ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》 作:ブイズ使い
そう言えば皆さんはGW中はいかがでしたか?ヌシはモンハンやるかポケモンやるか程度しかやることなかったですが。つまりいつも通りの日常が過ぎていったと。
無事にクチバジムのジムバッジ、オレンジバッジを手に入れたリーリエ。次の目的地は強敵エリカの待つタマムシジムがあるタマムシシティだ。
「シンジさん、おはようございます。」
「あっ、リーリエおはよう。もうすぐ朝ごはん出来るからちょっと待っててね。」
どうやら彼らはキャンプをして1日を過ごしたようだ。リーリエがテントから出てくると、既にシンジが朝食を作り終えようとしていた。リーリエも席に着き朝食の時間を静かに待つ。
「はい、お待たせ。」
「ありがとうございます。では、いただきます。」
リーリエは手を合わせて朝食の挨拶を済ませる。シンジも『どうぞ召し上がれ』と一言伝える。シンジもポケモンたちの朝のポケモンフーズを分け与えて自分も席に着き、ご飯を食べ始めた。
「ルリリさん、今日のフーズも美味しいですか?」
『リルル!』
リーリエの問いかけにルリリも笑顔で美味しいと答える。どうやらシンジの作るポケモンフーズが気に入ったようだ。少しずつだが、ルリリもシンジに慣れてきているようだ。
こうして彼らのいつもの朝は何事もなく過ぎていった。しかし……
「ご馳走様でした。今日も美味しかったです。」
「お粗末様でした。そう言ってもらえて嬉しいよ。」
「ルリリさんも……あれ?」
リーリエがルリリの姿を確認しようとすると、そこにいるはずのルリリの姿が見当たらなかった。
「ルリリさん!?どこ行ったんですか!?」
「あれ?イーブイもいない!?」
ルリリがいないと言う事実に焦って大声を出すリーリエに続き、シンジもイーブイがいないと言う事に気付く。
「もしかして森の中に?だとしたら大変だ!?」
「ど、どうしたんですか?」
「この辺りの森には気性の荒いポケモンが住み着いているんだ。もし迷子になったとすると……」
シンジの話を聞いたリーリエが最悪の事態を予期し、大変だと慌ててルリリを探し出そうとする。行方不明の仲間を心配する自分のポケモンたちに安心するように声を掛けながら、ポケモンたちをモンスターボールへとしまい、急いでルリリを探しに行く準備をする。シンジも同じくポケモンたちをしまい、イーブイとルリリを探す準備をする。イーブイとルリリが無事にいてくれると信じて……。
~数分前~
シンジからポケモンフーズを与えられ、それをおいしそうに食べていたポケモンたち。ルリリもまた、フーズを笑顔で頬張っていた。そんな時……
『リル!?』
ルリリがポケモンフーズを滑らせて落としてしまったのだ。そのポケモンフーズは森へと入っていき、ルリリも追いかけるように入っていく。
『イブ!?』
その異変に気付いたイーブイは初めにシンジに伝えようかどうか悩んだが、その間にルリリを見失っては一大事だと判断し、ルリリの後を追いかける。
『リルル!……ルリ?』
ルリリは転がっていったポケモンフーズに追いつき、それを嬉しそうに食べる。しかし、気付いた時には周りに誰もいなく、自分は見知らぬ森の中一人で立っていたのだった。
『リルルぅ!』
『イブブイ!』
ルリリが、誰かいないかと大声で呼びかけると、イーブイがルリリに返事するように駆けつける。どうやら無事に見つかりイーブイもホッとしているようだ。
『リル、リルル……』
『イブ、イブブイーブイ!』
ルリリはリーリエが目の前にいないため不安が募ってしまったようだ。イーブイは大丈夫だとルリリを安心させようとするも、やはりどうしても不安が消えることはない。しかしその時……
『スピ!』
『リル!?』
『イブ!?』
なんと森から数体のスピアーが飛び出してきた。恐らくここはスピアーの縄張りだったのだろう。侵入されたと勘違いしたのか、スピアーはルリリとイーブイに襲い掛かる。2人は驚きながらも、イーブイがルリリを先導しスピアーから逃げようと走り出す。だがスピアーは縄張り意識が高く、巣に近づいた相手には容赦しないポケモンだ。このままでは拉致があかないと、イーブイはある行動に出た。
『イーブイ!』
イーブイは走りを止め振り向き、スピードスターをスピアーたち目掛けて放つ。そのスピードスターは見事スピアーに命中し、スピアーたちは一目散に逃げていく。
『ルリリ!』
ルリリは今のイーブイの姿を見て目を輝かせている。イーブイの勇敢な行動に心打たれたという事だろう。イーブイはスピアーが見えなくなるのを確認すると、ルリリが大丈夫かどうか確認するため声を掛ける。
『イブイ?』
『リル、リルル!』
イーブイの問いかけにルリリは大きく返事をする。どうやら大丈夫だと言っているようだ。その様子にイーブイも一安心する。イーブイはトレーナーであるシンジとリーリエがいない分、自分がしっかりしないとと思っているようだ。
『イブイ!イブブイーブイ!』
『リルル!』
今の出来事でキャンプ地から少し離れてしまったため、自分たちも歩こうと決意する。恐らく自分のトレーナーたちも心配して探しているだろう。じっとしていても始まらないと感じた2人はその場から動き始めた。
きゅるる~
その時、何かしらの音が聞こえた。ルリリが顔を赤くしている様子を見ると、どうやら今のはルリリのお腹の虫が鳴ったようだ。先ほど食事の最中に出てきてしまったため、お腹が空いたままなのだろう。イーブイはそんなルリリのために何かお腹の足しになるものがないか辺りを見渡す。
『イブ?イブブイ!』
イーブイが上の方を見上げると、何かを見つけたように声を出す。そこにあったのは一つの木の実だった。バナナの様に3つ連なっているピンクと黄色の鮮やかな木の実は、一般的にナナの実と呼ばれている木の実だ。ナナの実は甘く、どんなポケモンでも食べやすい木の実で、食用としてブレンドされることも良くある人気の木の実だ。イーブイがナナの実の存在を知っているのは、恐らくシンジから食べさせてもらったことがあるのだろう。
イーブイはルリリに待っているように伝えると、ナナの実がなっている木を走って登っていく。普段木登りなどをしたことのないルリリは、心配そうに眺めているが、イーブイは危なげもなく登っていく。イーブイのような4足歩行且つ体の小さいポケモンは、比較的に木登りに適した体をしている。木の上に住処を作ったり、今のように木の実を主食としたりすることも関係しているのだろう。
イーブイは木の実のあるところまで辿り着くと、ナナの実を咥えそのまま木を伝って降りてくる。そして咥えてきたナナの実をルリリの目の前に置き食べるように促す。ルリリはイーブイに『いいの?』と尋ねると、イーブイは『いいよ』と言った。ルリリはナナの実を一口食べると、どうやら気に入ったようで笑顔を零しながらもう一口食べた。
ルリリはそのままナナの実を食べるが、冷静になって周りを見てみると他の食べれそうな木の実を見当たらない。ルリリはこのまま一人で食べるのはイーブイに悪いと感じ、木の実を押してイーブイに渡すように前に出す。
『イブイ?』
『ルリルリリ!』
イーブイはルリリに渡されたナナの実を食べていいのかと尋ねると、ルリリはさっきのお礼と言ったようにイーブイに笑顔で渡す。イーブイはルリリにありがとうと言い、ルリリの心遣いに快く受け取る。これをきっかけに、ルリリとイーブイは互いに打ち解けることが出来たようだ。ルリリが抱いていた不安は先ほどに比べ、イーブイが傍にいることで徐々に薄れていった。どうやらイーブイの事を信頼できる存在だと感じたようだ。
『イブ?』
『リル?』
2人がナナの実を食べ終えると、近くの茂みがゴソゴソと動いた気がした。誰かがいる気配がし、シンジとリーリエが見つけに来てくれたのかと期待する。しかしそこから現れたのは……
『ニドォ!』
『イブ!?』
『ルリ!?』
なんとそこから現れたのはニドキングであった。ニドキングはイーブイとルリリよりも遥かに巨体であり、迫力が段違いであった。繁殖期のニドキングは雌であるニドクインを探すために少々気が荒くなっており、タイミングとしては現状一番出会ってはいけない相手である。イーブイとルリリは一目散に逃げだすも、ニドキングは彼らを目の敵にし物凄い勢いで追いかけてきた。
しかし、その時慌てていたルリリが勢い余って転んでしまう。それに気づいたイーブイは慌ててルリリの元へと駆けつける。ルリリが立ち上がろうとするが、その時にはニドキングが彼らの後ろに既に立っていた。ルリリを守るためにイーブイが前に立って戦う意思を見せる。しかしその足は少し震えており、イーブイが不安を感じているのが伝わってしまう。いくらイーブイが強いとはいえ、シンジがいない今ではルリリを守れるかどうかの不安、それと頼れる人がいないと言う不安の2つが頭を過ってしまうのだろう。
ニドキングは2人を見下ろすように立っているが、気が立っているニドキングは雷を纏った右手を振り下ろしてくる。これはかみなりパンチだ。もうだめかと感じた2人だが、その時不思議とニドキングが怯んだ。何者かの攻撃がニドキングの背中に直撃したようだ。誰の仕業かとニドキングは背後へと振り向き確認すると、そこにはイーブイとルリリのよく知る人物が立っていた。
「良かった!間に合って!」
「無事でよかったです!」
『フィア!』
『コォン!』
『イブブイ!』
『リルル!』
そこには汗だくで立っているシンジとリーリエ、そしてニンフィアとシロンがいた。その姿を見るに、イーブイとルリリを必死に探してくれていたのだろう。イーブイとルリリも、無事合流できたことに安堵の声をあげる。しかし攻撃を加えられ、激昂したニドキングは攻撃対象をニンフィアとシロンに向けた。
「今のニドキングは気が立っている。リーリエも注意してね。」
「はい、分かりました。」
ニドキングの攻撃に注意しつつ、この場から追い払おうと2人は戦闘態勢に入る。しかしその時、意外にもルリリがリーリエの前に出て、何かを訴えかけるように話しかけてきた。
『リルル!ルリルリル!』
「え、ルリリさん、どうしたんですか?」
「……もしかしたらルリリは、自分も一緒に戦いたいって言ってるんじゃないかな?」
「そうなんですか?
『リル!』
ルリリが必死に訴えかけるも、リーリエにはルリリの真意が分からずにいる。そこでシンジが一つの仮説を立てると、ルリリは頷きながら返事をする。どうやらルリリはリーリエのジム戦を何度か見ている内に、自分も彼女の役に立ちたいと思うようになったようだ。リーリエも危険だと承知しているが、あのルリリが自分から言い出したことを尊重するのもトレーナーの役目だと感じ、ここはルリリと共に戦おうと決意する。
『イブブ!イブブイーブイ!』
「え?イーブイも一緒に戦うって?」
『イブイ!』
イーブイもシンジの元に駆け寄り、ルリリと一緒に戦いたいと申し出る。その姿には先ほどの不安や緊張は一切見られず、頼もしいイーブイの姿があった。ルリリもそのイーブイの姿に目を輝かせ、1人で戦うと言う不安がなくなったようにも見えた。シンジはイーブイの主張を尊重し、イーブイをルリリと共に戦わせようとする。
「良し!じゃあ行こうか!イーブイ!」
『イブイ!』
「ではお願いします!ルリリさん!」
『リルル!』
そして2人はトレーナーの声に合わせ、ニドキングの方へと振り向く。ニドキングは既に戦う準備が万端の様で、2人に対して威嚇をしている姿が見られる。しかし、イーブイとルリリは一切退く姿を見せることはなく、それどころか2人で声を掛け合い、互いに安心させるように呼吸を合わせようとしている。
ニドキングが先に動き出し、再び2人にかみなりパンチを繰り出す。リーリエはルリリに迎え撃つように指示を出した。
「ルリリさん!あわ攻撃です!」
ルリリは口から無数の泡をニドキングに向かって放つ。ニドキングはじめんタイプのポケモンであるため、威力が低くともみずタイプのあわ攻撃は効果が抜群だ。その一瞬の怯みを見逃さず、イーブイは更に追撃を仕掛けた。
「イーブイ!シャドーボール!」
シンジの指示に従いシャドーボールをニドキングに放ったイーブイ。ニドキングは動きを止めてはいたものの、直撃だけは喰らわないように腕で急所である顔を守るようにシャドーボールを防いだ。その後、ニドキングは休むことなく攻撃を続行する。続いての攻撃はかえんほうしゃだ。そのかえんほうしゃはルリリへと目掛けて放たれ、実質初のバトルであるルリリは足がすくんだように動けなかった。そんな様子を見たリーリエは守るために飛び出そうとするが、ルリリの盾になるようにイーブイが立ちふさがった。
『ルリ!?』
突然の事で驚いたルリリ。イーブイは明確なダメージを受けてはいるものの、決して倒れることなくルリリを守っていた。シンジも心配になりイーブイの元に駆け寄った。
「イーブイ!?大丈夫!?」
『イブ……』
先ほどのような元気は見られないが、まだ立つことは出来るようだ。そのイーブイの姿にシンジは安心したように溜息をつく。そして、自分のために犠牲となってくれたイーブイのために、ルリリは決意を新たに前へと出る。
「ルリリさん!?」
リーリエが不安そうな声を出すが、その瞬間にはニドキングがかみなりパンチでルリリを襲おうとしていた。先ほどとは勢いが違い、確実にルリリを攻めようとしている事が伺える。危ないと感じるが、次の瞬間に不安を掻き消すような現象が起きた。
『リルルぅ!』
ルリリが行ったのは攻撃だ。しかしその攻撃は先ほどのような弱弱しいあわ攻撃ではなかった。確かに見た目はそっくりだが、もっと勢いよく、威力も格段に上がっていた。何が起きたのか分からなかったリーリエは疑問符を浮かべるが、シンジがその現象を解説してくれた。
「あれはバブルこうせん!?あわよりも威力の高い技だよ!」
「バブルこうせん?ルリリさん!新しい技を覚えたんですね!?」
『リルル!』
そう、ルリリが放ったのはあわ攻撃ではなく、もっと威力の高いバブルこうせんだ。新しい技を覚えたことにリーリエは喜びをあらわにする。ニドキングは今の一撃が効いたようでその場を立ち去っていく。どうやら彼もルリリの攻撃で懲りたようだ。その様子を見届けたリーリエは自分の元へと飛び込んでくるルリリを抱き寄せる。イーブイも先ほどの怪我を忘れるかのようにルリリの元へと駆け寄る。
『イブブイ!』
『リルル!』
どうやらイーブイが無事なことにルリリも嬉しいようだ。イーブイの姿を確認したルリリはリーリエの腕から飛び降り、イーブイの前で笑顔を零す。イーブイも釣られるかのように笑顔で対応する。
「何だか知らないけど、2人は今回の一件で距離が縮まったみたいだね。」
「そうですね。なんだか嬉しいです!」
『フィーア!』
『コォン!』
こうしてイーブイとルリリは仲良くなることが出来た。次第に周りとも心を打ち解けることが出来てきたルリリに、リーリエは子供の成長を見守る親の様な嬉しさを覚えた。ニンフィアとシロンも、2人の姿を見るのはトレーナーの様に嬉しいようだ。
そして迷子になりながらも仲良くなったイーブイとルリリを無事見つけ、彼らは目的地へと向け旅を続けるのであった。彼らの冒険はまだまだ続く!
今回はいつも通りのスピアーさんとニドキングさんに悪役を演じていただきました!ニドキングさんの設定は想像です。この小説の勝手な想像だと思って下さい。ごめんねニドキングさん(無関心)
それはそうと当小説に新たに評価が追加されていました!評価してくださった方々にはこの場を借りてお礼申し上げます!今まで名前を出すべきか悩んでいましたが、他の人の小説では普通にあとがきでお礼を言っていたのでこちらでも同じようにしたいと思います。
羅玖熾阿@鄂爾多斯さん、つね吉さん、木陰レンさん、パラドファンさん、誠にありがとうございます!
うん、自分がまじめな話をするのは何だか違和感ありますね。でも気ままで自己満足のために書いているとは言え、やっぱり感想をいただいたり評価を頂けるのはとても嬉しい事なのでテンションは凄い上がります。これからも頑張りますので応援よろしくお願いいたします!川´_ゝ`)
……ところでニドキングの鳴き声ってこれでいいの?