ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

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リクエスト回その2です

要望されていた内容と若干違う気もしますが申し訳ない……。


シンジとイーブイ!初めての冒険!

これはシンジが旅に出る前日の話。まだニンフィアがイーブイだった頃に2人がマサラタウンで過ごしていた時の話である。

 

シンジはこの日、珍しく朝早くに目が覚め着替えを済ませ外出の準備をした。

 

「じゃあ母さん!行ってきます!」

「ええ、気を付けて行ってくるのよ」

「行こう!イーブイ!」

『イブイ!』

 

シンジはそう言ってパートナーのイーブイと共に家を出た。目指すはマサラタウンにあるオーキド研究所である。

 

シンジはまだポケモントレーナーになっていないため、モンスターボールを所持していない。故にイーブイは走るシンジの後ろを同じように走ってついてきている。その様子からは互いにとても仲が良いのだという事が伝わってくる。

 

「あらシンジ君!おはよう」

「おばあちゃん!おはようございます!」

 

シンジはマサラタウンにいる間、小さいころからお世話になっているおばあさんに声をかけられ足を止めた。彼にとっては本当のおばあちゃんのようであり、おばあちゃんにとってもシンジは本当の孫のように可愛がっている。

 

「今日もオーキド研究所に行くのかい?」

「はい、旅に出る前に色々教えてもらいたいことがあるので!」

「そうだねー。シンジ君ももう旅にでる年になったのよね。なんだか寂しくなるね。」

 

おばあさんはまるで自分の子どもが旅に出るような感覚に寂しさを感じ涙を拭った。

 

マサラタウンは他の町に比べれば小さな町だ。住んでいる人が少ないため自然と接する機会も多く顔も覚えやすい。特に子どもたちは数も少ないため、マサラタウンで暮らす子どもたちは周囲の大人たちからはよく可愛がられている。

 

『イブブイ!』

「あらイーブイちゃん!今日も元気そうね!」

『イブイ!』

 

イーブイがシンジの肩からひょこっと顔を出す。そんなイーブイをおばあさんは優しく撫でた。イーブイもおばあさんに撫でられ気持ちよさそうに微笑んでいた。

 

「今日も2人仲がよさそうね。そうだ!」

 

おばあさんは思い出したようにポンッと手を叩き懐から1つの袋を取り出した。

 

「ほら、今朝焼いたクッキーだよ。イーブイちゃんと仲良く食べな。」

「ありがとう!僕おばあちゃんの焼いたクッキー大好きだから嬉しいよ!」

 

シンジはそう言っておばあさんから貰ったクッキーをポケットにしまう。そしてクッキーをくれた優しいおばあさんに感謝して、イーブイと共に手を振りオーキド研究所へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オーキド博士!」

「おおシンジ君!今日もよく来たのお!」

 

シンジはオーキド研究所へと辿り着き、真っ先にオーキドの元へと走っていった。オーキドはシンジの顔を見るとすぐに笑顔で応対する。しかしそこにはもう一人見覚えのある人物がいたのであった。

 

「シンちゃん!おはよう!」

「ルナ!おはよう!でもその呼び方はやめて欲しいんだけど……」

 

そこにいたのはシンジの幼馴染であるルナであった。さすがにこの年になっていつまでも幼少期時代の呼び名で呼ばれるのは男として恥ずかしさがある。だがルナは「シンちゃんはシンちゃんだもん」と言って一向にやめる気配がない。これ以上言っても無駄だと悟ったシンジはこの件については諦めることにした。

 

「オーキド博士!今日の課題は何ですか?」

 

シンジはオーキドの今日の課題について尋ねる。

 

翌日ようやく10歳となってポケモントレーナーとして旅に出ることのできることを許されるシンジは、オーキドに毎日のように課題を与えてもらっている。ポケモントレーナーとして様々な知識をつけることは重要なことであり、自分のためだけでなくポケモンのためにも必要なことだ。

 

オーキドはそんなシンジに、ポケモントレーナーとして旅立つ前の最後の課題を与えた。

 

「うむ。今日の課題は至ってシンプル。この近くにある森に向かい多くのポケモンたちと触れ合ってくるのじゃ。」

「ポケモンと触れ合う……ですか?」

 

その課題はシンプルなものではあったが、イマイチオーキドの出した課題の意図が掴めなかったシンジ。そんな彼にオーキドは今回の課題について詳しく説明を始める。

 

「今回の課題はポケモントレーナーとしての適性力を試すもの、いわばテストみたいなものじゃな。」

「テスト……ですか?」

「そうじゃ。ポケモントレーナーたるもの、多くのポケモンとの触れ合い方を知っていなければならない。数多いるポケモンたちによっても触れ合い方や生態だけでなく、状況に応じての対処なども変化する。それらを自分の目で見て、自分の肌で感じ、自分の頭で考える。それがこの課題の目的じゃよ。」

 

オーキドの言葉にシンジは成程と納得する。確かに自分は今までイーブイとしか接する機会がなく他のポケモンとはあまり関わった記憶がない。旅に出る以上、他のポケモンのことも知っておく必要はあるだろう。

 

「分かりました!じゃあ早速行ってきます!」

「うむ。気を付けていくのじゃぞ!」

「シンちゃん!頑張ってね!」

 

オーキドとルナに見送られ、シンジはイーブイと共にオーキド研究所を飛び出し近くの森に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここがオーキド博士の言っていた森かあ……」

『イブ』

 

オーキド博士が言っていた森に辿り着いたシンジとイーブイ。普段は野生のポケモンが生息していて危険がないとは言い切れなかったため入ることはなかったが、いざ入ってみると多くのポケモンたちの姿が確認できてとても新鮮だ。

 

その森にはカントー地方でよく見かけるポッポをはじめキャタピーなどの虫ポケモンやニドラン、ナゾノクサにマダツボミなどの草ポケモンも多く生息していた。ポケモンたちにとってここは楽園にも近い環境なのだろう。

 

「色んなポケモンがいて楽しいね!イーブイ!」

『イブブイ!』

 

シンジの言葉にイーブイも嬉しそうに微笑み返事する。これだけのポケモンを目にすることが出来れば、ポケモントレーナーとなる前の彼らにとっては全てが新しいものに感じ嬉しさが込み上げてくるものだろう。

 

『イブ?』

「イーブイ?どうしたの?」

 

その時、イーブイの耳がピクピクッと反応し、イーブイはシンジの肩から飛び降りて走り出した。シンジはイーブイがどうしたのか分からなかったが、何かを見つけたのかもしれないととりあえずイーブイの後を着いて行くことにした。

 

暫く走っていくと、そこには一匹のポケモンがうめき声を倒れているのが確認できた。

 

そのポケモンは誰もがよく知っているポケモンで、紫色の体色に特徴的な飛び出した前歯。間違いなくこのポケモンはコラッタである。

 

しかしそのコラッタは様子がおかしく、よく見てみると後ろ足にケガを負っている状態であった。足掻いてはいるものの、ケガの痛みで動きたくても動けないのだろう。

 

「待って!その状態で動いたら危ないよ!今応急処置をするから!」

 

シンジは自分の持っているバッグの中からポケモン用のキズぐすりを取り出した。オーキドからトレーナーにとっては必需品だと言われ、それ以降いざという時のために持ち歩くようにしていたのだ。まさかこんなところで役に立つとは思っていなかったが、アドバイスは素直に受け取るものだと感じた。

 

『ラッタ!』

「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。君を傷つけたりはしないから。」

『イブ!イブブイブイ!』

『コラッタ……』

 

シンジとイーブイの説得に観念したのか、コラッタは少し警戒を解き抵抗することは無くなった。

 

「ちょっと沁みるけど我慢してね。」

『ラッタ!?』

 

シンジはコラッタの傷口にキズぐすりを吹きかける。コラッタは痛みから顔を歪ませるが、しばらくするとケガの痛みは徐々に引いて行き、後ろ足で立つことが出来るようになった。

 

シンジはその後、傷口から菌が入り込まないように絆創膏を貼る。これで一先ずの応急処置は完了だ。

 

「うん。これで大丈夫。後は無茶さえしなければ問題ないよ。」

『コラッタ!』

『イブブイ!』

「そうだ!お腹空いてるよね?これ食べてみる?」

 

シンジはそう言ってポケットから先ほどおばあさんに貰ったクッキーの袋を取り出した。その袋からクッキーを取り出し、コラッタに差し出す。

 

しかしコラッタは、みたことの無いものに警戒心を抱き匂いを嗅ぎ始める。さすがに初めて見るものを口に入れるのは少々躊躇してしまうものか。

 

「大丈夫だよ、ほら。」

『イブ♪』

 

そう言ってシンジはイーブイにクッキーを差し出した。イーブイはそのクッキーを嬉しそうに頬張り美味しそうに口にする。その様子を見たコラッタは警戒する素振りを見せず、もう一枚差し出したシンジのクッキーを小さく口にした。

 

『!?コラッタ!』

「美味しい?よかった!」

 

コラッタは口にした瞬間先ほどの警戒心が嘘のように微笑んでクッキーを平らげる。やはりお腹を空かしていたようで一瞬の内にクッキーを食した。シンジもその様子を笑顔で見守っていた。

 

「もうケガしたらダメだよ?」

『ラッタ!』

『イブブーイ!』

 

コラッタはシンジの言葉に頷いてその場を去っていく。改めてオーキドから色々な知識を教えてもらってよかったと思うのであった。

 

「ありがとう、イーブイ。君が教えてくれなかったらコラッタを助けられなかったよ。」

『イブイブ♪』

 

イーブイが真っ先にコラッタの存在に気付いたのはやはりポケモンだからであろう。

 

人間に比べポケモンの聴覚や嗅覚と言った感覚はより優れたできになっている。それは野生として生きることに必要であるため当然だ。だからこそシンジの気付くことが無かったコラッタの小さな声にも反応したのだ。

 

シンジはイーブイの頭を優しく撫でる。イーブイはシンジに撫でられて気持ちよさそうな声を出して喜んでいる。

 

その後も森の中の散策を続けるシンジとイーブイ。特に珍しいポケモンがいたというわけではないが、それでも他のポケモンと触れ合ったことのない彼らにとっては、どの出会いも新鮮なものばかりであった。

 

森のポケモンたちも最初は警戒していたが、シンジがイーブイや一部のポケモンたちと遊んでいるのを見て興味を持ったのか、次々と警戒を解きポケモンたちが彼らの元へと集まった。

 

シンジはポケモンたちと遊ぶのが楽しくて時間が経つのを忘れていた。気が付けばすでに日が暮れる時間となっていた。

 

そろそろ帰らなきゃ、と立ち上がるシンジ。その時、ポケモンたちがシンジとイーブイを誘っているかのように誘導し始めた。

 

「みんなどうしたの?」

『イブ?』

 

ポケモン達が自分をどこに連れて行こうとしているのか分からず尋ねるが、ポケモン達は笑顔でシンジを「こっちこっち」と誘導する。ポケモン達の目的が分からなかったシンジだが、なにか自分たちに見せたいものでもあるのだろうかと推測しついて行くこととする。

 

シンジとイーブイはポケモン達に誘われるまま森の奥へと入っていく。暫くすると奥から光が差し込み、大きく開けた場所に出た。

 

「!?ここって……」

『イブイ……』

 

そこには先ほどまでいた森とは思えない程キレイな花畑が広がっていた。周囲には様々なポケモンたちがのんびりと平和に暮らしているのが見られ、どうやらここは文字通りポケモン達の楽園としてみんな過ごしているようだ。

 

「もしかして、みんなは僕たちをここに案内したかったの?」

 

ポケモン達は笑顔で一斉に頷いた。彼らは仲良くなったシンジたちを自分たちのお気に入りの場所を見せたかったようだ。

 

その時、彼らの元に一匹のポケモンが近付いてきた。そのポケモンの正体を確認すると、後ろ足に目立つ絆創膏が貼ってあったため先ほど助けたコラッタであることが分かった。

 

「さっきのコラッタ?どうしたの?」

『コラッタ!』

 

近付いてくるコラッタに対して屈みこんだシンジ。するとコラッタがあるもの咥えたままそれを差し出してきた。

 

それは一本の小さな白い花であった。恐らく先ほどケガを治したお礼のつもりなのだろう。シンジはコラッタの気持ちを察し、その小さな花を受け取り礼を言う。

 

「ありがとう、コラッタ。」

『コラッタ!』

 

シンジに撫でられ嬉しそうに微笑んだコラッタはシンジの元を去っていった。野生のポケモン達に好かれる彼は、ポケモントレーナーとしての才能があるという証明だろう。当の本人は全く意識していないので自覚はないだろうが。

 

「それにしても、この森にこんなに綺麗な場所があったなんてね。」

『イブイ♪』

 

シンジとイーブイは予想外の展開に驚くと同時に感動する。特にイーブイは女の子でもあるためこういった綺麗な場所は好むであろう。

 

「またいつかここにこようか、イーブイ。」

『イブブイ!』

 

シンジの言葉にイーブイも賛同して笑顔で頷く。

 

これから自分たちも長い旅をする中でこのような綺麗な場所を見つけることもあるだろう。そういった場所を見つける度に記憶に残し、この場所を思い出してマサラタウンに戻ってきた時にまたここに立ち寄ろうと誓った。

 

シンジたちは2人で初めて冒険したこの場所を記憶の中へと刻み込み、翌日から始まる旅に胸を躍らせポケモン達に別れを告げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日、遂に10歳となったシンジがイーブイと共に旅に出る日がやってきたのであった。

 

「シンジ、本当に1人で旅なんて大丈夫?」

「心配しなくても大丈夫だよ、母さん。それにイーブイもいるから一人じゃないって。」

『イブブイ!』

 

シンジの言葉にイーブイも元気よく答える。その様子をみて、彼の母親も大丈夫なんだろうと不思議と安心感を抱くことが出来た。

 

「そうね。イーブイ、シンジのことよろしくね。」

『イブイ♪』

 

イーブイも任せてと言わんばかりに胸を張って答えた。彼らはきっといいパートナーとして成長できるのだろうなと心の中から思うことが出来てホッとする母親であった。

 

「シンちゃん。」

「ルナ?」

「私が旅に出るのはもう少し先になるけど、すぐに追いかけて追い抜くから!覚悟しててよね!」

「旅先でルナと会うの、楽しみにしてるよ!でも、トレーナーとしてルナには絶対に負けないからね!」

 

シンジは幼馴染のルナと一時の別れを交わす。しかしトレーナーとして負けないと誓い、旅先での再会を約束した。

 

「シンジさん!」

「戻ってきたら必ず話聞かせてね!」

「コウタ、コウミ。もちろんだよ!必ずいい土産話を持ってくるから!」

 

彼の兄弟にも近いコウタ、コウミとも別れを告げる。彼らはまだ幼いためシンジのようにポケモンを持って旅に出ることが出来ない。そのためシンジは彼らのために旅で学んだこと、経験したことを戻ってきた時にいっぱい話すと約束した。

 

「シンジ君。」

「おばあちゃん?」

「ほらこれ。今朝またクッキー焼いたから、イーブイちゃんとお食べ。」

「ありがとう!おばあちゃん!」

『イブブイ♪』

 

シンジは先日のようにおばあさんからクッキーをいただきポケットにしまう。大好きなクッキーを貰えてシンジとイーブイは笑顔で感謝する。

 

「それとこれ、持っていきな。」

「え?これって……。」

 

おばあさんはシンジにクッキーとは違う何かが入った袋を渡す。その袋は見た目の割に結構重量があり、中身が気になったシンジはその中身を尋ねる。

 

「それはみんなからシンジ君のために集めたお金だよ。お小遣いとして使っておくれ。」

「え!?そんなの貰えないよ!」

「いいからいいから。私たちはシンジ君に旅を満喫してもらえればそれだけで満足なんだから。」

「おばあちゃん……みんな……」

 

見送ってくれたみんなを見渡すシンジ。みんなはそんな彼に微笑みかける。それを見たシンジは、みんな自分のためにここまでしてくれたのならタダで戻ってくるわけにはいかないなと決意を新たにする。

 

「僕、必ず一人前のトレーナーになって帰ってくる!イーブイと一緒に誰よりも強くなって帰ってくる!」

 

そんなシンジの姿を町のみんなは笑顔で見つめる。そして彼はその決意とみんなの温かい心を胸にしまい込み長い旅の一歩を踏み出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、彼らは多くの事を経験することになる。共に旅をする多くの仲間たちとの出会い、因縁の相手との戦い、様々な地方での未知なる冒険、大切な人との出会い、未知の存在との遭遇、そしてまだ見ぬ高みの世界。

 

彼らは常に共に歩み、苦楽を共にし、成長することとなる。この話は、彼らがそんな旅をする前に経験した記憶の1ページである。

 

彼らが歩む未来は、まだ始まったばかりなのである。




次回実質的なカントーラストになります(タブンネ)

遂に明日はミュウツーの逆襲公開ですぞ!ヌシは15日の月曜に見に行く予定です。当時を懐かしみながら涙腺崩壊してきます。

そして今日はみんなの物語放送日!去年は最高級に面白かったので個人的にも楽しみです。
自己満足で始めたこの小説も、読者の皆に楽しみにしていると思っていただけたら嬉しいです。これからもヌシも頑張るので応援よろしくです!

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