ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

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クチバシティでは欠かせないサント・アンヌ号回です。初め書いた話もありましたが、なんか違うなと思い書きなおしたのは内緒です。

初めに言っておきますが沈没はしません。


乗船!豪華客船、サント・アンヌ号!

ブルーとの別れを告げ、旅を続けていたシンジとリーリエ。

 

「シンジさん!見えてきましたよ!クチバシティです!」

 

そして目の前大きな見覚えのある町が徐々に近づいてきたのが分かり、リーリエは指を指した。そこはクチバシティ、橙色がイメージカラーの港町だ。リーリエがカントー地方で初めて足を踏み入れることとなった町でもあるため、少しばかり思い入れもあるのだろう。

 

二人はやっとたどり着いたクチバシティへと入る。カントー地方でも大きな街の一つであり、ヤマブキシティとも隣接しているだけあって充分と言えるほど街中が賑わっていた。

 

「まずはポケモンセンターに行こうか。ルザミーネさんにも連絡しておいた方が良いと思うし。」

「そうですね。それじゃあ行きましょうか。」

 

シンジの意見にリーリエも賛同し、二人はクチバシティのポケモンセンターに向かうことにした。ポケモンセンターにも人は多かったが、テレビ電話のスペースは空いていたためすんなりと使用することが出来た。

 

テレビ電話を起動させ、リーリエはルザミーネへと繋げる。テレビ電話の画面にルザミーネの姿が映り、互いの声も聞こえるようになった。

 

『あら、リーリエ。どうしたの?』

「お母さま!私たち今、クチバシティに到着しました!」

『そうなの、クチバシティに。』

 

クチバシティに到着したことを母親に嬉しそうに報告するリーリエ。ルザミーネも旅を楽しんでいる娘の姿を見て微笑む。自分の娘が自分の意志で旅を満喫し、成長していることに余程嬉しいのだろう。

 

『じゃあサント・アンヌ号に乗ってみたらどうかしら。』

「さんとあんぬごう?」

 

リーリエは聞きなれぬ単語に首を傾げる。その疑問に答えるように、ルザミーネは言葉を続けた。

 

『サント・アンヌ号はクチバシティのクチバ港に停泊してる豪華客船よ。普段は一般の人が乗ることは出来ないのだけど、今は一般人でも乗ることが出来るらしいの。』

 

リーリエはルザミーネの話を聞くと、サントアンヌ号に乗ってみたいと思った。豪華客船と聞けば誰でも一度は憧れるものだろう。リーリエがお嬢様育ちとは言っても、そのようなものに乗ったことは一度もない。

 

『出航はしないから安心していいわ。あくまで一般の公開乗船らしいから。』

「そうなんですね。シンジさんは乗ったことありますか?」

「ううん、僕も乗ったことはないよ。」

 

リーリエの言葉にシンジは首を横に振ってこたえる。流石に豪華客船と言うだけはあるため特別な機会がない限りは乗ることは出来ないのだろう。

 

「じゃあ折角だし乗ってみようか。こんな機会滅多にないし。」

「はい!」

 

どうやらリーリエはサント・アンヌ号に乗れることが余程うれしいようだ。リーリエの瞳は豪華客船に乗れると言うワクワクのためか、キラキラと輝いているようにも見える。

 

「と言うわけでお母様。私はサント・アンヌ号に乗ってみたいと思います。」

『そう。折角なんだから楽しんでらっしゃい。』

「はい!」

 

そう言いルザミーネは『また何かあったら連絡してちょうだい。』と言ってテレビ電話を切った。母親からの有益な情報に、リーリエは心躍らせながらシンジと共に港へと向かうことにした。当然ポケモンセンターでポケモンの回復をしてからではあるが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これがサント・アンヌ号……ですか。」

 

リーリエたちが港まで着くと、そこには立派で巨大な一隻の船が泊まっていた。船であるのにも関わらず、いくつもの窓が見え、客室が無数にあるのが見てわかる。外には豪華客船に乗ってみようと多くの人たちが並んでいた。リーリエたちもサント・アンヌ号に乗るために並ぶことにした。

 

「それにしても、想像以上に大きい船ですね。ビックリしました。」

「そうだね、ここまでデカいとは僕も思ってなかったよ。」

 

シンジも話には聞いていたが、実際に見たのは初めてであるためその大きさに驚いている様子だ。カントーを旅していた時も、当然このクチバを訪れはしたものの、普段は豪華客船らしく世界一周の旅へと出ていたため残念ながら当時目にすることは出来なかったのだ。

 

そしてシンジとリーリエがサント・アンヌ号の大きさに驚きながら話をしている間に列は進み、シンジたちもサント・アンヌ号に乗船することが出来た。しかし、乗船するとそこではさらに驚くべきことがあった。サント・アンヌ号の中は豪華客船と言うだけあり、廊下でさえも広く長いのだ。その左右には目が回るほど多くの扉があった。恐らくこの扉の殆どが客室だろう。更にはずらっと床を一面覆う様に赤いカーペットが敷かれていた。

 

「さあお客様、こちらへどうぞ。」

 

船員、俗にいうクルーが二人を案内する。黒のスーツに黒のネクタイ。襟も綺麗に畳んでおり、背筋も曲がっておらず流石は豪華客船のクルーだと思わせる接客ぶりに、二人は感心する。

 

「こちらがお客様のお部屋になります。」

 

「ではごゆっくり」と一言付け加え一礼したクルーは丁寧に扉を閉めて去っていった。最初から最後まで丁寧な対応を眺めた二人は、豪華客船の一室でくつろぐ様にベットに横になる。

 

「ベットも凄くふかふかです。ホントに豪華客船に乗ってるんですね。」

「うん、なんだか幸せな気分だよ。」

 

リーリエの言葉にシンジは相槌を打つ。そこで忘れないうちに確認しておこうと、乗船する際に貰ったパンフレットを確認するためにシンジは起き上がる。リーリエもシンジの横に座り一緒に内容を確認した。するとそこに書かれていた一つの項目が目に入った。

 

「ダンスパーティ?」

 

そこにはダンスパーティその概要が書かれていた。どうやらダンスパーティは大広間で行われるようだが、パンフレットにはダンスパーティの詳しい説明が書いてあった。

 

「ダンスパーティには男女二人一組で参加する事が条件です。それ以外の条件はございません。誰でも自由に参加できますので気軽にご参加ください。ダンスパーティ後は軽いサプライズもございます。衣装などはこちらでご用意させていただくため、お好きな衣装をお選びください。お食事もご用意しておりますのでどうかお楽しみください。」

 

シンジがそう読み上げると、リーリエはどこか緊張した様子を見せた。どうやら男女二人一組と言う部分に反応してしまったのだろう。少女にとってはペアと言う単語はそれだけ敏感に反応してしまう単語なのかもしれない。

 

「どうする?リーリエ?」

「は、はい!えっと……参加してみたいなって///」

 

シンジの言葉にリーリエは顔を赤くしながら慌てた様子でそう答える。シンジと一緒に参加してみたいと言う考えから咄嗟にそう答えてしまったが、自分はダンスには当然疎い。シンジと参加しては彼に迷惑が掛かってしまうのではないかと考えてしまうが、シンジはそんなことを一切考えずに参加することに同意した。

 

「僕もダンスは慣れてないけど、リーリエと一緒なら大丈夫な気がする。折角なんだから一緒に楽しもっか。」

「は、はい!」

 

シンジのその言葉にリーリエは安心したように返事をする。彼なりにリーリエの事を考えての発言だろう。見るからに彼女が緊張していたため、彼女を安心させるためにシンジがそう声を掛けたのである。豪華客船に乗ったのだから、折角の催しを楽しまなければ損と言うものである。

 

「もうすぐ始まるみたい。早速会場に行こうか!」

「はい!」

 

シンジはリーリエの手を取り、一緒に歩き出した。最初は顔を赤くしたリーリエだが、こんなに広い船の中で自分が迷子にでもなってしまえば一大事である。そうならないための配慮なのだろうと理解したリーリエは、彼の優しさに心の中で感謝したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが会場ですか?」

「そうみたいだね。」

 

二人が辿り着いたのは大きな大広間だった。天井には立派なシャンデリアが飾られており、隅の方には豪華な食事がずらりと並んでいる。まさに豪華客船で開かれるパーティそのものである。ここまでの再現をし、尚且つ端から端まで手入れが行き届いているのは、クルーの教育がいいのもあるだろうがその他にも余程稼いでいる証拠でもあるだろう。それだけVIPが集うようなところに立っているのは、なんだか落ち着かないものではあるが、それでも悪い気は不思議としなかった。

 

「お客様、ダンスパーティに参加されるのでしょうか?でしたら受付はこちらになります。」

 

受付の女性の方がこちらで受付をしてくださいとシンジたちを促す。シンジたちも女性の言う通りに受付を進めていく。

 

「はい、シンジ様とリーリエ様ですね。承りました。参加される方はこちらのカードをお持ちください。」

「これは……トランプ?」

 

女性から手渡されたカードは、一枚のトランプだった。シンジとリーリエにそれぞれ手渡され、表面を確認するが表には何も描かれていなかった。よく見ると、そのトランプには白いシールが貼られていてイラストが見えない様になっていたのだ。

 

「ダンスパーティに参加するために必要なチケットのようなものだと思って下さい。後で行われるサプライズに必要なものでもあるので、大切にお持ちください。」

「分かりました。」

 

女性の説明を聞き、シンジとリーリエはそう返事をする。

 

「衣装はあちらの部屋にご用意させていただいております。お好きな衣装を選んでご参加ください。」

 

女性の示した場所には扉があった。どうやら更衣室のようだ。二人は早速どんな衣装があるのか確認してみようと中へと入る。するとそこには数多くの衣装がずらりと掛けてあった。

 

「こ、こんなにあるんだ。」

「凄いですね。素敵な衣装ばかりで困ってしまいますが……。」

 

そのあまりの数に苦笑いを浮かべるしかない二人。そのどの衣装も高級感の溢れるもので、着るので少々戸惑ってしまう。しかし折角用意してくれたのに着ないのは失礼に値するため、遠慮しながらも着ることにした。汚したりしわをつくってしまっては問題なので丁寧に選んでいく。

 

「ど、どうしましょう。どれを選べばいいか悩んでしまいます。」

 

しかし、リーリエは数多くある衣装からどれを選べばいいのか悩んでしまう。素敵な衣装ばかりが並んでいるため、どれにも魅力を感じて選択肢を絞れずにいるのだ。それに彼女は普段自分の着る服を選んだことがなく、母親が選んだ服ばかりを着ていたため自分のセンスに自信が持てないでいる。そこでシンジがリーリエに一つの案を出す。

 

「じゃあ互いに互いの衣装をそれぞれ選ぶってのはどう?」

「えー!?わ、私の選んだものでいいのでしょうか……」

「うん、大丈夫だよ。リーリエの選んだ衣装なら絶対にいいやつだから。」

 

彼なりの気遣いなのだろうが、リーリエには悪意のないプレッシャーが圧し掛かる。しかしリーリエもシンジの期待と気持ちを裏切るわけには行かないと思い、シンジに着せる衣装を探すことにした。シンジも同じく、リーリエに似合いそうな衣装を探している。

 

「あれ?これ……」

 

するとリーリエは一つの衣装で目が留まった。シンジにならこの衣装は似合うのではないかと直感的に感じたのだ。自信があるわけではないが、それでも彼になら似合うと言う確信のようなものがどこか感じた。リーリエはこれにしようと決意し、その衣装を手に取った。シンジも、リーリエに似合いそうな衣装を見つけ、その衣装を手に取りリーリエと交換した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ど、どうでしょうか?」

 

シンジが選んだ衣装は、長めのスカートにヒラヒラのフリルがある純白のドレスだった。上半身も同じく白で短めの袖が少しふっくらと膨らんだ印象であり、まるでお姫様のようなイメージを抱かせる衣装だ。シンジ曰く、リーリエには白が似合うだろうし、高貴なイメージの服も似合うのではないかとのことだった。

 

「うん、凄い似合ってるよ!」

「あ、ありがとうございます。シンジさんもとても似合ってますよ。」

 

対してリーリエが選んだ衣装は青色を基調としたスーツだった。青色のスーツの上からは黒色のマントを羽織っている。シンジには青色は良く似合うだろうし、マントも似合うのではないだろうかと言う事だった。それにしてもマントまで用意しているとはかなり用意周到である。

 

「ありがとう。にしてもなんだか着慣れないね。」

「ホントですね。普段こういった服は着ないものですから。」

 

普通の人は普段この様な高貴な服を着ることはないだろう。正直に言ってしまえばこういった服は一般の人には少々苦しい。しかし、場には相応しい格好をするのと同じように、ここでは用意してくれた衣装を着用し、ダンスパーティとしてそれ相応の格好をするものだろう。

 

リーリエは人が集まってきたことに緊張し、辺りを見渡す。多くの人がいる中、一人際立って目立つ人物が立っていた。その人物は、洋風の衣装を着ているものの多いこの場には少々……と言うかかなり違和感の感じられる和風の衣装を着ていた。俗にいう着物と言うものだ。しかし、その女性はどこか落ち着いている様子で、遠目で見ても分かるくらいに美しい女性だった。例えるならば一輪の花だ。

 

リーリエがその女性に見惚れていると、その女性はリーリエの視線に気づいたのかゆっくりとこちらに近づいてくる。もしかしたら気分を害されたのかと思い緊張するが、その女性は次の瞬間にある人物の名を口にする。

 

「シンジさん、いらしてたんですね。」

「エリカさん!なぜここに?」

「招待状をいただいたのです。本来であれば私はこの様な人の多い場所に顔を出すことはないのですが、丁度ヤマブキシティに用事もあったのでついでに立ち寄ることにしました。」

 

その女性が口にした人物はシンジだった。どうやらシンジとこの女性は知り合いのようだ。状況がよく把握できないリーリエは、シンジにこの女性の事を尋ねる。

 

「えっと、シンジさん、この方は?」

「ああ、ごめんごめん。この人は……」

「それには及びませんよ。」

 

シンジが女性の事を紹介しようとすると、女性はそれを止め、自分で自己紹介しようと着物の裾を持ち丁寧に軽く頭を下げて挨拶する。その行動一つ一つが可憐で、女性であるリーリエでさえも見惚れてしまうものだった。

 

「お初にお目にかかります。私の名前はエリカと申します。タマムシジムのジムリーダーも務めさせていただいております。」

「……え?えー!?」

 

 

ジムリーダーと聞いてリーリエは驚く。エリカと名乗った女性の可憐な姿に見惚れていたため反応するのが少し遅れたが、それでもジムリーダーと聞けば当然誰でも驚くだろう。なんと言ったって彼女からはジムリーダーの威圧感と言うかそう言ったものが感じられないのだ。

 

「可愛らしい女の子ですね。シンジさんの彼女さんですか?」

「!?え、えっと///」

 

笑顔を崩さないまま直球でそんなことを言われてしまえばシンジも戸惑ってしまう。リーリエはジムリーダーと言う驚きが強かったためか、いつものような困惑した様子は見せていないが。

 

「ふふ、アローラ地方でチャンピオンになられた、と聞いていましたけど、中身は変わっていないのですね。なんだか安心しました。それでは、ダンスパーティの後に行われるサプライズを楽しみにしておりますね。」

 

そう一言だけ残し、エリカはその場を去っていった。どうやら彼女はサプライズの内容を知っているようだった。一体何をするのか気になるところだが、リーリエは彼女の言葉を聞いてそれどころではいられなかった。

 

「あっ!?だ、ダンスどうしましょう!?」

 

リーリエはダンスの経験が一切ない。勢い余ってダンスの参加を決めたものの、やはりぶっつけ本番は流石に無理があるのではないかと冷静になって考えてみる。そう思うと余計に緊張が溢れてきた。しかし、そんな彼女にシンジが安心させるように声を掛ける。

 

「大丈夫、僕に任せてくれれば何とかするから。」

 

シンジもダンスに関して経験があるわけではない。だが、肝心の相手が緊張して震えてしまっては踊れるものも踊れなくなってしまう。そのため先ずはリーリエの緊張を解くためにそう声を掛けた。リーリエもシンジの言葉に安心するように声を掛ける。

 

「あ、ありがとうございます、シンジさん。でもシンジさんにばかり頼ってはいられません!がんばリーリエです、私!」

 

リーリエはいつものように手をギュッと握り、自身を鼓舞するように気合を入れる。シンジもそんな彼女を見て、いつものこの調子なら大丈夫だろうと判断する。そしてその時、司会者からダンスパーティ開始の合図がされるのだった。




似た話をアニポケXY&Zで見た気がしますが気のせいです。……嘘ですごめんなさい。サプライズも同じですはい。

いつの話になるかは分かりませんが、本編がひと段落したら、もしかするとアローラ編を最初から最後まで一からリメイクするかもしれません。どうなるかは未定ですが(ヌシの気力が持てば)考えていますので期待せずに期待していてください。

ではではノシ

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