ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》 作:ブイズ使い
そんなわけで強敵ナツメさんとの戦いです。どぞ!
ヤマブキ道場でのバトルを終えたリーリエ達は、続いて本当のヤマブキジムへと入っていく。エスパータイプの使い手、ナツメの隠された能力を知ったリーリエに緊張が走るが、隣にいるシンジに励まされて次第に緊張が解れていく。
「ありがとうございます、シンジさん。」
「うん。応援してるから頑張ってね。」
ハナダジムの時と同じようにルリリを預かったシンジは、リーリエに手を振って観客席へと向かっていく。シンジとルリリからの声援を受け取ったリーリエは、覚悟を決めフィールドに立ち、ナツメの姿を見据える。リーリエの姿を見て準備が出来たと確認した審判が定位置につき、バトルのルールを説明する。
「それではこれより、
審判の言葉と同時にナツメは懐からモンスターボールを取り出す。しかしその方法は信じられない方法で、なんと自らの手を使わずにモンスターボールを目の前で浮かせているのだ。その現象に驚くリーリエだが、リーリエの様子を見たナツメは自分の能力を軽く説明する。
「驚いた?私エスパー少女なの。このくらいのことはまだまだ序の口。超能力の恐ろしさ、あなたに見せてあげる。」
いたって冷静な表情で淡々と語っていくナツメ。その後、モンスターボールが自然と開き、中から一匹のポケモンが姿を現す。
『フーディ!』
そのポケモンは彼女の相棒でもあるフーディンだった。先ほどの道場主との戦闘を見たリーリエはその圧倒的な強さを目の当たりにしている。最初から出てきたエースから放たれる威圧感に、リーリエは思わず身震いする。しかしここで退いては気持ちで負けてしまっていることに他ならないと思い、フーディンと向かい合う。
(向かい合ってみるとフーディンさんとナツメさんのプレッシャーが伝わってきます。でもそれ以上に、あのお二人にはそれすら超える信頼関係が強いことがよくわかります。ですが私達も負けていません!)
「お願いします!フシギソウさん!」
リーリエが最初に繰り出したのはフシギソウだった。毒タイプを持つフシギソウではエスパータイプのフーディンとは圧倒的に相性が悪い。だがそれは、リーリエが自分のポケモンに対して信頼を置いていると言う意味でもある。しかしそこに、ナツメが出鼻を挫くような発言をリーリエに伝える。
「初めに言っておくわ。あなたは私に勝てない。」
衝撃の発言と同時に審判が試合開始の宣言がされる。確かにナツメの能力はかなり驚異的であるが、戦ってみないと結果は分からないとリーリエは気を引き締める。
「こちらから行きます!フシギソウさん!はっぱカッターです!」
フシギソウは得意のはっぱカッターによりフーディンに牽制を仕掛ける。しかし、フーディンは徐々に接近するはっぱカッターを避ける動作をとろうとしない。それどころか、反撃をする様子すらも見せない。
これは決まった、と思うリーリエだったが、はっぱカッターがフーディンを捉える寸前で状況が一変した。
「き、消えた!?」
そう、フーディンが姿を消したのだ。突然の出来事で驚くリーリエ。フシギソウもどこに行ったか状況が掴めずに周りをキョロキョロと見渡す。
「!?フシギソウさん!後ろです!」
リーリエの言葉にハッとしたフシギソウは、直ぐに後ろへと振り返る。しかし時は既に遅く、振り向いた時にはフシギソウは謎の力で浮かび、壁まで飛ばされて叩きつけられてしまう。恐らく今のはサイコキネシスだろう。
凄い勢いで壁へと叩きつけられたフシギソウは、かなりのダメージを貰ってしまったようだ。サイコキネシスエスパータイプの技であり、毒タイプのフシギソウには効果抜群である。その上不意打ちのようにあの威力のサイコキネシスを喰らってしまっては、一溜りもないだろう。しかしそこに追い打ちをかけるかのように、フーディンは虹色の光線、サイケこうせんをフシギソウ目掛けて放つ。
「フシギソウさん!」
ダメージを受けてボロボロなフシギソウだったが、リーリエに言葉に反応して間一髪のタイミングで回避に成功する。しかしフシギソウは既に立っているのがやっとなぐらいで、足取りがおぼつかない様子だ。実際、フシギソウもリーリエの言葉に反応し辛うじて耐えている様子である。それほどまでにフーディンの一撃は重かったのだ。
(先ほど攻撃を躱したときの技は恐らくテレポート。そしてその後の技はサイコキネシスとサイケこうせん。厄介な技に加え、とても強力な技にどう対処すれば……。)
厄介な技であるテレポートに対する対処法に頭を悩ませるリーリエ。しかしその時、もう一つ疑問に思った点がある事に気付く。
(そういえばナツメさんは未だに一回も明確な指示を出していません。それなのに技をフーディンさんは的確に攻撃を加えてきています。まるで二人の意識が繋がっているような……。)
その状況にリーリエは一つの結論へと辿り着くと同時にある出来事を思い出す。
(!?そうか!これはテレパシーです!)
リーリエは以前ほしぐもちゃん……ソルガレオと言葉にせず会話をしていた。恐らくそれと同じだろうと結論付ける。シンジからも聞いたことがあるが、信頼の強いポケモンとトレーナーは言葉にしなくとも気持ちが伝わると言っていた。それに加え、ナツメはエスパー少女と名乗るだけの人物であると同時に、フーディン自身もエスパータイプのポケモンである。テレパシーが出来たとしてもなんら不思議はないだろう。
「さあ、考えは纏まったかしら。」
リーリエはナツメのその言葉に思わず不気味さが伝わってしまった。その一言だけで自分の考えまでも見透かされているのではないかと思ってしまったのだ。とは言え彼女も人間だ。流石にそこまで万能な能力は持ち合わせていないだろう。ならばそこには必ず突破口があるとリーリエは判断する。そしてここは行動あるのみだとフシギソウに声をかける。
「フシギソウさん!まだいけますか?」
『ソウソウ!』
リーリエの言葉にフシギソウは頷きながら返事をする。その眼に宿る闘志はまだ潰えていないようだ。
「行きます!やどりぎのタネ!」
フシギソウは背中から一つのタネをフーディン目掛けて飛ばす。このタネに触れれば少しずつフーディンの体力を削ることができ、フシギソウの体力も徐々に回復できる。一気に形成を逆転できるだろう。
しかしナツメと言うジムリーダーにはそう簡単に通用するものではない。なんとフーディンはスプーンを使い、振り払う形でやどりぎのタネを無効にしてしまったのだ。可能性のあった一手を防がれ、最早フシギソウには打つ手がなくなってしまった。
「これで終わりね。」
ナツメのその言葉と同時に、フーディンはサイコキネシスを使いフシギソウを再び宙へと浮かばせる。そしてそのまま思い切り投げ飛ばして壁へとぶつける。流石のフシギソウも怒涛の連続攻撃に耐え切れずに戦闘不能となってしまう。
「フシギソウさん!」
「フシギソウ戦闘不能!フーディンの勝ち!」
一切のダメージを負わすことが出来ず倒れてしまったフシギソウをモンスターボールへと戻す。
「ありがとうございました。後はゆっくり休んでいてください。」
そんなフシギソウにリーリエは心からの感謝を込めてお礼を言う。そして最後の一体であるポケモンが入るモンスターボールを手に取り、思いを込める。
「……お願いします。シロン!」
『コォン!』
強い願いを込めながらリーリエはシロンを出す。シロンはやる気十分と言った表情でフィールドに立つ。その眼差しにはリーリエの期待に応えようとするシロンの強い意志が宿っていた。そんなシロンの眼を見たナツメは、フーディンに最後まで油断するなと伝えた。
「シロン!こなゆきです!」
先ずは牽制の意味も含めてこなゆきによる先制攻撃を加える。しかし、先ほどのやどりぎのタネと同じようにスプーンによって簡単に防がれてしまう。
(あのスプーンによる防御が厄介です。でもあれには何か仕掛けがあるのでしょうか。)
フーディンのスプーンによる防御に対する突破口を探るリーリエ。だがナツメはその突破口を見つけるまで待ってくれるほど優しくはない。
「考えてる暇なんてないわよ。」
ナツメの言葉にリーリエはハッとなると、シロンの後ろに既に回り込んでいたフーディン。シロンはそのままサイコキネシスでフシギソウと同じように飛ばされてしまう。
「シロン!?」
このままではフシギソウの二の舞だと焦るリーリエ。心の焦りが不安へと繋がり、どうしても突破口を見つけ出すことが出来ずにいる。そんなリーリエをシンジはルリリと共に見守る。
「例え強大な力にも必ず弱点はある。リーリエがそれを見つけられるかどうか……。」
『リルゥ……』
シンジに抱きかかえられた状態で見守るルリリも心配そうに見守っている。
(ナツメさん……私の想像していたよりも遥かに強い。でも……私は諦めたくありません!)
傷付くのを見るのが苦手だと言っていたリーリエが、心の中で諦めることを拒絶する。それだけ自身が気付かぬうちに、彼女自身の本質もトレーナーへと傾いて行ったと言うことだろう。リーリエの眼もトレーナー特有の輝きを宿しているように感じさせる強いものになりつつある。
「最後まで私を信じてくれますか?シロン!」
『コォン!』
リーリエの鼓舞により、シロンも諦めないと言う意思を示し立ち上がる。背中を追いかけている憧れのトレーナーに近づけるように、リーリエとシロンは最後まで必死の抵抗を見せる。
「シロン!こおりのつぶてです!」
シロンのこおりのつぶては一直線にフーディンへと向かっていく。しかし、フーディンはサイケこうせんを放ちこおりのつぶてを相殺する。その衝撃により、フィールド中央に爆発による煙が舞う。
「シロン!こなゆきです!」
その隙にシロンは高くジャンプし上空からフーディンの姿を捉える。リーリエの考えた作戦は、技の衝撃により視界を奪うことで隙を作り、シロンの身軽さを利用した上空からの一点突破と言うものだった。フーディンは一切の動きを見せず、ただ茫然と立ち尽くしているだけだった。刹那、フーディンの眼が光り、一瞬のうちに姿を消してしまう。煙の奥からフーディンの影が見えなくなり戸惑ったリーリエだが、その理由が何かを理解した。
「!?テレポート!」
テレポート。最も単純だが最も厄介なこの技で、フーディンはシロンのさらに上空へと浮かび上がる。エスパータイプ特有のその戦い方を使いこなすナツメの戦術に感心し、今度こそ敗北を覚悟する。
決してリーリエは油断していたわけではない。ただ焦り過ぎていただけなのだ。ナツメと言う遥に格上の相手に対し、序盤から追い詰められた。それこそが今回の大きな敗因と言えるだろう。
フーディンのサイコキネシスがシロンを捕らえ、そのまま勢いよく床へと叩きつけられる。フーディンの技はとても精錬されており、威力も桁外れであった。シロンもこれ以上は耐え切れずに目を回し戦闘不能となってしまった。
「ロコン!戦闘不能!フーディンの勝ち!よって勝者、ナツメ!」
「シロン!」
審判によるコールが終わると、すぐさまリーリエはシロンに近づき抱きかかえる。シロンも力はないものの、リーリエの心配そうな声に反応し、か細い声で返事を返す。
「シロン、お疲れさまでした。ゆっくり休んでいてください。」
『コォン……』
リーリエはボロボロになりながらも自分のために精一杯戦ってくれたシロンに感謝しながらモンスターボールへと戻す。ナツメも期待に応えてくれたフーディンのと共にリーリエの元に近づいてくる。
「あなたのポケモンたち、信頼関係はとてもよく伝わってきたわ。でも、それだけで勝てる程、私の壁は脆くないわよ。」
ナツメの言葉にリーリエは落ち込んだ様子で俯く。やはり一矢報いることも出来ずに負けてしまい、余程悔しいのだろう。それほどまでにナツメと言うジムリーダーは大きな壁となって立ちはだかったのだ。
「……もっと経験を積みなさい。そしてまたここに来た時、相手になってあげるわ。」
「……はい。ありがとうございました。」
珍しく落ち込んでしまうリーリエ。この敗北が彼女をどう変えるかがこれからの課題である。シンジもリーリエが更に成長していけるように支えてあげようと心の中で決意する。そして、リーリエとシンジは強大な敵、ナツメのいるヤマブキジムを後にし、ポケモンを回復させるためにポケモンセンターへと向かった。
今回は完全にボロボロの敗北です。アニポケでも良くあるジム敗北回ですね。ほとんどの人はここで負けることを予想していたかもしれませんが。てかキャラクターのセリフに若干のブレが感じるのは気のせい?
そして今週のアニポケはなんとブイズ回だよ!それでテンションMAXです、はい。イーブイZ回は必ず来るとは思ってましたけど、まさかイリマさんが使うとは予想外でしたね。イリマさんの中の人も気になるところですが、やっぱり自分はアニメで活躍するブイズが見られればそれだけで幸せです!
それとどうでもいいことですが、前回MHFに追加された辿異ドラギュが楽しすぎて思わずYouTubeにうpしてしまいました。多分これっきりでしょうが。
何はともあれまた次回お会いしましょう!ではではノシ