ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

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なんか日に日に話が長くなっていくなと思いながら完成させました。バトル回だとどうしても長くなるので仕方ないですかね。それに今回は初の3対3のバトルなので余計ですね。

まあ何はともあれ無事完成はしたので楽しんでいただけたら幸いです。

そう言えば次回作のポケモンはレッツゴーイーブイなのだとか。買う以外の選択肢がないのですがね。恐らくピカチュウ版がモデルなので進化は出来ないでしょうが可愛いので問題ないです。


VSタマムシジム!思いを込めて!

「ここがタマムシシティ……ですか?」

 

旅を続けていたシンジとリーリエは無事に目的地であるタマムシシティへと辿り着いた。そしてリーリエは、そのタマムシシティの予想以上の活気に驚いていた。

 

「タマムシシティにはジムは勿論、大きなタマムシデパートやゲームセンター、他の街にはない娯楽施設が並んでいるんだ。ヤマブキシティとは違った理由でここに立ち寄る人も多いみたいだよ。」

 

シンジはタマムシシティの概要を軽く説明した。ヤマブキシティは多くのビルが立ち並んでいるのに対し、タマムシシティは大きなデパートに加え、他の街では見ることのないゲームセンターなどの珍しい施設が並んでいる。しかしそんな中、リーリエは一つ疑問に思うことがあった。

 

「あ、あの、ポケモンジムが見当たらないのですが……」

 

リーリエの言った通りポケモンジムと思われる建物が見当たらないのだ。確かに見たことのない建物は多くあるが、見慣れているはずのポケモンジムが見当たらないのは不自然である。そこでシンジはやっぱりと言った表情でリーリエの質問に答える。

 

「ポケモンジムならあそこだよ。」

 

リーリエはシンジが指を指した方角を確かめる。するとそこにあったのは、色んな種類の花が活けて並んである一軒の建物であった。その建物の周囲はガラス張りであるため中が見えるようにはなっているが、外に並んである花が邪魔をして中身を覗くことが出来ない状態だ。

 

「エリカさんはタマムシジムのジムリーダーであると同時に、生け花教室の先生でもあるんだ。」

「え!?そうだったんですか!?」

 

シンジの言う通り、エリカはジムリーダーと兼任して生け花教室を開き生徒たちに和の素晴らしさ、心を伝えている。エリカ自身も和の心が育ってくれることは大変うれしいようで、自ら進んで生け花教室を開いたそうだ。生徒たちも先生として彼女の事をよく慕っているのだとか。

 

リーリエたちは早速ポケモンジムに挑戦しようとタマムシジムへと足を運んだ。ジムのドアを開けると辺り一面には緑が広がっていた。まるで自然に包み込まれたかのような光景に、リーリエはどこか心打たれた。

 

目の前を見ると、そこにはエリカと彼女の生徒と思われる女性が正座の状態でこちらを見つめていた。生徒たちの服も、全員エリカのような和服を着こなしており、全員が様になっている印象だ。恐らく皆、普段から着こなしているためその服と姿勢こそが自然体となっているのだろう。

 

「ようこそ、タマムシジムへお越しくださいました。」

『ようこそ、タマムシジムへ。』

 

エリカが床に手をつきゆっくりと頭を下げ一礼する。そんなエリカに続く形で、生徒たちも同じ動作で一礼をする。その動きはとても丁寧で洗礼されている動きであり、エリカによって生徒全員に基本的な動作から叩きこまれたようだった。

 

「あっ、えっと、よ、よろしくお願いします。」

「ふふ、そんなにかしこまらなくてもいいですよ。」

 

リーリエがどう反応すればいいのか戸惑っていたところ、エリカはクスクスと微笑み肩の力を抜くように言葉をかける。

 

「これは私共にとっての挨拶です。リーリエさん、貴女はいつもの貴女で振舞えばよいのですよ。」

 

エリカにそう言われ一安心するリーリエ。お嬢様としての動きであれば自然と身に着いてはいるかもしれないが、エリカのような動作は当然慣れてなどいない。動きと言うものは普段から触れていなければ体に染みつかないため仕方のない事だ。

 

「リーリエさんはポケモンバトルに挑戦しに来られたのでしょう?それではこちらにどうぞ。」

「は、はい!」

 

エリカはそう言うと同時にゆっくりと立ち上がり、リーリエたちを生徒と共にバトルフィールドへと案内する。その一挙一動が美しく、彼女ほど華麗と言う言葉が似合う女性は中々いないだろう。女性であるリーリエでさえ見惚れてしまうほどだ。

 

リーリエとシンジはエリカに案内され、バトルフィールドへと辿り着く。そのバトルフィールド自体は特に変わりはないが、周囲には植物たちが生い茂っており植物たちに囲まれている状態だ。まるで森の中にでもいるかのようだ。自然を愛し、くさタイプを愛している彼女だからこそのジムという事なのだろう。

 

「では早速始めましょうか。」

「はい!よろしくお願いします!」

 

シンジはいつものようにバトルフィールドの外で見守ろうと下がる。生徒たちも尊敬する先生であるエリカを応援するかのように黙って見守っていた。すると生徒の一人が審判を務めるために定位置に着き手をあげ、声を発した。

 

「ただいまより、チャレンジャーリーリエ対ジムリーダーエリカによるジム戦を行います!使用ポケモンは3体!どちらかのポケモンが全て戦闘不能になれば、バトル終了となります!尚、ポケモンの交代はチャレンジャーのみ認められます!では両者、ポケモンを!」

 

審判の合図と同時に、2人はモンスターボールを手に取る。

 

「優雅に美しく、出番です!モンジャラ!」

『モジャ』

「やっぱりモンジャラさんで来ましたね。お願いします!フシギソウさん!」

『ソウソウ!』

 

エリカが最初に繰り出したのはモンジャラだった。対してリーリエが選んだのはフシギソウだ。同じくさタイプのポケモンだが、どくタイプを持つフシギソウの方がタイプでは有利。しかし、それだけで通用しないことは前日のシンジとの戦いで把握している。ならば彼女には別の考えがあるのだろう。

 

「それでは、バトルはじめ!」

「フシギソウさん!とっしんです!」

 

審判の合図を確認した瞬間に動いたのはまさかのリーリエだった。いつもの彼女とは少し立ち上がり方が違うが、それでもエリカは一切動じることはなく、ただフシギソウとリーリエの事を見つめていた。

 

「……ふふ、モンジャラ、はたきおとすです。」

 

モンジャラはツルを伸ばし、フシギソウの動きを止めようと正面からはたきおとすをぶつけてきた。しかし、リーリエは以前見ていたからか冷静に対処の指示を出した。

 

「ジャンプしてつるのムチです!」

 

フシギソウはとっしんの勢いを殺すことなく、はたきおとすをジャンプで躱す。するとすかさずにつるのムチでモンジャラに反撃した。その攻撃は見事命中し、モンジャラはダメージを受け後ろに下がった。その一連の流れは以前のシンジとの特訓を活かした見事な動きであった。

 

「見事な動きでしたね。ですがまだまだこれからですよ。私たちの楽園へと招待しましょう。グラスフィールド!」

 

エリカの合図と同時にフィールドが緑の草で生い茂る。グラスフィールド内ではくさタイプの技の威力が上がり、少しずつだが地上に足の着いたポケモンたちの傷が癒える不思議な技だ。まさにくさタイプの楽園と言う言葉が相応しいだろう。

 

「これで互いに有利なフィールドになりました。今度はこちらから参ります!つるのムチ!」

「こちらもつるのムチです!」

 

互いのつるのムチが中央で交差する。互いの技がグラスフィールドによって強化されているため、互いの技は拮抗していると言ってよい。つるのムチはお互い弾かれ、エリカは次の行動へと移った。

 

「はたきおとすです!」

「とっしんです!」

 

モンジャラのはたきおとすが再びフシギソウを襲う。フシギソウは正面からとっしんで迎え撃ち、綺麗に躱しモンジャラへと接近する。だが、エリカもそう易々と近付かせてくれるはずもなかった。

 

「連続ではたきおとすです!」

 

次にとった行動はなんとはたきおとすの連続だった。モンジャラからに絡みついている無数の触手は途切れることを知らず、複数の触手がフシギソウを止めようと襲い掛かる。フシギソウも何度か躱すことに成功するが、躱しきることは出来ずにはじき返されてしまった。

 

フシギソウは頭を横に数回振り、ダメージを誤魔化すようにモンジャラを見る。その時、モンジャラとフシギソウの体が一瞬緑色に光った。グラスフィールドの効果で互いの体力が回復したのだ。

 

「では続けてはっぱカッターです!」

「はたきおとすで撃ち落としてください!」

 

フシギソウの放ったはっぱカッターを、モンジャラは微動だにすることなく次々と撃ち落としていく。

 

「シンジさんと戦ってなければ、私はここで動揺していたでしょうね。」

 

シンジに全く同じように技を撃ち落とされた経験をしていたからこそ、リーリエは驚く素振りを一切見せなかった。そしてリーリエは思いついたようにエリカが驚くような指示を出したのだ。

 

「やどりぎのタネです!」

「!?やどりぎのタネはくさタイプには効果は……」

 

そう思ったエリカだったが、次のリーリエの言葉で更に驚くこととなったのだ。

 

「モンジャラさんの足元に撃ち込んでください!」

「!?」

 

リーリエの指示通り、フシギソウはモンジャラの足元に背中の種から出したやどりぎのタネを放出する。地面に埋め込まれた種は大きなツルとなり、モンジャラの前にそびえたった。

 

「今です!はっぱカッターです!」

 

フシギソウははっぱカッターによりツルごとモンジャラを切り裂いた。グラスフィールドの影響もあり威力の上がっているはっぱカッターは見事対象を切り裂き、モンジャラは遂に倒れてしまう。

 

「……あっ、モンジャラ戦闘不能!フシギソウの勝ちです!」

「お疲れさまでした、後はゆっくりお休みください。」

 

エリカはモンジャラに労いの言葉をかけモンスターボールへと戻す。そしてエリカは誰にも聞こえない声で呟いた。

 

「先ほどの戦術、誰かさんに感化されたのですかね。ふふ、本当に不思議な方です。」

 

エリカの言う通り、さっきの戦術は以前シンジとの戦いで教わったものだ。例え相手に効果がなくても、使い方次第では新しい戦術になる、その言葉を覚えていたのだ。ポケモンを信じていたからこそできた戦術だろう。自分でもこれだけ思い切った戦術が果たしてできるのかどうか、不安な気持ちも僅かながら抱いていたのが正直なところだが。

 

そしてリーリエがフシギソウを選択した理由がもう一つある。それはモンジャラの危険な戦術を避けることだ。以前リーリエはモンジャラの戦闘を横で拝見していた。その時にモンジャラの使用した技がしびれごなだ。しびれごなは相手を麻痺状態にしてしまう強力な技だが、くさタイプのポケモンには一切効果がない。それも考慮しての戦略であったが、別の意味でもフシギソウを選抜したのは正解だったようだ。

 

「では私の二番手です。優雅に参ります、ロゼリア!」

『ロゼ!』

「!?あのポケモンさんは……」

 

リーリエは初めてみるポケモンをポケモン図鑑により確認しようと取り出す。

 

『ロゼリア、いばらポケモン。スボミーの進化形。両手の花からはいい香りがするが、花の棘には猛毒がある。花の香りには人をリラックスさせる効果もある。』

 

ロゼリアはフシギソウと同じくさとどくの複合タイプだ。だがモンジャラと違いロゼリアがどんな戦い方をするか分からない以上、ここはこのままバトルを進めるのが無難だとリーリエは判断した。それにグラスフィールドが継続していることも考慮すると、くさタイプのフシギソウに任せるのが最適解かもしれない。

 

「ロゼリア!マジカルリーフです!」

「はっぱカッターで迎え撃ってください!」

 

マジカルリーフとはっぱカッターが正面からぶつかり合う。互いにグラスフィールドで強化されているが、今度は拮抗状態にとはいかなかった。はっぱカッターは見事撃ち落とされてしまい、貫いたマジカルリーフがフシギソウへと命中してしまう。

 

「!?フシギソウさん!」

『ソウソウ!』

 

フシギソウは大きなダメージを喰らってしまうものの、まだまだ行けると言う意思を見せながら立ち上がる。その後フシギソウはグラスフィールドの効果によって僅かに体力を回復する。だが……

 

「華麗に力強く、はなふぶき!」

 

ロゼリアが正面に両手の花を構えると、花から無数の花びらが文字通り花吹雪を巻き起こした。そのはなふぶきは容赦なくフシギソウを包み込み、空中へと打ち上げる。はなふぶきから解放されたフシギソウは、流石に耐え切れずに目を回し戦闘不能となる。それと同時に、グラスフィールドも消えてなくなった。

 

『ソウ……ソウ……』

「フシギソウ戦闘不能!ロゼリアの勝ち!」

「お疲れさまでした、ゆっくり休んでください。」

「次はどのポケモンを繰り出すのか、どのような戦術をとるのか、私としてもとても楽しみになってまいりました。」

 

エリカの言葉にリーリエは緊張した様子でエリカの姿を見据えた。想像はしていたがやはりかなりの強敵だという事を実感したのだろう。だが、絶対に勝つのだと言う強い意志を示し、次のモンスターボールを手にする。

 

「お願いします!チラーミィさん!」

『チラミ!』

 

リーリエが繰り出したのはチラーミィだった。エリカはチラーミィの眼を見ると、どこか嬉しそうに微笑んだ。

 

「皆さんいい眼をしています。とっても輝いています。」

「ありがとうございます!みんなは私にとって大切なパートナーたちですから!」

「そうですか。ですがだからと言って私は手を抜くことは致しません。全力で戦いますよ。」

 

エリカは自身の告げたその言葉と同時に動き出した。

 

「ロゼリア!エナジーボール!」

「スピードスターです!」

 

ロゼリアがエナジーボールを放つと、チラーミィはスピードスターで反撃した。中央で互いの技がぶつかり爆発するが、エナジーボールの威力の方が勝っておりスピードスターを貫通した。チラーミィは自慢の身のこなしでエナジーボールを回避する。

 

「グラスフィールドの恩恵がない状態でもこの威力。やはり強いです!」

 

ロゼリアはチラーミィに休む暇を与えずに攻撃を続ける。

 

「続けてマジカルリーフ!」

 

ロゼリアは立て続けにマジカルリーフで攻める。マジカルリーフは命中率が限りなく高く、回避が非常に困難な技だ。闇雲に突進してはただ餌食になるだけだろう。そこでリーリエは1つの考えが浮かんだ。賭けになってしまうが、それでもこれが一番最適だと信じ行動に移す。

 

「チラーミィさん!スピードスターです!地面にぶつけてください!」

「っ!?地面にスピードスター!?」

 

エリカも予想外の行動に再び驚き目を見開く。チラーミィはリーリエの言う通りにスピードスターを地面に向かって放った。するとスピードスターによる衝撃で地面の砂が巻き上げられ、マジカルリーフを防ぐ壁となった。先ほどの戦法の応用版と言ったところだ。シンジのグレイシアが行ったシャドーボールを思い出し、もしかしたらとこの考えに至ったのだろう。

 

「う、上手くいきました!」

 

内心ヒヤッとしていたリーリエだが、自分の考えが上手くいきホッとする。エリカは呆気にとられるかのように呆然とする。そして今度はこちらの番だと言うように攻撃を仕掛けた。

 

「おうふくビンタです!」

 

チラーミィはその突進力を活かし、唖然とするロゼリアに急接近する。チラーミィの左右から交互に繰り出されるおうふくビンタをまともにくらい、ロゼリアは後方に下がる。

 

「今です!スピードスター!」

 

ダメージを負い怯んだロゼリアに、怒涛の追撃であるスピードスターが容赦なく襲った。ロゼリアもそのままダウンし、戦闘不能の状態となる。

 

『ろ、ロゼェ……』

「ろ、ロゼリア戦闘不能!チラーミィの勝ち!」

 

健闘したロゼリアモンスターボールに戻したエリカは、笑顔で感謝の気持ちを呟く。余程自分のポケモンが大事なのか、まるで包み込むかのようにモンスターボールを抱きしめ眼を瞑り気持ちを伝える。その姿からは深い愛情を感じさせていた。

 

「では最後のポケモンです。私の最高のパートナーはこの子です!」

 

エリカのその言葉を聞いたリーリエは喉をゴクリと鳴らす。ロゼリアでさえ強敵であったのに、それ以上のポケモンが一体何なのだろうかとリーリエに緊張が走る。

 

エリカは自信のある笑みを浮かべ、モンスターボールを上空に投げた。そしてモンスターボールから繰り出されたポケモンは……

 

『ハァナ!』

 

そのポケモンはキレイハナであった。可愛らしいその見た目からは威圧感などは感じられない。だが、正面に立つとその強さはひしひしと感じられる。リーリエは気を緩めぬように手をグッと握りしめ気合を入れる。

 

『キレイハナ、フラワーポケモン。クサイハナの進化形。太陽の光を浴びると花びらが色づく性質がある。キレイハナのダンスは太陽を呼ぶ儀式とも言われている。』

 

「マジカルリーフ!」

「!?もう一度スピードスターで防いでください!」

 

キレイハナはマジカルリーフを放つも、それはロゼリアの時と同じようにスピードスターを叩きつけ砂を巻き上げる形で再び防ぐ。しかしリーリエには疑問に思うことがあった。先ほども同じ方法で防がれたのにもかかわらず、また同じ攻撃を仕掛けてきたことが不思議に感じたのだ。だがその疑問もエリカの次なる行動で自然と消えていった。

 

「続けてリーフストーム!」

 

キレイハナは更にリーフストームでの追撃を仕掛ける。流石のチラーミィも咄嗟の回避を行うことが出来ずに正面からまともにくらってしまう。リーフストームははっぱカッターやマジカルリーフに似てはいるが、それらよりもはるかに威力が高く強力なくさタイプの技だ。チラーミィもこのダメージはただでは済まないだろう。

 

この防御方法は確かに強力ではあるが、その反面に最大の欠点もある。それは自らの視界までも悪くしてしまうところだ。砂を巻き上げることで相手の技の威力を殺すのと同時に、その一瞬だけ相手の姿が砂で隠れてしまう。熟練されたポケモンであれば、その一瞬の隙を突いて攻撃を決めることが出来るだろう。今回は見事その僅かな弱点を突かれてしまったと言う事だ。同じ手は二度も通じるほど甘い相手ではないと言う事をリーリエは痛感した。

 

「チラーミィさん!?」

『チ、チラ……み……』

 

チラーミィもリーリエの声に反応してなんとか起き上がろうとする。だが足に上手く力が入らず、再び地面に伏せてしまう。

 

「これでラストです。ソーラービーム!」

 

エリカの合図とともにキレイハナはエネルギーを溜め込む。くさタイプ最大の大技、ソーラービームだ。リーリエは焦る様にチラーミィに呼びかける。

 

「チラ―ミィさん!逃げてください!」

 

しかしやはりチラーミィは立ち上がることが出来ない。もし立ち上がれたとしても技を出すことはおろか、回避行動すらも困難だろう。だが今のリーリエには冷静な判断が出来ないぐらいパニックになってしまっている。

 

「発射です!」

『ハナァァァァァ!!』

 

エリカの声に合わせキレイハナはソーラービームを放つ。ソーラービームはチラーミィに直撃し、チラーミィは大きく吹き飛ばされた。当然その威力は計り知れず、チラーミィは戦闘不能となってしまう。

 

「チラーミィさん!?」

『チラァ……』

「チラーミィ戦闘不能!キレイハナの勝ち!」

 

チラーミィをモンスターボールへ戻したリーリエは一言チラーミィに謝るが、その後すぐに感謝してゆっくり休むように伝える。そして遂に、リーリエの手持ちも残り最後となった。

 

「最後のポケモンはあの子でしょうか?」

「……私の最後のポケモンさんは……!?」

 

リーリエはシロンの入ったボールを手にし、それを投げようとする。しかしその時、突然もう一つのモンスターボールが開き中からポケモンが姿を現した。

 

『リル、リルル!』

「る、ルリリさん!?」

 

突然勝手に出てきたルリリに戸惑うリーリエだが、ルリリはリーリエに何かを訴えかけていた。

 

「も、もしかして自分が戦う……と言っているのですか?」

『ルリ!リルル!』

 

どうやらリーリエの言ったことは正しいようで、ルリリも大きく頷き“そうだ”と答える。しかしリーリエは迷った。ルリリをこのまま戦闘に出してしまってもいいのかと。相手はあの強敵エリカである。その上くさタイプのキレイハナにルリリのみず技は効果が薄い。戦い慣れていないルリリを出しても勝ち目を無いに等しいだろう。

 

『ルリル!リルルリ!』

 

リーリエは最初は断ろうとした。しかし、リーリエの導き出した答えは……

 

「……分かりました。ルリリさん、あなたに任せます!」

『!?リルル!』

 

リーリエはそう決断した。相手がくさタイプであるならば、圧倒的にこおりタイプのシロンを出した方が有利だろう。それにルリリは戦いにはほぼ無縁だ。誰がどう見ても無謀な挑戦だ。

 

しかしそれでもリーリエはルリリに任せると言った。それはルリリの眼に覚悟を感じたからだ。その内側に秘めた闘志は本物だろうとリーリエは感じ取った。ならばルリリに任せても良いのではないか、と判断したのだ。

 

「最後はルリリに決めましたか。ですが遠慮はしませんよ。」

「望むところです!ルリリさん!バブルこうせん!」

「マジカルリーフ!」

 

ルリリはバブルこうせんを真っ直ぐ放つ。しかし、キレイハナの放ったマジカルリーフに無残にも散らされてしまった。ルリリは回避できず、マジカルリーフの直撃をくらってしまう。

 

「ルリリさん!?」

『る、ルリ!』

 

マジカルリーフをまともに受けてしまったルリリだが、それでもリーリエの声に応えるように立ちあがる。その姿にホッとしたリーリエは続けて攻撃の指示を出す。

 

「もう一度バブルこうせんです!」

「リーフストーム!」

 

再び諦めずにルリリはバブルこうせんで抵抗する。だが今度はさらに強力なリーフストームがバブルこうせんを阻み、ルリリは手も足も出ずにまた吹き飛ばされてしまった。

 

「ルリリさん!?」

 

リーリエはルリリに呼びかけるも、ルリリうつ伏せで倒れたまま反応しない。もしや戦闘不能になってしまったのかとリーリエは不安になる。

 

「ルリリ!戦闘不……」

「待ちなさい。」

「え?」

 

ルリリが戦闘不能となったと判断した生徒は勝敗を宣言しようと声を出すが、その声はエリカによって阻まれた。そのエリカの言葉と同時に、ルリリはゆっくりと立ち上がる。どうやらまだ戦闘不能には至っていないようだ。

 

「!?ルリリさん!」

『る、り……リルル!』

 

リーリエはそんなルリリの姿を見ると、ある事に気付いた。そう、ルリリの眼はまだ死んでいなかったのだ。これだけボロボロになっても、まだリーリエの事を信じ、諦めない意志をあらわにしている。その時、リーリエは以前シンジに言われた言葉を思い出した。

 

 

 

 

 

――『最後の最後まで自分のポケモンたちを信じること。そしてポケモンたちの信じる自分を信じること。』

 

 

 

 

 

リーリエはその言葉を思い返し、自分もルリリが諦めないのであれば自分も弱気になんてなっていられないと感じる。リーリエはそう思い、ルリリに呼びかける。

 

「ルリリさん!」

『ルリ?』

「私はあなたを信じています!なのであなたも私を信じてください!」

『!?リル!』

 

リーリエの言葉を聞いたルリリは強く頷く。すると同時にルリリの体が青白く光りはじめた。リーリエを含むこの場にいる全ての者が驚く。この土壇場の状況でルリリが進化しようとしているのだ。

 

「!?まさかこの状況で進化ですか!?」

 

エリカはそう驚きの声をあげる。そしてルリリは少しずつ姿を変えていき、遂にルリリを包んでいた光が解き放たれた。そこにいたのはルリリの進化した姿であった。

 

『リル!』

「こ、これは……」

 

リーリエは驚き言葉を失うが、それでもポケモン図鑑を開き姿を変えたルリリの詳細を確認する。

 

『マリル、みずねずみポケモン。ルリリの進化形。水を弾く体毛に覆われており、水の抵抗を受けずに泳ぐことが出来る。尻尾の先端には油が詰まっており、浮袋の役割も果たしている。』

 

「マリル……さん……?進化……進化したんですね!」

『リルリル!』

「おめでとうございます。このタイミングで進化するとは思いませんでした。」

 

リーリエの言葉にマリルも嬉しそうに跳ねる。エリカもそんな二人を祝福する。

 

マリルの進化条件はルリリが充分に懐いていること。ルリリはリーリエの気持ちに応えようとした結果がこうして進化と言う形に実を結んだのだろう。

 

「ですがまだバトルは継続中です。」

「はい!マリルさん、行きますよ!」

『リル!』

「キレイハナ、油断せず華麗に参りましょう。」

『ハナ!』

 

互いに気を引き締め、再びバトルを続行する意思を示す。そして先に動いたのはエリカとキレイハナであった。

 

「マジカルリーフです!」

「バブルこうせんで迎え撃ってください!」

 

マジカルリーフで攻撃を仕掛けるキレイハナに対し、マリルはバブルこうせんで対抗しようとする。しかし、マリルが繰り出したのはバブルこうせんではなかった。

 

マリルは尻尾に水に力を溜め込み、薙ぎ払うように振りかざしてマジカルリーフを全て撃ち落したのだ。今の技はリーリエも見た覚えがある。カスミのギャラドスやブルーのカメールが使ってきた技と同じだったのだ。

 

「今のは……マリルさん!アクアテールを覚えたのですね!?」

『リルル!』

 

マリルの新しく覚えた技はアクアテールだ。エリカも進化、新技と立て続けに起こる現象を見て驚きの連続ではあるが、それは以前見た誰かとの戦いにそっくりだと懐かしさを感じた。

 

「でしたら次はリーフストームです!」

「ジャンプして躱してください!」

 

リーフストームが正面から接近してくるが、マリルはそれをジャンプすることによって躱す。そしてすかさずに反撃を繰り出した。

 

「アクアテールです!」

 

そのまま空中から尻尾を振りかざしアクアテールを放つ。キレイハナはそのアクアテールが生み出した渦に包まれ飛ばされ確実なダメージを受ける。

 

「っ!?マジカルリーフ!」

「バブルこうせん!」

 

そして再びマジカルリーフとバブルこうせんが中央でぶつかり合う。しかし今回は一方的な展開にならず、互いの攻撃は拮抗し相殺された。進化したことにより攻撃力も上昇したようだ。普段は冷静なエリカでさえ焦りを隠しきれていない。

 

「でしたらこれで決めます!ソーラービーム!」

 

キレイハナはソーラービームを発射するために力を溜める。マリルも大技が来ることを警戒するが、戦い慣れていないマリルは今の怒涛の攻撃でかなりのスタミナを消費している。そしてキレイハナのチャージが完了し……

 

「発射です!」

『ハナァァァァァ!!』

 

キレイハナは全力の力でソーラービームを放つ。しかしその瞬間、キレイハナに異変が起きた。先ほどのアクアテールによるダメージが予想以上に大きく、ソーラービームの反動に耐え切れずに僅かに、ほんの僅かだが態勢を崩してしまった。それにより、ソーラービームの軌道が微妙に逸れてしまったのだ。

 

「!?躱してください!」

 

ソーラービームの軌道が逸れた事をリーリエは見逃さず、マリルに回避の指示を出す。マリルは体を少しずらす事によりソーラービームが擦れるように回避する。強大なソーラービームの反動により動けない状態のキレイハナに対し、最後の力を振り絞りマリルは攻撃を仕掛けた。

 

「これで決めます!アクアテールです!」

『リルルゥ!』

 

最大の力と思いを込め放ったアクアテールは再びキレイハナを包み込み、大きく後ろへと吹き飛ばした。キレイハナはあおむけの状態で倒れ、疲労とダメージの蓄積により遂に目を回し戦闘不能となる。

 

「!?キレイハナ!」

『ハ……ナァ……』

「き、キレイハナ戦闘不能!マリルの勝ち!よって勝者、チャレンジャーリーリエ!」

 

そして審判を務めてい生徒のコールにより、激戦のジムバトルは終結した。

 

「勝った……勝ちました!やりました!マリルさん!」

『リルリル!』

 

リーリエは奇跡的な勝利に喜びを隠せず、マリルはリーリエの期待に答えられたことに嬉しさを感じ思わず彼女の元へと飛び込む。

 

「キレイハナ、お疲れさまでした。ゆっくりお休みください。」

 

エリカはキレイハナをモンスターボールへと戻し、ゆっくりとリーリエの元へと近付く。

 

「お見事でした、リーリエさん。」

「エリカさん。」

「ポケモンと信頼しあう心、諦めない気持ち、全て見せていただきました。貴女はこれを受け取るに相応しいトレーナーでしょう。」

 

エリカはそう言い、生徒の持ってきたジムバッジを受け取りリーリエに差し出した。そのジムバッジは花びらの形をしており、それぞれの色が違う色で塗られているためまるで虹のようであった。

 

「これがタマムシジム勝利の証、レインボーバッジです。」

「これがレインボーバッジ……ありがとうございます!」

 

リーリエはエリカから渡されたレインボーバッジを受け取り、マリルと共に掲げて喜んだ。

 

「レインボーバッジ、ゲットです!」

『リルル!』

「おめでとう、リーリエ。素晴らしいバトルだったよ。」

「シンジさん!シンジさんも応援ありがとうございます!」

 

リーリエとマリルがポーズを決め喜んでいると、シンジが拍手をしながら称賛し近づいてきた。リーリエもそんな彼に感謝すると、マリルがシンジに笑顔で飛びついた。ルリリの時は飛びつくようなことはなかったが、これも進化した影響なのかもしれない。進化すると性格の変わるポケモンもいる事例があるため不思議ではないだろう。

 

「次に行くジムは決めていますか?」

「いえ、ヤマブキジムに再挑戦したいとは思っていますが。」

「再挑戦?という事は一度負けてしまったという事ですか?」

「はい、あの時は残念ながら手も足も出ませんでした。」

 

前回の敗北をリーリエは思い返しながらエリカに話す。エリカもヤマブキジムの強さをよく知っているため、自分の事のようにリーリエに同情する。

 

「でしたら一度セキチクシティのセキチクジムに挑まれてはどうですか?」

「セキチクジム……ですか?」

「ヤマブキジムで勝利するには、もっと経験を積んだ方がよろしいでしょう。セキチクシティであればサファリゾーンと呼ばれる施設もあります。そこでは珍しいポケモンがゲットできるので、戦力の増加にも繋がるのではないでしょうか?」

 

リーリエはエリカの話を聞くと、確かに今ヤマブキジムに挑んでも勝算は低い。ならば経験を積み、パーティの強化を優先するべきかもしれないと、エリカの言葉に従うのが最も最適かもしれないと考えた。

 

「シンジさん、エリカさんの言う通りセキチクシティに行ってみたいと思いますがいいですか?」

「勿論いいよ。次の目的地はセキチクシティに決定だね。」

 

シンジもリーリエの意見に快く承諾してくれた。こうしてリーリエたちは次の目的地をセキチクシティに決定し、セキチクシティへと向かうことにした。リーリエは色々とお世話になったエリカに別れを告げ、タマムシジムを後にする。リーリエとシンジの旅はまだまだ続く!




と言うわけでルリリはマリルに進化しました!マリル系はみんな可愛い。ただ最終進化は環境に入れるくらいには強い。つまりリーリエのパーティはガチ……ゲフンゲフン。

意見箱にて再びコメをいただきました。今回は感謝、質問、雑談に近い内容でしたのでそちらにて返答しましたが、質問関連は本編のあとがき辺りでも答えようかと思います。リクエストも意見箱で返答した方がいいですかね?まあ追々考えていこうかと思います。

では今回の質問ですが、4つ以上の技を覚えさせたりはしないのか、と言う内容でした。自分の中では覚えさせないつもりです。理由はルールだけは忠実に再現させたいからです。いくら元が強いからとは言え技を5つ覚えてしまっては少々不公平なので。他の方々が書かれた小説ではオリジナル技であったり、技を5つ覚えていたりするものもあるようですが、自分はアニメ準拠の再現をしたいと思っています。楽しみにしている方がいたら申し訳ないですが、どうかご了承くださいm(_ _)m

そう言えばアニメのピカ様が久しぶりに新技習得しましたね。てっきりボルテッカー復活かと思いきやエレキネットでした。まあボルテッカーは作画的にかなり大変だと思うので無理は言いませんが、やっぱりもう一回見たい気持ちはあったりします。BWエレキボール以来なので7年ぶりだそうです。

因みにかみなりは1億ボルト程あるとかなんとか。つまり1000万ボルトはかみなりに……

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