ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

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予想より数億年早かったので、ニンフィア参戦記念と言う名目の元始まりの話を慌ててリメイクしました。1話2話と大分内容が変わり、どちらかと言うと原作開始の話に近い展開です。

それにしてもニンフィアちゃん強いね。苦手な相手としたらルカリオ、ゼラオラ、アブソル、ファイアローみたいな懐に一瞬で潜り込める物理ポケモンかな?それ以外には割と有利に立ち回れそう。


ポケモンUNITEニンフィア参戦記念 二人の出会いリメイク版

ここはアローラ地方。4つの自然豊かな島と1つの人工島から成り立っている少し特殊な地方だ。

 

当然この地方にもポケットモンスター……縮めてポケモンと呼ばれる不思議な生き物たちが生息している。空に、海に、森に、山に、そして人間たちとも仲良く暮らし共存している。

 

そしてこのアローラ地方の一つの島、メレメレ島にあるアローラで最も大きな街、ハウオリシティ。その街はずれにとある一軒家があった。その一軒家のベランダで、一人の女性が背伸びをして深呼吸していた。

 

「んー!やっぱりアローラの朝の空気は気持ちいいー!」

 

アローラの新鮮な空気に満足そうな笑みを浮かべる女性。そんな女性の足元に、一匹の白い体をしたポケモンが歩いて近付き擦り寄ってきた。そのポケモンに気付いた女性は屈みこみ頭を撫でてスキンシップをする。

 

「おはようニャースちゃん!今日も元気そうね!」

『ニャー♪』

 

そのポケモンはカントー地方では非常に有名なポケモン、ニャースであった。見たところ彼女のパートナーか家族、と言った関係であろう。二人は仲睦まじそうに朝の挨拶を交わす。

 

「さて、そろそろあの子を起こしてきてくれる?あの子朝弱いから。」

『ニャー!』

 

ニャースは女性の言葉に快く返事をする。人間にポケモンの言葉は伝わらなくても、ポケモンは人間の言葉を理解してくれる。だからこそ人間とポケモンはお互いに理解し合い、共存することができているのだろう。

 

その時、ピンポーンと家のインターホンが鳴る。女性はハーイと返事をしてお客様を出迎えるために入り口に向かう。

 

女性の言葉に頷いたニャースはある一室の扉を開ける。器用なことに、届かないドアノブにジャンプしてぶら下がり扉を開けたのである。

 

扉を開けると一つのベットに大きな膨らみがあった。そこには1人の少年がスヤスヤと気持ちよさそうに規則正しい寝息を繰り返して今も眠っている。ニャースは仕方ないといつもの容量で飛びかかる。

 

「うわあああああ!」

 

少年は驚き軽い悲鳴をあげる。いつものことではあっても、寝ている時にポケモンが飛びかかってきたら驚きもするだろう。しかもニャースの体重は4キロあるため、驚くには充分な重量である。

 

『ニャア!』

「あ、ああ、ニャースか……あはは、おはよう。でもせめてもう少し優しく起こしてほしいな……。」

『ニャー……』

 

それができれば苦労はしないと呆れた顔で部屋を去っていくニャース。その様子に少年は苦笑をするしかなかった。

 

「シンジー!ククイ博士がきたわよー!」

「あっ!はーい!」

 

先ほどの女性が少年の名前を口にして大きな声で呼びかける。少年……シンジも返事をして早速準備をする。パジャマ姿のまま出るわけには行かないので、早々に着替える。

 

上は青を基調とした涼しそうなポロシャツ、そして黒色の長ズボンと言うシンプルなファッションだ。彼曰く、母親に選ばせると碌な格好にはならないため自分で選んだシンプルな格好の方がマシ、だそうだ。

 

着替えが終わり準備完了すると、シンジは自室の扉を勢いよく慌てて飛び出した。

 

「はぁ……はぁ……博士!お待たせしました!」

「ははは、そんなに慌てなくても大丈夫だよシンジ。アローラ!アローラ地方で一日過ごした感想はどうだい?」

 

博士は飛び出してきたシンジに対して落ち着いて挨拶をする。アローラ、とはこのアローラ地方に伝わるこんにちは、に該当する挨拶である。この言葉には挨拶以外にも分かち合う、と言った意味も含まれているそうだが、その点に関しては割愛する。

 

シンジも博士に対してアローラ、と元気よく挨拶を返す。このアローラ地方において一般的なこの挨拶も至る所で聞き、なんだか清々しい気持ちになれるので彼も結構気に入っている。

 

「まだあまり見て回れてはいませんが、このアローラはとてもいいところだと思っています。カントーでは見られなかったポケモンや、カントーのポケモンとは姿の違うポケモン、それに綺麗な澄んだ空気。どれも新鮮で、これからがとても楽しみになってきました!」

 

シンジのその言葉を聞き、博士も満足そうに笑顔で頷いた。

 

彼は元々カントーの出身だ。そんな彼は今まで地元であるカントーを始め、ジョウト、ホウエン、シンオウ、イッシュにカロスと、様々な地方を旅してきた。次はどこに行こうかと悩んでいると、偶々カントーを訪れていたククイ博士に声をかけられたのだ。

 

『君、よかったらアローラ地方に来てみないかい?』

 

博士からそう声をかけられ、シンジも聞いたことの無い地方に興味を持った。博士から話を聞くと、アローラ地方では姿の異なるリージョンフォームと呼ばれるポケモン、島巡りと呼ばれるジム巡りとは違う独特な文化、更には自然が豊かで環境の整った場所と、興味の惹かれる項目がいっぱいあった。ポケモントレーナーである彼にとって、それ以上に魅力を感じるものは中々なかった。

 

シンジは次はアローラ地方に旅に出ることを決意する。そのことを母親に相談すると、まさかの『私も一緒に行く』と返事が返ってきた。

 

母親曰く、一度アローラに行ってみたかった、と言った単純な理由である。彼の母親は気まぐれな性格で、こうすると決めたら最後まで貫く性格の人物である。それに関してはシンジも同じではあるのだが、相変わらずの母親の気まぐれにシンジは苦笑し、共にアローラに引っ越すこととなったのだ。

 

そして引っ越した日の翌日、こうしてシンジを誘った張本人、ククイ博士が挨拶に出向いたと言うわけだ。

 

「さて、シンジ!君はもちろん島巡りに挑戦するんだよな?」

 

博士の言葉にシンジは元気よくはい、と返事をする。今まで他の地方でジム巡りをしてポケモンバトルを競い極めてきた彼は、とてもポケモンバトルが好きなのである。それは彼のポケモンたちも同じなのだが、島巡りで見たことのない様々なポケモンと出会い、新たなライバルたちと戦うことができると思うと、彼自身ワクワクが止まらなかった。

 

博士に聞いた話によると島巡りは文字通り4つの島を巡り試練に挑む。そして試練を担当するキャプテンに認められると、それぞれの島で最強と言われるポケモントレーナー、しまキングとしまクイーンに挑むことができる。

 

それぞれの島にいるしまキングたちに勝利し認められると見事島巡りを達成し、一人前の大人に成長したとアローラの人々に認められる、と言う風習らしい。シンジにとっては認められる、と言うよりも主にポケモンとの出会いやバトルができることが一番の目的ではあるのだが。

 

「それじゃあ早速メレメレ島が誇るしまキング、ハラさんに会いに行こうか。お母さん、暫く息子さんをお借りしますね?」

「ええ、もちろん。ただ少し待ってください。」

 

そう言うと、彼女は奥の部屋へと入っていく。するとすぐに部屋から出てくるが、その手にはボールが描かれた黒い帽子と、黒を基調とした青の模様が入ったリュックが握られていた。彼女がこの時の為に用意したプレゼントのようである。

 

母親は自分の息子に帽子を被せ、リュックを後ろから優しく背負わせる。

 

「ほら、新しいリュックと帽子よ。気を付けて行ってきなさい。」

「母さん……ありがとう。行ってきます!」

 

母親からのプレゼントにシンジは感謝の言葉を口にする。その後行ってきますと出発の挨拶を交わし博士について行って外へと出る。そんな息子を、母親は笑顔で手を振り見送ったのであった。

 

「いいお母さんだね。」

「はは、いつもは母親の気まぐれに振り回されることもあるんですけど……」

 

シンジはそう言うが、彼の表情はまんざらでもなさそうであった。11歳と言う年頃でもあるため、あまり素直になれないのかもしれない。旅をしてきた、と言ってもやはりまだまだ子供の部分も抜けていないのだろう。

 

「そう言えばこれから会うしまキングのハラさんって、どんな人なんですか?」

「んー、そうだなぁ……。どっしりと構えているが寛大な人で……見た目はハリテヤマに似ているかもね!」

「ハリテヤマ……ですか。」

 

シンジはその言葉でなんとなくどんな人なのか想像できた。ハリテヤマみたい、ということは体格も大きいと言うことだろう。寛大、と言うイメージにもなんとなくマッチする。

 

シンジとククイは話しながら歩いていると、すぐに目的の村に着いた。リリィタウン。しまキングが住んでいる小さく平和な村である。

 

「しまキングは……」

 

ククイは周りを見渡すが、しまキングであるハラは見当たらないようだ。シンジも一緒に見渡すが、ハリテヤマに似ていると言う人は全く見当たらない。

 

「うーん……どこかに出かけているのかな……。一応ボクはこっちを探してみるよ。シンジはマハロ山道の方を探してみてくれないかい?」

「マハロ山道?」

 

シンジの疑問に、ククイは村の奥を指差して答えた。

 

「この奥に階段が見えるだろう?あの奥に行くとマハロ山道と呼ばれる道に出るんだが、その奥にはメレメレ島の守り神、カプ・コケコが祀られているんだ。」

「カプ・コケコが、ですか?」

 

カプ・コケコ。メレメレ島を守る守り神としてアローラに広く知られているポケモンの名前である。

 

アローラの4つの島にはそれぞれ守り神が存在している。メレメレ島にいる守り神がそのカプ・コケコなのである。

 

しかしカプ・コケコは少々イタズラ好きで、時折島の住人たちを困らせているそうだ。ただし別名、戦神とも呼ばれており、その名に恥じぬ強力な戦闘能力を持っているとも言われているのだ。だからこそメレメレ島の住人はしまキング、守り神に守られているため心配することなく平和に暮らせている、と言うわけである。

 

しまキングであるハラは、時折守り神カプ・コケコに祈りを捧げに行く。しまキングとしての役割、と言うのもあるが、いつも守ってくれていることに対する感謝の気持ちを捧げているのだ。もしかしたら今日も祭壇に祈りを捧げに行っているのかもしれないと、ククイはシンジに説明する。

 

「分かりました。」

 

シンジはそう返事し、ハラを探すためにマハロ山道へと向かったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マハロ山道へ向かい山道を登るシンジ。とはいえカプ・コケコが祀られている祭壇がある道なため、きちんと整備はされているようでそこまで険しい道のりではない。

 

今まで旅を続けてきたシンジにとって、この程度の山道ではそれほど苦になるようなことでもなく、スムーズに登ることができた。

 

山道を登り切り少し開けた場所にでたが、そこにはハラの姿がなかった。少し先に行けばカプ・コケコの祭壇までたどり着くだろうか、と考え先に進もうとするシンジ。しかしその先には、ハラではなく白いワンピースを着た少女の後ろ姿があった。

 

「えっと……君は?」

「っ!?」

 

シンジが声をかけると、少女は驚いたようにこちらを振り向く。しかし彼女はどこか困った様子で、どうしたのかシンジは訪ねる。

 

しかしそんな彼に、少女は慌てた口ぶりで声を出した。

 

「た、助けて下さい!ほしぐもちゃんを!」

 

突然少女からそう頼み込まれてしまい困惑するシンジ。一体何のことだろうかと彼女の先を見る。

 

するとそこには少しくたびれたつり橋があり、数匹のオニスズメが何かを襲っている姿があった。オニスズメの対象となっている存在を見ると、そこには星が映し出されたような雲の形状をした存在がいた。

 

ポケモンなのだろうが、シンジはそのポケモンの正体を知らない。普段なら興味を示すところだが、彼にとって今はそれ以上に虐められているそのポケモンを助けることの方が先決だと、考える前に彼の体が動き走り出す。

 

オニスズメはシンジに気づくと、対象を変えシンジに襲い掛かる。少女はその様子に怖くなり目をそらすが、シンジは虐められていたポケモンを庇うように覆いかぶさり、オニスズメから身を守る。

 

「大丈夫、僕が守ってあげるから。」

『き、キュイ?』

 

恐怖からか震えていたそのポケモンはシンジの言葉を聞き、安心した様子で体の震えが自然と止まる。しかしその時、ミシミシッと嫌な音がシンジの耳に入ってきた。

 

「っ!?」

 

次の瞬間、つり橋のひもがブチっと勢いよくちぎれる。その反動で、シンジたちは下の川に真っ逆さまに落ちていく。それに驚いたオニスズメたちはその場を去っていくが、シンジたちにとってはそれ以上に絶体絶命だ。

 

少女は驚きと恐怖のあまり目を瞑る。シンジはポケモンだけでも守ろうと力強く抱き寄せた。ポケモンも恐怖から再び体を震わせてしまう。

 

万事休すか、とその場にいる誰もが思ったその時、一つの光がシンジたちを包み込み一瞬で少女の目の前まで降り立った。その場には、ケガ一つないシンジとポケモンの姿があったのである。

 

「っ!?大丈夫ですか!」

「あっ……う、うん、僕の方はなんとも……」

 

何が起こったのかわからずシンジも目を丸くする。そんな彼らの前に、一匹のポケモンがゆっくりと空から降りてきた。

 

「え?このポケモンは?」

「カプ・コケコ……さん?」

 

少女の言葉でそのポケモンの正体がメレメレ島の守り神、カプ・コケコであることが分かる。シンジもまさか守り神に出会えるとは思わず、先ほどから驚きの連続である。

 

カプ・コケコは静かに二人を見つめる。いや、正確にはシンジをじっと見つめていた。まるで品定めでもしているかのようである。

 

暫くシンジとカプ・コケコが見つめ合っていると、カプ・コケコは頷いたのちそのまま空へと飛んでいき一瞬で姿を消した。戦神と言うだけあり、とんでもないスピードの持ち主である。

 

「……あっ、あの、ほしぐもちゃんを助けて下さりありがとうございます!」

「いや、とりあえずその……ほしぐもちゃん?も無事で安心したよ。」

「本当にすみません。ほしぐもちゃんも、勝手に先にいってしまってはダメじゃないですか。」

 

少女はめっ、とかわいらしくほしぐもちゃんに説教する。ほしぐもちゃんもさすがに申し訳なく感じたのか、しゅんっとしおらしい表情を浮かべていた。

 

「あっ、自己紹介が遅れました。私はリーリエと申します。」

「僕はシンジ。よろしくね、リーリエ!」

「はい!よろしくお願いします!シンジさん!」

 

これが、少年と少女の運命の出会いであった。

 

この時、二人の運命の歯車が回り始めたことは、この時の二人には全く想像すらしていなかったのであった。


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