ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》 作:ブイズ使い
これは以前、シンジが別の地方を旅していた時の物語。今冒険を共にしている仲間との出会いの記憶である。
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「ニンフィア!ムーンフォース!」
『フィーア!』
シンジの指示に従い、ニンフィアは岩に向かってムーンフォースを放つ。ニンフィアの一撃で、岩は半分近く砕けるが、それでも破砕するまでには至っていない。
シンジは今ニンフィアと共に人気のない場所で特訓している。彼らはジム巡りをして腕を磨く一人のポケモントレーナーだ。トレーナーたちは常に強くなるための努力を欠かすことはない。
「だいぶ様にはなってきたけど、まだパワーが足りないね。」
『フィア……』
「大丈夫だよ。まだまだ旅は続くんだから、これから時間かけて成長していこう。」
『……フィア♪』
シンジはニンフィアの頭を撫でてそう言う。ニンフィアもシンジの言葉に嬉しそうに笑顔を浮かべる。
シンジとニンフィアは最近覚えたムーンフォースの特訓をしていた。強力な技ゆえに扱いが難しく、最大限の威力を発揮することができない。だからこそ旅の合間にこうして特訓をして少しずつレベルを上げているのだ。
「さぁ、そろそろご飯にしようか。美味しいもの食べれば気分も変わるから。」
『フィーア♪』
二人は早速昼食の準備に取り掛かる。こうして協力して食事の準備をするのも、二人にとっては旅の楽しみの一つでもあるのだ。それだけ二人の仲が良いと言う証明である。
「……うん、こんなもんかな。」
『フィア?』
「ニンフィア?どうかした?」
シンジが食事の準備を終えた頃、ニンフィアが何かに気付いたような仕草をする。一体どうしたのかとニンフィアに尋ねるも、ニンフィアは草むらにゆっくりと近付いていく。
何かいるのか、と気になったシンジは草むらをかき分けて確認してみる。するとそこには朱色の体とふわふわの白い体毛に包まれている小柄のポケモンがいた。そのポケモンはブルブルと震えて、不安そうにこちらを見つめていた。
『ブースター、ほのおポケモン。ほのおタイプ。イーブイの進化形。体内に炎袋があり、炎が溜まると体温が最高900度まで上がる。吸い込んだ息を1700度の炎にして吐くこともできる。』
そこにいたのはイーブイの進化形であるブースターであった。ブースターはイーブイがほのおのいしに触れることで進化することのできる珍しいポケモンだ。特に野生では中々見ないだろう。
「君、こんなところで何してるの?君のトレーナーは?」
『ブスタ……』
シンジは気になったことを問いかけてみる。しかしブースターはシンジと目を合わせるとその場で硬直し、動きを止める。そして元々赤い体が更にどんどん赤く染まっていく。
「あつっ!?」
様子が変だと感じ大丈夫かとブースターに触れようと手を伸ばす。しかしブースターの体温が以上に熱くなっており、とっさに手を引っ込める。先ほどの図鑑説明のように、体温が急激に上昇しているようだ。この状態のブースターに触れ続けるのは流石に危険だろう。
一体何故体温を急激に上げたのか原因が分からなかったが、考えているシンジにニンフィアが呼びかけた。
『フィア!フフィフィーア』
「ニンフィア?」
何かを伝えようとするニンフィア。しかしいくら仲が良いとしても、人間がポケモンの言葉を完全に理解するのには無理がある。
ニンフィアは自分のリボンをブースターに近付ける。熱いから危ないとニンフィアを止めようとするが、止める前にニンフィアのリボンがブースターの首の体毛に触れる。
しかしニンフィアは一切熱そうにする素振りは見せず、優しくブースターの首を撫でていた。
「大丈夫?熱くないの?」
『フィア!』
どうやらニンフィアは全く熱さを感じていないようだ。大丈夫なのか、とシンジもニンフィアと同じようにブースターの首部分に軽く触れてみる。
「あれ?熱くない……」
熱は感じるものの、先ほどのような火傷しそうな熱さは感じない。寧ろ程よい温かさで、不思議と落ち着く程度の温もりを感じる。
しかし何故首回りは極端な熱さを感じないのか気になり、もう一度ポケモン図鑑を開いて確認してみる。
『ブースターは自分の体温が高すぎると健康状態に悪影響が出てしまうため、首回りの体毛を広げて熱を放出し体温を下げる。』
図鑑説明によると、どうやらブースターの体毛は熱伝導体の様な役割を担っているようだ。そのためブースターの体毛には熱があまりこもらないようになっているのかもしれない。
ニンフィアも同じようにイーブイの進化形。もしかしたら同じ種族故に、直感でブースターの特徴を理解したのかもしれない。ポケモンは今でも不明なことが多い存在なので、このような不思議な現象が起きてもおかしくはないだろう。
シンジもブースターの首を優しく撫でる。すると先ほどまで赤くなっていていたブースターの体も少しずつ収まり、硬くなっていた体も自然と解れて柔らかくなってきた。
『ブースタ……♪』
ブースターも表情が柔らかくなってくる。シンジとニンフィアが撫でたことにより落ち着いてきたようだ。このブースターは首回りを撫でられるのが好きみたいだ。
どうやら先ほどの反応からして、このブースターは極度の恥ずかしがり屋のようである。シンジの作った食事の匂いに釣られて来たものの、シンジとニンフィアがいて出られなかったのだろう。だからシンジと目があった時に動きを止め、体温が急激に上昇したのだ。
「ねぇ君、君のトレーナーは……」
落ち着いてきた頃合いを見計らい、もう一度ブースターに尋ねてみる。しかしその時、近くに茂みが再び揺れる。今度は何だとそちらに目をやると、そこには一匹の凶暴なポケモンが姿を現した。
『グマァ!』
「っ!?あれはリングマ!?」
そこに姿を現したのはリングマであった。リングマは縄張り意識が強く、非常に気性が荒いことで有名だ。実際、リングマに襲われ怪我をしてしまったトレーナーの被害報告も多数出ている程だ。
リングマは執念深く、一度進入してきた相手を容赦なく襲い掛かり追い続ける。ここは戦って追い払うしかないと判断したシンジは、ニンフィアと共に戦闘態勢をとる。
しかしその時、意外なポケモンがシンジの前に立ち、リングマに一喝入れたのであった。
『ブスタ!』
「え?ブースター?」
そのポケモンは先ほど出会ったブースターであった。恥ずかしがり屋のブースターはリングマに対して睨みつけ、前髪、首、尻尾の毛を更に逆立てる。どうやら戦闘態勢に入ったようだ。
普段恥ずかしがり屋のブースターでも、敵対心をあらわにしている相手に対しては非常に攻撃的になるのだろうか。ブースターの不思議な行動にそう考えるシンジだが、そんな彼をよそにブースターはリングマに攻撃を仕掛けた。
『ブースター!』
『グマ!?』
ブースターのかえんほうしゃがリングマに直撃する。シンジに驚き硬直してきたブースターからは考えられない、強力で勢いのあるかえんほうしゃがリングマを怯ませる。
その威力に驚いたリングマはその場を退き、森の中へと姿を消した。図鑑説明では1700度の炎を吐くと言う。そんな熱量を持った炎を浴びれば一溜りもない。
「ブースター、君……」
『ブスタ!?ブスタ……』
何故かバツの悪そうな顔をするブースター。不安そうなブースターの事を、シンジは改めて優しく撫でる。
「ありがとう、君のお陰で助かったよ。」
『フィーア♪』
『……ブスタ?』
怒られると思ったのか、ブースターはプルプルと震えていたが、シンジに撫でられて体の震えが治まった。過去のトラウマか何かが原因で、ブースターはこの様な性格になったのだろうか。恥ずかしがり屋と言うより、どちらかと言うと少し臆病なのかもしれない。
シンジに撫でられ落ち着きを取り戻したブースターは、彼の足に擦り寄り笑みを浮かべた。先ほどに比べ、だんだんと心を開いてきたようだ。その姿を見て、もしかしてと声をかけてみる。
「ブースター……僕たちと一緒に、くる?」
『ブースタ?……ブスタ!』
シンジの言葉にブースターは頷く。その返答にシンジは、安心してモンスターボールを手にしてブースターに差し出す。
ブースターは差し出されたモンスターボールに少し控えめな様子でゆっくり触れる。するとモンスターボールが開き、ブースターは中に吸い込まれる。数回揺れ、ブースターは抵抗なくシンジのモンスターボールに捕獲された。それがブースターにはトレーナーのいない証拠であった。
「ブースターゲット、だよ!」
『フィア♪』
こうしてシンジは恥ずかしがり屋で臆病だけど、戦闘時にはとても頼りになるブースターを仲間にし、更なる冒険を目指して旅を続けるのであった。
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【朗報】ニンフィアちゃんUNITE実装確定!
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