ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

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ニンフィアにドレインキッスされたい


ふたごじま上陸!フリーザーをとめろ!

次なる目的地、グレンタウンへと向かうリーリエとシンジ。2人は今、グレンタウンへと続く道、海を渡るために再びセキチクシティへと立ち寄っていた。

 

「グレンタウンとは島の上にあったのですね。知らなかったです。」

「うん。グレンタウンはグレンじまとも呼ばれている町だよ。昔、一度火山の噴火に巻き込まれて壊滅的な被害を受けたこともあったけど、今では既に復興して昔の姿が戻ったらしいよ。」

「噴火……ですか?」

「噴火と言っても数百年に一度の確率でしか起こらないらしいから安心していいよ。」

 

噴火と聞いて焦るリーリエだが、シンジの言葉を聞いてホッと一安心する。ジムがあるとはいえ、いつ噴火が起こるか分からない場所に行くのはどうしても恐怖が付きまとってしまうだろう。

 

「ですがどうやって海を渡るのですか?ハクリューさんなら海を渡れるかもしれませんが、私たち2人のを乗せるのは難しいと思いますが……。」

 

リーリエの言葉にシンジは大丈夫だと答える。どうやら彼には何か考えがあるようだ。リーリエは彼を信じ、彼の後をついて行くことにした。

 

シンジの後をついて行くと、セキチクシティの南にある海へと出た。しかし、そこには複数のラプラスが並んでおり、そのラプラスを一人の女性がお世話していた。

 

「すみません、ラプラスをお借りしたいのですが。」

「あっ、ラプラスですね。何匹用意しましょうか?」

「一匹で大丈夫です。」

 

リーリエはどうゆう事か理解できずに困惑している。シンジはそんな彼女に簡単な説明をした。

 

「グレンタウンはジムのあるところでもあるけど、同時に有名な観光地でもあるんだ。だからこうしてラプラスの貸し出しを行っていて、誰でも気軽にグレンタウンへと行けるようにしてあるんだよ。」

「なるほど、そうだったのですね。」

 

シンジの言葉にリーリエも理解して頷く。

 

のりものポケモンのラプラスは、人懐こい性格で背中に人を乗せることが好きな珍しいポケモン。だがその人懐こい性格が利用されてしまい、乱獲や密猟等の被害が多発してしまい絶滅の危機にあってしまったこともある。それ故に大切に保護された結果、近年ではラプラスは増加気味の傾向にあり、この様に人を運ぶために活躍したり、アローラではライドポケモンとして利用されたりと、人間と上手く共存しているのが現状だ。

 

「では、こちらのラプラスをご利用ください。グレンタウンの先へと行ったところにラプラスを預けていただければ大丈夫ですので。」

「はい、ありがとうございます。」

 

女性のラプラスを借りたシンジは、彼女に一礼してお礼を言う。リーリエもシンジに続き感謝した。

 

「よろしく、ラプラス。」

「よろしくお願いします!ラプラスさん!」

 

シンジたちの言葉にラプラスは甲高い声で返事をした。まるで超音波のような声だが、どことなく安心する鳴き声であった。もしかしたらラプラスの鳴き声には人間を癒す効果があるのかもしれない。

 

リーリエがラプラスの頭を撫でると、ラプラスも嬉しそうに笑顔を浮かべながら再び鳴き声をだす。やはりラプラスは人間に対しての警戒心は全くないようだ。

 

シンジとリーリエはラプラスの背に乗り、早速グレンタウンへと向かうことにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンジとリーリエは今、ラプラスの背に乗ってグレンタウンへと向かっている。シンジが前に乗り、リーリエが彼に掴まっている形だ。最初はリーリエもポケモンに乗って初めて渡る海と、シンジに密着する意味で緊張気味だったが、だんだん慣れてきたのか今ではそんな様子はない。

 

「ふたごじま?」

「うん。ふたごじまはグレンタウンよりも離れた場所にあるんだけど、そこでは珍しいポケモンが多く生息しているんだ。しかもそこでは伝説のポケモン、フリーザーが目撃されたという情報もあるんだよ。」

「ふ、フリーザーさんが!?」

 

シンジから聞いた事実にリーリエは驚く。れいとうポケモンのフリーザーと言えば、カントー地方で有名なかえんポケモンのファイヤー、でんげきポケモンのサンダーと並び、伝説の三大鳥ポケモンと呼ばれるとても希少なポケモンだ。

 

当然目撃例も少なく、トレーナーたちが血眼になって探しても発見できなかったという報告もある。伝説のポケモンでは珍しい事ではないが、ふたごじまが住処だと言われているフリーザーが見つからないのはよっぽどである。

 

「シンジさんは見たことあるんですか?」

「いや、僕も見たことはないよ。ただ、それらしい影なら見たことあるけどね。」

 

どうやらシンジも直接見たことはないようだ。シンジは昔あったことを思い出しながら話した。

 

過去に彼もふたごじまの洞窟を探索していたそうだが、その際に迷ってしまったそうだ。だがその時上から雪のように冷たい光が降り注ぎ、気になって上を見上げてみた。するとそこには一匹の鳥ポケモンが飛んでいた。その姿はハッキリと確認できなかったが、それでもあれはフリーザーなのだと確信できたそうだ。

 

フリーザーは伝説のポケモンと言うだけはあり、他の鳥ポケモンにはない特徴がある。それにその時シンジは、そのポケモンに神秘的なものを感じたのだという。通常のポケモンでは感じない特別なもの。紛れもなく伝説のポケモンだと感じてもなんら不思議はないだろう。

 

「伝説のポケモン……フリーザーさん。私も会ってみたいです!」

「じゃあ折角だし寄ってみようか。他にも色んなポケモンは見られるかもしれないし。」

「はい!」

 

2人はそう決意し、ラプラスにふたごじまへと立ち寄るように指示を出す。ラプラスも2人の意思に快く従い、ふたごじまへと向かった。人を乗せることが好きなラプラスにとっては、どこによるかなどは些細なことに過ぎないのかもしれない。

 

ラプラスに揺られながら広大な海を堪能していると、そうこうしているうちにふたごじまへと辿り着いた。2人はふたごじまへと降りると、ラプラスに少しだけ待っているようにと頼む。ラプラスも名残惜しそうではあるが、2人の言葉に頷いて暫く待っていることにした。

 

「ここがふたごじまですか。島全体は大きくないのですね。」

「どちらかと言えば島と言うよりも洞窟だからね。」

 

ふたごじまには洞窟の入り口が二つあった。このふたごじまは、似たような洞窟が二つあることから“ふたごじま”と名付けられたのだ。このような小さな島にフリーザーが住んでいるとは、なんとも信じがたい事である。

 

「じゃあ早速行こうか!」

「はい!」

 

シンジははぐれない様にリーリエと手を繋ぐ。オツキミやまほどではないにしても、洞窟の中はどうしても薄暗く視界が悪い。また、内部も入り組んでいて複雑であるため、はぐれてしまっては一大事だ。

 

シンジたちは手を繋ぎながら洞窟内部へと入っていく。中は薄暗いものの、足元はハッキリと見えていて、前方も確認できる程度ではあるため、以前のようにブラッキーの力を借りる程ではない。

 

「すごいですね……中はこんなに広いんですか……。」

 

リーリエは洞窟内部に入るなり、周囲を見渡しそう呟いて感心する。外から見たらそれほどまでに大きく感じはしなかったが、中身は外見よりも遥かに広く感じた。洞窟は地下にも続いているため、更に広く感じてしまう事だろう。例え方向音痴でなくとも、1人で入れば迷ってしまいかねない場所だ。

 

リーリエはそう考えながら、はぐれないようにシンジの手をしっかりと握り返した。

 

「あ、これは……」

 

洞窟を暫く進むと、シンジが何かを発見したようでその場に立ち止まる。なにかあったのかとリーリエもそれを確認する。するとそこには大きな岩が道を塞いでいた。戻って別の道を探そうにも、一本道だったためそれでは一旦外に出て、もう一つの道を進むしかなくなってしまう。結構な距離を歩いたため、引き返すだけでも骨が折れる。

 

「仕方ない、ここは!」

「そうですね。やるしかありません!」

 

2人の考えは一致したようで、自分のモンスターボールを手に取る。

 

「お願い!イーブイ!ニンフィア!」

「力を貸してください!シロン!マリルさん」

 

シンジはイーブイとニンフィアを、リーリエはシロンとマリルを繰り出した。

 

「一斉に攻撃してあの岩を壊す。行くよ!イーブイ!ニンフィア!シャドーボール!」

「シロンはオーロラビーム!マリルさんはバブルこうせんです!」

 

トレーナーのの合図に合わせ、全員が一斉に攻撃を繰り出す。同時に放たれた技は色鮮やかに交わり、道を塞いでいた岩を粉々に粉砕した。

 

「やりました!」

 

リーリエはそう言いガッツポーズをとる。しかしその時、周囲に異変が起こりはじめた。

 

「っ!?いったい何!?」

 

突然周囲が揺れだしたのだ。何が起きたのか分からなかった二人は困惑するが、次の瞬間に足元に浮遊感を感じた。今の技の衝撃で足場が崩れてしまったのだ。状況を理解した二人だが時は既に遅く、ポケモンたちと共に地下に落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう、なんとか助かったね……。」

「はい、ですが少し濡れてしまいましたね……。」

 

かなり上から落ちてしまったが、下が流水であったため無傷で済んだ。だが、一つだけ無事では済んでいないことがあった。

 

「シロンも……あれ?シロンとマリルさんがいません!」

「ニンフィアとイーブイもいない!?」

 

彼らの手持ちのポケモンとはぐれてしまったのだ。落ちた流水の中で別の場所に流れてしまったのだろう。

 

「この階層にいることは間違いないと思う。急いで探さなきゃ!」

 

リーリエはシンジの言葉に頷き、早くポケモンたちと合流するために動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トレーナーたちとはぐれてしまったポケモンたちは体をブルブルと振るわせて体から水を払っていた。マリルだけはみずタイプであるため、特に影響はなさそうだった。

 

『イブイ……』

『リル……』

 

イーブイとマリルは自分のトレーナーとはぐれてしまって彼らが無事か心配になり俯く。普段から一緒にいるため、このようなトラブルにはあまり慣れていない。

 

『フィア!フフィアフィ!』

 

そんな2人をニンフィアは励ました。シンジたちなら大丈夫だと言っているようだ。ニンフィアも不安や心配がないわけではないだろうが、一番シンジと共に旅をしている自分がしっかりしなくてはとみんなを引っ張ろうとしているのだ。シロンもそんなニンフィアに続き、マリルとイーブイに声を掛けた。

 

『コォン!コンコォン!』

『イブ……イブイ!イブブイブイ!』

『リルル……リル!』

 

シロンの言葉に目が覚めたように、イーブイも二人に続いてマリルを励ます。マリルはイーブイの言葉を聞き、2人を探し出そうと決意する。仲の良いイーブイとマリルは、互いに安心したのか共に微笑み合う。

 

そして、ニンフィアはみんなを誘導して歩き出す。みんなもニンフィアについていく形で歩き出した。

 

『フィア?』

 

洞窟特有の薄暗さで前が見づらいが、ニンフィアは何かに気付き立ち止まる。イーブイたちもニンフィアに続き警戒しながら立ち止まる。

 

警戒して静かに待機していると、何者かの物音が聞こえた。暫くすると、物音がハッキリと聞こえてきた。その物音はポケモンの羽音で、上を見上げると無数のゴルバットとズバットが飛んでいくのが確認できた。しかし彼らの様子は明らかにおかしく、何かから逃げている印象が見て取れた。

 

また、地上からもクラブやキングラー、水中でもヒトデマンにパウワウなど、多くのポケモンたちがざわついていた。

 

そんなポケモンたちの様子を何があったのかと困惑しながら眺めていると、突然異様な冷気がポケモンたちを襲った。その冷気はまるで吹雪のように勢いよく、地面や水流すらも氷漬けにしてしまうほどのものだった。

 

ポケモンたちはその冷気に耐えていると、洞窟の奥からその冷気の正体が姿を現した。

 

その正体は全体的に水色の姿で、長く大きくも美しく輝く翼、しなやかになびく尾、鋭い鉤爪。その姿はまさに、伝説の鳥ポケモンであるフリーザーそのものであった。

 

『イブ……イブイ!』

 

イーブイは少し恐怖を抱きながらも、マリルを守るために勇気を振り絞って一歩前に出る。ニンフィアもみんなを守るために戦闘態勢に入る。

 

だが、フリーザーの様子は明らかにおかしい。決して温厚な性格、と言う訳ではないが、意味もなく暴れるようなポケモンじゃない。もしかしたら何かが原因で怒りの感情が溢れ、フリーザーを暴走させてしまっているのかもしれない。

 

フリーザーはニンフィアたちを見るや、直ぐに攻勢に出た。口から冷気を纏ったビーム、れいとうビームを放つ。ニンフィアとイーブイはみんなをシロンとマリルを守るためにシャドーボールの同時撃ちで対抗した。

 

しかし、フリーザーのれいとうビームはあまりに強力で、2人の力を合わせても完璧に防ぎきれず、シャドーボールを貫通されてしまった。ポケモンたちは間一髪避けることができたが、流石は伝説のポケモンと言うだけはあり、力の差が明確に表れてしまっている。やはりトレーナーがいなければポケモンもいつもの力が出せないのだろう。それだけトレーナーの存在は大きいものなのだ。

 

続いてフリーザーは、先ほどのれいとうビームよりも強烈な冷気を放つ。その冷気はれいとうビーム以上に威力の高いふぶきで、伝説のポケモンの攻撃ともなると当たれば一溜りもないだろう。

 

その攻撃はイーブイを対象に放たれる。だがフリーザーの放つ威圧感に圧倒されてしまい、頼れるトレーナーが側にいないイーブイは恐怖で動けなくなってしまっている。

 

『フィア!?』

 

ニンフィアはそんなイーブイを庇い、自ら前に出て盾になる。イーブイを含め、他のポケモンたちも慌てるがフリーザーのふぶきは直前まで迫っている。もうだめかと思った時、一つの影が飛び出してきてニンフィアとイーブイを抱えて二匹を守った。

 

何が起きたのか分からなかったイーブイとニンフィアはゆっくりと目を開ける。するとそこには、自分たちが最も信頼し、大好きな人の姿が目に映った。

 

「2人とも、大丈夫だった?」

『フィア!』

『イブイ!』

 

その人物は紛れもなく自分たちのトレーナーであるシンジだった。ニンフィアとイーブイがピンチだと感じた彼は、すぐに飛び出して2人をギリギリのところで救出したのである。このポケモンのためなら後先考えないところは彼の悪いところだが、同時にいいところでもあるのかもしれない。

 

「シンジさん!?大丈夫ですか!?」

 

リーリエが心配しながら駆け寄ってくる。彼女にとってはいつも無茶をする彼の姿を見るのはハラハラものである。だが、それでも彼のその姿を見ると、何一つ変わっていないと感じられるため彼女にとっては反対に安心でもあるのだが。

 

「大丈夫だよ。飛び込んだ時に少し擦りむいた程度だから。」

「そ、そうですか。もう、心配させないで下さいよ……。」

 

シンジもリーリエの言葉に対し、ごめんと素直に謝る。

 

『コォン!』

『リルル!』

「シロン!マリルさん!二人とも無事でよかったです!」

 

シロンとマリルも、リーリエの姿を見てすぐに彼女に飛びつく。リーリエも2人を優しく受け止め、心の中で安堵する。ニンフィアとイーブイも、シンジに会えて安心したのか彼の顔を舐めて歓迎した。シンジもくすぐったがっているものの、その表情はどこか嬉しそうな笑顔を浮かべていた。

 

戯れはそこまでにして、シンジとリーリエは目の前にいるフリーザーの姿を見据えた。

 

「あれが伝説のポケモン……フリーザーさん。」

「間違いないね。でも、なんだか様子がおかしい気がする。」

「!?シンジさん!あれを見てください!」

 

シンジが異変に気付いて呟くと、今度はリーリエがフリーザーを指さした。フリーザーの首元を注意深く見てみると、薄っすらと赤い光が灯っているように見えた。見えづらいが、何か首輪の様なものがフリーザーの首に取り付けられてしまっているようだ。

 

「もしかしてあれが原因で暴れている?」

「その可能性はありますね。だったら!」

「うん、僕らのやることは一つだね!」

 

フリーザーを助ける!

 

2人は同時にそう口にして決意をする。今はフリーザーは恐らく首輪の効果によって暴走状態に陥ってしまっている。自我を失っているフリーザーは我を忘れ、自分の攻撃が躱されてしまったのが悔しいかのように再び全力で襲い掛かってきた。

 

「ニンフィア!ようせいのかぜ!」

『フィーア!』

 

フリーザーは翼を大きく羽ばたかせ、ひこうタイプの大技であるぼうふうを繰り出す。対してニンフィアはようせいのかぜでぼうふうに対抗した。先ほどは拮抗することすら難しく、あっさりと攻撃を弾き返されてしまったが、今度はシンジが傍にいてくれるからか、拮抗どころかぼうふうを打ち破ることに成功した。

 

だがフリーザーも伝説のポケモン。とっさに翼を盾にしてようせいのかぜを防御し、直撃を免れる。技の威力やキレもさることながら、自我を失っているのにも関わらず判断能力は大したものである。

 

「マリルさん!バブルこうせんです!」

『リル!』

 

マリルはバブルこうせんをフリーザー目掛けて撃つも、フリーザーは優雅に飛び回りバブルこうせんを全弾回避する。だが、それでも攻撃をやめることはなかった。

 

「シロン!連続でオーロラビームです!」

『コォン!』

 

連続でオーロラビームを放つも、その攻撃全てが簡単に避けられてしまう。フリーザーは我を忘れてもなお、相手の攻撃を冷静に対処している。

 

攻撃を全て躱され焦るリーリエに対し、シンジは一つの提案を伝える。

 

「リーリエ、フリーザーは僕が引き付ける!だからその隙にあの首輪を壊すんだ!」

「は、はい!分かりました!」

 

シンジの言葉にリーリエはそう返事をする。言葉にするのは簡単だが、あの首輪をピンポイントで狙うのは難しいだろう。それでもシンジがリーリエにその仕事を任せたのは、それだけ彼女の事を信頼しているからであり、リーリエも彼の期待に応えたいという強い思いがあるからこそだ。

 

攻撃が落ち着いたのを確認したフリーザーは、再びれいとうビームで襲い掛かる。

 

「ニンフィア!ムーンフォース!」

 

フリーザーが強力なこおりタイプの技で攻めてくるなら、こちらも全力で攻撃を仕掛けようと大技のムーンフォースで対抗する。

 

中央でムーンフォースとれいとうビームが交じり合い、その場で爆発してフリーザーの視界を奪う。それを確認したシンジは、すかさず追撃を仕掛ける。

 

「イーブイ!スピードスター!」

『イブイ!』

 

スピードスターはフリーザーを捉え、確実なダメージを与える。極めて命中率の高いスピードスターであれば、視界の悪い状況でも当てることは容易だ。適確な判断と言えるだろう。

 

スピードスターを受けたフリーザーは煙から姿を現し、そのまま墜落していく。今だと判断したリーリエは、すかさず攻撃の指示を出した。

 

「シロン!こおりのつぶてです!」

 

シロンはこおりのつぶてで首輪を狙い破壊を試みる。狙いもタイミングもバッチリ、と思いきや、フリーザーは目をかッと見開き、覚醒して再び飛び立つ。こおりのつぶては外れてしまい、首輪を壊すことはかなわなかった。

 

フリーザーは次の攻撃対象をシロンに定めて、三度れいとうビームを放つ。このままではマズいと判断し、リーリエはシロンに攻撃の指示を出す。

 

「シロン!オーロラビームです!」

 

オーロラビームでれいとうビームに対抗するシロン。しかし攻撃力の差は歴然。シロンのオーロラビームは徐々にフリーザーに押されてしまう。このままではシロンにフリーザーの攻撃が直撃してしまう。

 

「シロン!?」

 

リーリエは心配そうにシロンの名を口にする。その言葉に反応し、シロンはハッとなり以前味わった悔しさを思い出す。

 

その記憶はヤマブキジムでの敗北の事だった。あの時、負けたことによってリーリエには辛い思いをさせてしまった。もう二度と、信頼するパートナーに心配を掛けたくない、辛い思いをさせたくない。そう思ったシロンの攻撃に、突如として変化が起きた。

 

「!?あれは!」

 

リーリエが驚く。それもそうだ。先ほどまでは虹色のオーロラが描かれ、それでも押されていたにも関わらず、今ではフリーザーの攻撃と全く同じ攻撃がシロンから放たれたのだ。まるで技がレベルアップでもしたかのように。

 

その攻撃はフリーザーの攻撃を僅かに押し返す。するとその場で爆風が発生し、互いの鍔迫り合いのような戦いは終了した。リーリエはその後、シロンが新しい技を覚えたのだと確認し、喜びにあふれる。

 

「シロン!れいとうビームを覚えたのですね!」

『コォン!』

 

あれは紛れもなくれいとうビームだった。オーロラビームよりも更に強力なこおりタイプの技で、威力に関しては今見た通りの威力である。だが、シロンにも疲労の色が伺える

 

フリーザーは煙を振り払うように、続けてぼうふうを放つ。範囲の広いぼうふうを今のシロンでは避けられないと感じたリーリエだが、横からもう一つの優しくも力強い風に遮られ、その攻撃は相殺された。

 

「リーリエ!シロン!大丈夫?」

『フィア!』

 

その攻撃はニンフィアのようせいのかぜだった。リーリエはシンジに助けてもらったことに感謝をし、フリーザに視線を送る。

 

攻撃を二度も防がれ、驚きを隠せないフリーザーの隙を見計らい、シンジはチャンスだと感じ攻撃を加えた。

 

「ニンフィア!イーブイ!シャドーボール!」

 

二匹同時に繰り出すシャドーボールは、見事にフリーザーを捉えダメージを与える。防御が間に合わずにその攻撃を受けてしまったフリーザーは、致命傷とはいかないまでもダメージは確実に溜まっていた。今こそがチャンスだと感じたリーリエは、再び首輪を壊すための指示を出した。

 

「シロン!こおりのつぶて!マリルさん!バブルこうせんです!」

 

無数に放たれるこおりのつぶてとバブルこうせんは、首輪を破壊することに成功し、フリーザーはその影響で暴走状態から解放され、態勢を立て直し飛び上がる。

 

ゆっくりと飛び上がったフリーザーは、シンジとリーリエの姿を見つめた。暫く見つめた後、僅かに頷き、その場から飛び去って行った。

 

「ありがとう……と言っていたのでしょうか?」

「多分、そうだと思うよ。」

 

フリーザーの言った言葉を推察している2人の前に、ある物が落ちてきた。そのかすかに光っているものをリーリエは拾い上げる。するとそれは驚くべきものだった。

 

「!?これって……」

「中央に雪結晶のマーク……間違いなく氷の石だよ!」

 

そう、彼らの目の前に落ちてきたのは紛れもなく氷の石だ。氷の石は特定のポケモンを進化させるために必要な石。そのポケモンとは……

 

「シロンの進化に必要な石だね。」

「フリーザーさんのお礼……という事でしょうか?」

「そうなのかもしれないね。」

 

シンジの言う通り、氷の石はシロンの進化に必要な石だ。伝説のポケモンに関してはまだまだ謎な点が多く存在する。これもフリーザーの気まぐれか、それともフリーザーの意思なのか、それは永遠の謎だろう。

 

「……シロン。あなたはどうしますか?進化……」

『コォン……』

 

リーリエがシロンにそう尋ねると、シロンは震えながらリーリエの後ろに隠れた。どうやら何かは理解しているが、正直怖いと言った様子だ。

 

進化するという事は別の自分に生まれ変わるという事でもある。初めての進化に怯えるのは仕方のない事である。

 

「……そうですね。慌てる必要ありませんよね。」

 

リーリエはそう言い、氷の石を持った手を引く。

 

「シンジさん。この石、私が頂いてもいいでしょうか?」

「もちろんだよ。時間はたくさんあるんだし、一度だけだからシロンとゆっくり決めるといいよ。」

 

シンジは優しくリーリエにそう伝える。リーリエもそんな彼に感謝して、氷の石をバッグにしまった。

 

「それにしても伝説のポケモンフリーザー……すごいプレッシャーだったね。」

「はい、あれほどとは思いもしませんでした。」

「フリーザーが我を保っていたら、本当に勝ててたかどうか、怪しい気がするよ。」

「そうですね。でも、またいつか会えるといいですね。」

「……うん、そうだね。」

 

伝説のポケモンの凄さを目の当たりにしたシンジとリーリエは、ふたごじまを後にすることにした。

 

2人は今日経験した事を深く胸に刻み、次なる目的地であるグレンタウンへと目指すのであった。シンジとリーリエのカントーを巡る旅は、まだまだ続く!




ミュウツーを除いて初代最強を誇ったフリーザーさんです。現環境ではまあ、うん。そもそもこおりタイプ自体が不遇になりつつあるよね。フェアリーの登場、はがねやほのおタイプの使用率増加、あられが他の天候に比べしょっぱい等。もう少しすくいを与えてあげてもいいのよ?(グレイシア強化してくださいお願いします)

まずリーフィアの夢特性をひでりにしてとんぼ返りとソーラーブレードの習得、グレイシアの夢特性をゆきふらしにして黒い霧の習得させればかなり強化されるのでは?つうか普通に強い気がする。

そんな願望はともかく、この前ポケモンセンターに行ったらイーブイ(とついでにピカチュウ)に会いました。イーブイ可愛すぎて何度も写真撮ってました。動画もとれて、遂にグレイシアとリーフィアの縫いぐるみも見つけたので言うことなしです。可愛い。

(また)ブイズの厳選にハマりだしてしまったのでもしかしたら次回の投稿遅れるかも?来週投稿できるか分かりませんががんばリーリエで頑張ります。

てなわけで?また次回お会いしましょう!感想や意見があればお気軽にどうぞです!

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