ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

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なんか予定と話が全く変わってしまった回です。違うんや、元々ここにギャグ回を挟みたかったんや。けど知らん間に話が飛躍してシリアスになってもうたんや。どうしてこうなった……。

ま、まあバトル描写の練習にはなったから良しとしましょう。どうやら主にはギャグ回センスは皆無の様でシリアス回ばかりになる可能性が存在しますがご了承ください。

あとまたどうでもいい話ですが、兄貴が新しいパーティ厳選終わったから、ブイズで対戦したところガモスが重すぎて3タテされましたね。誰だよ!ガモスとか言うブイズの天敵生みだした奴!結局その後、カプ神+メガルカリオのパーティで戦ったら普通に勝てました。カプ神TUEEEEE‼けどやっぱブイズじゃないと乗り気は出ませんが……。

とは言え一番驚いたことは、ニンフィアが蝶舞3積みのガモスの炎舞を一発普通に耐えたことですね。やっぱこの子特殊耐久半端ないっス。D努力値4しか振ってないんですけどね。

因みに主のニンフィアの努力値はH252/B52/C182/D4/S20の控えめちゃんです。


橋の上の攻防!R復活!?

ハナダジムを後にしたシンジとリーリエの二人はヤマブキシティに向かう前に、とある場所へと向かっていた。どうやら今回の事はリーリエが希望したことのようだ。

 

「それにしても珍しいね。リーリエが自分から行きたい場所があるって言うなんて。」

「我儘を言ってすいません。でも以前お世話になった方にどうしてもお礼が言いたくて……。」

「ううん、僕は別に構わないよ。折角二人で旅してるんだし、色んな所を回った方が楽しいでしょ。それに、僕はリーリエと一緒だったらどこにいても楽しいからさ。」

「し、シンジさん///」

 

シンジの言葉に照れて頬を赤らめるリーリエ。シンジも先ほどの言葉を思い出して少し照れているようだ。第三者から見たら、付き合いたてのカップル同士がイチャついているようにしか見えない光景である。

 

現在彼らがいるのはゴールデンボールブリッジと呼ばれる大きな橋である。ここはハナダシティの北にあり、この橋を渡った先にリーリエが会いたいと言う人がいるのだと言う。余談ではあるが、この橋の名を日本語に訳してはいけない。絶対である。

 

「あれ?なんか橋の上に誰か立ってる?」

「本当ですね。まるでこの橋を通行止めにでもしているような……。」

 

シンジたちの視線に入ったのは男と女を合わせた合計5人の集団である。なにやら五人そろって通せん坊をしているように仁王立ちをしている。なにやら関わると面倒なことになりそうだと直感したシンジたちは、無視をして橋を渡り切ろうと考えるが、やはりと言うか5人組の方からシンジたちに話しかけてきた。

 

「おい!お前たち!」

「え?僕たちですか?」

「他に誰がいるってんだ!ここは俺たちロケット団が制圧した!ここを通り抜けたければ俺たちを倒してから行くんだな!」

 

話が見えないと困惑しているリーリエに対し、シンジはその真実に驚愕していた。何故ならロケット団と言うのは、かつてカントー地方を中心に世界征服を企んでいた秘密結社であり、巨大組織だったのだから。

 

「し、しかしロケット団はかなり前に一人のトレーナーに潰されたはずじゃ!?」

「確かに我々は一度解散の危機に追い詰められた。だが我々は立ち上がった!サカキ様を見つけ出しロケット団を再建してみせると!」

 

未だに疑問符を浮かべているリーリエにシンジは説明をする。その実態を知ったリーリエもまた驚愕する。そしてそんな悪事を野放しには出来ないと思い、戦う意思を表す。この意思の強さも成長の証と言うものなのだろう。

 

「ふっ、ようやく戦う気になったようだな。貴様らのポケモンも貰い受ける!」

 

そしてロケット団たちはモンスターボールを投げてそれぞれポケモンを繰り出す。出してきたポケモンたちはスピアー、ニドリーノ、ニドリーナ、ゴルバット、ラッタの五体だった。しかしシンジもリーリエもお互いに一歩も引く様子を見せない。相手の方が数が多く、不利な状況であるにも関わらずである。何故なら二人は互いに信頼しあい、ポケモンたちのことも信じているからである。

 

「これが僕たちの初めてのタッグバトルになるね。」

「はい。こんな形ですけど、私全力で頑張りますね!」

 

リーリエがギュッと手を握り締めて気合を入れる様子を見てシンジも安心した笑みを浮かべる。そして互いに一匹ずつポケモンを繰り出して、ロケット団たちと対峙する。

 

「お願い!イーブイ!」

「お願いします!シロン!」

 

二人が繰り出したのはアローラの姿をしたロコンことシロンと、イーブイである。ロケット団たちはたった二匹のポケモンを見て笑い出す。どうやら自分たちのポケモンの数に対して少なすぎるため舐めてかかっているようだ

 

「その程度のポケモン二体で戦う気かよ!たかが二体で俺たちのポケモンに勝てるとでも思っているのかよ!後悔しても知らないぜ?」

「後悔するのはどっちかな?」

「私もシンジさんも負けるつもりなんてないですよ!」

 

二人の言葉にロケット団たちも堪忍袋の緒が切れたかのように攻撃命令を下す。

 

「減らず口を言いやがって!野郎ども!やっちまえ!」

 

ロケット団たちは一斉に攻撃を仕掛けてくる。最初は先手を取るためにラッタがひっさつまえばを出す。シンジとリーリエは同時に躱す指示を出してイーブイとシロンは左右に分かれる。その隙を見てロケット団のポケモンたちはそれぞれに攻撃をしてくる。ゴルバットとスピアーがイーブイを、ニドリーノとニドリーナがシロンに攻撃を仕掛ける。

 

「ゴルバット!きゅうけつ!」

「スピアー!ダブルニードル!」

「ゴルバットにシャドーボール!そしてジャンプしてスピードスター!」

 

イーブイは向かってくるゴルバットに対してシャドーボールをぶつける。その後スピアーの攻撃をジャンプして躱し、背後からスピードスターを当て撃ち落とす。今の攻撃で二体ともダメージがかなり入ったのか、動きが鈍くなっていると感じる。最も、カプ・コケコのスピードと戦ったことのある彼からすれば、元からあまり脅威ではなかったのが事実だが。

 

一方リーリエも、シロンと共に戦闘を行っている真っ最中だ。

 

「ニドリーノ!つのでつく!」

「ニドリーナ!つのでつく!」

 

ニドリーノとニドリーナはシロンを挟み、別々の方向から突っ込んでくる。リーリエはその攻撃を冷静に分析し、落ち着いて対処する。

 

「今です!躱してください!」

 

シロンはリーリエの指示通り、二体を引き付けたところで躱す。するとニドリーノとニドリーナはお互いに顔をぶつけてしまう。この戦法はニビシティで見せた攻略の応用だ。彼女もこの旅を通して少しずつ成長を続けているということなのだろう。

 

「シロン!こなゆき!」

 

シロンのこなゆきでニドリーノとニドリーナは凍りつく。その様子を見て戦闘不能と判断したのか、ロケット団員はポケモンたちをモンスターボールへと戻す。

 

「やりました!」

 

リーリエは二体のポケモンを倒したことに対し喜び、思わずガッツポーズをする。しかしその喜びも束の間、シロンの背後から勢いよく接近してくるポケモンの影がいた。

 

「ラッタ!ひっさつまえば!」

 

そう、接近してきたのは始めに仕掛けてきたラッタだった。完全に油断しているリーリエとシロンの隙を狙ってやってきたのだ。

 

「!?シロン!」

 

リーリエが気付くのが遅く、シロンに指示を出そうとするもラッタは既に攻撃の届く位置にいる。もうダメかと思ったその時、ラッタに星型の弾幕が命中する。ラッタは目を回して戦闘不能となり、モンスターボールへと戻る。弾幕が放たれた方を見ると、そこにはイーブイがこちらを見て微笑んでいた。

 

「油断大敵だよ?」

「シンジさん!はい!ありがとうございます!」

 

シンジの忠告にリーリエは頭を下げてお礼を言う。しかしその時、イーブイの背後から二匹のポケモンが接近してきていた。ゴルバットとスピアーだ。そのことに気付いたリーリエがシンジに慌てて声をかける。

 

「シンジさん!イーブイさん!」

「大丈夫だよ。イーブイ!シャドーボール!」

 

イーブイは宙返りをしながらゴルバットたちを飛び越え、そのままシャドーボールを背後から当てて吹き飛ばす。流石に二体とも耐え切ることが出来ずに戦闘不能となる。

 

リーリエはその様子を見て感心していた。先ず最初に驚いたのはイーブイとの連携である。具体的な指示もなく、回避することに成功した挙句、攻撃をいとも簡単に当ててしまったからだ。更にシロンを助けるフォローをしただけでなく、自分たちの相手の動きからも注意を離さずに対処したからである。その姿を見たリーリエは、いつか自分も彼の様に強くなれるのだろうか、彼の隣に立つことが出来るのだろうかと心の中で思う。そして決意する。必ず強くなって、彼に挑戦する資格を得て見せると。

 

「これで終わりかな?意外とあっけなかったね。」

「くっ!?こいつ化け物かよ!?だがまだ終わらないぜ!まだリーダーがいるからな!」

 

男のその言葉と同時に、橋の向こうから一人の男がやってくる。その男は体格がよくやや大柄であり、髪はオールバックに纏めている。服装は長いトレンチコートを着用しており、見た目の印象では紳士的なイメージを持たせる男だった。その男は、シンジが強いと即座に感じるほどの雰囲気を出していた。

 

「お前たち、中々の腕を持っているみたいだな。」

 

男はシンジたちの前に立ち口を開く。リーリエは少し怯えた様子でシンジの後ろに隠れる。対してシンジは、男の眼をじっと見つめている。眼を見ることにより、彼が一体どのようなトレーナーかと言うのを見極めようと言うのだ。

 

「次は俺が相手だ。バトルしてくれるのはどっちだ?別に二人同時でも構わないぜ?」

「いや、それはフェアじゃない。ここは僕が相手を……」

 

シンジがそう言って前に出ようとすると、リーリエに腕を引っ張られて足を止める。シンジは後ろに振り向くと、リーリエから驚きの言葉が出てきた。

 

「あ、あの……このバトル、私にやらせていただきませんか?……ダメでしょうか?」

「リーリエ……」

 

シンジはその言葉には深い意味があるように感じられた。リーリエの眼が目の前の男だけではなく、何かその先を見据えているように見えたからだ。彼女自身、ポケモンが傷つくのは好きではない、それは今でも変わらないのだろう。そんな彼女が自分から【戦う】と言ったのだ。シンジはそんなリーリエの勇気を買うことにして引くことにした。

 

「……ありがとうございます。」

 

シンジが後ろに下がるのを確認してリーリエは呟く。そして目の前の男に立ちはだかり、男と対峙する。

 

「……私が相手です。」

「いいだろう。だが女だからと言って手加減はしないぜ?」

「望むところです。」

 

リーリエの眼は真剣そのものだった。男もその眼を見て覚悟を決める。リーリエはシロンを戻し、そしてお互いにモンスターボールを手にしてポケモンを繰り出す。

 

「お願いします!フシギダネさん!」

「頼むぜ!クロバット!」

 

リーリエはフシギダネを、男はクロバットを繰り出した。その様子を見たシンジは一つの考えにたどり着く。

 

「クロバット?それにあの人の眼……やっぱりそうか……。これはリーリエなら心配ないかな。」

 

シンジはそう言ってこの戦いを静かに見守ろうと心に誓う。そして今、リーリエとロケット団のリーダー、二人の一騎打ちが始まった。

 

「クロバット!クロスポイズン!」

「避けてください!」

 

フシギダネはクロバットのクロスポイズンをジャンプすることで間一髪回避する。クロバットの素早さはそう甘いものではなかった。

 

「もう一発クロスポイズン!」

 

クロバットはUターンして再びフシギダネ目掛けてクロスポイズンを放つ。そのあまりの速さに対応しきることができず、フシギダネはクロスポイズンに飛ばされてしまう。

 

「!?フシギダネさん!」

 

リーリエはフシギダネを心配して声をかける。フシギダネもリーリエに心配を掛けないようすぐに立ち上がる。リーリエもフシギダネのその様子にホッと息を吐く。しかしそれでもクロバットの攻撃は休むことはない。

 

「続けてヘドロばくだんだ!」

「はっぱカッターです!」

 

クロバットのヘドロばくだんに対抗し、即座にはっぱカッターで迎え撃つも、フシギダネの攻撃はいとも簡単に撃ち落されてしまいヘドロばくだんがフシギダネを捉える。フシギダネも再び吹き飛ばされてしまい、もうすぐで橋から落ちそうな崖っぷちに追いやられてしまう。リーリエもフシギダネを心配してすぐに駆け寄る。

 

周りにいるロケット団員達もそのリーリエの姿を見て笑う。しかしその様子を見たシンジとリーダーが睨みつける。するとロケット団員たちは顔を引き攣らせて冷や汗を流す。その瞬間にシンジは確信した。リーダーがアローラで出会ったある人に似ていると言う事を……。

 

「……終わりだな。」

 

リーダーはそう言いクロバットに最後の指示を出そうとする。その時リーリエもまた誰にも聞こえない声で呟いていた。

 

「情けないですね。自分から任せてくれってシンジさんに言って前に出たのに……フシギダネさんまで傷つけてしまうなんて。私は自分のポケモンさんも……大好きな人も守れないのでしょうか……。」

 

涙を流しながら呟いたリーリエのその言葉は周りの誰にも聞こえなかった。しかし彼女のポケモン、フシギダネにだけは聞こえていた。フシギダネはその言葉を聞き、ボロボロの身体に鞭を打って立ち上がる。自分がリーリエを支えなければならないと心の奥で秘めた闘志燃え上がらせながら…………。

 

「クロバット!クロスポイズン!」

 

そしてクロバットに最後の攻撃の指示が出される。しかし、リーリエを守るようにフシギダネが立ち塞がり、クロバットの攻撃を正面からつるのムチで受け止める。その瞬間、フシギダネの体を青白い光が包み込む。その光と共にクロバットは弾き飛ばされてしまう。

 

「!?こ、この光は!?」

「な!?このタイミングでだと!?」

 

リーリエとリーダーは驚きの声をあげる。二人のとってこの展開は予想外だったからだ。そして光に包まれたフシギダネの姿が徐々に変わっていき、遂に光から解放され姿を露にする。

 

「こ、この姿は……。」

 

リーリエは残っている涙を拭きとりながら懐の図鑑を取り出してポケモンの詳細を確認する。

 

『フシギソウ、たねポケモン。フシギダネの進化形。蕾が背中についていて、養分を吸収していくと大きな花が咲くという。』

 

「フシギダネさんが進化した……と言う事でしょうか……。」

 

リーリエは図鑑説明を見て驚きながら図鑑をしまう。彼女自身、ポケモンが進化するところを実際に見るのは初めてであり、その上自分のポケモンが進化することも初めてであるため戸惑っているのだ。

 

「フシギダネ……いや、フシギソウがリーリエの気持ちに応えてくれたんだよ。」

「シンジさん……」

 

戸惑っているリーリエに対して、シンジが近づき進化した理由を告げる。事実、ポケモンたちが進化する原因は未だ謎とされている。時には成長することで進化に近づいて行ったり、時にはトレーナーの思いに応えようとして進化したり、時にはトレーナー懐くことによって進化したりと本当にさまざまである。今回のフシギダネの進化もその例に漏れないだろう。

 

「フシギソウさんが……私の気持ちに……」

 

フシギソウはリーリエの方へと振り向き嬉しそうに笑いかけてくれる。そんなフシギソウに感謝しながら、リーリエは涙を流しながらフシギソウを抱きしめる。

 

「トレーナーの気持ちに反応して進化したか。だが勝つのは俺だ!クロバット!クロスポイズン!」

「!?来ます!フシギソウさん!避けてください!」

 

リーリエは素早く接近してくるクロバットに対し、回避行動をとる様に指示する。しかしフシギソウは回避する様子を見せず、それどころかクロバットに向かい勢いよく突っ込む。その動きに対しリーリエは一瞬驚くが、その後の光景で更に驚くこととなった。何故なら先ほどは完全なパワー負けをしていたのにも関わらず、今では寧ろクロバットを押し返すほどの力を見せつけたからだ。

 

「あれはとっしんだね。たいあたりよりも強力なノーマルタイプの技だよ。」

「とっしん……フシギソウさん!新しい技を覚えたのですね!」

 

リーリエはフシギソウが新しく技を覚えたことに大喜びする。フシギソウも顔だけ振り向きリーリエに応える。そしてすぐにクロバットの姿を見据える。するとクロバットは既に態勢を整えていた。その様子からクロバットは良く育てられているのが分かる。

 

「進化してパワーも上がった上に、新たな技まで覚えたか。クロバット!エアカッター!」

「躱してツルのムチです!クロバットさんを捕まえてください!」

 

クロバットが翼を羽ばたかせ鋭い風をフシギソウに向け放つ。しかしフシギソウはそれを冷静に回避し、つるのムチをクロバットの翼に絡めて動きを封じる。クロバットは必死に振りほどこうとするが、進化して更に強力となったフシギソウのつるのムチを解くことは出来なかった。

 

「そのまま叩きつけてとっしんです!」

 

クロバットを橋の上へと叩きつけ、クロバット目掛けてとっしんで急接近する。クロバットも先ほどのとっしんと、今の叩きつけによってダメージが着実に蓄積されており、回避行動に移ることが出来ずもろに喰らってしまう。そして遂に限界がきたようで、目を回してその場で戦闘不能となってしまう。

 

「っ!?クロバット!?」

 

男はクロバットの身を心配してすぐに近づく。激しい戦闘が終わったフシギソウとリーリエはホッと一息つき、同じような動作で地面にへたり込む。今の最後の戦術を見てシンジは思った。あの時スカル団と初めて戦った時と似たような倒し方だと。リーリエは常に彼の戦いを見ていたため、自然と似た戦法を取る様になっていたのだろう。それを咄嗟に実践できるのが凄いと感じ、将来は有望なトレーナーになってくれるのだろうと心の奥でシンジは思った。

 

そしてシンジは男に近づき一つの木の実を渡す。

 

「オボンの実だよ。食べればあなたのクロバットは元気になるはずだ。」

「……すまないな」

 

男はそう言って木の実を受け取りクロバットに食べさせる。クロバットはオボンの実を食べると、嬉しそうな笑みを浮かべながら男の腕の中で静かに眠る。

 

「……完敗さ。途中で俺は勝利を確信していた。それで満足していたんだ。」

 

男は眼を瞑って今の戦いの反省点を口にする。しかしその後首を横に振り、続けて言葉を繋げる。

 

「いや、これも今となってはただの言い訳だな。彼女のポケモンに対しての思いが強くて、俺が弱かった…………それだけの事だ。」

「……確かにあなたは負けた。それは事実かもしれない。でも……」

 

シンジはそう言いながらフシギソウへと近づきクロバットと同じようにオボンの実を与える。その姿にリーリエは感謝しながら微笑む。シンジもそんなリーリエに微笑み返し、フシギソウを撫でながら言葉を続ける。

 

「リーリエとあなたには大きな差はなかったと思うよ。」

「なぜそう思う?」

 

男の質問に対し、シンジは立ち上がり振り向いて答える。

 

「あなたのクロバットの進化方法はトレーナによく懐くこと。クロバットはそれほどあなたに信頼を置き、ともに時間を歩んできたパートナーなんだ。それにあなたの眼からは邪気が感じられなかった。ロケット団のリーダーをしているのにも何か理由があるんじゃないんですか?」

「…………それだけ冷静な判断ができ、尚且つ見抜くなんてな。お前只物ではないな。一体何者だ?」

 

男のその問いにシンジは覚悟を決めた様子で答える。

 

「…………アローラ地方の初代チャンピオンです。」

「!?……そうか。それならお前のただならぬ雰囲気も納得できる。」

 

男はシンジの正体に納得したようにうなずく。

 

「……俺は数年前、ある男に敗れた。」

 

男はその場で昔の話を語りだす。シンジはその話をただ黙って聞いている。リーリエもフシギソウを抱きかかえてシンジの隣で話を聞く。

 

「俺も腕には自信があった。俺と俺のクロバットが負けるわけがないと確信していた。しかしその男は俺の予想をはるかに超えた強さだった。正直桁が違うとさえ感じた。」

 

男はその時のトレーナーの姿を思い出しながら語る。そのトレーナーはピカチュウを連れた凄腕のトレーナだそうだ。その話を聞いてシンジもそのトレーナーの姿が思い浮かんだ。いや、寧ろそのトレーナーを知らない者の方が少ないだろう。

 

「その時俺は初めて敗北を知ったよ。それから俺は誰にも負けるわけには行かない、強くならなければと思った。そして今、俺はロケット団のリーダーとして強さを求めここで鍛えていた。あんた達のような強者を待ちながらな。」

 

そこで男は立ち上がり更に言葉を繋ぐ。

 

「だがそれもここまでだ。あんたのような凄いトレーナーに会ってそこまで言われたんだ。もう一度一から鍛えなおすさ。そして必ずあんたにリベンジしてみせる。そしてあの時の男にもな!」

 

彼のその表情からは先ほどまでの迷いや不安は一切なかった。その顔はまさに一人のトレーナとしての凛々しい顔だった。どうやら吹っ切れたようでシンジを思わず笑みを零す。

 

「はい!私ももっともっと強くなって、次も必ず勝ちますから!」

「……ふっ」

 

彼はいづれリーリエのいいライバルとなって再び立ち塞がるだろうとシンジは心の中で思う。そして男はロケット団員たちの方へと向き言葉を告げる。

 

「これより俺はロケット団から足を洗う!そしてこれをもってロケット団は解散とする!異論のあるものは戦ってそれを示せ!異論がなければ早々にこの場から立ち去れ!」

 

男は決意を込めた眼差しでロケット団員たちに衝撃の真実を告げる。彼らもその言葉には逆らえないようで、驚きながらもその場を立ち去っていく。そして男はシンジたちの方へと振り向いて口を開く。

 

「……ハジメ、それが俺の名だ。お前たちの名前を聞かせて貰っても?」

「僕の名前はシンジ。」

「私はリーリエと言います。」

「シンジにリーリエか。覚えておく。また会った時には今よりも強くなっておくさ。」

「それはお互い様だよ。」

 

シンジとハジメは握手を交わす。その後、ハジメは振り向いてその場を立ち去っていく。シンジ彼のその様子を見て一番の親友の姿を思い出す。自分の強さを極めるために相棒と共に歩んだ一人のトレーナーの事を……。

 

「……凄く強い方でした。次に戦った時、私は勝てるのでしょうか。」

「勝つためにも更に強くなって、互いに切磋琢磨しあう……それがトレーナーだよ。リーリエもこれからもっと経験を積んで強くなっていけばいいよ。」

「シンジさん……ありがとうございます。やっぱりシンジさんは私の憧れの人です。」

 

リーリエはシンジへの正直な気持ちを呟く。シンジもその言葉に頬を掻きながら照れるものの、リーリエのその気持ちがとても嬉しく感じていた。それに彼女の成長もまだまだ発展途上だと言うことに期待を膨らませていた。

 

そして二人も歩き出す。まさかの展開に驚きの連続ではあったが、それでも二人にとってこの出会いはきっといい経験になったのだろうとお互いに感じる。二人は更なる出会いに胸を躍らせながら旅を続けるのだった。




なんかフシギダネ進化させてしまいました。でも原作でもこの段階で20レベル超えてたりするから大丈夫だよね?違和感ないよね?

そう言えば最近会社でも風邪が流行っているみたいなので皆さんも気を付けてくださいね。主は○○なので風邪を引くことはないと思われますが。まあ毎日帰宅したらアルコール消毒をしているので大丈夫でしょう。タブンネ

ではまた次回お会いしましょうノシ

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