ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》 作:ブイズ使い
どうでもいいことですが前回で全体文字数がフリーザ様の戦闘力を超えてました。だからどうしたというわけではない。
ニンフィアかわいい
ルナとの再戦に備えシンジと特訓をしたリーリエとポケモンたち。今、最後のバッジをかけたリーリエのリベンジが始まろうとしていた。
「リーリエ、もう再挑戦の準備は出来たってことでいいの?」
「はい!今度こそ絶対に勝って、バッジをゲットしてみせます!」
リーリエの決意溢れる表情にルナもニヤリと笑みを浮かべる。それだけルナもリーリエの成長を感じ取り、この再戦を楽しみにしていたのだ。
そんな彼女たちの姿を、シンジは観客席にて眺めていた。
「リーリエ、いい顔になってきたね。ただ問題は、リーリエが本来以上の力を発揮できるかどうか、だね。」
ハッキリ言えば特訓の段階ではルナに勝てる確率はゼロに近い。あのままでは再び負ける可能性が高いのは明白だろう。
しかし、短期間で強くなるのは不可能だという事もまた事実。望みの薄い特訓に時間を費やすよりも、実戦で自身の力を限界以上に引き出すことの方が確立が高い。
特にリーリエは本番に強いタイプのトレーナーだ。そう言ったトレーナーの方が強くなる可能性も高く、予想外の結果を招くという事も多い。シンジはそう考え、彼女をこの戦いの舞台へと送り出したのだ。
「……いつか僕の前に立つと考えると、楽しみである反面ちょっと怖いね。」
シンジはありえる未来を想像し、僅かに口角が上がり微笑んだ。
「それではこれより、チャレンジャーリーリエ対ジムリーダールナによるジム戦を始めます!使用ポケモンはジムリーダーが1体。対してチャレンジャーは3体のポケモンを使用していただきます!それでは両者、ポケモンを!」
「私のポケモンは当然この子!行くよ!チルタリス!」
『チィルゥ!』
審判の合図と同時にルナは生き生きとした様子でチルタリスを繰り出した。そしてすぐに腕のメガリングに手をかけた。
「さっそく全力で行くよ!チルタリス!メガシンカ!」
『チルゥ~!』
チルタリスのスカーフについているメガストーンとルナのキーストーンが共鳴を開始する。互いの持つ石から光が交差し、その光に包まれたチルタリスの力が膨大に膨れ上がりチルタリスはその光から解き放たれた。
『チィル!』
そこにいたのはかつてリーリエが成すすべもなく敗北してしまったメガチルタリスの姿であった。以前と同じで、チルタリスから放たれる威圧感はただものではない。リーリエにも緊張が走り、僅かに手が汗ばんでくる。
だが、それでも彼女とメガチルタリスに勝つのだと強い意思を持ちモンスターボールを手にした。
「お願いします!チラーミィさん!」
『チラ!』
リーリエが繰り出したのはチラーミィだ。リーリエが最初にルナと戦った時に最初に繰り出したのも同じくチラーミィであった。彼女はあの時と同じメンバーでリベンジを果たすつもりのようだ。
「それでは、バトル開始!」
審判の合図によりジムバトルが開始される。先に動いたのはリーリエであった。
「チラーミィさん!スピードスターです!」
先ずはスピードスターによる牽制を仕掛ける。堅実かつ高速なこの一手はいつものチラーミィの戦い方だ。だがその手はルナも当然読んでいた。
「りゅうのはどう!」
チルタリスはりゅうのはどうでスピードスターを正面から蹴散らす。チラーミィはその攻撃を難なく回避する。互いにダメージを与えるのが目的の攻撃でなかったため攻撃を凌ぐのは容易であった。
そしてお互いに挨拶が済んだのか、チラーミィは本格的な攻勢へと入った。
「チラーミィさん!走って撹乱してください!」
チラーミィは自身の素早さを活かしチルタリスに捉えられないように接近する。さすがのチルタリスも簡単に攻撃を加えることは出来ないが、この状況でも慌てず冷静にチラーミィを観察している。
「おうふくビンタです!」
『チラッミ!』
チラーミィはチルタリスの懐の潜り込みおうふくビンタにより近接戦を仕掛けた。しかし、当然と言わんばかりにチラーミィの攻撃はあの技によって防がれたのであった。
「コットンガード!」
『チィル!』
チラーミィの果敢な攻撃はコットンガードによって防がれてしまう。コットンガードによって弾き返されたチラーミィは空中で態勢を立て直し反撃する。
「続けてスピードスターです!」
「はがねのつばさで防いで!」
チラーミィはスピードスターによる怒涛の攻めを見せるチラーミィ。しかしチルタリスははがねのつばさを盾にして攻撃を完全に防ぐ。そしてダメージを殺したチルタリスはすかさず反撃の態勢に入る。
「りゅうのはどう!」
チラーミィの着地の隙を狙ってりゅうのはどうで攻撃を仕掛けたチルタリス。このままでは以前戦った時と同じ結果となってしまう。しかしリーリエもこうなることは読めていたと、すぐにチラーミィに指示を出した。
「チラーミィさん!あなをほるです!」
『チラミ!』
チラーミィはあなをほるでりゅうのはどうを回避し地中へと潜る。攻撃後の着地によってできる隙をあなをほるで上手く無くしたのだ。前回と違いはがねのつばさによる防御をしてくると充分に予測で来ていたからこそリーリエも反応出来たのだ。
これにはルナとチルタリスも驚かずにはいられない。あなをほるは前回の戦いで見せていない。知らない技を見せられれば咄嗟に対応するのは例え強者であっても難しい。それにあなをほるは地中に潜り姿を隠し、どこからでてくるか分からない技であるため相手にとっては厄介な技である。
「今です!」
リーリエの合図と同時にチラーミィは地中から飛び出して姿を現した。チラーミィはチルタリスの足元から飛び出し、直接攻撃を加える選択をした。
ひこうタイプを失ったチルタリスにあなをほるが直撃し、チルタリスは今の一撃で大きく怯む。どれだけ鍛えていたとしても、地中からの不意打ちであればダメージはあるだろう。
「続けておうふくビンタです!」
あなをほるで怯んだチルタリスにおうふくビンタが炸裂する。チルタリスにおうふくビンタが複数ヒットし、チルタリスは叩きつけられる。このダメージはどちらにとっても大きい意味があるだろう。
しかし、チルタリスは今のダメージを耐え再び空へと浮かび上がる。メガシンカともなれば攻撃力だけでなく耐久力も一級品だ。チルタリスにもまだまだ余力がある様子である。
「中々やるじゃん。でもまだまだ!チルタリス!りゅうのはどう!」
「っ!?躱してください!」
チルタリスのりゅうのはどうをジャンプすることで回避するチラーミィ。だがチルタリスとルナの怒涛の反撃は休むことはなかった。
「はがねのつばさ!」
『チィル!』
『チラ!?』
ジャンプして回避したチラーミィにはがねのつばさが直撃する。今度は逆にチラーミィが地面に叩きつけられてしまい大きなダメージを負う。
「今だよ!ムーンフォース!」
「スピードスター!」
高所からムーンフォースを放つチルタリス。それに対しチラーミィはスピードスターで反撃するも、明らかにダメージとパワーによる差があり押し負け、ムーンフォースがチラーミィに直撃する。
砂埃が晴れると、そこにはチラーミィが目を回して倒れている姿が映った。前回に比べかなり健闘したが、それでも虚しく倒れてしまった。
「チラーミィ、戦闘不能!チルタリスの勝ち!」
「……お疲れさまでした、チラーミィさん。あなたの努力は無駄にはしません。」
リーリエはチラーミィをモンスターボールへと戻す。敗北こそしてしまったが、チラーミィの戦いは決して無駄ではない。そう思ったリーリエは次に繰り出すポケモンの入ったモンスターボールを握り締める。
「お願いします!マリルさん!」
『リルル!』
次に繰り出したのはマリルだ。前回でも2番手を務めていたため、ルナもマリルが来ることは分かっていた。
その時、シンジの持つモンスターボールの一つが揺れ、そこから一匹のポケモンが飛び出した。
『イブイ!』
「イーブイ?君も応援したいの?」
『イブブイ!』
「じゃあ一緒に応援しよっか。」
イーブイはモンスターボールから自分で飛び出し、自分も応援したいと頷いた。シンジもイーブイと応援しようと、イーブイを抱きかかえた。
『イブブーイ!』
『リル?リルルー!』
イーブイの声に反応し、マリルも元気よく手を振って答える。もしかしたら、仲の良いマリルを応援したくてイーブイはモンスターボールから出てきたのだろうか。
だが、マリルもイーブイが見てくれているのに気付くとどこかやる気に満ちている様子である。それだけイーブイに見られていることが嬉しいのかもしれない。
「マリルさん!バブルこうせんです!」
「はがねのつばさ!」
マリルがバブルこうせんで先制攻撃を仕掛ける。しかしチルタリスはバブルこうせんをはがねのつばさを振るって正面から打ち消した。それでも怯むことなく、マリルはチルタリスを攻め立てる。
「ころがるです!」
『リル!』
マリルはころがるで一直線にチルタリスへと向かう。だが当然その動きはルナたちにも読めていた。
「りゅうのはどう!」
りゅうのはどうによりマリルの行く手に一点のくぼみをつくり進行を遮る。しかしリーリエもそうなることは予測済みだ。
「横に回避してください!」
マリルは転がりながら横に回避してくぼみを避ける。それでもチルタリスとの距離はまだかなりある。チルタリスは冷静に次の妨害行動へと移る。
「もう一度りゅうのはどう!」
『チィル!』
チルタリスは再びりゅうのはどうを放つ。しかしそのりゅうのはどうは先ほどと違い一点ではなく、薙ぎ払う形で放たれた。そのりゅうのはどうにより今度は長いくぼみができ避けることは難しい状況になってしまった。
マリルも勢い余りそのくぼみに嵌り大きく飛び跳ねる。このままでは前回と同じ結果となり終わってしまう。だがマリルもリーリエも、あの時のまま終わるはずもなかった。
「今だよ!はがねのつばさ!」
「その勢いを利用してください!アクアテールです!」
隙を見つけたとはがねのつばさで近接攻撃を仕掛けるチルタリス。しかしリーリエはこの瞬間を待っていた。
飛び跳ねてしまったが、マリルは現在勢いがついている状態だ。その勢いを利用し、ころがるを解除して空中から尻尾に力を込めアクアテールを放つ。咄嗟の事にチルタリスははがねのつばさを盾にしてアクアテールを防いだ。
しかしマリルの放ったアクアテールはガードしたチルタリスを弾き返して地上に叩き落とすことに成功する。上空から落とされたチルタリスは空中で態勢をなんとか立て直す。
「まだまだ!チルタリス!ムーンフォース!」
『チィル~!』
チルタリスはムーンフォースで攻撃後の隙をさらしたマリルに攻撃する。空中にいるマリルは当然回避することができずに直撃を受けてしまう。
「マリルさん!大丈夫ですか!?」
『イブ!?』
『リルル!』
なんとか受け身をとりダメージを抑えるマリル。リーリエとイーブイはマリルが心配になり呼びかけると、マリルもそんな2人の声に答えまだまだ行けると言う意思表示をする。
「バブルこうせんです!」
『リルゥ!』
「来たね。回転しながらはがねのつばさ!」
マリルはバブルこうせんで反撃する。だがチルタリスははがねのつばさで迎え撃つ。
チルタリスはそこに回転を加えることで勢いをつけ、バブルこうせんを無効化する。さらに回転することで通常のはがねのつばさよりも範囲が格段に広がる。それによりマリルは回避が間に合わずに直撃を受ける。鋭さも増し、これはただでは済まないダメージとなるだろう。
マリルは諦めずに立ち上がるが、それでも虫の息と言った様子だ。倒れてしまうのも時間の問題だ。
「ムーンフォース!」
チルタリスはムーンフォースでフィニッシュに入る。その時、リーリエは1つの作戦を思いついた。
(少し危険かもしれませんが、試してみるしかないですね。)
「マリルさん!私が合図したらムーンフォースにアクアテールを!」
『!?リル!』
リーリエの言葉にマリルも一瞬驚くが、彼女の言葉を疑うことなく実行に移す。一歩間違えればただでは済まないが、このまま待っていても結局やられてしまうだけだ。ならばいっその事こちらから攻撃を仕掛ける方がいい。
そしてチルタリスはムーンフォースを放つ。マリルもギリギリまで待機する。
「今です!アクアテール!」
リーリエの合図にマリルは小さく頷きジャンプする。そしてリーリエの指示通り、アクアテールでムーンフォースに攻撃を加えた。するとマリルはムーンフォースの反動を活かし、更に高くジャンプした。
『チル!?』
「うそ!?」
この光景にはチルタリスとルナも驚く。まさか自分の自慢の技のムーンフォースが逆に利用されるとは思わなかったのだ。そしてその高くジャンプした勢いを利用し再び攻撃を加える。
「もう一度アクアテールです!」
マリルは上空からアクアテールを振り下ろす。チルタリスも咄嗟のことでガードも回避も出来ず直撃する。チルタリスにとってもこれはかなりのダメージとなっただろう。
だが、それでもチルタリスは倒れない。ルナも驚きはしたが、すぐに態勢を立て直し反撃した。
「はがねのつばさ!」
ダメージは蓄積しているが、それでもチルタリスの素早さは決して衰えていない。チルタリスの攻撃がマリル迫る。マリルも回避しようとするが、今の攻撃と今までの疲労により膝が崩れる。そのまま限界が訪れてしまい、回避ができずにはがねのつばさの直撃で倒れてしまう。
「マリルさん!」
「マリル戦闘不能!チルタリスの勝ち!」
マリルは今の一撃で戦闘不能に陥る。チルタリスに大健闘したものの、一歩及ばず破れてしまった。だが、それでも以前に比べて充分に渡り合えている。リーリエはマリルに感謝してモンスターボールへと戻す。
「マリルも頑張ったけど、チルタリスを倒すことはできなかったね。」
『イブ……。』
マリルが負けてしまって残念だと言う表情で落ち込むイーブイ。だが、そんな中シンジは一つ彼女の事で思うことがあった。
「でもリーリエは確実にバトルの中で強くなっている。」
リーリエは相手の動きを上手く利用する戦法を得意としている。本人は気付いていないが、その戦術をこなすのは決して簡単ではない。洞察力の高いリーリエだからこそできる技だ。
そんな中、瞬時に相手の動きを利用して裏をかくのは彼女自身が成長している証拠だ。むしろここからが本当の戦いだろうと、シンジは彼女の戦いを静かに見守ることにした。
(最後までがんばれ、リーリエ)
「これで最後です……。お願いします。」
そう言ってリーリエは最後のポケモンが入ったモンスターボールを手にする。
「シロン!」
『コォン!』
リーリエは最後となったポケモン、シロンを繰り出した。彼女が強くなっていることを実感したルナは、決して油断するなとチルタリスに呼びかけた。チルタリスもルナの言葉に頷いて答える。
「シロン!こおりのつぶてです!」
「コットンガード!」
まずはこおりのつぶてでの先制攻撃を仕掛ける。チルタリスはコットンガードにより防御力を高めてダメージを抑えるが、弱点のこおりタイプでもあるため多少はダメージがある様子だ。今までの疲労も相まってダメージも確実に蓄積している。
「走ってください!」
「近付けさせないで!りゅうのはどう!」
捉えられないように動き回るシロンに対し、チルタリスはりゅうのはどうを連発する。次々と攻撃を躱していくシロンだが、怒涛の攻撃により最後まで回避しきれずにりゅうのはどうが命中してしまい後ろに下がらされる。
シロンは今の攻撃でダメージを受けてしまうも、なんとか耐える。疲労が溜まりチルタリスの攻撃力が落ちてきたのか、以前ほどのダメージはみられなかった。
「シロン!れいとうビームです!」
『コォン!』
「はがねのつばさ!」
『チル!』
シロンのれいとうビームをはがねのつばさによって弾き防いだチルタリス。チルタリスには効果抜群なれいとうビームも、鋼のように硬化した翼には効果は薄い。
チルタリスはそのまま硬化した翼を維持し、はがねのつばさで近接戦に移る。だがシロンはその攻撃をジャンプして回避した。
「シロン!こおりのつぶてです!」
「躱して!」
そのままチルタリスの背後からこおりのつぶてで反撃するシロン。しかしチルタリスはそれを次々と回避し再び特異な上空へと上昇した。やはり疲労が溜まっていても機動力では空を自由に飛べるチルタリスに分がある。
「ムーンフォース!」
出し惜しみができないと判断したルナはムーンフォースを指示する。きた、と感じたリーリエも、シロンにあの技の指示を出し対抗した。
「こっちもムーンフォースです!」
『コォン!』
チルタリスのムーンフォースに対し同じくムーンフォースで対抗するシロン。互いの体内の月の力が宿され、徐々に力が溜まっていくのを感じる。
そしてチルタリスとシロンは同時に力を解き放つ。互いのムーンフォースは中央でぶつかりあう。だが結果は直ぐに出た。
チルタリスのムーンフォースがシロンのムーンフォースを破ったのだ。シロンも反応が遅れてしまい、回避することができずにダメージを受けてしまう。流石にムーンフォースともなればかなりのダメージだ。
「シロン!」
『こ……ん……。コン!』
シロンはリーリエの言葉に反応し立ち上がる。慣れないムーンフォースの反動、そしてムーンフォースの直撃によるダメージはシロンにとってもかなり負担が大きい。
だが、それでもシロンは諦めていなかった。同時にリーリエも諦めていなかった。お互いの事を、パートナーの事を信じているからだ。
「これで終わらせるよ!ムーンフォース!」
再びチルタリスは力を溜める。このまま次に直撃を受けてしまえば一溜りもないだろう。
その時、リーリエに一つの考えが浮かぶ。上手くいくかどうかは分からない。だけど、それでもシロンなら大丈夫だと彼女の中で確信があった。その一つの思い付きに彼女は賭けることにした。
「シロン!私の事、信用してくれますか?」
『コォン!』
シロンはリーリエの方へと振り向くことなく、迷わずに頷き答えた。その答えを聞いたリーリエは、私達なら奇跡だって起こせると信じることができた。
「シロン!ムーンフォースです!」
『コン!』
シロンは再びムーンフォースで対抗する。先ほどあっさりと破られてしまったためムーンフォースの競り合いに勝てるとは思えない。だが、それでもリーリエはこの技にかけたのだ。
再び同時に放たれるムーンフォースが激突する。すぐに破られるかに思えたムーンフォースは、先ほどと違い僅かに拮抗していた。それにはルナたちも驚き声を出せない。
その時間は僅かに一瞬であったが、リーリエにとってはその一瞬だけでも充分であった。
「こおりのつぶてです!」
シロンはこおりのつぶてを放ち、それを中央でぶつかり合っているムーンフォースにぶつける。すると互いのムーンフォースが弾きとび大きな衝撃と共に消滅した。
「っ!?ムーンフォースが!チルタリス!りゅうのはどう!」
『チィル!』
視界を奪われチルタリスだが、その衝撃を晴らすためにりゅうのはどうで薙ぎ払い視界を回復させる。しかし……
『チル!?』
「!?シロンがいない!?」
そこにはシロンの姿が見当たらなかった。もしかしたらと見上げるルナであったが、その時にはすでに遅く対応することができなかった。
「シロン!れいとうビームです!」
シロンは空中にジャンプしチルタリスの死角かられいとうビームで奇襲をかける。チルタリスもその攻撃を受け、地面に勢いよく叩きつけられる。その瞬間にも大きな衝撃波が発生しその衝撃が晴れると、そこにはメガシンカの解けたチルタリスが目を回して倒れている姿が映った。
『チル~……』
「チルタリス、戦闘不能!ロコンの勝ち!よって勝者!チャレンジャーリーリエ!」
その瞬間、リーリエの勝ちが決定した。無我夢中で戦っていたリーリエは、自分でも勝ったのだという事実が信じられない様子でその場に座り込む。そんな彼女の元に、シロンが笑顔で飛び込んだ。
「かった……のですか……?ルナさんに?あのメガチルタリスさんに?」
『コォン!』
ボロボロになりながらも喜ぶシロンを見て、リーリエはやっとこれは現実なのだと言う事に気付く。リーリエはシロンを強く抱きしめ、涙を浮かべて笑みを零す。
「……お疲れ様、チルタリス。後はゆっくり休んでね。」
ルナはチルタリスをモンスターボールに戻す。だがルナは一切悔しさを感じてはいない。むしろどこか清々しい感情が溢れていた。ルナはリーリエの元へと歩み寄り声を掛けた。
「完敗だよ完敗。まさか私とチルタリスが負けるなんてね。」
「ルナさん……。」
「正直負けるなんて思ってなかったよ。私も思わず本気で倒しにいっちゃったし。」
ルナは一呼吸おいてリーリエに向き直る。
「チャレンジャーと戦って、こんなにも熱くなったことはなかったよ。こんな気持ちになったの、シンちゃんとの戦い以来かな。」
「シンジさんとの?」
「うん。リーリエのバトル、シンちゃんによく似てるんだ。夢中になると無鉄砲なところとか、ポケモンと信じあっているところとかさ。」
そしてルナは審判から渡された物を受け取り、それをリーリエに差し出した。
「バトルの勝敗以上に、私はリーリエに敬意を表したい。ほら!これがアザリアジムに勝利した証、バイオレットバッジだよ!受け取って!」
「これが……アザリアジムのジムバッジ……!」
天使の片翼のような、上から濃い紫色が徐々に薄くなり白色に染まっていくデザインをしたバッジ、バイオレットバッジをルナから受け取る。その時、本当にあのルナに勝てたのだと実感し喜びをあらわにした。
「バイオレットバッジ!ゲットです!」
『コォン!』
『リルル!』
『チラチ!』
そして8つ目のバッジゲットをシロン、マリル、チラーミィと共に喜び、バイオレットバッジを丁寧にバッジケースへと保管した。
「リーリエ、おめでとう!」
「ありがとうございます!シンジさん!」
『イブブイ!』
『リル!?』
シンジはリーリエの勝利を祝福する。イーブイも感極まってマリルに飛びついた。マリルも急なことで驚き顔を赤くするが、それでもイーブイが喜んでくれていることに嬉しさを感じている。
「これでジムバッジが8つ揃ったね。じゃあ次はいよいよ……」
「はい!カントーリーグ出場です!」
シンジの言葉に続いてリーリエは次なる目標を告げる。リーグ公認のジムバッジを8つ手に入れたリーリエは、遂にカントーリーグ出場の資格を得たのだ。
カントーリーグには自分と同じく数多の試練を抜けてきた
「今年もカントーリーグはセキエイこうげんで行われるよ。強敵ばかりだと思うけど、自分の力を全て出し切れば必ず勝てるから。何よりバトルは楽しんでいこう!」
「バトルは……楽しむ?はい!ありがとうございます!ルナさん!」
ルナの激励を受け、より一層気合の入るリーリエ。どれだけの強敵が待ち受けていても、自分たちならどこへだって行けると思える。何故なら、自分には今まで戦ってきた仲間たちがいるんだから。
そうしてリーリエとシンジはルナと別れを告げ、アザリアタウンを後にした。リーリエはこれから待ち受ける最大の試練の向け歩みだした。さあ、次に彼女たちが目指す場所は強者の集う地、セキエイこうげんだ!
アザリアジム突破です!
バイオレットバッジなるものは確かなかったはずです。調べても出てこなかったのでそのはずです。既存であればにわか晒して申し訳ありません。
カントー編完結が見えてきた……気がします。
当小説のポケモンカップリングがイブマリとなっております。理由はなんか組み合わせが好きだったからです。なおタマゴグループは全く異なります。
カントーリーグまではあと少しです。カントーリーグ直前にコラボ書くと思いますのでご了承下さいませ。アローラ地方の話も書きたい(切実
1週間で10話書き上げればいけるか?(マルス理論)