ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》 作:ブイズ使い
脳内ピンクのヌシでは無理のようです
リーリエとブルーの激しい激闘から一夜明けた翌日、今日は次なる強敵であるコウタとの対戦当日だ。
間もなくリーリエとコウタによる準決勝第一試合が始まる時間だ。しかしその前に、強敵との戦いを前に緊張しているであろう彼女の元に母親であるルザミーネを始め、シンジとブルーも激励にやってきていた。
「いよいよ準決勝ね、リーリエ。」
「……はい、お母様。」
準決勝を前に母親に声をかけられ緊張の色が隠し切れないリーリエにルザミーネは苦笑する。そんな娘にルザミーネは激励の言葉をかける。
「そんなに緊張してると後が持たないわよ?少しは深呼吸してリラックスしなさい。」
「は、はい!」
ルザミーネの言った通りに深呼吸して気持ちを落ち着かせるリーリエ。少しは表情が和らいだようだが、それでも完全に解れたとは言えない様子だ。そんな彼女に今度はブルーが口を開きため息交じりに声をかける。
「……はぁ、これじゃあ最後まで戦い抜けるかどうかすら怪しいわね。」
「も、申し訳ありません……。」
「いい?あんたはあたしに勝ったんだからもっと自信を持ちなさい。あたしに勝った勢いで次も勝つのよ!無様な負け方したら承知しないからね!」
「ブルーさん……」
ふんっ、と頬を僅かに赤くしてそっぽを向くブルー。彼女に言い方は少しキツイように思えるかもしれないが、その言葉は彼女なりの激励なのだとリーリエは理解できた。素直になれないブルーらしいとリーリエは笑みを零した。
リーリエの緊張が少しずつ解れていくのを察したシンジは、最後に一言だけリーリエの眼を真っ直ぐと見つめ彼女に言葉をかける。
「リーリエ。」
「!?はい、シンジさん。」
「……頑張ってね。」
「……はい!」
ここまで駆け上がってきた彼女にこれ以上言葉を伝える必要はないだろうとシンジはその言葉だけを口にした。たったその一言だけの言葉ではあったが、その言葉には色々な意味が込められているのだとリーリエは感じ取ることができた。
例え誰が相手でも今まで経験したことを活かして戦うこと、ポケモンバトルを楽しむこと、そして自分とポケモンのことを信じること。それらの意味も同時にそのたった一言に込められているのだとリーリエは悟ることができた。だからこそリーリエはシンジの言葉に対して「はい」と返答したのだ。
間違いなくコウタは強敵だ。それもリーリエにとっては最大の天敵と言ってもいい相手。テクニックとスピードで相手を翻弄しながら戦うリーリエに対し、コウタは正面から圧倒的な力を有して攻めるパワータイプ。パワー不足がどうしても目立つリーリエにとってはブルー以上に苦手な相手であろう。
しかし、それでも勝てる確率はゼロではない。リーリエは自分がみんなに支えられてここまでこれたのだということを改めて感じ、みんなに心の中で深く感謝する。
そして遂に準決勝が開かれる時間となり、リーリエは席を立ちあがりみんなに告げた。
「では行ってきます!」
リーリエはそう言って覚悟を決めた顔でその場を去り、コウタの待つ戦いの舞台へと向かっていく。シンジたちはリーリエの背中を見送り、自分たちもと会場へ向かっていったのだった。
「遂にリーリエと戦う時がきたな……」
コウタは自分の控室でそう呟く。普段は楽観的な態度をとる彼だが、今日は珍しく緊張の色が伺える様子で俯いている。
「……緊張するなんて俺らしくないな」
自分ですら緊張していることがすぐ分かるぐらいには手が自分の汗で滲んでいた。
普段なら緊張することのないコウタだが、相手はリーリエ。類を見ることのない戦術を繰り出し予想不可能の戦いぶりを見せてきた彼女と戦うのに緊張しない方が不思議な相手だ。そして何より彼が気にしていることは……。
「俺がこれまで目標としてきた人に戦い方が似てるからか?憧れだったあの人と旅をしてきた相手だから?」
どちらにせよ、一筋縄でいく相手であるのは明白。いつも以上に緊張感をもって挑むのは間違いではない。寧ろ警戒心を強く持って戦った方がいいだろう。
何故なら他では類を見ない戦い方をするという事は常識が通用しない相手でもある。それは自分にも言えることではあるが、自分とは真逆の戦術を使う分余計に理解の及ばない戦いになるだろう。
自分はあの時以来強くなったと自覚している。以前戦った時はタッグバトルとは言え敗北してしまった。その時はまだまだ駆け出しでお互いに未熟だった。だが今は互いに成長を重ね夢の舞台に立ち、今再び相まみえようとしている。
彼女も今頃準決勝に向けて集中力を高めているだろう。自分との戦いのために対策を考え作戦を練っているかもしれない。
だが自分は頭で考えるのは苦手だ。どんな相手でも自分の戦い方を貫き通し真っ向からぶつかって勝つ。それこそが自分の信念だ。
「……ふぅ、よし、そろそろ行こう!今日も頼むぜ?相棒!」
コウタは立ち上がり自身の持つ最大の相棒に呼びかける。その言葉に反応するかのように、彼の腰にあるモンスターボールが僅かに揺れ、それを確認したコウタは控室を後にしたのだった。
「それではただいまより、準決勝第一試合!リーリエ選手対コウタ選手のバトルを開始いたします!」
審判の合図と同時に両者共に姿を現す。両トレーナーの登場により会場の観客たちの歓声は大いに盛り上がり最高潮に達する。
準決勝まで勝ち上がった両者。そのどちらもが凄まじいバトルを繰り広げているのだ。バトル好きのトレーナーであれば期待しない方が無理な話である。
「シンジさんはどっちが勝つと思いますか?」
「僕にも正直分からない。」
ブルーの質問にシンジはきっぱりとそう答える。心の中ではリーリエを応援したいと言う気持ちはあるものの、チャンピオンとしての性かそれを許すことのできない自分がいる。自らの感情で特定のトレーナーを贔屓することは出来ない。
「リーリエは確かに強くなった。だけどそれはコウタにも言えること。」
「以前2人は戦ったことがあるんですか?」
ブルーの言葉にシンジは頷く。
「でもその時は僕とのタッグでの勝敗。シングルバトルとタッグバトルでは勝手が違うからね。」
タッグバトルは相方とのコンビネーションが重要になってくる。お互いの欠点や相性をお互いにカバーし合えばいつも以上に力を発揮することは可能だ。
だが一般的なルールであるシングルバトルでは話が変わってくる。当然自らの力やポケモンの力、それに咄嗟の判断など頼れるのは全て自分と自分のポケモンのみだ。誰かが助けてくれることはない。
今回リーリエは1人の力でコウタと戦うことになる。コウタのポケモンはパワーが備わっているため1人で戦う事にも当然長けている。寧ろ彼のバトルスタイルを考えるとタッグよりもシングルの方が適正が高いだろう。
逆にリーリエは視野が広くサポートをする戦術が得意であるためどちらかと言えばタッグ向けのバトルスタイルだ。その点で考えればコウタの方に分がある。
しかしあながちリーリエが一方的に不利なのかと言えば違う。リーリエの独特な戦い方にはコウタもあまり経験があるとは言えない。リーリエがコウタを追い詰める可能性も十二分にある。それらを考慮するとこのバトルがどちらに転ぶかは判断に悩むところだ。
「……結果はすぐに出ると思うよ。」
「……そうですね。」
「リーリエ……最後まで頑張りなさい。」
ルザミーネはそう呟いて自分の娘の健闘を祈った。
「ルールは準々決勝と同じくフルバトルとなります!どちらかのポケモンが6体全て戦闘不能となったらバトル終了です!」
審判のルール確認を聞き両者が小さく頷く。
「それでは両者、ポケモンを!」
そして2人は同時にモンスターボールを手にしフィールドに投げた。
「行くぞ!エアームド!」
『エアー!』
「お願いします!フシギソウさん!」
『ソウ!』
コウタが繰り出したのははがね・ひこうタイプのエアームド。対してリーリエの繰り出したのはくさ・どくタイプフシギソウだ。相性を見れば圧倒的にフシギソウが不利だ。しかし今まで様々な窮地を脱してきたのを目の当たりにしているため、この局面をどうやって突破するかに注目が集まっている。
例え相性がいい相手でも、コウタは油断するような素振りは見せない。コウタはエアームドと共に絶対に勝つのだと気合を入れる。
「バトル開始!」
そしてバトル開始の合図が宣言される。それと同時に動き出したのはコウタとエアームドであった。
「エアームド!スピードスター!」
『エア!』
エアームドが繰り出したのは命中率が極めて高いスピードスターだ。昨日とは打って変わって堅実な立ち回りにシフトしたのか、予想とは大きく外れ困惑するリーリエだったがそれでも対処するのは難しくなかった。
「フシギソウさん!はっぱカッターです!」
『ソウソウ!』
『エアームドの攻撃をフシギソウがはっぱカッターで防いだぁ!最初から技の応酬が炸裂!』
フシギソウは無数のはっぱカッターを放ちエアームドのスピードスターを撃ち落とす。威力にほぼ差はなく互いの技が相殺し合う光景がそこにはあった。
「続けてラスターカノン!」
「躱してください!」
エアームドはラスターカノンを直線上に放ち、フシギソウはその攻撃をジャンプすることで回避する。しかしその回避が逆に仇となり隙を晒してしまう結果となった。
「はがねのつばさ!」
『エアー!』
『ソッ!?』
エアームドはラスターカノンを放ちながら接近しており、ジャンプして回避したフシギソウの隙を狙ってはがねのつばさを直撃させる。
『フシギソウにはがねのつばさが炸裂!見事な連続攻撃に翻弄される!』
はがねのつばさを受けてしまったフシギソウは大きく飛ばされるが、それでも受け身をとり態勢を立て直すことに成功する。思った以上のダメージもなく、フシギソウからはまだまだ行けると言う意思を感じ取ることができた。
「畳みかける!ラスターカノン!」
さらにラスターカノンで追撃の一手を加えるエアームド。しかしそう何度も同じ手を喰うほどリーリエは甘くなかった。
「エナジーボールで迎え撃ってください!」
『ソウ!』
エナジーボールを放ちラスターカノンを正面から打ち崩す。互いの威力は互角であり、互いに技が相殺し合い衝撃が発生する。
これはいつものリーリエの必勝パターンだと焦り、コウタは慌てて行動に移った。
「エアームド!はがねのつばさで振り払え!」
エアームドは元々硬い翼をさらに硬化させ、その翼を勢いよく振り払うことで衝撃による煙の障害を排除する。しかしそこには既にフシギソウの姿はなかった。
「っ!?しまった!」
「フシギソウさん!つるのムチです!」
『ソウ!』
ハッとなり上を見るコウタとエアームド。その2人の目に映ったのはつるのムチを構えているフシギソウであった。
フシギソウのつるのムチは見事エアームドの背中にヒットし、エアームドは勢いよく地面に叩きつけられる。はがね・ひこうタイプのエアームドに対しフシギソウの攻撃は効果が薄いが、地面に叩きつけた衝撃はエアームドの体力をを確実に奪っていた。それでもエアームドは即座に再度飛び上がり態勢を整えた。
『おっと!今度はフシギソウの反撃だ!序盤からどちらも一歩も引かない攻防が繰り広げられております!』
「さすがに今のは効いたぜ。なら一気に決めるぞ!エアームド!ブレイブバード!」
『エアァ!』
エアームドは急上昇したのちすぐに急降下し地面すれすれをもの凄いスピードで飛行し接近してくる。ひこうタイプ最強クラスの技であるブレイブバードだ。威力は見て分かる通り壮絶なもので当たればくさタイプのフシギソウであれば一溜りもない。
エアームドのブレイブバードはスピードもキレも抜群で受けることはほぼ不可能と言ってもいいだろう。躱すにしてもあの機動力では追いかけられて直撃を受けるのが関の山だ。
「フシギソウさん!走ってください!」
『ソウ!』
『なんとフシギソウ!エアームドとは逆の方向に走り出したぞ?いったい何をするつもりなのか!?』
フシギソウはエアームドとは逆の方向、つまりエアームドの進行方向に向かって走り始めた。一見無謀な行動で、スピード差は歴然としてエアームドの方が圧倒的に早い。このままでは追いつかれるのも時間の問題だろう。
だがあのリーリエがこのまま何もなしにやられるとは思えない。しかしコウタには彼女の思考を読むことができない。コウタが頭を悩ませる中、その時リーリエは逆転の一手へと移る。
「フシギソウさん!ジャンプです!エアームドさんに乗ってください!」
『ソウソウ!』
『エア!?』
フシギソウは接近してくるエアームドは受け流すようにジャンプし、エアームドの背中へとジャンプして飛び移る。これにはエアームドも驚き思わずブレイブバードが解除され動きを止めてしまう。
「なっ!?くっ!エアームド!振り落とせ!」
『エアッ!エアー!』
エアームドはフシギソウを振り落とそうと必死にもがくが、フシギソウもエアームドをガッチリと掴んで離そうとしない。動きの止まったエアームドには隙が生じ、リーリエとフシギソウに最大の反撃のチャンスが生まれた。
「今です!フシギソウさん!エナジーボール!」
『ソウ!』
『エア!?』
フシギソウはエアームドの背中にしがみついた状態でエナジーボールを放つ。無防備状態のエアームドには当然防ぐ手立てがなく、それも背中に零距離で直接エナジーボールを受けてしまったため大きなダメージとなりその場で墜落し、戦闘不能となった。
『エアァ……』
「エアームド戦闘不能!フシギソウの勝ち!」
力尽きてしまったエアームドを労いながらモンスターボールへと戻したコウタ。結果はフシギソウの勝利に終わったがこの勝利は決して簡単なものではなかった。
一見ダメージも少なくフシギソウには余裕が残っているように見える。しかし最後にエアームドにしがみついた際に体力を消耗してしまったのだ。しがみついている最中に暴れられてしまってはダメージはなくとも自然とスタミナが奪われてしまう。結果は勝利だったが、現状を考えると差は全く広がってないと言ってもいい。
「フシギソウ!驚くべき方法でエアームドを撃破だ!さあ、続いてのコウタ選手のポケモンは?」
「頼むぞ!ヨノワール!」
『ヨノワ!』
コウタが二番手として繰り出したのはてづかみポケモンであるゴーストタイプのヨノワールだ。ゴーストタイプという独特のタイプから繰り出される技は非常に厄介かつ強力だ。この相手にリーリエはどう立ち向かうのだろうか?
「フシギソウさん!このまま行きますよ!」
『ソウ!』
リーリエはフシギソウの『まだまだ行ける』という意思を感じ取り、その意思を尊重してフシギソウの続投を宣言した。
「フシギソウさん!はっぱカッターです!」
最初は堅実にはっぱカッターから入るフシギソウ。ゴーストタイプ相手であれば正しい判断かもしれないが、その牽制も意味を成さなかった。
「シャドーパンチ!」
『おっとヨノワールの姿が消えてしまったぞ!一体どこに行ってしまったのか!?』
ヨノワールはその場からスッと姿を消しはっぱカッターを回避する。周囲を見渡しても全く姿が見えずにキョロキョロとするフシギソウだが、その背後には怪しげな影が存在していた。
「!?フシギソウさん!後ろです!」
『ソウ!?』
ヨノワールの存在に気付いたリーリエは咄嗟にフシギソウに伝えるが、時は既に遅くヨノワールの振りかぶった腕に反応できず吹き飛ばされてしまう。
「おにびだ!」
『ヨノッ!』
ヨノワールは怪しげな炎を放ちフシギソウを襲う。体力を消耗してしまったフシギソウはその攻撃を耐えられるはずもなく力尽きその場で倒れてしまう。
「フシギソウさん!」
『そ、ソウ……』
「フシギソウ戦闘不能!ヨノワールの勝ち!」
ヨノワールの攻撃に手が出せず負けてしまったフシギソウ。しかしフシギソウは不利な相手であるエアームドを倒すことができたため功績は充分。リーリエはそんなフシギソウをモンスターボールへと戻し感謝の言葉を伝えゆっくり休むように言った。
『ヨノワールの動きに全くついて行くことができずフシギソウダウン!リーリエ選手の次のポケモンは一体どのポケモンか?』
「お願いします!マリルさん!」
『リル!』
リーリエが次に繰り出したのはマリルだ。タイプ相性では優劣をつけることは出来ないが、ヨノワールにはダメージが一切ないため条件はほぼ五分と五。どちらに軍配が上がるかは検討がつかない。
そんな状況で先に動いたのは意外にもリーリエであった。
「マリルさん!バブルこうせんです!」
『リルル!』
マリルはバブルこうせんで先制攻撃をする。マリルの常套手段であるが、ヨノワールは再び同じ方法で動き出した。
「シャドーパンチ!」
ヨノワールは再び静かに姿を闇に潜めた。どこからくるかは不明だがこのままでは間違いなくいい的となってしまう。
「完全に消えてしまったわけではないはずです!マリルさん!周囲全体にバブルこうせんです!」
『リル!』
マリルはその場で回転しながらバブルこうせんを放つ。もはや無差別に放たれるバブルこうせんはヨノワールを捉えてなどいないが、それでも間違いなくその行動に意味はあった。
マリルのバブルこうせんは放った後も持続し、無数の泡が空中に浮いたままであった。何が目的なのだろうかと考えるコウタだが、その時フィールドに異変が起こった。
「!?見えました!」
リーリエがそう言った瞬間、フィールドに散らばった泡が一部弾けた。それはまさしくヨノワールがその場にいるという証拠であった。
「マリルさん!アクアテールです!」
『リルゥ!』
『ノワッ!?』
マリルはアクアテールを薙ぎ払うことでヨノワールに攻撃する。気付かれたと悟ったヨノワールは咄嗟に姿を現し急いでその攻撃を回避し直撃を免れた。
「ふぅ、あっぶね。もうこの手は通用しないか。」
だったら今度はいつも通りの正攻法で行くべきだと、コウタはヨノワールと共に攻勢へと移った。
「ヨノワール!あくのはどう!」
『ノワ!』
ヨノワールは両腕からどす黒い波動、あくのはどうを放つ。先ほどのような丁寧な立ち回りから一転し、正面突破の戦術に切り替えたようだ。
「マリルさん!アクアテールで弾いてください!」
正面から迫ってくるあくのはどうをアクアテールで弾き飛ばすマリル。そのあと隙を狙いヨノワールは休む暇を与えることなく追撃する。
「シャドーパンチ!」
ヨノワールは今度は一瞬のみ姿を消し、その僅かな時間でマリルとの距離を縮め目の前に姿を現す。そのスピードに驚きマリルはシャドーパンチによる手痛い一撃を受けてしまう。
「マリルさん!」
「おにび!」
「バブルこうせんです!」
ヨノワールのおにびを上手くバブルこうせんで妨害するマリルだが、それでもヨノワールの怒涛の攻撃は収まらない。
「もう一度シャドーパンチ!」
「アクアテールです!」
再びシャドーパンチにより急接近し近接攻撃を仕掛けるヨノワールの攻撃をマリルはアクアテールで弾く。それでもヨノワールは手を緩めることはなかった。
「連続でシャドーパンチだ!」
「こちらも連続でアクアテールです!」
フィールドの中央でシャドーパンチとアクアテールの応酬が繰り広げられる。刀を交えるかのように互いの技がぶつかる音が会場全体に響き渡る。
シャドーパンチとアクアテールの応酬が繰り返される内にどちらの体力も限界が近くなり勢いが弱まりつつある。その瞬間にヨノワールは僅かに距離を離した。
「っ、おにび!」
「バブルこうせんです!」
『ノワッ!』
『リィル!』
そして両者同時におにびとバブルこうせんを放ち技が中央でぶつかる。どちらの攻撃も強力かつ距離もそれほど離れていないため衝撃は自然と大きくなり、ヨノワールとマリルの両者を包み込むように広がった。
「くっ、ヨノワール!」
「マリルさん!」
2人はポケモンの安否が心配になり大声で呼びかける。しかし一切の返事はなく徐々にその衝撃が晴れ現状が明らかになっていく。
するとそこにはヨノワールとマリルの姿があった。しかしどちらも仰向けで倒れており、目を回した状態であった。互いに体力の限界が訪れ相打ちになりダブルノックダウンとなってしまったのだ。
『リル……』
『ノワ……』
「マリルとヨノワール!共に戦闘不能!」
『なんと!?マリルとヨノワール!両者ダブルノックダウンだ!準決勝第一試合!序盤から激しい攻防が繰り広げられております!これはどちらが勝つか予想がつきません!』
どちらも一歩も引かないバトルが展開される準決勝第一試合。ほぼ互角の戦いに観客も魅了されている。
リーリエはマリルとフシギソウ、コウタはエアームドとヨノワール、共に二体のポケモンを失った。果たしてこのバトル、勝利の女神はどちらに微笑むのか?準決勝の舞台はまだまだ始まったばかりだ!
アニポケの鬼火は何故か攻撃技扱いになっているのでこの小説でも攻撃技です。火傷効果なんてなかった……。
前にも言った気がしますがバトルの内容は全く考え無しに書いているので書いてる最中にちょくちょく内容は変更されていたりします。元々はヨノワールがフシギソウとマリルを倒してリーリエ不利の状況になる予定でしたがこうゆう結果に。
にしても次回で終わるか不安です。もしかしたらまた3話続く可能性……。今回はスピーディーな展開にしようとしたのに結局こうなる始末ですよ。なにやってんだよ団長!
兎に角また次回です!ノシ