ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

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今回はマサキ回です。正直マサキの性格がイマイチ分からないので自分の想像で書いてます。まあ二次創作あるあるだから仕方ないよね?ね?


その男マサキ!研究家の道!

シンジとリーリエはゴールデンボールブリッジを無事超え、目的の家へと向かっていた。

 

「あっ!シンジさん見てください!あの家です!」

 

リーリエが指を指して示した方角には、少し寂れてはいるものの、人が住んでいることは間違いないと思わせる小さな小屋があった。リーリエの話によればここは【みさきのこや】と呼ばれていて、ここに一人の研究家が住んでいるという話だ。ただ彼女によれば、その人物は少々変わった人なのだとか……。

 

二人はその小屋の前に立ち、ノックをしようとする。しかしシンジがドアに触れる直前、小屋の扉が自然と開いてしまった。不用心だと感じた二人は、静かに小屋の中を覗こうとする。

 

「すみませ~ん……だれかいませんか~?」

 

シンジが遠慮しがちに誰かいないか呼んでみた。すると室内から若い男の声が聞こえてきた。

 

「おっ!誰かきてくれたんか!入ってきてええからはよ助けてくれへんか?」

 

二人は助けてくれ、と言う言葉に一瞬戸惑いながら慌てて小屋に入る。小屋の中は少し薄暗く不気味に感じたが、配線がごちゃごちゃとしていて、まるで研究室のようだった。しかし室内には若い男どころか人が一人もいない状況である。この状況にシンジは疑問に思うが、その疑問を振り払うようにリーリエが口を開く。

 

「この状況……もしかしたら……」

「リーリエ?何か知ってるの?」

「は、はい。恐らく……」

 

リーリエはその言葉と同時に下の方へと目線を向ける。シンジもその視線に釣られて下を見る。するとそこには一匹のポケモンがいた。

 

「ポッポ?」

「あっ、いえ、これは……。」

「その声はもしかしてリーリエちゃんか?」

 

リーリエの言葉に反応してポッポが喋る。その非現実的な光景にシンジは思わず驚きの表情を見せる。

 

「驚かせてスマンな。理由は後で話すやさかい、ワイがあの機械に入ったらそこのボタンをポチッと押してくれへんか?」

 

ポッポ?は大人一人が入れそうな奇妙な機械を見ながら話す。正直シンジはどういう訳なのか分からなかったが、取り敢えずここは言う通りにしようとボタンの前に立つ。そしてポッポが機械に入って合図を出した時にシンジがボタンを押すと、機械が作動し扉が自動で閉まる。

 

暫くすると、再び扉が開き中からドライアイスのような煙が湧き上がる。そして中から一人の男性の影が現れ、少しずつその姿がハッキリとしてくる。

 

「いやー、助かったわホンマ!毎度リーリエちゃんはええタイミングで来てくれるな~。」

 

その男性は自らの髪を掻きお礼を言いながら出てくる。そしてリーリエが一歩前に出てシンジの方を振り向いて彼の事を紹介する。

 

「紹介しますね。この方がマサキさんです。カントー地方の研究家で、母を救ってくれた恩人です。」

 

シンジはその名前に聞き覚えがあった。シンジはマサキと言う一人の男の情報を頭の中で整理する。本名はソネザキ・マサキ。ポケモン研究家としてかの有名なオーキド博士にも一目置かれている存在であり、優秀な発明家としても名前を残している人物だ。しかし、彼の名声は決していいものだけではない。あくまでも噂ではあるが、彼は研究家の中でもかなりの変人であり、通常の人なら考えもしないであろう実験も平然と実行してしまうのだとか。そしてその挙句にいつも酷い目にあっているという噂もよく聞く。今回目の前で起きていた出来事がそのいい例だろう。

 

しかし、シンジは例え彼がどのような人物であったとしても、リーリエとルザミーネを助けてくれた彼には敬意を持って接しようと心の中で決める。

 

「恩人やなんて大げさやでリーリエちゃんは……。ワイはただサポートしてやっただけで、本当にルザミーネさんを救ったのはリーリエちゃんの強い思いや。」

 

マサキはリーリエの言葉に照れた様子で答える。シンジはそんな彼に握手を求めるように手を出す。

 

「リーリエの一件、僕からもお礼を言わせてください。ありがとうございました。リーリエとルザミーネさんを救っていただいて……。」

「はは、君まで大げさな。えーと君はシンジ君……やね?」

「?どうして僕の名前を?」

 

シンジとマサキは握手を交わし、マサキはシンジの名前を呼ぶ。何故自分の事を知っているのか疑問に思ったシンジは彼にその理由を尋ねる。すると返ってきた答えを極めて単純だった。

 

「そりゃリーリエちゃんから聞いてた話と同じやからな。」

「リーリエから?」

 

二人は交わした手を離して会話を続ける。

 

「せや。彼女は君の事を心の底から尊敬しているみたいやな。リーリエちゃんからぎょうさん聞いてたんや。君が世界一凄いトレーナーやって楽しそうに話してたで。」

 

リーリエは少し顔を赤くして俯きながら照れている。そのことを笑いながら話すマサキに対し、シンジも面と向かって言われた為リーリエと同じように赤くする。しかし、マサキが次に放った言葉により、二人はより別の意味で窮地に立たされることになった。

 

「それから自慢の彼氏やって言ってたで?」

「なっ///」

「ちょっ///マサキさん!私はそんなこと一言も言ってません!」

「あれっ?違ったんか?ワイはてっきり二人が付き合ってるんかと思ったんやが。」

 

二人は先ほどよりも顔が赤くなり、声を荒げながらリーリエはその言葉を否定する。しかし内心ではその言葉が現実になればいいなとも思ってしまう。表情を変えず平然とその言葉をはっきりと言うマサキに対しシンジは、これも噂通りなのかと頭の中で考える。

 

「そ、それはそうとなんでポッポの姿になっていたんですか?」

 

早く話題を変えようと、シンジは疑問に思っていたことをマサキに問いかける。マサキはその姿をニヤニヤと微笑みながらその疑問に答える。

 

「ああ、あれな。簡潔に言うと新しいマシンの開発をしてたんや。」

「新しいマシン……ですか?」

 

マサキの言葉にリーリエが首を傾げる。

 

「せや。リーリエちゃんが初めてここに来た時も実験してたんやけどな?そん時はポケモンと自分の肉体のみを入れ替える実験の最終段階を試していたところやったんや。」

「あの時は驚きました。噂ではポケモンさんと入れ替わった後、何事もなかったように過ごしていると聞いてはいましたが、その実験をまだ続けているとは思いもしませんでしたから。」

 

リーリエは当時のことを思い返すように話す。マサキも初めは別のトレーナーに助けられたと話しているが、それでも懲りずに実験を続ける彼の姿を見たシンジは、呆れのような尊敬のような自分でもよく分からない感情を抱いていた。

 

「んで、今はもっと先に進もうと新しいマシンを開発してたわけや。」

「それでどんなマシンを開発していたんですか?」

 

シンジの言葉にマサキは自信満々に笑いながら口を開く。

 

「ふっふっふ、ワイが今開発しているのは……自分の姿をポケモンに変えてしまう装置や!」

 

その言葉を聞きシンジとリーリエは思わず目がメタモンの様な点になってしまう。一番の疑問に思ったことは先ほど話していたマシンとはどう違うのかである。これだけではあまり違うように思えるが、マサキが二人が疑問を問いかける前に口を開く。

 

「せやから素人は甘いんや。どうせさっきのマシンと違いが分からないんやろ?ちゃんと説明してやるからよう聞きや。」

 

二人はマサキの言葉に頷いて聞き耳を立てる。そしてその様子を確認した笑顔を浮かべながら話を続ける。研究家であり発明家でもある彼は、自分の発明品を人に話せることが嬉しいのだろう。しかし、その内容を理解できる人も限りがあるため、こう言った町外れで毎日一人で研究に没頭しているのだと言う。

 

「以前発明したのはあくまで“ポケモンと肉体を入れ替える”だけの機械や。簡単に言うとポケモンがいなければこの実験には成功しない言うこっちゃ。」

 

マサキは簡単に言っているが、ポケモンと身体を入れ替えるだけでも凄いことだとシンジは心の中で感心する。

 

「しかし今回のは違うで。今回ワイが開発してんのは、“自分がポケモンになりきれる”マシンや。つまり、ポケモンがいなくても“好きなポケモンになりきれる”っちゅう話や。たとえ伝説のポケモンであろうともや!」

 

その最後の言葉に二人は驚愕する。同時にシンジは、彼は実は想像以上に凄い人物なのではないのかと認識させられた。

 

「?ではなぜさっきはポッポになっていたんですか?いっその事伝説のポケモンになれば実験は成功だと確信できるのでは?」

「ドアホ!そないなことしたらワイの家が潰れてしまうやないかい!せやから身近なポケモンで試してみたんや!」

 

マサキのそう言って怒鳴るが、実際に実現出来れば自分も嬉しいし感無量だと話を続ける。

 

「ただ今回の実験で一つの欠点が判明したわ。」

「欠点ですか?それは一体……」

「このマシンの欠点……それはな……」

 

その欠点についてマサキは悩む仕草をしながらもシンジたちに告げようとする。そのマサキの表情は真剣そのものであり、シンジたちは余程の問題なのだろうとゴクリと喉を鳴らす。しかし彼から発せられた言葉はある意味で予想と斜め上を行くものだった。

 

「ポケモンに入れ替わると自力で元の姿に戻れへんっちゅうこっちゃ!」

「・・・・・・え?」

「さっきみたいにポケモンの姿になるやろ?せやけど元に戻るにはそこにあるスイッチを押さなあかん。そうすると一部のポケモンではボタンを押せへんことが分かったんや。」

 

その言葉を聞いたとき、二人の思考が止まってしまった。確かにポッポの力と体ではボタンを押すことは少々困難だろう。それに慣れていないポケモンの体で空を飛ぶのも中々に難しいかもしれない。例えるのであれば自転車に乗るにはコツがいるように。

 

しかし先ほどの深刻そうな表情から、まさかこんな単純な答えが返ってくるとは思わなかった。〇〇と天才は紙一重と言うが、この状況にその言葉は最も相応しいのではないだろうか。未だにその解決策について悩んでいるマサキに対して、リーリエはもう一つの問題点となりえるのではないかと思われる事を指摘する。

 

「あ、あの~」

「ん?なんや?」

「いや、もしそのマシンでファイヤーさんのような伝説のポケモンになれたとしても、サイズの問題でそのマシンが壊れてしまうのではと思うのですが……」

「・・・・・・・・・・・・あっ!?」

 

リーリエの指摘にショックを受けたのか、膝が崩れ落ちるように目に見えて落ち込むマサキ。シンジは彼が天才ではあるのだろうと感じてはいるが、勢い任せに夢を追いかけている一人の少年の姿にも見えた。それはまるで、トレーナーとして旅に出るのを今か今かと待ち続けている過去の自分を見ているように感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや~、さっきはスマンかったな!みっともないところ見せてもうて!」

「い、いえ、僕たちは全然気にしてませんよ。」

 

先ほどの騒動からマサキは吹っ切れたように『このマシンの事は諦める!』ときっぱりと宣言した。そんな簡単に諦めていいものなのかとシンジたちも考えたが、発明者である本人が決めたことに口出しするのも野暮だと感じたのでこの件は本人の判断に任せることにした。

 

「そう言えばワイはリーリエちゃんから話を聞いてから、君に会いたい思うとったんや!」

「え?僕にですか?」

 

彼らは今室内にあるテーブルを挟んだソファーに座って向かい合って話をしている。そこでマサキはシンジに会いたいと言う理由を自分の口から告げる。

 

「せや。シンジ君の手持ちがイーブイとその進化形のみだってきいてな。ワイはポケモンの中でもイーブイが特に大好きな男なんや!」

 

今の言葉にシンジは成程、と納得する。確かに彼のパーティはイーブイとその進化形のみで構成されており、イーブイは元々珍しく希少性が高いことでも知られているため興味を持たれても不思議ではない。特にイーブイが好きな人からすれば余計だろう。

 

「イーブイはポケモンの中でも他にはない不思議な遺伝子をしていてな。その謎は未だ解き明かされてはいないが、条件によって多種多様な姿へと変化してしまう類を見ないポケモン。そう言った研究しがいのあるポケモン、研究対象として魅力的なポケモンとしてワイは一目置いているわけや。」

 

まあ可愛いってのも勿論あるんやけどな、と一言付け加えて満面の笑みでそう語る。彼のその表情からは研究対象としてではなく、心の底からイーブイが大好きなのだと二人には伝わってきた。リーリエの聞いた話では、最初に捕まえたポケモンはイーブイではなく、ケーシィとらしいが。

 

「そこで一つ頼みがあるんやが……」

「何でしょうか?」

「君のイーブイ見せてくれへんやろか!アローラチャンピオン自慢のイーブイを見せてほしいんや!頼む!」

 

深々と頭を下げて頼み込んでくるマサキに戸惑いながらも、シンジは二つ返事でOKを出す。そしてシンジはイーブイの入ったモンスターボールを取り出し、テーブルの上にイーブイを出す。

 

『イブイ?』

「おお!これがシンジ君のイーブイかいな!聞いてた通り色違いやねんな。」

 

珍しそうにイーブイを見つめるマサキに対し、イーブイは少し怯えるかのようにシンジの元へと飛び込んでいく。シンジがイーブイを抱き寄せると、イーブイは小さく体を震わせていた。その様子を見てマサキは余程ショックだったのかガクッと肩を落とす。

 

「あはは、ごめんなさい。僕のイーブイはちょっと顔見知りで、僕以外の人にはあまり心を許してくれないんです。」

 

その言葉に安心したように、マサキはホッと息をつく。そして今度は怖がらせない様にと優しくイーブイに声をかける。

 

「さっきは驚かせてスマンかったな。もう怖がらせへんからこっちに来てくれへんか?」

 

マサキが優しく声をかけるも、イーブイはまだ少し怯えたように彼の顔を見る。そして怯えているイーブイに、シンジもイーブイの背中を押すように声をかける。シンジもイーブイには色んな人と関わって精神的にも強く育ってほしいと願っているのだ。

 

「大丈夫だよイーブイ。この人は怖い人なんかじゃないから。」

 

シンジのその言葉に安心したのか、イーブイはゆっくりとマサキの元へと近付いていく。マサキはイーブイを優しく抱き寄せると、イーブイも先ほどまでの警戒心を解き安心した笑みへと表情を変える。

 

「イーブイが見ず知らずの人に笑顔を見せるなんて珍しいね。」

「まあワイはイーブイが大好きやからな。イーブイの喜びそうなことなら心得てるつもりやで。」

 

流石はイーブイが大好きなだけはあるとシンジは感心する。しかしここでリーリエが1つの疑問を抱き、シンジに問いかけた。

 

「イーブイさんって人見知りだったんですね。でもバトルの時はあんなに頼りになって凛々しいのは何故なんですか。」

 

確かにリーリエの言う通り、ここは皆が疑問に思うところだろう。いつもバトルの時には闘争本能を感じられるほどのオーラを出すイーブイだが、今のイーブイを見てもそういった様子は一切感じられない。そこでシンジは自論ではあるものの、自らが感じた答えをリーリエに伝える。

 

「多分イーブイは、僕の思いに答えてくれようとしてるんだよ。」

「シンジさんの思いに?」

 

シンジは頷きながら話を続ける。

 

「イーブイとの出会いが少し変わってたからかもしれないけど、初めは僕に全く懐こうとしなかったんだ。」

「え?イーブイさんもですか?」

 

リーリエは以前にニンフィアとの特別な出会いの話を聞いていたためそこまで驚くことはなかったものの、現在よく懐いているイーブイを見ているとやはり信じられない真実であった。マサキもシンジの話を興味深そうに聞いており、今までマサキに撫でられていたイーブイも主人の言う通りと言っているように、シンジの膝の上に乗ってきた。シンジはそんなイーブイに微笑みながら頭をなでる。

 

「折角出会ったんやしその時の話、詳しく聞かせてくれへんか?ワイも君とイーブイの出会いには興味あるんやわ。」

 

シンジは別に構わないと言った様子であの時の事を思い出しながら話し始める。リーリエもやはり同じように興味を抱いているようで彼の言葉に耳を傾ける。シンジの頭の中には、イーブイと出会った時の記憶が鮮明に蘇る。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 




なんか予定にはないイーブイの過去回を書くことになってしまった。マサキがイーブイ好きと言う設定を思い出したら何故か書いてしまったのだ。これも仕方のない犠牲だ←意味不明

そう言う訳で次回はイーブイ回です。最近は文章力も上がってきたと自負(慢心)しているので多少楽しめるようになってきたのではないかと思っております。え?調子に乗りすぎ?フヒヒ、サーセンwww

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