ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

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今回はエーフィ回なの


~エーフィとの出会い~

これは以前、シンジが別の地方を旅していた時の物語。今冒険を共にしている仲間との出会いの記憶である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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シンジがある地方を旅していた時、旅の途中に訪れた町で困りごとを抱えている女性に遭遇した。明らかに困っている様子だったので、シンジは彼女に尋ねてみた。

 

その女性の話によると、近くにある無人のはずの洋館から何か物音が聞こえるようになってきたと言う。不穏な物音に町の人たちも不安になっているとのことだ。

 

町人たちの不安を解消するために確認する必要があるらしい。その話を聞いて放ってはおけないと、自分が確認しに行くとシンジが名乗り出た。

 

女性はシンジに対して感謝するが、流石に一人では危険かもしれないということで自分も一緒に探索すると言った。二人は物音の謎を突き止めるために共に洋館へと赴くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば自己紹介がまだだったわね。私はユナ。一応これでも町長の娘よ。」

「僕はシンジです。カントーのマサラタウンから旅をしてきました。」

 

シンジとユナは互いに自己紹介を交わす。洋館までの道のりの間、二人は互いの事を雑談して時間をつぶす。

 

「ほら、着いたわよ。」

 

気が付けば既に洋館の前まで辿り着いていた。洋館の外壁には植物が絡まっていて、見るからに人の住んでいる様子はない。明らかな廃屋だ。

 

ユナは洋館の大きな扉の鍵を取り出し開けようとする。廃屋とは言えここの土地と建物は町の所有物。町長が今でも管理しているのは不思議なことではない。金銭面の問題で建物自体を潰すのが難しかったりもするのだろう。

 

しかしその時ユナは違和感を感じる。不思議に思いユナが扉に手をかけると、キィ、と扉が甲高い擦れる音を出してゆっくりと開く。町長である父も寄っていないはずなのに鍵が開いているのはおかしいと感じたユナだが、ここは入るしかないと思い洋館内部へと侵入する。

 

二人は建物の中に入る。建物内部は埃が溜まっていたり蜘蛛の巣が張ってあったりはするが、それでも思った以上に汚れてはいなかった。どちらかと言うと廃屋にしては綺麗な方だ。それこそまるで、人でも住んでいるかのようにすら感じられる。

 

しかし内部は電気がついておらず薄暗い。ユナは電気をつけるために電源を探すが、見つける前に天井にある立派なシャンデリアが明かりを灯した。

 

「ユナさん、今電気つけてくれましたか?」

「いえ、私はなにも……」

 

その言葉で二人は少し寒気を感じる。誰も立ち寄っていない廃屋の洋館で不思議な怪奇現象……幽霊の仕業ではないかと脳裏にちらつく。

 

「……取り敢えず内部を探索してみましょうか。」

「ええ、そうね。」

 

不気味さを感じつつも、シンジとユナは互いに確認して内部の探索を開始する。洋館はかなり大きく、部屋の数もそれ相応に多い。一つ一つ扉を開けながらしらみつぶしに確認していく。しかし特別変わったところは見当たらない。

 

「にしてもここの洋館、かなり広いですね。」

「昔は資産家の人たちが住んでいたんだけど、急死してからは放置状態が続いていて。」

 

資産家であればこれだけ広いのも納得だ。しかしこれだけ大きな豪邸であれば並大抵の家族では大きすぎるであろう。金持ちの気まぐれな道楽、とも言えるかもしれないが、一般人には金持ちの気持ちは分からないだろう。

 

しかしいくら探してもなんら異変は見当たらない。一度引き返して出直すべきかと考えたその時、背後からドスンッ、と何かが落ちる物音が聞こえた。

 

「今の聞こえた?」

「はい……あっちの方から聞こえました。」

 

もしかしたら不法侵入した輩かもしれないと、ユナとシンジは物音のした部屋へと向かう。

 

二人は物音がしたと思われる部屋の扉を開ける。

 

「あれ、この椅子……」

「確かさっき来たときは倒れてなかったわよね?」

 

実は先ほどもこの部屋を訪れた。しかしその時には椅子は綺麗に並んでいたのだ。四足の椅子がひとりでに倒れるはずがない。つまり誰かが倒した可能性が高いのだ。

 

「もしかしたらこの近くに誰かがいるのかも……」

「探してみましょうか」

 

原因を見つけるためにこの部屋を探るシンジとユナ。探し始めるのと同時に、先ほどとは別のガタンッ、という物音が二人の耳に入ってきた。

 

振り向いてみると、今度は外に繋がる窓が開いていた。間違いなくこの部屋に来た時には閉まっていたのにだ。

 

「これって、どういうこと?」

「幽霊……ってことはないと思いますが……」

 

お互いに窓に触れた形跡はない。しかも見渡してもこの部屋には二人しかいない。とは言え幽霊などと言う非科学的な存在がいるとは考えづらい。

 

ならば一体何が、と考えていると、立て続けに二人を別の怪奇現象が襲い掛かった。

 

「えっ!?今度は椅子が!?」

「危ない!」

 

突然周囲に置かれていた椅子が空中へと浮かび上がった。浮かんだ椅子たちはユナへと襲い掛かるが、シンジは彼女を引き寄せて助けた。

 

「一体何が……」

 

突然のことに頭が混乱するユナ。だが今の現象を見たシンジは、ある一つの仮説に辿り着いた。

 

「……そうか。これは多分、エスパータイプのポケモンの仕業だ。」

「え、エスパータイプ?」

 

混乱して考えが纏まらないユナにシンジは説明を始める。

 

今椅子を浮かべていたのはエスパータイプの技、サイコキネシスだ。遠くからでも対象の物を操り宙に浮かせることができる技である。

 

冷静に考えてみれば洋館に入った際に自動的に電気がついたり、ひとりでに窓が開いたりと不可思議な現象が起こっていた。それらはエスパータイプ、またはゴーストタイプのポケモンが原因だと考えるのが最も辻褄がある。

 

原因が分かったなら後は元凶であるポケモンを探すべき、と意気込んだシンジのモンスターボールが勝手に開き、中からポケモンが姿を現した。

 

『フィア!』

「ニンフィア?急にどうしたの?」

 

そのポケモンは彼の相棒ポケモン、ニンフィアであった。どうしたのかとシンジは尋ねるが、飛び出してきたニンフィアはある一点を見つめるとその場所に向かってシャドーボールによる攻撃を放つ。

 

『フィーア!』

 

その攻撃を避けるために別の影が飛び出して姿を現す。そこにいたのは、少しニンフィアに似ている姿をしたポケモンであった。

 

『エーフィ、たいようポケモン。非常に賢く、認めたトレーナーには極めて忠実。額の珠に強力なサイコパワーを溜めている。』

 

そのポケモンの正体はエスパータイプのエーフィであった。恐らく今までの怪奇現象は全てエーフィの仕業だ。つまりシンジの仮説は当たっていたことになる。ユナは幽霊の仕業ではないと分かりホッとする。

 

「どうして君は……」

 

今までの行為の意味を問おうとするシンジ。しかし直後、エーフィの背後の影から複数の小さいポケモンが震えながら姿を見せてきた。

 

「え?このポケモンたちは……」

「ユナさん?知っているんですか?」

 

ユナはそのポケモンたちを見た瞬間に顔色を変える。様子が変だと感じシンジが彼女に尋ねると、ポケモンたちの詳細を教えてくれた。

 

「この子たち……この洋館の持ち主だった人のポケモンだわ。」

「え?」

 

ユナの話によると、急死したこの洋館の主である資産家が所有していたポケモンたちのようである。庭も広く、自分のポケモンたちと仲良く遊んでいた姿は町の住人からもよく知られていたことであるそうだ。

 

このポケモンたちは自分の主が死んだことを知らないのか、それとも行き場所がないからなのか、ずっとこの洋館で暮らしていたようだ。

 

しかしエーフィに関しては見覚えがないようで、野生のポケモンではないかと推測する。ここに近付いてくる怪しい人物たちを物音や怪奇現象で驚かせ、退散させることで彼らを外敵から守っていたのかもしれない。エーフィは頭のいいポケモンとしても有名なので、それぐらいの知能があったとしても不思議ではない。

 

「……そっか。キミはとても優しい子なんだね。」

『エフィ……』

 

シンジはエーフィに歩み寄る。エーフィは警戒態勢に入るが、シンジはエーフィの前で屈み優しく頭を撫でる。

 

「ありがとう、よく頑張ってたね。」

『……エフィ?』

 

突然撫でられて目を丸くするエーフィ。何故見ず知らずの人間に撫でられたのか、いくら賢いエーフィと言えど分からなくて困惑しているのだ。しかし、不思議と心地よく感じていたのか、エーフィは一切の抵抗を見せることはなかった。

 

「……よし!決めた!」

「ユナさん?」

「私、この洋館を建て直すようにお父さんに相談する!それで、この子たちが安心して暮らせるように責任もって管理する!」

 

ユナはこのポケモンたちを守るために、と決意をもってそう宣言する。ポケモンたちの面倒を見ることは簡単なことではないが、それでも事情を知ってしまった以上放置なんてしておけない。

 

「大丈夫、これからは私が……町のみんなが傍にいるからね。」

 

その言葉を聞いてポケモンたちは笑顔で答えてくれた。ユナの優しい気持ちが彼らに届いてくれたようだ。

 

早速このことを町長や町のみんなに知らせなくてはと、二人はポケモン達に待っててくれと伝える。そして2人は洋館を後にし、すぐに町へと戻るのであった。

 

『…………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シンジ君、ありがとうね、付き合ってくれて。」

「いえ、僕は何もしてませんから。」

『フィア?』

 

二人は町に戻るために帰路を歩く。しかしそんな彼らの後ろを付いて影にニンフィアが気付き、シンジもニンフィアと共に振り向いた。

 

「あれ?あの子は……」

 

ユナも同じく気付くと、その影の正体は先ほどのエーフィであった。何故ついてきたのかと尋ねると、もしかしたらとユナはあることに気が付いた。

 

「その子、あなたと一緒に行きたいんじゃない?」

「え?僕と、ですか?」

「あれだけ警戒していた子が、頭を撫でられた時すごく嬉しそうな顔していたし、きっとあなたの事を気に入ったのよ。」

「エーフィ、そうなの?」

『エフィー!』

 

シンジの問いかけにエーフィは笑顔を浮かべて元気に返事をした。そう言うことならと、シンジは空のモンスターボールを取り出した。

 

エーフィはシンジの意図を理解し、モンスターボールに軽く触れる。するとエーフィの姿はモンスターボールへと吸い込まれ、一切の抵抗を見せることなくピコンッ、と音がなる。エーフィのゲットに成功した合図だ。

 

「エーフィゲット!ニンフィア、新しい仲間ができたよ!」

『フィア♪』

 

物静かだが仲間思いの優しいポケモン、エーフィを仲間にしたシンジ。彼と共に新しい仲間のゲットに喜びを共感するニンフィア。彼らの旅は、これからもまだまだ続くのであった。

 

ちなみに洋館は住みやすいように改築され、ポケモンたちの住居、および町の人たちとの遊び場としてリフォームされ、今でも仲良く過ごしているそうである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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