ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

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ヌシ「レッツゴーニンフィアは出ないんですか?」
増田「出ません」
ヌシ「増田ァ!」


進化のキセキ!高みを目指して!

イーブイと共に強くなってみせると誓ったシンジは、次々とカントー各地にあるジムに挑戦し腕を磨き続けていた。今もタマムシジムのエリカとジム戦の真っ最中だ。

 

「イーブイ!でんこうせっか!」

『イブイ!』

「キレイハナ!マジカルリーフです!」

『ハァナ!』

 

イーブイはでんこうせっかで素早く接近する。しかし、キレイハナの無数のマジカルリーフによる抵抗によりその攻撃は遮られてしまった。イーブイはダウンを拒否しこらえるものの、やはりダメージはあるようで疲労の色が伺えた。

 

「イーブイ!大丈夫!?」

『イブ、イブイ!』

 

イーブイはシンジの声に答え、まだまだ行けると意思表示をする。まだまだ発展途上とは言えイーブイもここまで勝ち抜いてきたのだ。自分を信じてくれるシンジの期待に応えたい、強くなってタケルの考えを訂正させたい気持ちが彼女にはある。だからこそ、ここで簡単に負けるわけには行かないと自分を奮い立たせる。

 

「イーブイ!スピードスター!」

 

イーブイは飛び上がり回転してスピードスターを放つ。エリカとキレイハナもシンジたちの心の強さに驚きながらも、その攻撃に対して冷静に対処した。

 

「優雅に美しく、キレイハナ!リーフストーム!」

 

キレイハナはリーフストームでスピードスターを正面から破っていく。やはり力の差がもろに出てしまい、イーブイの攻撃も虚しく反撃を受けてしまう。イーブイも戦闘不能にこそならなかったが、先ほどよりもダメージが大きくなってしまっており、立ち上がるのも困難といった状況だ。

 

このままではマズいと焦りを感じてしまうシンジ。ここで躓いてしまってはタケルに勝つことはほぼ不可能だろう。なんとか打開策を見つけようと模索するも、いい考えが浮かばない。絶望的な状況の中、イーブイは立ち上がり再び戦う意思を見せる。

 

「!?イーブイ……」

『イブ!イブブイ!イーブイ!』

 

どうやらイーブイは諦めていないようだ。イーブイの眼には一切の曇りが見えず、その眼は純粋にシンジの姿を見据えていた。そのイーブイの眼を見て、シンジはあることに気付いた。

 

「……そうだよね。イーブイが諦めてないのに、僕が諦めたらダメだよね。うん、一緒に成長するって決めたんだ。僕も最後まで絶対に諦めない。必ず勝つよ!イーブイ!」

『イブイ!』

 

シンジも再び戦う意思を見せ立ち上がる。イーブイも迷いの晴れたシンジを見て安心し、今一度キレイハナの姿を捉えた。

 

「この絶体絶命の状況になっても諦めない。あなたもイーブイもとてもお強いのですね。」

「一緒に強くなろうって決めたんです。だから僕もイーブイに負けていられません。この勝負、必ず勝たせてもらいます。」

「ジムリーダーとして……いえ、1人のトレーナーとして簡単に勝負を譲るわけにはまいりません。キレイハナ、エナジーボールです!」

「イーブイ!スピードスター!」

 

キレイハナはエナジーボールを一直線に勢いよく放つ。今のイーブイでは回避するのは困難だろうと考えたシンジは、一か八かスピードスターで対抗しようとする。しかし、その攻撃は思わぬ方向で結果に表れたのだった。

 

まず結果から言うと、イーブイが放ったのはスピードスターではなかった。イーブイは自らの正面で力を溜め、強力な力を込めた黒い塊を放ったのだ。その技はエナジーボールと相殺するどころか、その攻撃を打ち破った。

 

突然の出来事で対応することのできなかったキレイハナは、回避することができずにその攻撃をまともに受けてしまい後方に飛ばされてダウンしてしまう。

 

「!?キレイハナ!」

「今のって……イーブイ、もしかしてシャドーボールを覚えたの?」

『イブイ!』

 

シンジもイーブイも自分たちですら驚き言葉を失いかけるが、それよりも先に新しい技を覚え、反撃のきっかけを得る事ができたことに一番の喜びを覚える。今がチャンスだと直感したシンジは、続けて攻撃を仕掛けたのだった。

 

「イーブイ!でんこうせっか!」

 

キレイハナはシャドーボールのダメージが抜けきれておらず、不意打ちに近いこともあり先ほどのダメージは想像以上のようだ。態勢を整えることのできないキレイハナに、イーブイの怒涛の反撃が炸裂する。

 

キレイハナはでんこうせっかの直撃を貰ってしまい更に後退した。今度はダウンすることはなかったものの、確実にダメージは貰ってしまっている。さすがのエリカにも徐々に焦りが見え始めていた。

 

「このままではマズいですね。こうなったらあれで行きましょう。マジカルリーフ!」

「スピードスターで撃ち落として!」

 

キレイハナはマジカルリーフで反撃するも、イーブイのスピードスターに阻まれる。今度はキレイハナにもダメージが溜まってしまっているため力の差も縮まってしまったのだろう。だが、エリカの狙いは別にあったのだ。

 

「ソーラービームスタンバイです!」

『ハナ!』

 

キレイハナは頭部の赤い花に光を吸収していく。くさタイプの大技、ソーラービームの準備をしているのだ。ソーラービームは光を吸収し力を溜めなければ放つことのできない強力な技だ。その間に大きな隙が生じてしまうが、その分威力も計り知れない。相手にとってもプレッシャーの大きい技である。

 

エリカはその隙を少しでも減らすため、マジカルリーフをおとりにしたというわけだ。マジカルリーフに少しでも気を逸らすことができれば準備に入るのは多少とはいえ容易になる。この大技にどう対抗するべきかシンジは頭の中で必死に考える。

 

(どうする……この状況をどう切り抜ける……。)

 

そんな時、シンジの脳内で一つの作戦が思い浮かんだ。正面から攻撃してもエリカほどのトレーナーであればあっさりと対処されてしまうかもしれない。ならば不意を突けばいいと別の作戦を試すことにした。

 

イーブイもシンジの考えが分かったのか、一瞬シンジの方を振り返り頷いた。シンジもそんなイーブイに頷き返し、その作戦を実行に移した。

 

「イーブイ!シャドーボール!」

『イブイ!』

 

シンジの指示に合わせてシャドーボールを放つイーブイ。その攻撃は力を溜めているキレイハナに一直線に向かっていったように思えた。エリカとキレイハナもその攻撃に備え身構えるも、彼女たちの予想は外れた。

 

なんとそのシャドーボールはキレイハナではなく、キレイハナの目の前の地面に着弾し爆発したのだ。キレイハナに対してのダメージは一切ない。しかしキレイハナの視界はその際に発生した爆風により奪われてしまった。それでも、一直線上にいたイーブイの位置は把握済みであるため狙う事は容易い。僅かに見えたイーブイの影を頼りに、キレイハナはソーラービームの準備をした。

 

「キレイハナ!ソーラービーム発射です!」

『ハァナァ!』

 

ソーラービームを発射し、その衝撃で視界を奪っていた土煙は一気に払われイーブイのいた位置を捉える。これは決まったと確信した2人だがその攻撃が晴れたところにはイーブイの姿はなかった。

 

「!?まさか!?」

 

エリカはもしかしてと上空は見上げる。そこにはイーブイが高く飛び上がっている姿が見えた。どうやら先ほどのソーラービームの隙にキレイハナの頭上にジャンプしたようだ。

 

シンジの考えた作戦はこうだ。シャドーボールによりキレイハナの視界を奪い、その間に自分は態勢を整える。そして自分の位置を曖昧にし、ソーラービーム発射と同時に飛び上がることでソーラービームを回避してキレイハナの頭上に飛び上がるといった寸法だ。

 

土煙が舞い上がって視界が定かではないとはいえ、直ぐに飛び上がってしまったは動いた影で作戦がバレてしまうかもしれない。だからこそ相手の攻撃を引き付けキレイハナのソーラービームにより完全に視界が失われる瞬間を見計らって回避したのだ。信頼し合っている二人だからこそなせる業である。

 

「イーブイ!シャドーボール!」

 

イーブイは上空からシャドーボールによって奇襲を仕掛ける。高所からの攻撃という事もあり通常のシャドーボールよりも威力は増している。そのシャドーボールを躱すことができずに受けてしまったキレイハナはその場で目を回し戦闘不能となった。

 

「き、キレイハナ戦闘不能!イーブイの勝ち!よって勝者!チャレンジャーシンジ!」

 

エリカも悔しい気持ちはあるものの、どこか嬉しいのか自然と小さく笑みが零れた。今回の戦いに関しては、彼女自身納得の敗北であり心から楽しめたバトルだったのだろう。

 

今の緊張感あふれる戦いを制したイーブイも、緊張が一気に解けたためその場にへたり込んだ。シンジはそんなイーブイに駆け寄って抱きかかえた。

 

「お疲れ様、イーブイ。後で美味しいご飯を食べさせてあげるからね。」

『イブ……♪』

 

イーブイもボロボロの体ではあるが、そのシンジの言葉を聞いて少し元気が戻ったようだ。どんな状況でもやはり誘惑には勝てないものである。

 

「お疲れ様です、キレイハナ。ゆっくり休んでください。」

 

エリカは最後まで戦ってくれたキレイハナをモンスターボールへと戻す。その後挑戦者であるシンジたちに近付き声をかけた。

 

「素晴らしいバトルでした、シンジさん。ポケモンと共に歩むその姿勢、強い心。あなた達はこのバッジを受けといるに相応しいでしょう。」

 

そう言いながら、エリカはタマムシジムの勝利した証を差し出した。

 

「これがタマムシジム勝利の証、レインボーバッジです。どうぞお受け取り下さい。」

「これがレインボーバッジ……。ありがとうございます!」

 

シンジはレインボーバッジを受け取りそれを大切に保管するためにバッジケースへとしまった。

 

「次のジムも頑張ってください。あなた達ならもっと強くなることが出来るはずです。応援してますよ。」

「はい!ありがとうございました!」

 

シンジは激励をしてくれるエリカに対し、よきバトルをしてくれたことも含め感謝しタマムシジムを後にする。その後、ポケモンたちを回復させるためにポケモンセンターへと向かった。しかし、そんな彼らを見ていた者の眼があった。その者はふっ、と鼻を鳴らしてその場を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、シンジたちはとある森で休憩を挟んでいた。その森でシンジは先日手に入れたレインボーバッジの入ったバッジケースを眺めていた。

 

「ジムバッジもこれで4つだね。」

『イブイ。』

 

ここまでどのジムリーダーも強敵ばかりであったと感傷に浸るシンジとイーブイ。だが、これからはもっともっと強力な相手が出てくるかもしれないと覚悟する。それでもどれだけ強い相手が来ても全力で戦って勝つと心に誓う。

 

そんな彼らの元に、1つの影がゆっくりと近付いてきたのだった。

 

「まさかあの程度で強くなったと思っているんじゃないだろうな?」

「!?」

 

その傲慢な態度、声はシンジにとっても、イーブイにとっても忘れることのできないものであった。まさかとシンジはゆっくりと顔を見上げると、そこには一人の少年の姿があった。

 

「!?タケル!」

「ふん、久しぶりだな。」

 

そうだ、彼は以前出会ったイーブイの元トレーナーだ。2人にとっては因縁深い相手であり、あの時以降、シンジたちは彼に勝つために強くなってきたのだ。だがこのタイミングで会うとは2人も思っていなかったため驚いている。

 

「……何しに来たの?」

「昨日のタマムシでのジム戦を見ていたからな。挨拶がてら寄っただけだ。」

「タマムシでのバトル……見てたんだ。」

「ああ、正直予想通りの戦いだった。最後まで甘い戦いぶりだな。」

 

タケルは相変わらずあざ笑うかのような口ぶりでそう告げた。だが、その挑発めいた言動にシンジが乗ることはなかった。

 

「……君と僕のやり方は違う。」

「言うようになったな。ま、今のままでは俺に勝てないがな。」

 

シンジも悔しい気持ちでいっぱいだが、現状は彼の言う通りだと歯を食いしばって耐える。だが、自分が強くなっているのは確実だと自覚しているため、タケルのある約束事をする。

 

「約束してほしい。僕がもっと強くなったら、もう一度再戦してほしい。僕のイーブイと君のバンギラスで。」

「再戦だと?俺に勝つことは出来ないだろうが、まあいいさ。ジムバッジを8つ全てゲットしたら考えてやるさ。」

 

タケルはそのままその場を後にして立ち去った。シンジはその場で屈み足元で怯えるイーブイの頭を撫で気持ちを落ち着かせる。

 

「大丈夫、僕たちならきっと勝てるよ。」

『イブ……』

「これからもっともっと強くなっていけばいいんだ。慌てる必要はないよ。勝ってタケルを見返してやろう!」

『……イブイ!』

 

イーブイも覚悟を決めて俯いていた顔を上げる。シンジと一緒なら自分も強くなれるだろうと判断したようだ。シンジもイーブイと共に強くなっていこうと今一度誓い合う。そして二人は次のジムに向かって旅を続けることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後もシンジとイーブイはジムを勝ち抜いていった。どの相手も強敵で苦戦は当たり前であったが、それでも最後まで諦めずに次々とジムを制していったのだ。

 

途中負けることもありはしたが、その度に彼らは更に高みを目指して力をつけて行った。タマムシジムに続きヤマブキジム、セキチクジム、更にグレンジムにトキワジムと勝ち進み8つのジムバッジを集めることに成功した。

 

「遂に集めきれたね。」

『イブイ!』

「これでやっと……」

「俺との再戦だな。」

 

ジムバッジを全て集めある人物の姿を思い返していると、背後から少年の声が聞こえてきた。シンジが振り返ると

そこには彼の脳内に浮かんでいた人物の声が聞こえてきた。

 

「……タケル。」

「少しは強くなったのか?いや、ジムバッジを8つ集めた奴に聞いても無駄か。」

 

そう言ってタケルはモンスターボールを手に取り言葉を続けた。

 

「さっさと始めるぞ。バトルをするのが一番手っ取り早い。」

『バンギィ!』

 

タケルはそう言いながらモンスターボールを投げ、中から彼のパートナーであるバンギラスが出てきた。バンギラスの強大な咆哮に怯みそうになるイーブイだが、グッとこらえてバンギラスの姿を見据えた。

 

「精々ガッカリさせないでくれよ?」

 

その言葉と同時に、タケルとバンギラスが動き出す。

 

「ストーンエッジ!」

「躱してでんこうせっか!」

 

バンギラスが地面を殴り青く輝く岩を隆起させる。イーブイは横に回避しでんこうせっかで接近する。

 

「回避してほのおのパンチ!」

 

体を逸らしてでんこうせっかを回避したバンギラスは、ほのおのパンチでイーブイの腹部を狙う。このままでは以前と何も変わらない。だが、シンジもイーブイも負けたあの時のままではない。

 

「スピードスター!」

 

イーブイはほのおのパンチが当たる直前に振り向きスピードスターで対抗した。確実に力をつけたイーブイの不意打ちに思わずバンギラスは怯み動きが止まった。

 

「ふん。」

 

タケルは予想よりも成長しているシンジたちに対して鼻を鳴らした。技の威力もそうだが、前回と同じ状況で冷静に対処し、空中で態勢を整えつつ反撃をするのは簡単にできる事ではない。それは彼らが成長している証拠でもある。

 

「少しは成長しているようだな。だがやはり甘いな。」

「!?」

 

スピードスターで怯んだバンギラスだが、その後すぐに持ち直してその大きな尻尾でイーブイを振り払った。トレーナーの指示無くしてこういった行動を取るのは、どんな状況でも対応できるようにあらかじめ仕込まれていたのだろう。傲慢な態度をとるタケルだが、トレーナーとしての腕前は一人前ということだ。

 

「もう一度ストーンエッジ!」

『バギィ!』

 

バンギラスは再びストーンエッジを放ち追撃を仕掛ける。イーブイはその攻撃を辛うじて回避する。だが、バンギラスの怒涛の攻めが止むことはなかった。

 

「りゅうのはどう!」

「!?」

 

続いてバンギラスから放たれたりゅうのはどうを躱せずにイーブイに直撃してしまい後方に吹き飛ばされてしまう。強くなったシンジとイーブイだが、それでもやはり力には差があるようだ。戦闘不能には至っていないが、イーブイも体力の限界が近づいてしまっている。

 

「ふん。結局はこのざまか。りゅうのはどうでトドメだ。」

 

バンギラスはもう一度力を溜めりゅうのはどうの準備に入った。このままではあの時と結果が変わらない。

 

『イ……ブ……』

 

イーブイも立とうとするが上手く足に力が入らず立ち上がることができない。イーブイ本人も諦めかけているが、そんな時に大切なパートナーの声が耳に届いた。

 

「イーブイ!」

『イ……ブイ?』

「イーブイ。僕は君を信じてる。だから……勝とう!」

『!?イブ!』

 

イーブイはシンジの言葉に反応し必死に意識を保ち立ち上がる。風前の灯火とも言える状況だが、今まで苦楽を共にしたパートナーから“信じている”と言われれば自分も信じるしかない。イーブイはバンギラスから目を離すことはなかった。

 

力を溜め終えたバンギラスは全力のりゅうのはどうを放った。立ち上がったとは言え動く体力の残っていないイーブイは、抵抗できずにりゅうのはどうに包み込まれてしまう。だが、それでもシンジはイーブイの事を信じていた。

 

そんな時、りゅうのはどうに包まれたイーブイから青白い光が放たれた。イーブイの放ったその光は次第に大きくなり、りゅうのはどうを弾いたのだった。

 

「なっ!?この光は!?」

「イーブイ……もしかして……。」

 

大きくなったその光からイーブイが解放された時、その場にいたのはイーブイではなかった。ピンク色と白色の体に先端が青いリボンの触覚。そこには体も一回り大きくなった可愛らしいポケモンの姿があった。

 

『フィーア!』

「ニン……フィア?」

 

そこにいたのはイーブイではなく、その進化形であるニンフィアであった。タケルはこの状況に対し驚き開いた口が塞がらない様子だが、一番驚いているのはシンジだ。

 

複数の進化の可能性を持っているイーブイだが、その中でもニンフィアはトレーナーによりよく懐かなければ進化できない珍しいポケモンだ。最後の力を振り絞り、シンジの期待に応えようとした思いがニンフィアへの進化という結果に繋がったのだろう。

 

「ニンフィアはフェアリータイプ。ドラゴン技のりゅうのはどうは効果が無い。」

 

タケルの言う通りフェアリータイプのニンフィアにはりゅうのはどうが効果が全くない。ニンフィアが無事であったのも、りゅうのはどうを受けている途中で進化したのも一つの要因だろう。だが、タケルは決して甘いトレーナーではない。

 

「あくのはどう!」

「!?ニンフィア!スピードスター!」

 

反撃の隙は与えないと、あくのはどうで攻撃を加える。その攻撃はニンフィアを確実に捉えていた。シンジはスピードスターで対抗しようと指示を出したが、ニンフィアから放たれたのは別の技であった。

 

ニンフィアは目の前でリボンを交差させ思いっきり力を解き放った。するとそこからはキラキラと輝く風が吹き、バンギラスのあくのはどうをはじき返したのだった。

 

「今のはようせいのかぜ?ニンフィア、新しい技を覚えたんだね!」

『フィア!』

 

ここに来て新しい技を覚えたことに対し、タケルも初めて焦りの表情を見せた。しかもそれがフェアリータイプの技であればバンギラスにとって特に相性の悪い技である。だが負ける気は毛頭ないと攻勢に出る。

 

「ストーンエッジ!」

『バンギ!』

 

バンギラスはストーンエッジで再度ニンフィアを攻撃する。このままでは直接攻撃を喰らってしまうところだが、シンジが取った行動は驚くべきものであった。

 

「ニンフィア!ジャンプ!」

『フィア!』

 

なんとニンフィアは迫りくるストーエッジに向かっていったのだ。そしてそのままジャンプし、ストーンエッジの上へと飛び出る。何をする気だと疑問に感じたタケルだが、次の瞬間驚かずにはいられなかった。

 

「なにっ!?」

 

ニンフィアは次々とストーンエッジを踏み台にして華麗に躱していく。イーブイの時には見られなかった華麗な優雅さに驚くタケル。ニンフィアはバトルの中で確実に成長しつつあったのだ。

 

そのままストーンエッジを躱していく。そして遂にはバンギラスの頭上をとりチャンスを生み出した。

 

「ニンフィア!シャドーボール!」

「くっ!ほのおのパンチ!」

 

ニンフィアの放ったシャドーボールをほのおのパンチで防ぐバンギラス。しかしその衝撃で爆風が発生し、視界が悪くなってしまった。その衝撃が収まった時、バンギラスの下には着地して見上げていたニンフィアの姿があった。

 

「っ!?しまった!」

「ニンフィア!ようせいのかぜ!」

 

マズイと感じるタケルだったが、時既に遅し。ニンフィアのようせいのかぜが見事直撃し、バンギラスは空中へと舞い上がる。そしてそのままバタリと地面に落ち戦闘不能となった。さしものバンギラスも効果抜群のようせいのかぜを至近距離で受けてしまっては耐え切れなかったようだ。

 

「……戻れ、バンギラス。」

 

タケルはバンギラスをモンスターボールへと戻す。だが、その表情は悔しいというよりも僅かだが笑みを浮かべているようにも感じた。

 

「ありがとう、ニンフィア。お疲れ様。」

『フィーア!』

 

シンジは最後まで戦い抜いてくれたニンフィアの頭を優しく撫でる。ニンフィアは嬉しいのか、シンジの手に頬をこすり寄せた。甘えん坊な性格は進化しても変わらずなようだ。

 

「……俺の負けか。」

「タケル……」

 

ギリギリのところで勝つことは出来たが、声を掛け辛くなってしまう。絶対的な自信を持っていたタケルは負けると考えていなかっただろう。だが、そんなタケルから発せられた言葉は意外なものであった。

 

「……ふっ、そんな顔をするな。」

「え?」

「確かに負けることは考えていなかった。だが、お前たちの強さを感じることができて俺にとっても悪い事ばかりではなかった。そうか、そんな強さもあったんだな。」

「タケル……」

 

タケルは振り向きその場を去ろうとする。そんなタケルに、シンジは一言伝える。

 

「……また、いつかバトルしてください!」

「!?……相変わらず甘い奴だな。」

 

タケルは「だが」と言葉を続けた。

 

「……今度やる時は負けないさ。」

 

タケルはその時、背を向けながらニンフィアに声を掛けた。

 

「ニンフィア。」

『フィア?』

「……悪かったな。」

『!?フィア!』

 

タケルの言葉にニンフィアは驚きつつも、彼に笑顔を向けた。タケルも後ろからではあるが、確かに彼の顔には笑みが見えていた。彼もポケモンの存在について考えを改めてくれたようだ。

 

「……ニンフィア。」

『フフィ?』

「これからもよろしくね。」

『フィア!』

 

シンジの言葉に、ニンフィアも満面の笑みでそう答えた。これからも大切なパートナーと共に成長し続けようと心に決めて。

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

シンジはリーリエにかつての経験を語った。リーリエもシンジの話を真剣に聞き、涙が頬を伝っていた。

 

「そんな過去があったんですね。シンジさんとニンフィアさんの強さが分かった気がします。」

「最初、タケルは最低な人だとしか思っていなかったけど、今思えばタケルがいなかったら今の僕はいなかったし、それに原因はどうあれ僕とニンフィアが出会うこともなかったかもしれないって少し感謝してるんだ。」

『フィーア!』

 

シンジはニンフィアの頭を撫でる。ニンフィアも笑顔を零し、あの時のように頬をこすり寄せる。

 

「確かに進化は可能性を格段に引き上げる。でもそれだけが全てじゃないって僕は思うんだ。」

「進化が全てじゃない……ですか?」

 

シンジの言葉にリーリエは疑問符を浮かべる。疑問を感じているリーリエにシンジは彼女の瞳を真っ直ぐ見て答えた。

 

「確かに力や強さも必要かもしれない。でも、それ以上にポケモンとの信頼関係が一番の武器になるんじゃないかって僕は思ってる。」

「信頼関係……」

 

リーリエは心のどこかでその言葉の意味が何となくだが分かる気がした。今までシンジの強さを近くで見てきたのだから。

 

「人それぞれに強さの定義に違いがある。旅を続けている中でそう思うようになってきたんだ。僕には僕の強さがあり、タケルにはタケルの強さがある。リーリエにもリーリエの強さがある。それはトレーナーだけでなくポケモンも同じだよ。」

 

シンジの言葉をリーリエは黙って聞いている。シンジはそのまま言葉を続けた。

 

「あくまで個人的な意見だけど、シロンを無理に急いで進化させる必要はないんじゃないかな?フリーザーにこおりのいしを渡されそれに意味があったとしても、リーリエにはリーリエの、シロンにはシロンの強さがある。それを考えてからでも遅くはないと思うよ。」

 

でも最後に決めるのはリーリエ自身だよ、と最後の判断をリーリエに委ねる。リーリエはシンジの話を聞き、どうするべきか悩む。そして結論が出たのか、シンジの顔を見上げた。

 

「そうですね。もう少しゆっくり考えてみます。私だけでなく、大切なパートナーのシロンと一緒に。」

「……うん。」

 

リーリエはそう決意を口にした。シンジもこれ以上の口を出すことはなく、リーリエの気持ちを尊重することにした。トレーナーとポケモンは共に成長することで、更に高みへと昇ることができるのだから。




また予想以上に長くなってしまった。書いてる途中に楽しくなってきたので致し方なし。

というわけで質問が一つあったのでこちらでもお答えしておきます。

シロンはタマゴの時に持って行った、親はいるのか?といった質問ですが、端的に言えば細かな設定はしておりません。アニポケでもタマゴの時に持ち去る、親が不明といった描写は複数あります。そのため、公式での設定も曖昧か、もしくはポケモンという存在が子育てをあまりしないと言った可能性があります。もちろんこれは勝手な解釈ですが……。

また、シロンの親を出した場合リーリエの性格上泣きながら別れを告げてしまう可能性も出てきてしまいます。流石に相棒と別れる話は難しく、個人的には書き辛くもあるためシロンの親は登場させないものと思われます。ですのでその辺りも考慮してご理解いただけるとありがたいです。シロンの親が登場することを期待していた方には申し訳ありません。

また何か質問やリクエストなどがあれば遠慮なく言ってください。可能な限りお答えいたします。もちろん感想もお待ちしております。

ではではまた次回お会いしましょう!ノシ













































あっ、因みに次回は最後の手持ちポケモンが登場します(予定

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