだけ救われているんだろうと改めて感じ、心の中でもう一度深く感謝しました。

 

私はこの幻想的な光景に見入っていると、奥から大きな体のポケモンさんがこちら目掛けて走ってきました。そのポケモンさんはカントー地方ではよく見かけることのできるラッタさんでした。

 

しかしそのラッタさんは止まる気配がありません。どうしようと戸惑っていると、そのラッタさんはシンジさん目掛けて飛び込んできました。

 

「シンジさん!?」

「ははは!ラッタ!もう、くすぐったいってば!」

『ラッタ!ラッタ!』

 

シンジさんはそのラッタさんを受け止め、ラッタさんは嬉しそうにしながらシンジさんに頬ずりをしています。イマイチ状況を掴めていない私に、シンジさんは説明をしてくれました。

 

「このラッタはね、僕が旅に出る前に怪我しているのを助けたことがあるんだ。あの時はまだコラッタだったけど、またここに立ち寄った時にいつの間にか進化してたんだ。」

 

その時に助けたコラッタさんは未だにシンジさんの事を覚えていて、ここに来るたびにこうやって熱いスキンシップをされるのだそうです。野生のポケモンさんにもこれだけ懐かれるシンジさんは、元からポケモントレーナーとしての素質があったという事なのでしょう。

 

ラッタさんはシンジさんへの久しぶりの挨拶を終えると、シンジさんから離れその場を後にしました。どこか名残惜しそうにしている印象でしたが、それだけシンジさんの事が好きだという事でしょう。

 

「あの……シンジさん!」

「ん?どうしたの?」

 

私は言い出すなら今しかないと思い、家に戻って準備してきたものをシンジさんに差し出しました。

 

「そ、その……お弁当を作ってきたのでよかったら///あの……その///」

「え?リーリエ、お弁当作ってくれたの?」

 

シンジさんの返答に私は俯きながら頷き返事をしました。シンジさんの顔を確認すると、シンジさんも顔を赤くしているのが分かりましたが、シンジさんは私の作ってきたお弁当を受け取り笑顔で答えてくれました。

 

「ありがとう。とっても嬉しいよ。じゃあ折角だからここで一緒に食べようか。」

「は、はい!」

 

私たちはこの綺麗なお花畑をバックに、お弁当を食べることにしました。

 

最初シンジさんに喜んでいただけるのか不安でしたが、シンジさんは笑顔で「とても美味しいよ」と言っていただけました。その言葉は私にとってなによりも嬉しく、そして何よりも心に残る言葉でした。

 

最初はデートと言われて緊張から頭の中が真っ白になってしまいましたが、いざシンジさんとお出かけしてみるといつもと変わらず2人で楽しい時間が過ごせました。

 

シンジさんに案内していただいたこのお花畑はとても美しく、私の脳内にしっかりと刻み込まれました。でももう一度来るとしたら、やっぱりその時もシンジさんと一緒がいいです。私が方向音痴、というのも確かに理由の一つかもしれませんが、シンジさんと一緒だと絶対に何倍も楽しむことが出来そうだからです。

 

私たちはお花畑で長くも短くも感じる楽しいひと時を過ごし、家に帰ることにしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はシンジさんと共に私の家まで帰ってきました。ただいま、と挨拶をしようとする私ですが、その時慌てた様子でお母様が玄関までやってきました。

 

「リーリエ!大変よ!」

「どうかしたんですか?お母様」

 

私は慌てている様子のお母様にそう尋ねると、お母様は早くこっちにきて私たちを誘導しました。その様子からただ事ではないと思い、シンジさんと共に急いでお母様が誘導している場所までやってきました。

 

するとそこはテレビ電話の置いてある部屋でした。誰かと電話しているのかと思い覗き込むと、そこには私のよく知る人物が映っていました。

 

「お兄様!?」

『リーリエ、久しぶりだな。』

 

そこには私のお兄様……グラジオお兄様の姿が映っていました。しかしお兄様は喜んでいる場合ではないなと、慌てた様子で語り掛けてきました。

 

『シンジ、リーリエ、マズい事になったかもしれない。』

「どうしたの?」

 

シンジさんがお兄様にそう尋ねます。するとグラジオお兄様から、衝撃の事実が告げられました。

 

『あいつらが……UBがまた来るかもしれない……』




カントーでの話も終わり、次からいよいよ新しい章へと入っていく準備に取り掛かります。後2話ほどはカントー編扱いですが、間もなくハウ君やヨウ君も出す予定です。その辺りは後付け設定も含みますのでご了承願います。

直前までもう一つの案と展開をどちらにするか悩みましたが折角なので前回のリクエスト回と繋げる形にしました。もう一つの案はなんか祭でも開いてデートさせようかと思いましたが、話を持っていく展開が思いつかず断念しました。

ミュウツーの逆襲はやっぱり最高です。初期からポケモンの劇場版は見てるので懐かしさを含め感動しました。もう懐かしさを感じる年なんだなぁってつくづく思いますね……。
ただ一つ心残りがあると言えば……子どもたちがやかましかったです。それは毎年のことなんですけども……。来年テレビ放送した際に家でゆっくりと見れる時を楽しみに待ちます、はい。

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