ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》 作:ブイズ使い
また後でブイズ編(ニンフィア、イーブイを除く)を同じ場所に纏めておきます。
これは以前、シンジが別の地方を旅していた時の物語。今冒険を共にしている仲間との出会いの記憶である。
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自分のパートナーであるニンフィアと旅をし、日々成長を繰り返しているシンジ。今日は日頃の疲れを癒すためにとある浜辺に訪れていた。
「風が気持ちいいね」
『フィーア♪』
浜辺でくつろぎ安らぎを感じるシンジとニンフィア。障害物がなく、海を渡る潮風が肌を優しく撫でて通り過ぎている感覚が、彼らの日頃の疲れを自然と拭い去ってくれる。
こうして静かに過ごしているだけで気持ちが落ち着いてきて、眠気から彼らの瞼が徐々に落ちてくる。しかしその時、彼らの横に何者かが立つ気配があり眠気が解けて行った。
『シャウ』
「えっ?君は?」
そこに立っていたのは青色の体をしていて、シャンプーハットにも似たエリマキをしたポケモンであった。そのポケモンは、どことなく心配そうな瞳でシンジたちを見つめていた。
『シャワーズ、あわはきポケモン。細胞構造が水の分子によく似ていて、水に溶けることができる。人魚に見間違えた人もいると言われている。』
そのポケモンの名前は水タイプのポケモンであるシャワーズ。ニンフィアと同じイーブイの進化形である。しかしイーブイの進化形は珍しく、野生での目撃例はあまりない。誰かトレーナーはいないのかと辺りを探す。
すると一人の男性がシンジに近付いてきた。この人がシャワーズのトレーナーだろうか、と考えていると男性がシンジに話しかけてきた。
「どうやらこのシャワーズは君が倒れていると思ったみたいだね。」
「え?そうなんですか?」
「ああ。このシャワーズは優しい性格で、この浜辺でよく人助けをしたりゴミを拾ったりしてくれているんだ。」
「ごめんね、シャワーズ。でもありがとう。僕たちは大丈夫だから。」
『シャウ♪』
シンジがシャワーズの頭を優しく撫でる。シャワーズは目を細めて、気持ちよさそうな高い声を出していた。
「このシャワーズはあなたの?」
「いや、違うよ。この子は野生のシャワーズさ。」
「珍しいですね、野生のシャワーズなんて。」
「私は言わばここの管理人みたいな者なんだが、ある日このシャワーズがやってきたんだ。」
管理人と言う男性は、シャワーズと出会った時のことを話し始める。
ある時、男性がこの浜辺でゴミ拾いをしていた時のことだった。突然ふとこのシャワーズが自分の元へと現れたのだ。
一体誰のシャワーズなのかと疑問に思ったが、彼のトレーナーは辺りに見当たらなかったようだ。恐らく野生なのだろうと判断するが、シャワーズは人慣れしているのか男性を怖がる様子はなかった。
変わったことにシャワーズは男性の真似をしてなのか、ゴミ拾いを手伝ってくれたのだった。それだけでなく、海で溺れそうになっていた人を助けたり、困っている人がいたら知らせてくれたり、喧嘩を仲裁してくれたりと、シャワーズ自身が優しい性格のようであった。そのおかげで、この近辺では一切大事なく平和な日常が過ぎて行ったそうである。
「そんなことがあったんですね。」
「ああ。このシャワーズにはいっぱい助けられたよ。でも、私としては……」
男性はどこか思うところがあるのか少し暗い顔をする。どうしたのかとシンジが尋ねようとすると、彼らの耳に少女の叫び声が聞こえてきたのだった。
「うええええん!!私のプリンちゃんがっ!」
『プリュ!プリュ!』
少女は泣き叫び、海ではプリンが溺れている姿が確認できた。ふうせんポケモンであるプリンはその体系からかなんとか浮かんでいられているが、それでも波にさらわれでもしたら広大な海に流され行方不明となってしまう。
しかし少女はまだ幼く、助けに行けるような状況ではない。お人好しなシンジは、放っておくことはできないと急いで海に飛び込み、プリンを助けに向かった。
「君!危険すぎる!?」
『シャワ!?』
男性とシャワーズも、彼の無謀な行動に驚き目を見開く。相変わらず無茶をする主人に、ニンフィアも心配そうに眺めている。
シンジはなんとか海を泳いでプリンの元に辿り着く。溺れて戸惑っているプリンを抱きかかえ、シンジは優しく声をかけ安心させるのであった。
「大丈夫、僕がついてるから。」
『プリュ……?』
先ほどまで慌てていたプリンも、シンジの言葉に少し安心したのか彼に身を預けた。大人しくしてくれれば、沖まで戻れるだろうと振り向こうとする。しかしその時、彼らの周囲を取り囲む影に気付いた。
その正体は頭部に赤く光る水晶体と二本の触手が特徴的なみず・どくタイプのポケモン、メノクラゲであった。それも一体や二体ではなく、複数体に囲まれている状況であった。
海の中で、それも複数体に囲まれてしまっては人間に力で抵抗するのは困難だ。それも弱ったポケモンを抱えた状態であれば尚更である。
『フィア!?』
主人のピンチに慌ててニンフィアも向かおうと駆け出した。ニンフィアが海に足をつけ、泳ぎ出そうとした刹那、彼女の動きを抑止するように横をもの凄い勢いで通り過ぎていく姿があった。ニンフィアは呆気にとられ動きを止めた。
「っ、このままじゃあ……」
メノクラゲたちは近づいてきた獲物を触手で拘束し毒針で攻撃する習性がある。釣り人や海水浴に来た人などを刺し事故にある例も確認されている。シンジはどうやって打破するか、と必死に頭を回転させていた。
『シャワ!』
その時、海に溶け込み姿を潜めていた一匹のポケモンが海面から飛び出し姿を現した。先ほど出会ったあわはきポケモン、シャワーズであった。
『シャウ!』
シャワーズは飛び出すのと同時にれいとうビームを海面にまき散らす。れいとうビームはシンジを囲んでいたメノクラゲたちを包み込み、海面と同時に凍らせることで動きを封じた。
『シャワァ!』
シャワーズはその後海面に着地し、シンジに何かを語り掛ける。言葉は分からないが、体を寄せてきたため自分に掴まれと言っていたのがなんとなく伝わった。シンジはシャワーズに急いで掴まり、彼が掴まったのを確認したシャワーズは勢いよく泳ぎ始めた。
そのスピードは凄まじく、みるみる内にメノクラゲたちとの距離が離れていく。そして気付いたときには、浜辺へと到着しシンジたちを打ち上げたのだった。
「ゲホッ、ゴホッ!あ、ありがとうシャワーズ、お陰で助かったよ。」
『シャウ』
シンジ助けてくれたシャワーズにお礼を言う。心配していたニンフィアも、シンジに擦り寄って彼の無事を肌で確認した。心配させてごめんと、シンジはニンフィアの頭を優しく撫でる。
「プリンちゃん!よかったー無事で!」
『プリュ!』
「お兄さん!ありがとうございます!」
「お礼なら僕じゃなくてシャワーズに言ってよ。この子がいなかったら助けられなかったから!」
「うん!シャワーズちゃん!ありがとう!」
『シャウ♪』
泣きながらプリンに抱き着いた少女は、シンジとシャワーズにお礼を言ってその場を立ち去っていく。シャワーズは笑顔を取り戻した彼女たちの背中を、優しい瞳で見つめ見送っていた。
「君たちが無事でよかったよ。あの子たちを助けてくれてありがとう。」
「いえ、シャワーズがいてくれたから。」
「……シャワーズは君のことを大層気に入ったようだね。」
「え?」
「この子は優しい子だ。でも今回は、ただ助けたいだけじゃなかったと思うよ。自分の身を顧みず助けに入った君のことを、この子は助けたかったんだろう。」
「……そうなの?シャワーズ」
『シャウ!』
シンジの言葉にシャワーズは笑顔で頷き返答する。そんなシャワーズの答える姿を見て笑顔を浮かべた男性は、シンジにとある提案をした。
「どうだろう。君さえよかったらシャワーズを連れて行ってはくれないか?」
「え?で、でも……」
「私はシャワーズにここだけじゃなくて、他にも困っている人がいたら助けて欲しいと思っている。それと同時に、この子には広い世界を見せてやりたい。だからどうだろうか。君さえよければ、シャワーズに色んな世界を見せてあげて欲しいんだ。」
シンジは男性の言葉を聞き、屈んでシャワーズと向かい合う。自分は一緒に旅をしたいが、最終的に決断するのはポケモンだ。シンジは、最後の判断をシャワーズに委ね尋ねた。
「シャワーズ、君はどうしたい。」
『シャワ』
「……僕と一緒に行くかい?」
『……シャウ♪』
シャワーズはシンジの問いに笑顔で大きく頷いた。その返答を聞いたシンジも同様に嬉しくなり、懐から取り出したモンスターボールをシャワーズに差し出した。
「一緒に行こう、シャワーズ!」
『シャウ!』
シャワーズがモンスターボールに触れ、ボールの中にシャワーズが吸い込まれる。数回ボールが揺れ、ピコンッという音と共にシャワーズのゲットが確定した。
「シャワーズ、ゲットだよ」
『フィア♪』
「シャワーズのこと、よろしくお願いするよ」
「はい!」
そしてシャワーズは、シンジやニンフィア、他の仲間たちと一緒に広い世界を旅し、色々な経験をすることになるのであった。
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最近ルナアーラの強さに気付いた。やっぱり特性マルスケは強いや