ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》 作:ブイズ使い
という訳で今回はタイトルから予想できる通りのあの回です。最後まで楽しんでいただけたら幸いです。
どうでもいいことですが、ついこの前レッツゴーイーブイをプレイする夢を見ました。これってなにかの末期症状ですかね?
グレンジムにて7つ目のジムバッジを手に入れることができたリーリエ。最後のジムがあるアザリアタウンへと向かうべく、マサラタウンへと繋がる海を渡っていた。
「気持ちいい風ですね。」
「そうだね。すごく爽やかな風だ。」
リーリエとシンジは海を吹き渡る風を心地よく感じていた。海には一切の障害物がなく、風通しが良いうえに潮風が全身に優しく触れるため、普段の風よりも気持ちいいものである。それは人間もポケモンも変わらず、彼らを背に乗せているラプラスも気持ちよさそうに笑顔を浮かべていた。
そんな中、突然周辺のポケモンたちが騒ぎ始めた。その様子を見ると、何者から逃げているかのようにも感じる。
「どうしたのでしょうか。ポケモンさんたちの様子がおかしいです。」
「リーリエ!あれを見て!」
すぐにポケモン達の異変に気付いたリーリエ。そんな彼女に、シンジが前方で起こっている出来事に注意を向ける。そこでは、大きな網を海へと投げ込んでいるボートの姿が見えた。
「シンジさん、あれってもしかして。」
「うん。恐らく、ポケモンハンターかポケモンコレクターの仕業が高いね。」
シンジの言う通り、あれはポケモンハンター、またはポケモンコレクターの仕業であろう。俗に言う密猟と言うやつだ。密猟のためにあえて起動性の高いボートで作業しているのだろう。いざという時には逃げることも可能で、小回りが良いため融通が効くからだ。
この世界においてみずタイプのポケモンは複合タイプも含め最も多いとされている。その上、これだけ広大な海には水タイプ以外のポケモンも当然生息している。コレクション、商売をするには充分な標的なのだろう。だからこそ、シンジとリーリエにとっては許せる行為ではなかった。
「少なくともポケモンが逃げ出すという事は荒っぽい手段をとっている可能性が高いね。一刻も早く止めないと。」
「はい!すぐに止めましょう!」
その時、その船からあるポケモン達の群れが逃げている姿が確認できた。そのポケモンたちの姿を見て、シンジたちは驚かずにはいられなかった。
「!?あれはミニリュウにハクリュー……。」
そうだ、そのポケモンたちはミニリュウとハクリューたちの群れだったのだ。ミニリュウとハクリューはどちらも珍しいポケモンで、ポケモンコレクターやポケモンハンターからしたら喉から手が出る程欲しいポケモン達だろう。
「今すぐ助けます!お願いします!ハクリューさん!」
「お願い!シャワーズ!」
ハクリューとシャワーズは素早い動きで泳いで密猟船へと接近する。充分に接近し距離を詰めた時、密漁船へと攻撃することで彼らの動きを止めた。
「ハイドロポンプ!」
「アクアテールです!」
シャワーズはハイドロポンプ、ハクリューはアクアテールで密漁船の後尾へと攻撃を加えた。その攻撃で船の一部は破損し、彼らは撤退せざるおえなかった。船が去っていくのを確認したシンジたちは、襲われていたハクリューたちが無事だったかを確認する。
「みんな、大丈夫だった?」
「怪我はありませんか?」
ミニリュウとハクリューたちはシンジたちに笑顔で答える。助けてくれたことに感謝しているようだ。だがその時、リーリエのハクリューが彼らに笑顔で近づく。
『リュー!』
『クリュ!?ハクリュ!』
「もしかして、この子たち……」
「うん。かつてのハクリューの仲間たちみたいだね。」
ハクリューは助けたハクリューたちに笑顔で迎えられている。その様子を見るに、彼らはリーリエのハクリューの仲間たちだという事が分かる。ハクリューも襲われていた仲間たちが無事で嬉しそうな表情をしている。
「だけど、これからどうしよう。」
「どうゆう事ですか?」
「あの人たちがあれだけの事で諦めるとは思えない。最悪、今回の報復に来る可能性だってある。」
「そんな!?」
「暫くはここで様子を見た方がいいかもしれないね。ポケモン達をこのままにしておくわけには行かない。」
リーリエもシンジの言葉に納得して頷く。ポケモンたちが目の前で傷付いているのに、それを黙って見過ごすことは彼らにはできなかった。
そんな彼らに、一隻の船が近づいてきた。しかし、その船は先ほどの船とは明らかに違い、ボートではなかった。
その船は中型船で、男性が運転している姿が確認できた。そして一人の女性が身を乗り出し、シンジたちに話しかけてきた。その人物たちに見覚えはないが、シンジたちは彼女らは悪い人ではないという事が一目でわかった。
「あなた達!大丈夫だった?」
「僕たちは大丈夫です。貴女たちは一体?」
女性はシンジたちの安否を確認してきた。シンジはそんな彼女に大丈夫だと伝え、彼女らが何者なのかを尋ねる。
「私はカエデ。そして今船を運転している人が私の旦那のナオキよ。」
黄色のパーカーに白のハーフパンツを着用した茶髪でショートヘアーの女性、カエデはそう言って自己紹介をした。さらにナオキと呼ばれた白の無地のTシャツに青のジーパンを着用した黒髪の男性は、笑顔でこちらに手を振る。
「ここで話をするのもなんだし、私たちの家に案内するわ。」
シンジたちはカエデたちに案内され、彼女たちの住むという家までついて行った。
シンジたちが辿り着いたのは海に浮かぶ一軒の二階建ての家であった。その家は丸太を組んで作られており、山でよく見るペンションに近いイメージであった。
だがその家は、住居と言うよりも機材が多く設置してあるため、どこか作業場のような雰囲気であった。
家の外ではハクリューたちがラプラスと共に仲良く遊びながら待機している。
「改めて自己紹介するわ。私はカエデそれからこっちが……。」
「夫のナオキです。」
「僕はシンジです。」
「私はリーリエと言います。」
改めて自己紹介をするカエデたちに、シンジたちも自己紹介をした。
「私たち夫婦はこの近辺の海を管理しているの。」
「管理ですか?」
「ああ、海のポケモンたちを強引に捕獲したり、コレクションと称して乱獲したりするものも増えてきている。そんな人たちからポケモンたちを守るため、俺たちはここで海の管理を行っている、と言う訳だ。」
ナオキの言葉にシンジとリーリエはなるほど、と頷く。実際に自分たちもかつてポケモンハンターとポケモンコレクターに出会っているため、そう言った人物がいることは把握済みだ。彼らの行っている行為にもすぐに理解できた。
「最近、この近辺でポケモンハンターやコレクターたちが無断でポケモンたちを密漁しているの。」
「それで俺たちは奴らが現れたと聞いて現場に急行したら君たちがいた、と言う訳だよ。」
「そうだったのですね。」
カエデたちの言葉にリーリエは納得する。推察通り、先ほどの彼らはポケモンハンター、ポケモンコレクターで間違いはない。
「それに、私たちはふたごじまも一緒に管理しているのだけど。」
「ふたごじまも?」
「ああ。」
シンジの言葉にナオキが頷き、話をつづけた。
「ふたごじまに生息しているポケモンたちの様子が最近おかしいと聞いたんだ。調査によると、何者かがふたごじまに生息している伝説のポケモン、フリーザーに手を出してしまったそうなんだ。」
「フリーザーに?」
「シンジさん……もしかしてそれって……。」
「うん。間違いないね。」
「?何か知ってるの?」
シンジたちの何か知っているような口調が気になり、カエデは彼らに問いかける。シンジとリーリエは、自分たちがふたごじまで経験した出来事を全て彼女たちに話した。
「まさかフリーザーに出会っていたなんて。」
「それにフリーザーの暴走を止めてくれたとは。君たちには感謝してもしきれないね。」
「いえ、ただ僕たちはフリーザーを何とかして助けたかっただけですから。」
「そうですよ!感謝されるほどでは……。」
シンジたちが謙遜する中、それでも変わらず感謝してくるカエデたちに困惑する。それと同時に、シンジたちは少し照れ臭く感じる。感謝されると言うのはどうしても慣れないものである。
「それにしてもポケモンハンターたち……フリーザーをも狙っていたなんて。」
「フリーザーを制御できなかったからハクリューたちを狙った、というところだろうか?」
「いずれにしても、早急に対策を講じる必要があるわね。」
ポケモンハンターたちの対策を考えるカエデとナオキ。しかしその時、外からポケモンの悲鳴が聞こえた。
『クリュー!?』
『クゥン!?』
「今の声は!?」
「ハクリューさん!ミニリュウさん!ラプラスさん!」
そこに響いた悲鳴はラプラスにハクリュー、ミニリュウの鳴き声であった。リーリエ達は即座に反応し、慌てて家から外に出た。
「!?これは!」
外に出たとき、目に映った光景にナオキが驚いた声をあげる。そこには捕獲用ネットに捕らわれているハクリューやミニリュウ、ラプラスの姿があった。そこにはリーリエのハクリューの姿もあった。
「へへ、今回は大漁だな!」
「ああ、これだけいれば報酬はたんまり貰えるだろうな。」
ポケモンたちを捕獲しているのは男たち二人組であった。その男たちは捕獲したポケモンたちを眺め、満足したように微笑んでいる。しかしその微笑みは決して光のあるものではなく、悪人によく見られる黒い笑みであった。
「ハクリューさんたちを離してあげてください!」
「はっ、離してと言って離してたら商売にならないだろ?さっきは不意打ちを喰らってやられちまったからな。すぐに撤収だ!」
ポケモンハンターたちは直ぐさま逃げ出す。リーリエが待ってと抑止するが、ボートのスピードが速くとてもじゃないがラプラスやハクリューがいないこの状況では追いつくことができない。
だが、シンジは大丈夫だとリーリエを落ち着かせ、モンスターボールを手にする。
「お願い!シャワーズ!」
『シャワ!』
シンジがモンスターボールを手にし、そこから解放されたのはシャワーズだった。
「シャワーズ、目の前のボートを見失う前に急いで追いかけて!場所が分かったら僕たちに知らせて!」
シャワーズは直ぐに目の前のボートを追いかける。流石みずタイプのポケモンと言うべきか、その動きは素早く、海を潜っているためポケモンハンターたちにバレることなく近付けるだろう。
「私達も急いで追いかけましょう!」
カエデの言葉に全員が頷き、彼女たちの所有する船に乗り込みポケモンハンターたちを追いかける。
「さあ、これがお前の望んでいたポケモンだろう?」
ポケモンハンターの二人組は、目の前にいる依頼主である眼鏡をかけた小太りな男性に捕獲したポケモンたちを渡す。依頼主の男も満足そうに感激の笑みを浮かべて感謝を述べる。
「おお!これがまさに私の求めていたハクリューとミニリュウです!しかもラプラスのおまけ付とは……素晴らしい!」
男はポケモンハンターたちに謝礼を払う。予想以上の働きであったため、予定よりも多く謝礼を支払っていた。その金額を見て、ポケモンハンターたちも満足している。互いに利益があるからこそ、この人物たちは手を組んだのだ。
だがその時、背後から接近してくる気配に気づく。背後を確認すると、そこには見覚えのある船の姿があった。
「ん?あれは……」
ボートを追いかけるためにカエデたちと共に飛び出したシンジとリーリエ。だが、一向にボートの姿は見えない。それだけのスピードで逃げていたため仕方がないことだが、リーリエは連れ去られてしまったハクリューが心配で落ち着かない様子だ。
そんなリーリエに、シンジは優しく声をかける。
「大丈夫だよ。ハクリューもラプラスたちも、絶対に助け出す。」
「シンジさん……。」
「それに、リーリエもハクリューの強さは知ってるでしょ?心配はいらないよ。」
「……そうですね。ハクリューさんは強いです!きっと助け出して見せます!」
シンジの言葉で多少不安が消えたリーリエ。そんな彼らの船に、一匹のポケモンが近づいてきた。ポケモンハンターたちを追いかけていたシンジのシャワーズが帰ってきたようだ。
「シャワーズ!ポケモンハンターたちの場所は分かった?」
『シャワ!』
シャワーズはシンジの言葉に答え、ついてこいと言うように再び真っ直ぐ泳ぎ始める。ナオキは舵を切り、シャワーズの向かう場所へと進路を変更する。
暫く進むと、そこには岸にボートが停泊していた。その岸にはポケモンハンターの二人組に加え、一人の男が立っていた。
ナオキは岸に船をつけ、シンジたちが船を降りる。先ほどは遠目で分からなかったが、近づいた時そのもう一人の男の正体が分かった。その男は、シンジとリーリエにとっても見覚えのある人物であった。
「あっ!あなたはあの時の!?」
「!?あの時邪魔した!」
そうだ、彼は以前、リーリエ達が当時ミニリュウだったハクリューと出会った時、ミニリュウを捕まえようとしていたポケモンコレクターだ。どうやらポケモンコレクターの男はポケモンハンターに依頼し、念願のハクリューをゲットしようとしていたようだ。
『クリュー!』
「!?ハクリューさん!」
男の目の前にドンと置かれているネットの中には、リーリエのハクリューの姿があった。リーリエの姿を見たハクリューは、彼女に助けを求める。ハクリューが強いと言っても、網に捕らわれた状態ではどうしようもない。リーリエはハクリューを助け出すために走り出そうとする。
「おっと、そうはさせないぜ?」
「大事な依頼主だからな。商談の邪魔はさせない。」
ポケモンハンターたちはポケモンコレクターを守るため、リーリエの行く手を遮る。
「どいてください!」
「だからどけと言われて大人しく言うことを聞くわけないだろう?いけ!シビルドン!」
「おまえもだ!ボスゴドラ!」
『シィビ!』
『ゴドォ!』
『シビルドン、でんきうおポケモン。吸盤になっている口で獲物に吸い付き電気を流して感電させる。腕の力が強く、獲物を一瞬で海へと引きずり込む。』
『ボスゴドラ、てつヨロイポケモン。山一つを縄張りとしており、侵入してきたものは容赦なく叩きのめす。ツノの長いボスゴドラは長く生きた証である。』
ポケモンハンターはボスゴドラとシビルドンを繰り出した。その強大な咆哮をする二体は間違いなく強い。だが、それでも大切なポケモンたちを助けるために、リーリエは退くわけにはいかなかった。
『クリュー……。』
「ハクリューさん……。絶対に助け出します!お願いします!マリルさん!チラーミィさん!」
『リルル!』
『チラ!』
リーリエは覚悟を決め、ポケモンを繰り出した。リーリエが選抜したのはマリルとチラーミィの二体だった。相手のポケモンの強さを考えると、一体で戦うなどの出し惜しみなどしていられない。それなか相手は犯罪を犯すほどの人物であるため、律義に戦う必要はないだろう。かと言って数多く出しても指示を出すのが困難となり、状況判断が上手くいかない可能性がある。そのため、リーリエは二体のポケモンを選抜して戦うことにしたのだ。
「カエデさん、ナオキさん、ここは僕たちに任せてもらえませんか?」
「シンジ君……。分かったわ。気を付けて。」
シンジの言葉にカエデが了承する。彼の目を見て、彼らなら大丈夫な気がすると判断したのだ。ナオキもカエデの判断に納得し頷いた。そしてシンジはポケモンハンターたちの繰り出したポケモンたちを見据え、自分のポケモンの名前を呼び前に出す。
「頼むよ!シャワーズ!」
『シャワー!』
シャワーズはシンジの言葉に答え一歩前に出る。シャワーズも彼らの行為が許せないのか彼らのポケモンを睨みつける。
「シビルドン!チャージビーム!」
「ボスゴドラ!ストーンエッジ!」
シビルドンは細めの電撃であるチャージビームを放つ。チャージビームは攻撃を加えると、稀に自身の技の威力を高める追加効果が発動する。長期戦になればなるほど厄介な技だ。
そしてボスゴドラは地面を殴り、青く鋭い岩を次々に生み出した。ストーンエッジは強力ないわタイプの技だ。直撃すれば一溜まりもないだろう。
しかし、マリルとチラーミィ、シャワーズの三体はどちらの攻撃も冷静に対処して回避する。
「チラーミィさん!スピードスターです!」
牽制には牽制を。チラーミィはスピードスターでボスゴドラとシビルドンを攻撃する。シビルドンとボスゴドラは動きが鈍いため、回避行動はとらずに腕でガードすることでダメージを抑える。
二体の様子を見るに、ダメージの通りはあまり良いとは言えないようだ。特にはがね、いわタイプのボスゴドラにはノーマルタイプの技は効果が薄い。それでもここは攻めてチャンスを作るしかないとさらに攻撃を仕掛ける。
「チラーミィさんはシビルドンさんにおうふくビンタ!マリルさんはバブルこうせんで援護です!」
「ボスゴドラ!ラスターカノン!」
チラーミィは素早さを活かし、シビルドンに接近戦を仕掛ける。マリルは接近するチラーミィを援護するため、ボスゴドラを足止めしようとバブルこうせんを放つ。いわタイプを持つボスゴドラにみずタイプのバブルこうせんは効果抜群だ。決まればダメージを奪うことは出来るだろう。
しかし、ボスゴドラが黙って攻撃を受けるはずがない。ボスゴドラは迫りくるバブルこうせんに対し、ラスターカノンで反撃する。バブルこうせんはボスゴドラのラスターカノンに相殺されてしまった。
「シビルドン!ワイルドボルト!」
シビルドンは電撃を纏い、勢いよく接近するチラーミィに対抗した。チラーミィもパワー負けをしてしまい、吹き飛ばされてしまうが、自らの身軽さのため受け身をとりダメージを抑えることができた。
「メタルクロー!」
メタルクローでマリルに対し反撃を仕掛けるボスゴドラ。マリルも攻撃の反動で回避行動が遅れてしまい、ボスゴドラが目の前まで迫ってくる。しかし、その時ボスゴドラのサイドから第三者の攻撃によって阻害された。
「ハイドロポンプ!」
シャワーズのハイドロポンプがボスゴドラの腹部に直撃し、妨害することに成功したのだ。ボスゴドラは倒れることを拒絶するが、それでも明らかにダメージは受けている様子だ。
「僕がいることも忘れないでよ?」
「くっ、もう一人いたか……。」
「シンジさん!」
もう一人のトレーナーがいたことを懸念していたポケモンハンターが悔しがる。シンジはリーリエに「2人でみんなを助け出そう」と呼びかける。リーリエもその言葉に元気よく頷き「はい!」と返事をする。シンジがいれば心強いと感じるリーリエは、マリルとチラーミィに呼びかけた。
「2人とも!まだいけますか!」
『リルル!』
『チラァ!』
どうやら二匹ともまだまだやる気十分なようだ。ボスゴドラのトレーナーがそんな二人の姿を見て痺れを切らし、苛立ちを覚えたまま攻撃を仕掛けてきた。
「ボスゴドラ!ストーンエッジ!」
「シャワーズ!まもる!」
シャワーズはまもるでストーンエッジを正面から防ぎ、文字通りリーリエのポケモンたちを守った。シンジがリーリエの方へと振り向き頷くと、リーリエもシンジの意図を理解したのか次の行動に移った。
「マリルさん!アクアテールです!」
「シビルドン!ドラゴンクロー!」
マリルはアクアテールで攻撃する。シビルドンはドラゴンクローで反撃し、互いに技の威力が拮抗して弾き合う。だが、リーリエにとってこれは充分に時間が稼げたため問題なかった。
「チラーミィさん!スピードスターです!あの網を切ってください!」
「やらせねぇ!ラスターカノン!」
チラーミィはスピードスターで防御の手薄となった網を切ろうと試みる。そんなチラーミィの攻撃を妨害しようと、ボスゴドラはラスターカノンで反撃する。だが、そんなことはシンジとシャワーズが許すはずもなかった。
「シャワーズ!れいとうビーム!」
シャワーズのれいとうビームがラスターカノンを正面から打ち破り相殺することに成功する。これにより彼らの妨害はなく、チラーミィのスピードスターで網を切りハクリューたちの救出に成功した。
「っ!?しまった!」
網から解放され、自由の身となったリーリエのハクリューが前に出た。仲間たちをひどい目に合わせたのが許せないのだろう。リーリエもハクリューの覚悟を買い、共に戦うことにした。
「……ハクリューさん!行きますよ!」
『ハクリュ!』
ハクリューも力強く頷いた。そんなハクリューの体を緑色のオーラが包み込む。
「!?あの光は!?」
「あのオーラ……もしかすると新しい技を覚えたのかも。」
「新しい技?」
「あの光から察するに、恐らくりゅうのはどうだと思う。仲間を攻撃された怒りで生まれた技なのかもしれない。」
「りゅうのはどう……ハクリューさん!新しい技を覚えたのですね!」
『クリュー!』
ハクリューは嬉しそうに言うリーリエに振り向き返事をして軽く頷く。ならばやるしかないと、リーリエはハクリューの指示を出した。
「ハクリューさん!りゅうのはどうです!」
『ハクリュ!』
「僕たちも行くよ!ハイドロポンプ!」
『シャワ!』
ハクリューの強力なりゅうのはどうがハクリューの口から放出される。ハクリューのりゅうのはどうはシビルドンを捉え、シビルドンは成すすべもなく飛ばされ戦闘不能となる。
更にシャワーズのハイドロポンプもボスゴドラに命中し、ボスゴドラもシビルドン同様戦闘不能となる。
ポケモンハンターの二人は、戦闘不能となってしまった二体をモンスターボールへと戻した。
「くそ!まだ終わらないぞ!」
そう言って二人はさらに別のモンスターボールを取り出し戦闘継続の意思を見せる。その行動にシンジとリーリエも身構えるが、その時、別の異変が彼らを襲った。
空から異様な冷気がポケモンハンターたちを襲ったのだ。シンジたちにはその攻撃に見覚えがあり、確認するために空を見上げる。するとそこにはあの伝説のポケモンの姿があった。
「!?フリーザー!」
そう、そこにいたのは伝説の鳥ポケモン、フリーザーだった。フリーザーはシンジたちを見つめ頷くが、その瞳は続いてポケモンハンターたちを狙っていた。
「あ、あれはフリーザー!?くっ、あの時失敗して暴走していたはずでは!?」
ポケモンハンターの一人がそう言った。やはり彼らがフリーザーを暴走させた元凶だったようだ。恐らくフリーザーはそんな彼らに報復をしにやってきたのだろう。
フリーザーは再びれいとうビームを放ち、ポケモンハンターを攻撃する。ポケモンハンターはその一撃をまともに受けてしまい、その場で倒れこんだ。これ以上の行動は不可能のようで、ポケモンで言う戦闘不能状態となった。
ポケモンハンターたちは倒したが、まだ悪事を働いていたポケモンコレクターが残っているとリーリエとシンジが彼のいた場所を見る。しかし、彼の姿はなく、既にボートに乗り込んだ後であった。
その後、ポケモンコレクターはボートを走らせ全力で逃げ出した。それを見たナオキが、急いでモンスターボールを投げて対処する。
「逃がすか!追え!サメハダー!」
『サッダ!』
ナオキが繰り出したのはサメハダーだ。サメハダーのスピードは凄まじく、一瞬でボートに近づく。当然逃げられるはずもなく、サメハダーの強力なかみくだくでボートが砕け散った。
ボートから落とされたポケモンコレクターは、慌てて岸に戻ろうとするが、その時、あるポケモンが水中から姿を現した。
『ギャーオ!』
「!?ぎゃ、ギャラドス!?」
そのポケモンの正体はギャラドスであった。きょうあくポケモンのギャラドスは、ポケモンコレクターがこの場を荒らしたと判断し、彼に襲い掛かる。ポケモンコレクターも大人しくやられるわけにはいかないと、慌ててその場から逃げ出した。悪い人ではあるが、それでも彼の不遇っぷりには同情するほかなかった。
そしてその状況を見届けたフリーザーは、再びシンジたちと視線を交わした後、どこか遠くへと飛び去って行った。彼はこれからどこへ向かうのだろうか。彼の行く先は、誰にも分からない。
~翌日~
「2人とも、昨日は本当にありがとう。ゆっくり眠れた?」
「はい!」
ポケモンコレクターとポケモンハンターからこの海を守ったシンジとリーリエは、カエデたちの家に一日泊めてもらっていた。カエデとナオキも、彼らの活躍に深く感謝していた。
因みに、昨日のポケモンハンターたちはカエデたちがジュンサーに通報し、無事引き渡したためこの問題は解決しているので安心できるだろう。
「リーリエちゃんはジム巡りをしているのよね?次のジムも頑張ってね。」
「はい!ありがとうございます!」
そう言ってリーリエとシンジはこの場を後にしようとする。ハクリューも仲間たちとの別れを惜しそうにリーリエの元へとやってくる。
そんなハクリューの姿を見たリーリエは、ある決断をしてハクリューに今の気持ちを伝える。
「……ハクリューさん。あなたはここに残ってください。」
『クリュ!?』
衝撃の発言にハクリューは驚かずにはいられなかった。シンジもリーリエのその言葉に驚きはするが、黙って彼女の動向を見守っていた。
「ここにいるハクリューさんたちには、また同じような危険が襲ってくるかもしれません。みんなを守るため、彼らを統率するリーダーが必要になると思います。……彼らにはあなたが必要なんですよ。」
『クリュ……。』
リーリエの言葉にハクリューが悲し気な声を出して仲間たちの方へと振り向く。ハクリューも迷っている。本当に仲間たちの元へと戻るべきなのか。だが、次のリーリエの言葉でハクリューの決意は固まった。
「大丈夫ですよ。私たちはたとえ場所が離れ離れになってしまっても、決して離れることはありません。あなたと出会ったことも、思い出も、それに絆も……。」
『……クリュ!』
2人は出会ってから今までの事をまるで昨日の出来事のように思い返す。ハクリューの目には僅かに涙が浮かんでいた。リーリエもそんなハクリューの姿をハクリューに優しく抱き着いた。リーリエの頬には、一粒の涙が零れ落ちた。
「あなたに出会えて……良かったです……。」
『クリュ!ハクリュ!』
思いは一つ。そんな彼女たちの姿を見たカエデは、リーリエに一言約束をしてくれた。
「ハクリューたちのことなら任せて。私たちが責任を持って面倒を見るから。」
「ああ。せめてもの恩返しさ。俺たちが必ず守って見せるから。」
リーリエは涙を流したまま、カエデとナオキの言葉に頷き、小さい声でありがとうございます、と告げた。本心では別れたくないのであろうが、それでも彼らの事を考えればそれが一番の答えであると判断した。それに、リーリエもいつか仲間の元へと返すと約束したのだ。その約束は果たすべきだろうと、リーリエは決意した。
「ハクリュー。僕の事も忘れないでね。」
『クリュー!』
ハクリューはシンジの事も決して忘れないと、彼と額を合わせて約束する。決して忘れることはない、そう心に誓いながら。
「皆さん!お元気で!」
「ハクリューさん!また必ず会いましょう!」
リーリエとシンジはラプラスの背に乗り、カエデとナオキ、それからハクリューと別れを告げた。ハクリューも終始涙を流していたが、それでも笑顔でリーリエと別れた。ハクリュー自身もまた必ず会えると信じているし、それにリーリエの言った言葉も信じているからだ。2人の思い出も、絆も永遠だという事を……。
こうしてシンジとリーリエは大切な仲間、ハクリューと別れ、次なる目的地であるアザリアタウンへと向かった。彼らのカントーを巡る冒険はまだまだ続く!
当初の目的では本当はハクリューはもうしばらく旅に付き合う予定でした。ですが、アニポケのようにここで別れることにしました。一応会うフラグは建てたので再登場の予定はあります。その時をどうかお楽しみに!
もしかしたら次回は休むかもしれませぬ。理由はリクエストのアニポケコラボ回(1000万ボルト習得後のサトシと再戦)を書くためです。間に合わすように頑張りますが、どれくらいの話になるか予想していないため分かりません。そもそも次回本当にアニポケコラボ回を書くのかすらあやし……ゲフンゲフン
一つ質問があったのでこちらでも返答をば
ポケモンの知能に関してですが、知能は全体手に良いが個体差があると言ったところです。人間の道具も扱えるものもあれば扱いが分からないものもある。ペットが飼い主の使っているところを見て扱い方を覚えるといえば分かりやすいかもしれません。
また、思考能力に関しても人間並みと考えてもらって結構です。信頼しているトレーナーであれば何となく理解できる程度です。中には信頼を超え、目を合わせただけでも理解できるポケモンもいます。ピカチュウとサトシ、ニンフィアとシンジがその例です。
リーリエとシロンも徐々にそう言った関係に近づいてはいますが、まだその段階には届かないと言ったのが現状です。ですが、遠くない未来にはそんな関係にもなるかもしれませんね。
ではでは、次回またお会いしましょう!ノシ