ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

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ポケモンの一番くじ引いて1回でC賞引けてキモいぐらいにやけているヌシです。イーブイ可愛い。

ポケモンソーダも1箱で買ったヌシです。ブイズ可愛い。

と言う訳でなんとか間に合わせましたセキチクジム戦!なんかジム戦の時は話長くなってる気がしますが、3対3のバトルであれば仕方ないと思います。満足していただける内容であればヌシも嬉しいです。

少し本音を言うと、小説書くのは楽しいですが毎週書くのって結構疲れますね。でも締め切りを設定しないと三日坊主のヌシはやりきれないと思うのでがんばりますが。


VSセキチクジム!決めろ!魂の一撃!

サファリゾーンにて迷子のポケモン、ミニリュウを仲間にしたリーリエ。そしてセキチクジムへと挑戦するため、一行はセキチクジムの前へとやってきていた。

 

「な、なんど体験してもジム戦前の緊張感は慣れませんね。」

「相手の詳細が分からないとなると尚更ね。」

 

リーリエはセキチクジムの前に来ると、ジム戦前に味わう緊張感に不安を感じていた。その不安を忘れるように、リーリエは一度深呼吸で落ち着こうとする。それでも尚緊張の顔色に染まっている彼女に、シンジはセキチクジムのアドバイスを伝える。

 

「セキチクジムはどくタイプのジム。リーリエの手持ちの相性で言えば正直悪いけど、相性だけではバトルの優劣は決まらないよ。」

「は、はい。」

「ここのジムリーダーは素早いポケモンで怒涛の攻撃を仕掛け、テクニカルな戦法で敵を翻弄するバトルスタイル。慎重に動けばただの的になるだけだから、時には大胆に攻めるのも重要になってくるよ。」

「分かりました!ポケモンさんたちを信じて、必ず勝って見せます!」

 

シンジの言葉にリーリエは緊張が解けたようで、手をグッと握り締め決意を固める。シンジもこれなら大丈夫だろうと、セキチクジムの扉をゆっくりと開けた。

 

しかし、扉を開けた先には人影はおろか、人の気配すら感じない。ジムの中は道場のようにバトルフィールドが広がっているが、周囲には何もない内装だ。誰かジムの関係者がいないかと辺りを見渡すリーリエだが、その時どこからか声が聞こえてきた。

 

「セキチクジムへようこそ!あたいはジムリーダーのアンズ!」

 

その声は間違いなく女性の声だった。しかし、再び辺りを見渡してみても人の姿が全く見当たらない。リーリエはその声の主の正体に首を傾げる。

 

その時、リーリエの目の前に突然突風のように何者かが降りてきた。リーリエもたまらず目を瞑るが、目の前を確認するとそこには一人の女性が立っていた。

 

その女性はピッチリとした黒に染まった上下の服に、赤いスカーフを巻いている。その姿はまるで忍者と呼ばれる者たちの姿に酷似していた。

 

「え、えっと、あなたがセキチクジムのジムリーダーさんですか?」

「ああ、そうだよ。」

 

突然姿を現した女性に戸惑うリーリエ。彼女こそがこのセキチクジムのジムリーダーその人だ。

 

「改めて、あたいはセキチクジムジムリーダーのアンズ!よろしく!」

 

アンズと名乗った女性は笑顔でリーリエに挨拶する。リーリエは戸惑いながらも、自分も自己紹介するために再び口を開く。

 

「わ、私はリーリエです!アンズさんに挑戦するために来ました!」

「OK!もちろんジム戦は受けて立つよ!」

 

アンズは快くリーリエの挑戦を受け入れる。その後、アンズはシンジの顔を見て言葉を続けた。

 

「それであなたも挑戦者なの?」

「いや、僕はただの付き添いですよ。それよりキョウさんはどうしたんですか?」

 

シンジは一つの思っていた疑問をアンズに問いかける。リーリエも聞きなれない名前に首を傾げた。

 

「ああ、キョウはあたいの父上だよ。ただ今は四天王に就任したからね。あたいが後任として選ばれたってわけ。あなたは父上の知り合いなの?」

「僕はキョウさんがジムリーダーをしていた時に挑戦したんです。まさか四天王になっているなんで思っていなかったので驚いていますが。」

「そうだったのね。父上はあたいの誇りよ。」

 

シンジは彼女の回答に納得するように頷いた。以前挑戦したジムリーダーが四天王になっていると言う事は初耳だったため驚いたが、キョウの実力は本物だと知っているため違和感は感じなかった。

 

「じゃあ早速始めようか!」

「はい!よろしくお願いします!」

 

アンズとリーリエはバトルを開始しようと互いにバトルフィールド向かい合わせに立つ。互いの体が向き合ったところで、どこからともなく審判が姿を現した。ここのジムは皆が忍者として日々鍛錬しているジムのようだ。リーリエも突然現れた審判に言葉を失っている。

 

「それではこれより、チャレンジャーリーリエ対ジムリーダーアンズによるジムバトルを開始する!使用ポケモンは3体!どちらかのポケモンが全て戦闘不能になったらバトル終了です!なお、ポケモンの交代はチャレンジャーの実認められます!では両者、ポケモンを!」

 

審判の合図でリーリエはハッと我に返る。慣れていない現象にどうしても思考がついて行かないようだが、それでもジム戦に集中しようと意思を強く持つ。

 

すると、先にアンズがモンスターボールを手にしポケモンを繰り出した。

 

「あたいの一番手はこのポケモンだよ!」

『クロッ』

 

アンズが最初に繰り出したのはクロバットだった。クロバットはリーリエも一度対戦経験がある。リーリエはクロバットの姿を見て、最初に出すポケモンを決めた。

 

「私の一番手はこの子です!お願いします!フシギソウさん!」

『ソウソウ!』

 

リーリエが選んだのはフシギソウだった。以前クロバットと対峙した時も当時フシギダネから進化したフシギソウだった。ひこうタイプを併せ持つクロバットに対して相性が悪いが、それでも彼女はフシギソウを信じてフシギソウを選出したのだ。

 

「ではバトルはじめ!」

 

審判の合図とともにバトルが開始される。先手をとろうとするも、なんと先に動き出したのはアンズの方であった。

 

「クロバット!エアスラッシュ!」

 

クロバットは四枚の翼を羽ばたかせ、刃のように鋭い衝撃波で先制攻撃を仕掛けた。予想外の行動にリーリエは慌ててフシギソウに指示を出す。

 

「躱してください!」

 

予想外の攻撃ではあったが、フシギソウは横にステップすることでその攻撃を難なくかわす。しかし、クロバットによる攻撃はこれだけで終わることはなかった。

 

「まだよ!シザークロス!」

 

クロバットは翼を交差させ、絶え間なくフシギソウを攻め立てる。フシギソウも回避行動に移るが捌ききることが出来ず、シザークロスをまともに喰らってしまう。

 

「フシギソウさん!?」

 

フシギソウは確実にダメージを貰ってしまうが、それでもまだ平気なようでダウンを拒み受け身をとる。

 

「まだまだ終わらないよ!エアスラッシュ!」

 

クロバットは再びエアスラッシュで攻撃する。休むことなく攻め続ける彼女とクロバットにどう対処するべきか、頭の中で考えをまとめていた。

 

(これがシンジさんの言っていた怒涛の攻撃。確かにこのままでは一方的に押されてしまいます。ですが押してダメなら引いてみろ、その逆もまたありです!シンジさんに言われた通り、大胆に攻めます!)

 

覚悟を決めたリーリエは、迫りくるクロバットのエアスラッシュに対抗するために攻撃を仕掛けることにした。

 

「行きます!フシギソウさん!とっしんです!」

 

フシギソウはエアスラッシュを次々と避けながらクロバットに接近する。すべて上手く躱すフシギソウだが、アンズは驚いた様子は見せなかった。寧ろそれを待っていたと言わんばかりに嬉しそうな表情を浮かべていた。

 

「シザークロスで迎え撃って!」

 

再びクロバットはシザークロスで攻め立てる。クロバットとフシギソウは中央で交じり合い、互いに後ろまで後退させられる。どちらの攻撃力も五分五分のようだ。

 

「続けてはっぱカッターです!」

 

休んでいる暇はないと、続けてはっぱカッターで攻撃を仕掛けるフシギソウ。その無数に接近してくるはっぱカッターに、アンズは冷静に対処した。

 

「クロバット!かげぶんしん!」

 

クロバットは自らの分身を無数に生み出し、はっぱカッターを華麗に回避する。本物のクロバットがどれか分からなくなり戸惑うリーリエとフシギソウ。その隙をつき、アンズは攻撃を続ける。

 

「今よ!ブレイブバード!」

 

クロバットの分身が一つに重なり、低空を飛行してフシギソウに勢いよく接近する。クロバットは青いオーラを纏っており、どんどん勢いを増してフシギソウへと接近してくる。フシギソウは慌てて回避しようとするが、そのクロバットの素早さに翻弄され回避することができず正面から受けてしまう。

 

「フシギソウさん!?」

 

ブレイブバードを受けたフシギソウは思わずダウンしてしまう。ブレイブバードはひこうタイプの技の中でもトップクラスの威力を持つ技だ。それを正面から受けてしまっては一溜りもないだろう。アンズも勝ちを確信したような表情だ。

 

しかし、フシギソウは負けじと自分の体に鞭をうち立ち上がる。ダメージはかなりのものだが、それでもリーリエの思いに応えるために倒れてはいられなかった。まさかの光景にアンズも驚いている。だがその反面、楽しさのあまり嬉しさがこみ上げてきた。

 

「なら次で終わらせるよ!ブレイブバード!」

 

再びクロバットはブレイブバードでフシギソウに接近する。絶体絶命の危機に、リーリエは一つの賭けに出た。

 

「走って逃げてください!」

 

リーリエの取った行動は、なんとクロバットから走って逃げる指示だった。フシギソウはリーリエを信じてクロバットとは反対の方向へと走り出す。しかし、フシギソウが全力で走っても当然クロバットのスピードには勝てない。徐々にクロバットとの距離が縮まる中、リーリエは今がチャンスだと感じ次の指示を出す。

 

「ジャンプして躱してください!」

 

クロバットが間近まで迫った瞬間、フシギソウはジャンプをしてクロバットの頭上へと回避する。クロバットも突然の事で反応しきれず、ブレイブバードは空を切る結果となった。アンズもまさかの行動に驚くも、その間にフシギソウの攻撃がクロバットを襲った。

 

「今です!つるのムチ!」

 

フシギソウの繰り出したつるのムチが、クロバットを頭上から叩きつけた。ブレイブバードの勢いも仇となり、地面に叩きつけられたクロバットはそのまま目を回して戦闘不能となる。

 

リーリエはクロバットと逆の方向へと走ることによって、接触するまでの時間を延ばし回避するタイミングを見計らっていたのだ。たとえフシギソウからはクロバットの姿を見ることができなくても、リーリエがフシギソウの代わりに目となって伝えることができればタイミングを合わせることは問題ない。これもポケモンとの信頼関係を築けているリーリエだからこそできることだ。

 

「クロバット戦闘不能!フシギソウの勝ち!」

 

アンズはクロバットをモンスターボールへと戻す。そしてリーリエとフシギソウを心から称賛した。

 

「まさかあの状況から逆転するとはね。正直驚いたよ。でも勝負はまだまだこれからだからね!」

 

アンズはそう言い、次のポケモンを繰り出した。

 

「二番手はこの子よ!アリアドス!」

『アリ!』

 

アンズが繰り出したのはアリアドス。むし・どくタイプを持つポケモンで、クロバットと同じようにフシギソウでは相性が悪い相手だ。

 

「二番手はアリアドスさんですか。フシギソウさん、戻って休んでいてください。」

『ソウ!』

 

リーリエはフシギソウをボールへと戻して態勢を整える。今の戦闘でダメージを抱えたままのフシギソウでは勝率が低いと考えたのだ。そしてリーリエも次なるポケモンを出すことにした。

 

「チラーミィさん!お願いします!」

『チラミ!』

 

リーリエが繰り出したのはチラーミィだ。この交代が吉と出るか凶と出るか。

 

「またこっちから行かせてもらうわよ!ミサイルばり!」

「躱しておうふくびんたです!」

 

無数のミサイルばりを上手く躱しながら、自慢のスピードを活かして接近していくチラーミィ。そのスピードには目を見張るものがあるが、それでもアンズにはまだ余裕の笑みがあった。

 

「アリアドス!こうそくいどう!」

 

チラーミィがおうふくビンタを決めようとすると、そこには既にアリアドスの姿はなかった。何故ならものすごいスピードでチラーミィの逃げ場を無くすように動き回っているのだ。アリアドスのその姿はまるでアリアドスが複数体いるようにも見える光景だった。

 

「チラーミィさん!後ろです!」

「遅いわよ!アリアドス!クロスポイズン!」

 

チラーミィがリーリエの声に反応したものの既に遅く、アリアドスの両手から繰り出されたクロスポイズンでチラーミィは飛ばされてしまう。不意打ちに近いその攻撃は、チラーミィにとってもかなりのダメージとなった。

 

「続けてねばねばネット!」

『チラッ!?チラッ!?』

 

アリアドスは背中の棘から粘液のようなネットをチラーミィの周辺にまき散らす。チラーミィダメージで起き上がるのが遅れたチラーミィは逃げることができず、見事にねばねばネットに囲まれてしまう。

 

「今よ!ミサイルばり!」

 

身動きの取れないチラーミィにミサイルばりが接近する。リーリエもどうにかしてこの状況から脱出しなければと行動にでる。

 

「あなをほるです!」

 

チラーミィはあなをほるで地中へと姿を消した。いや、そうせざるおえなかった。一見打破出来たようにも見えるが、それこそがアンズの狙いだった。

 

チラーミィはねばねばネットの範囲外へとあなをほるで脱出した。しかし、アンズはチラーミィの居場所が分かっていたようにアリアドスに攻撃の指示を出した。

 

「そこよ!クロスポイズン!」

 

チラーミィが姿を現した場所へ瞬時に移動し、アリアドスは強力なクロスポイズンをお見舞いした。二度のクロスポイズンを受けたチラーミィだが、ボロボロになりながらもなんとか立ち上がることができた。だが足元はふらつき、立っているのがやっとと言う状態だ。

 

「チラーミィさん!まだいけますか?」

『チラ……チラミ!』

「これで終わりね。ミサイルばり!」

 

今一度放たれたミサイルばりにチラーミィは窮地に立たされる。この厳しい状況をどう突破するべきか模索するリーリエ。焦る彼女の頭に、以前シンジが言った言葉が浮かび上がった。

 

 

 

 

 

 

――『工夫次第で戦術はいくらでも増えるってことは覚えておいた方が良いよ』

 

 

 

 

 

 

(そうです、工夫次第で戦術は無限に存在します。まだ私もチラーミィさんもやれます!)

 

リーリエは諦めた様子は見せなかった。そこで彼女はあるものが目に入り、まだ希望があるかもしれないとチラーミィに呼びかけた。

 

「チラーミィさん!正面に走ってください!」

 

チラーミィはリーリエの言葉を信じ、ミサイルばりを躱しながら駆け抜ける。ダメージがあるのかスピードはさっきよりも落ちているが、それでも攻撃を避けるには充分だった。

 

「!?なにをする気?クロスポイズンで迎え撃って!」

 

目の前まで接近するチラーミィに対し、クロスポイズンで対抗するアリアドス。リーリエはそれを待っていたとチラーミィに次の指示を出した。

 

「チラーミィさん!屈んでください!」

「しまった!?」

 

チラーミィは体勢を低くすることでクロスポイズンを回避する。クロスポイズンを誘導し、回避することで僅かでも隙を作ろうとしたのだ。しかしチラーミィのダメージでは大きく回避するのは当然無理だ。そこでリーリエはチラーミィの柔軟性を利用し、最小限の動きで回避しようと考えた。その思惑は成功し、見事クロスポイズンを空振りさせることに成功する。

 

「今です!おうふくビンタ!」

 

隙をさらしたアリアドスにすかさずおうふくビンタを決める。複数回ヒットしたおうふくビンタにより怯み、後ろへと下がらされる。その時、アリアドスにある異変が起きたのだ。

 

『アリ!?』

「アリアドス!?どうしたの!?」

 

アリアドスの動きが当然止まってしまった。一瞬何が起きたのか分からなかったアンズだが、その後何故動けなくなったのかを理解した。

 

「!?ねばねばネット!?」

 

そう、フィールドにまき散らされたねばねばネットに引っかかってしまったのだ。リーリエの狙いはアリアドス自身をねばねばネットに追い込むことだった。こうして動きを止め、僅かなスキを確実なチャンスに変えることが目的だったのだ。

 

「スピードスターです!」

 

そのチャンスを逃すことなく、スピードスターを正面から喰らってしまうアリアドス。逃れるすべのないアリアドスは、チラーミィの一撃により戦闘不能となる。

 

「アリアドス戦闘不能!チラーミィの勝ち!」

「お疲れ様、アリアドス。」

 

アンズはアリアドスをモンスターボールに戻した。

 

「まさか2回も逆転されるなんて思わなかったよ。」

「ポケモンさんたちが頑張ってくれたからですよ。私も何度かダメだと思いましたし。」

「ポケモンの事、よっぽど信頼しているのね。」

 

アンズはリーリエの心の強さを素直に称賛する。シンジはそんな彼女の姿が昔戦った人物の姿と重なった。

 

(アンズさんの戦い方、間違いなく父親のキョウさんと同じ戦い方だ。それにあの言動、父親の事を心から尊敬しているみたいだね。)

 

かつて戦ったキョウは確かに強敵で、自分も尊敬する人物の一人だと共感する。懐かしの人物の姿を思い出すと同時に、今の戦況を自分なりに分析する。

 

(リーリエの手持ちは3体。対してアンズさんのポケモンは残り1体。だけどリーリエのポケモンは瀕死に近いポケモンが2体、アンズさんはフルに体力を残した最後のポケモン。良くて状況は五分と五分だね。相手の残りがエースと考えるならば寧ろ逆かもしれない。)

 

だがそれでも最後までどうなるかは分からないのがポケモンバトルだと二人の戦いを静かに見守ろうと決意する。

 

(最後までがんばれ、リーリエ。)

 

シンジは心の中でそう呟く。リーリエが勝てるようにと祈りながら。

 

「じゃあ私の最後のポケモン。行け!モルフォン!」

『フォー!』

 

アンズは自らのエース、モルフォンを繰り出した。

 

「あれがモルフォンさん……。」

『モルフォン、どくがポケモン。コンパンの進化形。羽に鱗粉がついており、羽ばたくたびに毒の鱗粉をまき散らす。鱗粉の色によって毒の効果が変わる。』

 

明らかに厄介な相手だとリーリエにも緊張が走る。だがここまできて退くわけには行かないと気を引き締める。

 

「空を飛んでいるモルフォンにさっきみたいなねばねばネットを利用する戦い方は通用しないよ。」

 

アンズの言う通り、空を飛ぶモルフォンにはねばねばネットを利用するのは難しいだろう。ここからはリーリエにとって戦いづらいフィールドで戦うこととなる。

 

「チラーミィさん、続けてお願いします!」

『チラミ!』

 

チラーミィは傷付いているものの、戦闘意欲は失っていなかった。リーリエはペースを握られないように、今度はこっちから手を出すことにした。

 

「スピードスターです!」

 

動きが鈍くなっている今は牽制して様子を見ようとスピードスターを放つ。

 

「モルフォン!ぎんいろのかぜ!」

 

しかしモルフォンは翼を羽ばたかせ、文字通り銀色の風によりスピードスターを容易く撃ち落してしまう。明らかにチラーミィの攻撃力も下がってしまっているのが分かる。

 

「続けてねむりごな!」

 

チラーミィの頭上に緑色の眠り作用がある鱗粉をふさっと覆いかぶせるように振りかける。チラーミィもダメージの所為か対処が遅れ、その場でぐっすりと眠ってしまった。

 

「そんな!?」

「もう一度ぎんいろのかぜ!」

 

再度放ったぎんいろのかぜが、身動きの取れないチラーミィは当然まともにダメージを受けてしまう。ダメージの蓄積していたチラーミィは目を回し、そのまま戦闘不能となってしまった。

 

「チラーミィ戦闘不能!モルフォンの勝ち!」

「チラーミィさん!?」

 

リーリエはチラーミィの状態が心配になり、チラーミィに駆け寄り抱きかかえる。

 

「チラーミィさん、大丈夫ですか?」

『チラ……ミ』

「ありがとうございました。後はゆっくり休んでください。」

 

リーリエはチラーミィをモンスターボールへと戻す。そして元の位置に戻り、次のモンスターボールを手にする。

 

「お願いします!マリルさん!」

『リルル!』

 

リーリエが次に繰り出したのはマリルだ。フルに体力を残しているのはマリルだけであり、残りはダメージを残したフシギソウのみ。この戦いはより重要なものとなるだろう。

 

「行きます!バブルこうせんです!」

 

マリルは無数の泡を勢いよく放ち、先制攻撃を仕掛ける。しかし、この状況は先ほどのチラーミィと同じ状況だ。

 

「ぎんいろのかぜ!」

 

スピードスターと同じようにぎんいろのかぜであっさりと防がれる。だが、リーリエもそんなことは分かっていたと続けて畳みかける。

 

「ねむりごなを使わせるわけには行きません!アクアテールです!」

 

ねむりごなを撃たせる暇を与えないために続けてアクアテールで攻撃する。モルフォンもアクアテールは防ぎきれずに正面からダメージを受けてしまう。

 

「なるほど、それが目的だったのね。」

 

アンズが納得するようにそう呟く。リーリエの真の目的はダメージを与える事ではなく、周囲のねばねばネットを引き剥がして動きやすくする事だったのだ。アクアテールは攻撃範囲も広いため、ねばねばネットを引き剥がすのには最適だった。

 

「これで動きやすくなりました!もう一度バブルこうせんです!」

「こっちももう一度ぎんいろのかぜで反撃!」

 

マリルは再びバブルこうせんで攻撃する。だがモルフォンもバブルこうせんをぎんいろのかぜで同じように撃ち落す。

 

「マリルさん!ころがるです!」

 

マリルは丸くなり勢いよくモルフォン目掛けて一直線に転がっていく。ころがるはいわタイプのわざ。虫タイプのモルフォンには効果抜群だ。だが、そう簡単にはいかなかった。

 

「サイコキネシス!」

「サイコキネシス!?」

 

ころがるでダメージを与えるどころか、サイコキネシスで攻撃が当たる直前にマリルを宙に浮かせ防がれてしまう。そのままマリルは飛ばされ、壁に勢いよく当てられてしまう。

 

「マリルさん!?」

「続けてちょうのまい!」

 

マリルを飛ばし距離を離したモルフォンは、すかさずちょうのまいで自身の能力を上げた。ちょうのまいは自身の特殊系の能力と素早さを上げる強力な技だ。これでただでさえ厄介なモルフォンが更に強敵となってしまった。

 

「マリルさん!まだ立てますか!?」

『リル!』

 

マリルはその場で立ち上がった。ダメージはあるものの、まだ致命傷には至らないようだ。

 

「アクアテールです!」

「躱して!」

 

アクアテールが振り下ろされるも、モルフォンは難なくその攻撃を回避する。ちょうのまいによって先ほどよりも素早さが増している。隙をさらしてしまったマリルは、続いてあの技を受けてしまう。

 

「ねむりごな!」

 

モルフォンは再びねむりごなを放ち、マリルを眠りへと誘う。マリルはチラーミィの時と同じようにその場で眠りについてしまう。

 

「マリルさん!?」

「とどめよ!ぎんいろのかぜ!」

 

マリルは眠ってしまったまま抵抗できずにぎんいろのかぜで場外まで吹き飛ばされる。チラーミィの二の舞となってしまったマリルはそのまま戦闘不能となる。

 

「マリル戦闘不能!モルフォンの勝ち!」

「戻ってください!マリルさん!お疲れさまでした。」

 

最後まで頑張ってくれたマリルを労い、リーリエは覚悟を決めて最後のモンスターボールを手にする。

 

「泣いても笑っても次が最後よ。」

「はい。でも、私たちは勝って見せます!お願いします!フシギソウさん!」

『ソウソウ』

 

最後のポケモン、フシギソウを繰り出したリーリエ。当然休んだだけでは体力は回復せず、未だに疲労の色が伺える。それでもフシギソウはリーリエの思いに応えるために自分を奮い立たせる。

 

だがモルフォンのねむりごなはくさタイプのフシギソウには効果が無い。その点においては有利だが、モルフォンの持つサイコキネシスはどくタイプのフシギソウに効果抜群。一概に有利とはいえない。

 

「フシギソウさん!はっぱカッターです!」

「何度やっても無駄よ!ぎんいろのかぜ!」

 

フシギソウの放つはっぱカッターもむなしく、ぎんいろのかぜによって阻まれてしまう。とは言え迂闊に接近すればサイコキネシスの餌食となってしまう。どうすればいいか悩むリーリエに、フシギソウは軽く振り向いて何かを訴えかけるように見つめる。

 

「フシギソウさん……そうですね。悩んでいても始まりません!全力で行くだけです!とっしんです!」

『ソウ!』

 

フシギソウは真っ直ぐとっしんでモルフォンに接近する。だが、その先にはモルフォンの切り札とも呼べるあの技が待ち構えていた。

 

「サイコキネシス!」

 

やはりフシギソウの攻撃はサイコキネシスによって阻まれてしまう。フシギソウは投げ飛ばされるが、なんとか持ちこたえてダメージを抑える。だが、モルフォンの怒涛の攻撃は収まることはなかった。

 

「ぎんいろのかぜ!」

 

持ちこたえた矢先、休むまもなくぎんいろのかぜがフシギソウへと襲い掛かる。フシギソウは堪えることが出来ずに後ろへと飛ばされる。

 

「フシギソウさん!?」

 

リーリエの声に応えフシギソウは立ち上がる。どこかに突破口が無いかと考えるリーリエだが、その時フシギソウに変化が起きた。

 

『ソウソウ!』

 

フシギソウが苦しい顔をしながら立ち上がるのと同時に、フシギソウの周囲を緑色のオーラが纏った。瀕死に近い状況でのこのオーラは、間違いない。

 

「あれはフシギソウの特性……しんりょくだ。ピンチの時にくさタイプの技の威力が上がる起死回生の特性。」

 

シンジの言う通り、フシギソウの特性、しんりょくが発動したのだ。ピンチの時にくさタイプの技の威力が上がるその特性は、この状況を打破するための鍵となるだろう。

 

「フシギソウさん……。そうですね、私たちはまだあきらめません!勝負はここからです!」

「何をやっても無駄よ!ぎんいろのかぜ!」

『モッフォ!』

「フシギソウさん!はっぱカッターです!」

『ソウソウ!』

 

フシギソウはしんりょくの状態で威力の上がったはっぱカッターで対抗しようとする。しかし、思いは違う形で実を結び、新たな技を生むきっかけとなった。

 

フシギソウは緑色の丸い球を生成し、ぎんいろのかぜに対し正面から対抗する。その球には自然の力が宿っているように感じ、自然の命そのものにも感じるものだった。

 

フシギソウのその魂をこめた一撃はぎんいろのかぜを押し返し、モルフォンに直撃する。モルフォンはその攻撃に耐えることが出来ず、地上に墜落し目を回していた。いまの強力な一撃で戦闘不能となったようだ。

 

「モルフォン!?」

『モ……フォ』

「モルフォン戦闘不能!フシギソウの勝ち!よって勝者!チャレンジャーリーリエ!」

 

「か、勝てました……それに今の技は……」

「今の技はエナジーボールだね。くさタイプの中でも威力の高い技だよ。」

 

突然覚えた技に困惑しているリーリエを称えるようにシンジが近づき説明する。あの土壇場で覚えたエナジーボールは本人にとっても驚くべきものだった。

 

「エナジーボール……やりました!フシギソウさん!ありがとうございます!」

『ソウソウ!』

 

フシギソウを抱きかかえ喜ぶと同時に感謝するリーリエ。フシギソウもそんなリーリエの期待に応えることが出来て嬉しいようだ。そんな彼女らの姿を見て、アンズも称賛しながらリーリエ達に歩み寄ってきた。

 

「逆転続きで負けるなんてね。油断したつもりはなかったけど、あたいもまだまだ修行が足りないかな?」

 

アンズはそう言いながら、それでも悔しそうな顔をしていない。思いっきり気持ちの良いバトルが出来て彼女も心から楽しめたようだ。彼女はジムリーダーと言うよりも、一人のトレーナーとしての思いの方がまだ強いのかもしれない。

 

アンズは審判から差し出されたジムバッジを受け取り、それをリーリエへと差し出す。そのジムバッジはピンク色のハート型のジムバッジであった。

 

「これがセキチクジム勝利の証。ピンクバッジだよ。」

「これが……セキチクジムの……。ありがとうございます!」

 

そしてリーリエはピンクバッジを受け取り、共に頑張って勝利を手にしたフシギソウと一緒に喜びをあらわにする。

 

「ピンクバッジ、ゲットです!」

『ソウソウ!』

 

リーリエは受け取ったピンクバッジをバッジケースへと収める。リーリエは今まで取ったジムバッジを確認し、ここまでの道を思い返す。

 

「あなたとのバトル、凄く楽しかったわ。もし今度戦うことがあれば、その時は絶対に負けないから。」

「アンズさん……はい!私もその時にはもっともっと強くなってますから!」

「そうじゃない面白くないわ。あたいももっともっと修行して、いつか父上を超えるトレーナーになって見せるから。」

 

二人とも全力で戦えて満足しているようだ。そんなアンズに感謝し、リーリエたちはセキチクジムを後にする。

 

「さて、次はいよいよ。」

「はい!ヤマブキジムへ再挑戦したいと思います!」

「うん。僕にできることがあれば何でも協力するよ。」

「ありがとうございます!シンジさん!」

 

そうしれ彼らは次なる目的地を決め旅を続ける。さあ、次の目的地はいよいよヤマブキシティ。リーリエは強敵ナツメに勝つことが出来るのか?リーリエの挑戦はまだまだ続く!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いよいよくるわね。ふふ、なんだか楽しみになってきたわ。」

 

続く!




次回はヤマブキジム戦の前に2話ほど話を挟む予定です。もし何か書いてほしい話があれば内容によってはこちらで対応します。話数稼ぎにもなるし(ボソッ

では質問返しのコーナー?です。

先ず主人公のシンジが今まで旅してきた地方についてです。特に描写はしていませんが、カントー地方は勿論、日本がモチーフの場所は一通り旅をしているつもりです。カントー以外はジョウト、ホウエン、シンオウ辺りですね。他の地方は特に設定しているつもりはありませんが、後々追加していくかもしれません。後付け設定は(ry

次の質問は主人公の父親はどこにいるのか?と言う事でした。父親はポケモン恒例の行方不明(?)です。主人公の父親に関しては特に描写する予定はありません。書きたくなったら少し挟む程度になるかと。リーリエ達の父親、モーンに関しては未だ検討中です。

また何か質問があれば、受け答えしますのでなんでも書いていただいて構いません。勿論感想もお待ちしております!ではではまた次回お会いしましょう!

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