ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》 作:ブイズ使い
結構ギリギリの投稿なのでまた誤字脱字あるかも。どうかご容赦くださいませ……。
ホウオウに会うため、ライゼン山脈へと旅を続けていたサトシとシンジたち。その道中には色々な出来事に出会っていた。
先ずはサトシのキャタピーが進化したことだ。偶然出会ったカイロスを捕まえようとキャタピーを繰り出したサトシだが、その途中でキャタピーがトランセルへと進化したのだ。
さなぎポケモンのトランセルは、自ら動くことは困難でカイロスを逃がしてしまったが、それでもサトシはトランセルの進化を心から嬉しく思い気にすることはなかった。シンジたちも、トランセルの進化を笑顔で祝福していた。
また、全員が野宿で就寝している時にマコトが幻のポケモン、スイクンに出会ったと言う。スイクンもエンテイと同じくホウオウに生み出されたとされるポケモンで、滅多なことでは人前に現れない。マコトも時が止まったかのように感じる程で、声が出せなかったのだと言う。それほど神秘的で幻想的な光景であったのだろう。サトシたちもそんなスイクンを見たマコトの事を羨ましがっていた。
さらにサトシのヒトカゲも、あるトレーナーのプリンとバトルをし、勝利した際に進化してリザードになった。リザードになり体も一回り大きくなり、頼もしさが増した。
それから次のポケモンセンターへと目指している道中…………
「次のポケモンセンターまでどれくらい?」
「そこまで遠くないみたいだよ。」
シンジの質問にソウジが答える。結構な距離を歩いているためみんなの疲労の色が見え隠れしている。ポケモンセンターであれば野宿よりも安心して休むことができるため、疲労を取ることができる。そのため、一行はポケモンセンターを目指して急ぐことにする。
だがその時、空が騒々しく感じたシンジたちは空を見上げた。そこではオニスズメの群れが叫びながら何者かを追いかけている光景が目に映った。よく見てみると、オニスズメたちがポッポたちが襲われている現場であった。
ポッポとオニスズメは、カントー各地でよく目にするためいがみ合う事が多い。今回もその例に溺れないであろう。
「大変!あのままじゃポッポたちが!?」
マコトが慌てて声をあげる。だったらここはと、シンジは自分のモンスターボールを手にしそれを投げる。
「ここは君に頼むよ!ポッポ!」
『ポッポォ!』
ポッポはボールから出た瞬間、オニスズメの前に立ちはだかり身構える。自分たちの邪魔をしたと判断したオニスズメたちは、そんなポッポに標的を変える。
「ポッポ!かぜおこし!」
ポッポは迫りくるオニスズメたちをかぜおこしで止める。逆風に煽られる形のオニスズメたちはその流れに逆らうことができずに動きを止める。
「続けてでんこうせっか!」
ポッポのでんこうせっかがオニスズメたちに次々と炸裂する。オニスズメたちはその攻撃を受け傷付き、その場を飛び去って行った。
「お疲れ様ポッポ!」
『ポッポ!』
ポッポは急いでシンジの元へと戻る。その時、ポッポの体が青く光り徐々に姿を変えていく。
シンジたちもこれには驚き目を見開く。そしてその光からポッポが解放されたとき、そこにはポッポよりも大きく、逞しくなったポケモンの姿があった。
『ピジョォ!』
「ピジョン……ピジョンに進化したんだ!」
ポッポは進化し、ピジョンへと生まれ変わったのだ。小柄なポッポから大きく成長したピジョンは、これまで以上に心強く感じる逞しさを纏っていた。
「やったな!シンジ!」
「おめでとう!」
サトシやマコト、ソウジもピジョンへの進化を祝福してくれた。シンジもピジョンも、そんな仲間たちに感謝する。
『イブブイブイ!』
『ジョォピジョ!』
イーブイもピジョンに祝福の言葉をかける。今まで共に旅をしてきた中であるため、イーブイも友達として自分のことのように嬉しいのだろう。
その後、助けたポッポたちがシンジたちの元へとやってきた。そのポッポたちはシンジたちに語り掛けてきた。どうやら助けてくれたことに感謝しているようだ。
「そんなことなら気にしなくていいよ。君たちが無事でよかったよ。」
『ピジョー!』
シンジもピジョンも彼らに気にする必要はないと伝える。そんなポッポたちは再びシンジたちに感謝をして飛び立つ。
「もう喧嘩したらダメだよ!」
飛び立つポッポたちにシンジはそう言った。そして無事ピジョンへと進化を遂げたピジョンを連れ、彼らは次のポケモンセンターへと向かうのであった。
一行は無事ポケモンセンターへと到着する。その夜、ソウジとシンジは2人でポケモンセンター内にある書庫にて、ホウオウにまつわる話を調べていた。
「何かわかった?」
「うん。かなり丁寧に纏められてるよ。」
サトシはシンジたちのホウオウのことについて何かわかったのかと尋ねた。本を読むことが苦手なサトシとマコトは、自分たちから進んで調べようとはしなかったのだ。こればかりは本人の趣味や性格もあるため仕方のない事なのだが。
「この本にはかなり興味深いことが書かれている。聞きたまえ。」
ソウジはホウオウの伝説が気になり首を傾げているサトシとマコトに説明を始める。
ソウジが言うには、ホウオウは人とポケモンの営みが発する幸せの波動を感じ取りエネルギーを得るのだと言う。だがその逆に、人が発する邪悪な波動には力を奪われてしまうとも書かれていた。
「それは?」
ソウジがページをめくると、そこには黒く染まった何かが描かれていた。マコトの疑問に対しソウジは、これは虹色の羽だと説明する。
「かつて虹色の羽の効果を知った人間たちが虹色の羽を巡って争った際、穢れた心を持った者たちが羽に触れ、色を失ってしまった。この本にはそう書かれているよ。」
シンジが虹色の羽に起きた出来事を補足した。邪悪な心に敏感に反応する虹色の羽は、悪しき心を持った人間が触れてしまうと色を失い、その効力さえも失ってしまうそうだ。伝説の存在であるが故、昔からそういった争いごとが絶えないのは人間としての性と言うべきものであろうか。
その話を聞いたサトシは、内ポケットから虹色の羽を取り出して確認する。
「……俺のは大丈夫だ。」
サトシが虹色の羽を確認すると、それは今でも眩い光を放っていた。サトシが触れても変化しないという事は、汚れがない証拠である。
念のためシンジも触れ確かめてみるが、それでも変化は起きなかった両者の心には一切の穢れはないようだ。
「ま、サトシは単純で慌てん坊だけど、悪しき心は持ってないからね!」
「ああ!単純で慌てん坊なら負けないぜ!」
「……サトシ?今のは褒められてないよ?」
マコトが言った言葉にサトシは何故か自信満々に答える。シンジはサトシに褒められていないと指摘する。その後、マコトとソウジがクスクスと笑い、サトシは彼らに笑うなと怒った。だが、その光景が彼らの仲が良い事を証明するものであった。
しかし、そんな彼らのやり取りを見ているものの影があったのだった。
「ピカチュウ!10まんボルト」
『ピカチュ!』
「イーブイ!躱してスピードスター!」
『イブイ!』
今、サトシとシンジはポケモンセンターの外にあるバトルフィールドでバトルしている。お互いに相棒であるポケモンを戦わせ、共に成長する。2人の間では日常茶飯事の出来事だ。だがここが公共の場でもあり、トレーナーたちが連戦していることもあって観戦している人が多いのがいつもとの違いか。
ピカチュウは10まんボルトでの攻撃を仕掛けるが、それをイーブイは華麗に躱してスピードスターで反撃する。ピカチュウはその攻撃に素早く反応し、さらに反撃をする。
「アイアンテールで打ち返せ!」
『ピカチュッピ!』
ピカチュウはアイアンテールでスピードスターを撃ち返した。
「イーブイ!まもる!」
『イブブイ!』
イーブイは反射されたスピードスターをまもるによって防ぐ。
「イーブイ!でんこうせっか!」
「ピカチュウ!でんこうせっか!」
シンジとサトシはほぼ同時にでんこうせっかの指示を出す。互いのでんこうせっかがフィールド中央でぶつかり、互いに元の位置まで戻る。攻撃力ではほぼ互角、いやピカチュウの方に僅かだが分があるだろうか。イーブイが僅かに今の反動で怯んだのだ。
「これで決めるぜ!エレキボール!」
「!?シャドーボール!」
ピカチュウはシャドーボールでピカチュウのエレキボールで反撃する。パワーは拮抗しているように見えたが、攻撃力の差が次第にあらわれる。
拮抗していたかに思われた技の鍔迫り合いは、ピカチュウのエレキボールがシャドーボールを破ると言う結果に終わった。シャドーボールを貫通したエレキボールは、そのままイーブイに接近し、イーブイは回避行動が間に合わずに正面から受けてしまった。
イーブイはその攻撃によってその場でダウンし、戦闘不能となる。シンジは慌ててイーブイの元へと駆け寄り、審判によって勝者の宣言がされた。
「イーブイ!大丈夫?」
『イブ……』
「ううん。よく頑張ったよ。サトシたちに負けないように、もっと強くなろう。」
イーブイはシンジに申し訳なさそうな顔をして呟いた。シンジはそんなイーブイを咎めることはせず、むしろ頑張ったと労いの言葉を送り、今よりも強くなろうと約束した。イーブイもそんなシンジの期待に応えたいと、強く頷いてくれた。
「今回は僕の負けだよ。でも次は!」
「ああ!俺だって負けないぜ!」
バトルを終えた両者は、互いの健闘を称え握手する。イーブイとピカチュウも仲が良く、互いにライバルとしての認識があるため2人で握手を交わす。観戦している人たちも、そんな二人に拍手を送ってくれた。
「さあ!ここまで連勝中のサトシ君に挑むのは誰だ!」
そこでマコトが私たちの出番だと張り切るが、第三者の声がそれを遮り、奥から一人の少年とポケモンが姿を現したのだった。サトシとシンジはその人物の顔を見て目を見開いた。
「久しぶりだな。」
「!?クロス!」
その人物はクロス。そして彼の横にいるのは彼の相棒と思われるまよなかのすがたのルガルガンだ。
クロスは以前サトシのゲットしたヒトカゲの元トレーナーで、ヒトカゲを弱いと言う一言で切り捨てた男である。サトシにとっても、リザードにとっても因縁深い相手である。ポケモンが大好きなシンジも、彼の考えに同意することは出来ない。サトシやシンジとは相容れない関係といってもいいだろう。
クロスは、連勝中のサトシに挑戦を申し込んだ。彼の目的は最強のトレーナーになること。故に、サトシに力の違いを見せつけるために姿をあらわしたのだろう。サトシも覚悟はできているようで、彼の挑戦を受け入れた。
こうして、サトシのリザードと、クロスの持つ最強のほのおタイプ、ガオガエンとのバトルが開始された。
だが、結果だけ言えば惨敗。見事にクロスの策略にかかってしまった。
サトシは始め順調に攻め込み、ガオガエンを追い込んでいたように見えた。だが、それはあくまでクロスがそう仕向けただけ。ガオガエンは攻撃を敢えて受け続けることで、自らの攻撃力を高め一気に勝負を決める、それこそが彼の狙いであった。
一方、サトシのリザードは進化したばかりで自分の変化した力に追いつけていなかった。それ故に、後半では技を上手く出すことができず、一方的に攻め込まれてしまい圧倒的な力の差を見せつけられた敗北となってしまった。
ダメな指示によってポケモンに屈辱を与えたと言うクロスの指摘がサトシの心の中に響いてしまい、サトシはショックを受けてしまうのだった。
「サトシ!元気だしなよ!」
サトシは傷付いたリザードをポケモンセンターで回復させた。だが、先ほどのショックからは立ち直れておらず、納得がいかないと言った様子であった。
「あんな奴が勝つのはおかしいよ!」
サトシはそう言い放った。サトシにとって、クロスは正反対の考え方を持つトレーナーだ。勝つことにこだわるクロスの考えを否定するサトシに対し、ソウジから返ってきた言葉は意外なものであった。
「しかし、彼の考え方も否定できない。」
クロスの考えは最強のトレーナーであること。そこには強さを求める信念があった。それはガオガエンも同じだ。彼らは、その信念によって強く結ばれていた。例え正しい考えでなくとも、それも一つの強さに違いはない。
「負けて悔しいって思うから、次も頑張ろうって思えるんじゃない。」
「そんなの分かってるよ!けど!」
サトシはそんな仲間の言葉を聞いても納得がいかない。やはり、心の中で彼の考えを認める事ができないでいる。
シンジはそんな迷走する親友の姿を静かに見守っていた。
「!?……ピカチュウなら勝てたんだ」
『ピカッ!?』
「っ!?サトシ……」
「そんなこと言ったら、リザードが可哀想だよ!」
「っ!?」
サトシは思わずつぶやいてしまう。マコトの言葉に気が付き、ハッと現実に戻る。ピカチュウも自分のパートナーがらしくないことを呟き、その言葉に驚いていた。
「勝つことに拘るのであれば、君もクロスと同じだ。」
「くっ!」
サトシはそのまま走り出す。サトシは暗闇の中、森の奥へと姿を消した。ピカチュウも後を追いかけサトシと共に森の奥へと入っていく。ソウジとマコトも彼を追いかけようと走り出した。
しかし、それを意外な人物が止めたのであった。
「まって!」
「!?シンジ?でもこのままじゃサトシが!」
そんな彼らを止めたのがシンジであった。マコトは彼がなぜ止めるかが分からなかった。そんな二人に、シンジはこう答えた。
「サトシの事は僕に任せてくれないかな?」
「シンジ……」
「彼のことは、僕が一番よく知っている。」
シンジはそれに、といって言葉を続けた。
「僕の親友は、そんなに弱い人間じゃないからさ。」
そう言い残し、シンジもサトシの後を追って森の中へと入っていった。ソウジとマコトは、そんな彼の姿を後ろから見つめているしかなかった。
「サトシ……どこまで行ったんだろう……。」
『イブイ……。』
シンジはイーブイと共に森の奥へと進んでいく。進んでいることは分かるのだが、サトシの姿が一向に見えない。イーブイも恐怖心からか、少し怯えている様子だ。
今は夜で森の中も真っ暗闇だ。夜の森ほど怖い場所もないであろう。恐怖心を抱いてもおかしくはない。寧ろ、恐怖しない人の方が少ないのではないだろうか。
暫く森を進むと、サトシのピカチュウがこちらにゆっくりと歩いてくる姿が確認できた。イーブイはピカチュウの姿を確認すると、すぐに走り出し彼に声をかけた。
『イブブイ!』
『ピカピカ……』
イーブイの声に反応し答えたピカチュウ。だが、ピカチュウの声は低く、耳も垂れてどこか落ち込んでいる様子であった。その姿から、サトシと何かあったのは容易に分かることであった。
「ピカチュウ、サトシと何かあったの?サトシはどこ?」
『ピカピ。ピカチュウ』
ピカチュウは更に奥へと指を指す。どうやらサトシはもう少し奥に進んだところにいるようだ。シンジは、ピカチュウを連れてサトシの元へと向かうことにした。
さらに森を進むと、そこには一人の男が木にもたれかかって座り込んでいる姿があった。遠目では暗くて分かりにくかったが、近寄るとその人物がサトシであることが確認できた。
「サトシ!?」
『ピカピ!?』
シンジとピカチュウは慌てて駆け寄る。寝ているのかと思わせる程静かだが違う。どこか気を失っているようにも感じられる違和感があった。
「ピカチュウ。とりあえずソウジたちを呼んできてくれる?」
『ピカチュ!』
ピカチュウは慌ててソウジたちを呼びに行く。何が原因かは分からないが、ソウジならばこの現象が分かるかもしれない。もしかしたらポケモンの仕業という可能性も考えられるが、それも含めてソウジたちと相談した方がいいだろうと判断する。
『イブブ……』
「大丈夫だよイーブイ。僕がついてるから。」
恐怖心から、イーブイは呟いた。シンジはそんなイーブイの頭を撫でて優しく声をかける。そんな彼の目に、ある物が映ったのだった。
「ん?これって……」
それは黒色に染まった羽であった。それは紛れもなく虹色の羽。シンジはそれを慌てて手に取る。だが、その虹色の羽を手にした瞬間、何者かに操られるかのようにシンジは意識を手放したのだった。
「ちょっとシンジ~?早く起きないと学校に遅刻するわよ~?」
「う~ん……学校?…………っ!?しまった!?」
その少年、シンジは母親の声により目が覚め慌ててベットから落ちてしまう。急いでいつもの服に着替えて準備をし1階へと降りた。
「なんで起こしてくれなかったの!?」
「起こしても起きなかったじゃないの。それに10歳になったら自分で起きるんじゃなかったの?」
「うっ、そうだった……。と、とりあえず行ってきます!」
シンジは母親の抑止を聞かずに飛び出すように家を出たのだった。
「オーキド先生!」
慌てて家を飛び出したシンジは息を切らし、学校へと辿り着く。そこでは校門の花壇に水をやっているオーキド先生の姿があった
「お~シンジ君。今日の遅刻した生徒は4人と聞いていたが、君が最後の一人か。」
「え?4人?」
シンジはその時強い違和感を覚える。このやり取りが以前どこかで行われた気がし、4人という数字に違和感を感じたのだ。
「どうかしたのかの?」
「い、いえ、なんでもありません。」
シンジはどうせ気のせいであろうと気に留めることもなく、教室へと向かった。
教室へと入ったシンジは自分の席へとつく。その隣と後ろの席には、彼の幼馴染で友人の生徒が座っていた。シンジの姿を見るや、その一人の女の子が彼に声を掛けた。
「シンジ珍しいね。遅刻するなんて。」
女の子、マコトの言葉に、シンジは言葉を濁らせちょっとね、とごまかした。理由が少々恥ずかしいため、正直なことは言えなかったのだ。そんな彼女に続き今度は男の子が彼に声を掛けたのだった。
「シンジ、宿題はやってきた?」
男の子、ソウジが問いかけた。その問いに対しシンジは、バッチリだよと答える。だが椅子に腰かけた時、彼はまた別の違和感を感じたのであった。
「ん?今のって……」
「シンジ?どうかした?」
シンジは目の前を何かが通ったと感じる。だが席の下を覗いても何かがいる気配はしない。シンジの様子が変だと感じたマコトがそう問いかける。シンジはまた気のせいだろうと思い、何でもないと答えた。
シンジはその時、チクリと何かが胸に刺さる感じがした。
(なんだろう……この感じ……)
結局その正体も分からないまま授業が始まった。シンジはその正体を考えるが、授業に身も入らないまま放課後になってしまう。
放課後、シンジは屋上にやってきた。そんなシンジを気にかけ、マコトとソウジも同じく屋上にやってきたのだった。
「シンジどうしたの?屋上にくるなんて珍しいね。」
シンジはマコトの問いにちょっと考え事がしたくてね、と答える。そんなシンジは2人にある事を尋ねた。
「ねえ。少しいいかな。」
「どうしたんだい?」
「僕たちっていつも3人……なんだよね?」
シンジはそう問いかけた。3人……本当に3人なんだろうかと思い始める。何か、もっと大切な何かを忘れている気がしてならない。
オーキド先生の時も、席に着いた時も、気のせいだと感じてはいるが何か引っかかるものがある。そんなシンジにマコトが笑顔で答えた。
「なに当たり前のこと言ってるのよ。私たちはいつだって3人だったじゃん!」
「今日の君はどうしたんだい?らしくないよ。」
らしくない。そんなソウジの言葉を聞いたシンジの胸に、再びチクリと何かが刺さった感じがする。やはり何かおかしい。シンジはどうしても違和感を拭えない。
マコトとソウジの存在は偽りではない。確かに存在している。だが、それ以上に大切なことがある。この二人の他に大切な親友、大切な相棒がいた。そんな記憶の断片が彼にはある気がしていた。
その時、シンジの目からは涙が零れ落ちた。
「あれ?シンジ泣いてるの?」
「っ!?なんでだろう。」
悲しくなんてない。泣きたいことなんてないはず。それでも、シンジの目からは自然と涙が溢れてきた。最も大事なこと。それを忘れることの方が、よっぽど辛い気がしたから。
シンジは涙を拭きとり周りを見渡す。すると、シンジの後ろには何かがかすかにぼやけて映っていた。それが何かはシンジには分からなかった。それでも、彼は自然とその存在に手を伸ばしていた。
「シンジ?」
マコトの言葉にシンジはハッと我に返る。やっぱり自分は何かおかしいのだろうか。しかし、それでもその存在を無視することができなかった。その存在を無視してしまっては、自分が自分で無くなってしまう。二度と戻れなくなってしまう。そう感じてしまったから。
シンジは無意識のうちに走り出した。そんな彼をマコトとソウジは止めようと呼びかけるが、シンジの耳には入らなかった。
シンジは走る。だが一向に追いつく気配がない。本来であれば狭いはずの屋上も、今では異常なほど広く、大きさを増してしまっている気さえした。
思い出せない。大切な存在であるはずなのに。思い出したいのに、思い出せない。君の存在も、大切な親友の存在も。自分は彼のためになにかをしようとしていたのに。
そんな焦りがシンジの頭の中を巡った。シンジはただひたすらに追いかけた。自分から逃げるその存在を。見失ってしまえばもう二度と会えないのではないか、思い出せないのではないかという焦りが彼を襲う。
そんな時、彼の足元が突然崩れ始める。空間が崩れるかのように、シンジを急な浮遊感が襲った。シンジが追いかけていた存在も、空間と同時に崩れ始める。
待って、と慌てて呼びかけるシンジ。そんな彼に、どこからともなく声が聞こえた。
『ブ……ブ…イ』
途切れ途切れのその声はハッキリとは聞こえなかった。だが、シンジにはその声に聞き覚えがあった。そしてその声に続き、また別の声が彼の耳に届いた。
『……ジ……ンジ!』
誰かが自分の名前を呼んでいる気がする。マコト?ソウジ?いや違う。もっと違う誰かだ。男の子の声。それも、彼にとってとても大切な存在。名前も思い出せない親友の声。
シンジの目にその親友の姿が僅かに浮かぶ。擦れてよく見えないその存在は、絶えずシンジに語り掛ける。シンジも、そんな彼に返事をするように名前を呼ぶ。
「……シ?」
上手く声が出ない。空間が崩れて自分の感覚が狂ってきたのか?いや、違う。やっぱり違和感なんかじゃない。大切なものを忘れている。自分はそれを思い出さなきゃいけない。そんな感覚が彼を襲う。
(君の名前……。ダメだ、どうしても思い出せない。忘れちゃいけないのに。忘れられるはずがないのに!)
シンジは心の中で自問自答を繰り返す。忘れられるはずがない。そんな存在の名前を思い出そうと。そんな時、彼にまた同じ声が届く。
『ブイ!』
(!?今の声!)
今度はハッキリと聞こえた。大切な存在、相棒の声が彼の耳に届いた。彼はその声に向かい手を伸ばす。そして、その大切な存在の名前を口にした。
(そうだ!君の名前は!)
「イーブイ!」
その瞬間、彼の周りの空間が1つ破れた気がした。そしてシンジが口にした存在が、彼の元へと飛び込んできた。
『ブイブイ!』
「っ!?イーブイ!」
シンジはそんな大切な存在、イーブイをしっかりと抱きしめる。なんで忘れていたんだろう。忘れたくても忘れられない、ずっと一緒に旅をしてきた存在なのに。
シンジはその時、もう一つの存在を思い出す。ずっと旅をしてきた存在、イーブイ。それにもう一人。ずっと一緒に育ち、共に過ごしてきた大切な存在がいたはずなのだ。
『ブイ!ブブブイ!』
イーブイは悩むシンジに呼びかけた。イーブイも何かを訴えている。ポケモンの言葉は人間に伝わることはない。だが、それでもシンジにはイーブイの言葉の意味が分かった。なぜなら、イーブイもまた共に旅をし、過ごしてきた大切な存在なのだから。
「なんでだろうね。忘れるなんて……できるはずないのに。」
僕たちは永遠に一緒だ。そう見えない彼の存在に言葉をかけ、シンジは彼の名前を小さく呟いた。
「そうだよね。……サトシ」
シンジは大切な親友の名を口にした。そしてそれが最後の言葉となり、空間が完全に破れ、シンジの意識が覚醒したのだった。
「……シ!……ジ!」
声が聞こえる。その声に従うように、シンジとサトシは目を覚ます。
「あっ!やっと起きた!」
心配したんだからと心から安心したマコト。2人の顔を覗き込み、目が覚めた時に胸をなでおろす姿を見ると、余程彼女が心配していたのだろうと言う事が分かる。ソウジも二人が無事なのを確認し、優しい笑みをこぼした。
「ご、ごめん、心配かけて。」
『イブブイ!』
夢でも見ていたのだろうか、と思ったシンジであったが、妙に現実味があったため夢にも思えなかった。実際起こりえることではなかったが、あの出来事は現実のものなのではないかとシンジは心の中で感じていた。
シンジのことが心配で気が気でなかったイーブイも、彼が目覚めたことですぐさま胸に飛び込んだ。その目には涙が浮かんで潤んでおり、シンジのことを心から心配し、不安を抱いていたことが伝わる。シンジもイーブイに謝り涙を拭きとって、イーブイの頭を優しく撫でた。
『ピカピ!』
「っ!?ピカチュウ!ごめんなピカチュウ!俺が悪かったよ!」
サトシも飛びついてきたピカチュウに謝りギュッと抱きしめる。その光景を見る限り、やはり二人には何かあったようだ。
「サトシ。」
「シンジ……。」
シンジはサトシに声を掛け、彼に一つ伝えたいことを伝える。
「クロスはクロスの、君には君の考えがある。君や僕にも信念がある様に、彼にだって譲れない信念があるだろう。」
サトシは黙ってシンジの言葉に耳を傾けていた。
「全てのバトルに勝つ事なんてできない。まずはポケモンと、向き合うところから始めたらどうかな?」
「ポケモンと……。」
サトシはシンジの言葉を聞き、そうかと心の中で納得しモンスターボールを取り出した。
「……ごめんな、リザード。」
サトシはそう言って、モンスターボールの中にいるリザードに謝ったのだった。
サトシとシンジはその後、みんなに自分たちが経験したことを話した。シンジが味わっていたことと同じく、サトシもまた同じ現象を味わっていたようであった。
だが、ソウジはその現象に何か引っかかりを覚える。偶然にしてはできすぎであろう。
まず共通点として、お互いにホウオウに選ばれたもの。そして同じ夢を見ていたこと。それらは偶然にしては出来過ぎで、偶然とは思えない現象だ。
その後、マコトが拾った虹色の羽には色が戻っていた。それを見たシンジは口にはしなかったものの、先ほど見た虹色の羽は色を失ってしまっていたことを思い出す。心が穢れた者が触れてしまえば色を失う虹色の羽。もしかしたらサトシが穢れてしまったのではないかと不安になるシンジだが、2人が触れても虹色の羽が色を失うことはなかった。むしろ、より一層輝きを増したのであった。
ポケモンの記憶を失うのは夢でも嫌だと思うマコトとソウジ。そんな話を聞いたソウジは昔に起こった出来事を思い返す。
ソウジはかつて、帰りの遅い親の代わりとして育ててくれたレントラーというポケモンがいたのだという。だが、ある日に自分は一人で雪山に登ってしまい遭難してしまったことがあるのだとも。その際、心配したレントラーがソウジのことを探しにやってきて、傍に寄り添い彼のことを雪から守ってくれたのだとか。
しかし翌日、目が覚めるとレントラーは冷たく凍えてしまっていた。レントラーはソウジの呼びかけに答えることはなく、その場に残された。ソウジはその後救助隊に無事助けられたが、レントラーが戻ってくることはなかった。だが、そのレントラーの顔は、どこか嬉しそうな笑みを浮かべていたそうだ。
人とポケモンの在り方は色々ある。それはサトシやシンジ、マコトにソウジ、それからクロスも例外ではない。サトシはそのことを胸に刻み、もう一度自分とポケモン、クロスと向き合おうと決意する。
その時、背後から何者かの気配がした。誰かが覗いているような感覚。それを感じたシンジとサトシは立ち上がって振り返った。
だがそこには何もいなかった。ピカチュウはその正体を暴くべく10まんボルトを木に放った。だが、その攻撃は別のポケモンを呼ぶ結果となってしまう。
そのポケモンはオコリザル。一度怒らせると手が付けられなく、彼らは群れで降りてきたのだ。ピカチュウの攻撃で気が立ってしまった彼らは、一行を胴上げでもするかのように持ち上げる。
ソウジはサトシにトランセルで対処するように言う。無駄に攻撃してしまっては、更に彼らはを怒らせてしまう結果となってしまう為だ。サトシはトランセルを出し、オコリザルの手から抜け出す。運動神経がずば抜けているサトシだからこそできる芸当だ。
サトシはトランセルを抱えオコリザルの周囲を走る。そしていとをはくで彼らの動きを止めた。シンジたちは動きが止まったところを見計らい、彼らの手を逃れる。オコリザルから離れるために走り出す一行だが、オコリザルもいとをはくを破って追いかけてくる。その時、トランセルを青白い光が包み姿を変えていく。
トランセルを包んだ光が解き放たれ、解放された時にはサトシの手から抜け出して空へと羽ばたき、バタフリーへと姿を変えていた。
バタフリーはオコリザルの動きを止めるため、ねむりごなで一斉に眠らせる。眠り状態となった彼らは一行を追いかけることはなく、その場で眠っていた。
その後、暫くしてからやってきた3人組が目覚めたオコリザルに飛ばされたのは、シンジたちが知ることはない。
「見えた!あれがホウオウの住む場所、ライゼン山脈だ!」
とある湖に出た一行。その先には険しい山々が連なる山脈があった。間違いない、とソウジは図鑑を確認しその山がライゼン山脈であると判断する。もうあと一歩だ、という時に空から以前見たのと同じ光景が目に映った。
そこには以前見かけたポッポ、それからピジョンの姿があった。そして彼らを襲う集団、オニドリルを加えたオニスズメ達の姿も見られた。彼らは今度は逃げているのではなく、真っ向から立ち向かっていた。恐らく一部のポッポがピジョンに進化し、彼らを束ねているのだろう。
だが、それでも明らかにポッポたちが劣勢であった。ポッポやピジョンはボロボロであるのに対し、オニドリルはまだ元気が有り余っており、彼らを威嚇していた。
このままじゃマズイと判断したシンジは、すぐさまピジョンを繰り出し助けに入る。
「ピジョン!つばめがえし!」
ピジョンはつばめがえしにより勢いよくオニドリルを襲う。オニドリルはピジョンの急襲に対応できずダメージを受ける。だが流石は進化形というべきか、以前のオニスズメたちと違い一撃で撤退することはなかった。
オニドリルの反撃、ドリルくちばしがピジョンを襲う。シンジは慌ててピジョンの名を口にする。ピジョンは墜落しそうになるも、その際にピジョンを青白い光が包み込みピジョンは再び飛び立つ。
そしてその光が解き放たれると、そこには雄々しくも気高い翼を備えたポケモンの姿が映っていた。
『ピジョットォ!』
ピジョンが最後の進化を果たし、ピジョットとして群れの先頭で対峙していた。オニドリルは、進化して更に増したそのピジョットの威圧感に怯んでいる様子であった。
シンジたちは進化したピジョットの勇姿に感動し、嬉しさがこみ上げる。その背中は、進化する前とは比べ物にならないくらい大きく、逞しく成長していた。ピジョンやポッポたちも、ピジョットの事を憧れと信頼の眼差しで見つめている。
オニドリルは退くことはなく、果敢にピジョットを攻める。だが、進化して更に増した素早さについていくことができず、ことごとく攻撃を躱されてしまう。
「ピジョット!エアスラッシュ!」
『ピジョット!』
ピジョットは翼を羽ばたかせ、エアスラッシュにより体勢を崩したオニドリルへと命中する。素早さだけでなく、攻撃力までも増したその一撃はオニドリルに大きなダメージを与え撤退させることに成功する。オニスズメ達も自分のリーダー格がやられたことで、勝てないと判断したのかその場を後にした。
「ピジョット!お疲れ!」
ピジョットも笑顔でシンジの元へと戻る。以前憧れの目で見ていたピジョットに進化することができ、自分自身も嬉しいのだろう。
そのピジョットのあとをポッポたちがついてきた。ポッポとピジョンは、キラキラした目でピジョットを見つめる。ピジョットも彼らに向き直って彼らからの感謝を受け取る。
「まるでリーダーみたいね。」
「ホント。みんなから歓迎されているみたいだ。」
マコトとソウジの言葉に、シンジはある決断をする。そしてその決断した内容を、ピジョットへと伝えた。
「ピジョット。」
『ピジョ?』
「僕たちはここで別れるべきだ。」
『ピジョ!?』
シンジの衝撃の発言に、ピジョットは驚きを隠せない。ずっと一緒にいると思っていたため、シンジの発言はピジョットにとって衝撃的であった。だが、その後にシンジはその別れを告げた理由を述べた。
「このピジョン達には、君みたいに引っ張っていく存在が必要だ。君なら、その役割にもピッタリだと思う。」
仲間たちもシンジの判断に驚き、彼に本気かと尋ねる。彼からの返事はなかったが、彼の目からはその覚悟が感じられた。
ピジョットは迷う。咄嗟に判断するには難しすぎる決断だ。だが、シンジが最後に伝えた言葉に、ピジョットは覚悟を決めた。
「僕たちは離れ離れになっても繋がっている。君と結ばれた絆も、決して切れることはない。僕たちは……友達だから。」
『ピジョ……』
シンジの決断に、ピジョットも覚悟を決めて頷く。ポッポやピジョンたちをこのまま行かしてしまえばまたオニドリルたちに襲われてしまう可能性もある。そんな彼らを放っておくこともピジョットにも、シンジにも出来ない。だからこそ、彼らを守るために、引っ張っていく為にピジョットが必要なのだと。
ピジョットは自分がみんなを引っ張るリーダーとなると伝える。ピジョン達もそんなピジョットを歓迎する。その姿を見たシンジは、僅かに涙を流し彼を見送る。
「これでいいんだ……これで……」
「シンジ……」
飛び立ったピジョットは振り返り、再びシンジの元へとやってくる。覚悟を決めても、やはり名残惜しいものがある。それが人間とポケモンの関係であるから。
「ピジョット。ありがとう。」
『ピジョ……』
「……君に出会えて……良かったよ」
『ブイ……』
ピジョットとシンジは抱きしめ合う。最後の別れをしっかりと噛み締めて。仲の良かったイーブイも、名残惜しくもピジョットと最後のハイタッチをする。ピジョットもシンジもイーブイも、それぞれ涙を流して別れを告げた。ピジョットの姿が見えなくなるまで、名前を叫び続けたのであった。
その後、ライゼン山脈を登る一行。その時、バタフリーの群れと遭遇した。そこには以前サトシのバタフリーが助けたピンク色のバタフリーの姿があった。
バタフリーはこの時期になると、子作りのために集団で南にわたるそうだ。サトシのバタフリーはピンク色のバタフリーに求愛のダンスをし、互いに認められた。だが、それは同時にサトシとも別れなければならないという意味でもあった。
サトシは決断に迷うが、先ほど見ていたシンジとピジョットの結末を見届けていたため、そう長いこと迷うことはなかった。サトシは快くバタフリーを見送ってやろうと決意する。
サトシと別れることをバタフリーは戸惑う。番いのバタフリーと共に南へ行きたいが、サトシと別れることもしたくない。そんな時、サトシからバタフリーに一言告げられた。
俺たちは離れていてもずっと友達だ、サトシのその言葉に突き動かされ、バタフリーは南へと渡る決意をする。サトシも終始涙を流していたが、バタフリーの幸せを願い見送った。シンジたちと同じように、姿が見えなくなるまで手を振り、止まらない涙を拭きとりながら。
しかしその瞬間、背後から凄まじい威圧感が彼らを襲う。その正体を確認するため振り向くと。そこには幻のポケモン。ライコウの姿があった。エンテイ、スイクンに続きライコウ。この三体の姿を全て確認し一行はかなりの幸運だ。
ライコウはその後姿を消してしまうが、一行はその雄々しい姿を目に焼き付け胸に刻んだ。
ピジョット、バタフリーと別れ、ライコウを目にした一行はライゼン山脈を登っていく。すると道中、ボンジイと名乗る老人に出会った。
ボンジイはホウオウの伝説に纏わる逸話を調べており、以前ポケモンセンターで調べていた本の著者でもあった。ボンジイはホウオウの羽に反応し、シンジとサトシを虹の勇者と呼んだ。
ボンジイによると、サトシたちがエンテイ、スイクン、ライコウに出会えたのは、彼らが虹色の羽に相応しい人物か見定めていたのだという。それと同時に、もう一つ一行を見守っている存在もいるのだと言った。
そのポケモンの名はマーシャドー。マーシャドーは影より導く者と言われており、人前に姿を現すことはない。しかし、万が一道を踏み外してしまった虹の勇者がいた場合、その者を正しい道へと導く重要な存在であるとも言っていた。
サトシたちにもその存在は覚えがある。以前感じたのはマーシャドーの気配で間違いないだろう。サトシたちの見たと言われる夢も、マーシャドーの仕業であると思われる。
その後、サトシたちは虹色の羽が何かに反応するのを感じ取り出す。そしてサトシとシンジは、一緒にそれを山の頂上へとかざす。そこに虹の導きが開かれ、最後の目的地を指し示していた。サトシたちは興奮し、急いで向かおうと走り出す。もうすぐ伝説のポケモンホウオウに会えるとなれば、トレーナーなら間違いなく黙ってはいられないだろう。
そして一行はライゼン山脈、その中のホウオウが住むと言われるテンセイ山へと辿り着く。しかしそこには先客がいたのだった。
「!?サトシ危ない!」
「っ!?」
サトシはシンジの呼びかけに反応し、間一髪急襲を回避する。そこにいたのはガオガエン。そしてその奥から姿を現したのは因縁の相手、クロスだ。
「クロス……」
「ホウオウに会うんだって?今すぐ虹色の羽を渡せ。」
「誰がお前なんかに!」
マコトの穢れた者が触れれば虹色の羽は色を失う、という忠告にも耳を貸さず、クロスは虹色の羽を渡せという一点張りであった。
「やっぱりお前には負けるわけにはいかない!」
その時、サトシたちの影から一匹のポケモンが姿を現す。小柄で黒く染まったその体は間違いなく影より導くもの、マーシャドーであった。マーシャドーはあくまで見守るつもりだとボンジイはいい、彼らの行く末を見守ることにした。
「……リザード!君に決めた!」
サトシはそう言ってリザードを繰り出す。リザードも目の前のクロスを見て、今度こそはと覚悟の表情を浮かべる。だが、クロスから放たれた言葉は意外なものであった。
「お前たち、2人ともホウオウに選ばれたんだろ?だったら2人でかかってこい。まとめて相手にしてやる。」
「……本気なんだね。」
「俺はいつだって本気さ。」
シンジの言葉に、自分の発言には偽り無しという覚悟を見せる。それと同時に、ホウオウに選ばれるのは俺だと宣言する。ならば彼の覚悟に従い、シンジもバトルの準備をした。
「お願い!イーブイ!」
『イブイ!』
シンジの言葉に従い、イーブイは前に出る。リザードとのタッグは初めてだが、トレーナー同士が互いに信頼しているため何も心配することはない。
「ガオガエン!かえんほうしゃ!」
「突っ込め!リザード!」
リザードはかえんほうしゃを回避し、ガオガエンへと接近する。その後、サトシはきりさく攻撃を指示し、その攻撃はガオガエンを捉えてダメージを与えることに成功する。あきらかに以前の敗北した時とは違い的確な判断であった。
「くっ!ルガルガン!ブレイククロー!」
ルガルガンのブレイククローがイーブイ目掛けて迫る。だが、イーブイも簡単にその攻撃を受けるはずがなかった。
「まもる!」
イーブイはまもるで確実にブレイククローを防ぐ。弾かれ態勢を崩したルガルガンを、イーブイの攻撃が捉えた。
「スピードスター!」
その攻撃は確実にルガルガンに命中し、ルガルガンはダメージを受ける。だがそれでもルガルガンへのダメージは少なく、まだまだ平気と言った様子だ
「ガオガエン!じごくづき!」
ガオガエンのじごくづきがリザードを襲う。だがリザードは軽やかにガオガエンのラッシュを回避していく。
「きりさくだ!」
ガオガエンのじごくづきとリザードのきりさくがぶつかる。互いの力が拮抗するが、ガオガエンの手が緩むことはない。
「かえんほうしゃ!」
ガオガエンがかえんほうしゃで追撃を仕掛ける。リザードンは防戦一方であった。だが、その炎はリザードの内に秘める炎を更に燃え上がらせ、意外な結果へと繋がった。
かえんほうしゃの中、リザードはまた別の光に包み込まれる。見覚えのあるその青白い光は、徐々にリザードと共に大きくなり、かえんほうしゃを弾いて解放したのだった。
『リザァー!』
そこにいたのはさらに大きく、力強く成長したリザードの姿、リザードンであった。クロスはその姿を見て驚くが、弱い奴は弱いままだと吐き捨て攻撃を続けた。
「ストーンエッジだ!」
地面を殴り、ルガルガンはストーンエッジでリザードンへと攻撃を仕掛ける。ほのお・ひこうタイプのリザードンにいわタイプの技はかなり有効だ。そんなリザードンをまもるため、一匹の小さなポケモンが壁となって立ちはだかった。
そのポケモンはイーブイだ。まもるによってリザードンをストーンエッジから守ったのだ。
「助かったぜシンジ!イーブイ!」
助けてくれたシンジとイーブイに感謝するサトシ。そんなサトシにシンジはあることを伝えた。
「サトシ。バトルが長引けば明らかにこっちが不利だ。僕がサポートする。チャンスがきたら、一気に蹴りをつけよう!」
サトシはシンジの考えに賛同し、静かに頷く。
「ほのおのキバ!」
ほのおのキバで攻撃を仕掛けるガオガエン。しかし、リザードンは寸前のところで回避する。飛べるようになり機動力の増したリザードンに追いつくのは至難の業であろう。
「ガオガエン!奴を引きずりおろせ!ルガルガンはブレイククロー!」
ガオガエンはリザードンへと飛びつき、ルガルガンはブレイククローでリザードンに集中攻撃する。だがこれはタッグ戦。相手は一人ではない。
「イーブイ!シャドーボールで援護だ!」
イーブイによるシャドーボールがルガルガンに命中し妨害に成功する。一方ガオガエンはリザードンにしがみつき引きずりおろそうと力を込める。だが、リザードンは大人しくやられることはなかった。
「ちきゅうなげだ!」
リザードンはしがみついたガオガエンの腕をつかみ、ちきゅうなげで地上に叩き落とす。そのダメージはハッキリと分かるもので、ガオガエンもダメージから腹部を押さえていた。
「くっ!かえんほうしゃ!」
「リザードン!かえんほうしゃ!」
互いのかえんほうしゃがぶつかる。ガオガエンはダメージが溜まっており、先ほどの勢いが弱くなっている。一方リザードンは、進化したことにより高まった力を最大限放ちガオガエンのかえんほうしゃを打ち破る。ガオガエンはその一撃により倒れ、戦闘不能となったのだった。
悔しそうな表情を浮かべたクロスは膝をつき、ガオガエンをボールへと戻す。ルガルガンもダメージは溜まっており、クロスの精神的なダメージもあってこれ以上戦闘を続けられそうな状況ではない。
それを確認したシンジはサトシに呼びかける。サトシもシンジの呼びかけに頷き、2人は同時に歩き出して虹色の羽の導きに従い最終目的地へと向かう。だが、その時にクロスが口を開く。
「……俺もホウオウを見た!」
「っ!?」
「だが、虹色の羽は貰えなかった!どうしてお前なんだ!なんでお前たちなんだ!」
クロスはシンジとサトシになぜなのだと尋ねる。だがシンジたちがその答えを知るわけはない。サトシはそんなクロスに自分なりの答えを伝える。
「友達になりたいからさ!」
「っ!?」
「ホウオウだけじゃない!全部のポケモンと友達になる!それが俺のバトルだ!なっ?シンジ!」
サトシの言葉にシンジも頷いて答える。
「バトルをすれば、お互いに分かり合える。僕たちはその中で全てのポケモンと友達になりたい。それが僕たちだから。」
二人の言葉を聞いたクロスは、やはり間違っていると思いシンジを突き飛ばす。シンジも咄嗟の事に反応できず無抵抗で飛ばされ、クロスはサトシから虹色の羽を奪った。
それを目的地であるホウオウの降り立つ場所へと持っていく。
「いかん!」
ボンジイがそう口にするも、すでに遅かった。虹色の羽は瞬時に色を失い、クロスはそれをかざした。
「さあこい!ホウオウ!」
虹色の羽は禍々しいオーラを放ち、ホウオウが降り立つことはなかった。その時、マーシャドーが動き出し、クロスをその場から引きずりおろす。
マーシャドーは全てを閉ざし、全てを正す。マーシャドーは黒く染まった虹色の羽を手にするが、それを認めないと言ったクロスが攻撃の指示をルガルガンに出した。
だがルガルガンの攻撃が届く前に、マーシャドーの技が決まる。その技はルガルガンにダメージを与えることはなかったが、明らかに様子が変わっていた。
すると驚くべきことに、ルガルガンはクロスに対して攻撃をしたのであった。ルガルガンはクロスに信頼を置いているため信じられる光景ではなかった。ボンジイが言うには、マーシャドーがポケモンたちと人間を引き離そうとしているそうだ。
マーシャドーはルガルガンだけでなく、先ほどの技を周囲にまき散らした。それらを受けたポケモンたちの様子が次々と変化していき、サトシたちを襲った。
「くっ!まずい!みんな操られている!」
「一体どうすれば!」
シンジとサトシはどう対抗すればいいのか悩む。その時、ボンジイがこの解決策をサトシたちに与えた。
「こうなったらマーシャドーから虹色の羽を取り返すしかない!」
「虹色の羽を?」
「うむ。こうなってしまってはホウオウは現れないだろう。マーシャドーはあの羽から力を得ている。ならば彼から羽を取り戻すには、虹の勇者であるおぬし達以外にいないだろう。」
ボンジイの話を聞き、サトシとシンジは互いに頷きマーシャドーから虹色の羽を取り返すことを決意する。
「だったら僕たちは2人の援護だ!」
「分かった!」
ソウジとマコトが援護をしてくれると言った。ならばあとは動くのみだと、みんなボンジイについて行く。
そしてシンジとサトシはマーシャドーの元へと向かう。ポケモンたちによる様々な妨害が行われるが、ルカリオやポッチャマ、リザードンの攻撃により道が開かれる。
そんな彼らの前に、ルガルガンが立ちはだかった。ルガルガンはストーンエッジでサトシたちに攻撃しようとするが、それをクロスが飛びかかり止めた。
「コイツは俺の相手だ!早くいけ!」
クロスの覚悟にシンジとサトシは頷き先に行く。そして遂にマーシャドーの前まで辿り着いた。
「マーシャドー!羽を返してくれ!」
「僕たちは君と争う気はない!」
しかしマーシャドーは聞く耳を持とうとしない。マーシャドーはそんなサトシたちに対し容赦ない攻撃を仕掛ける。
「っ!?イーブイ!まもる!」
『ブイブイ!』
マーシャドーは連続でシャドーボールを放った。その攻撃をイーブイはピカチュウの前に立ちまもるで防ぐ。だが、そのまもるにもやはり限界が来てしまう。
「アイアンテールで打ち返せ!」
『ピッカッ!』
イーブイのまもるが破られる前に、ピカチュウはアイアンテールでシャドーボールを打ち返す。射撃でダメだと踏んだのか、シャドーボールを中止したマーシャドーが近接戦を仕掛けてくる。ピカチュウはそんなマーシャドーにアイアンテールで対抗する。
拮抗状態だが、その状態を破るようにイーブイの攻撃は阻んだのだった。
「シャドーボール!」
シャドーボールでマーシャドーをピカチュウから引きはがす。そして正面に立つマーシャドーに2人で対峙する。
「マーシャドー。間違いなく強い。」
「ああ。だけどそれでも!」
『2人で力を合わせれば!』
シンジとサトシは2人で呼吸を合わせる。マーシャドーはそんな2人に全力を出したのか、形態を変える。マーシャドーの体が緑色に変色。彼の闘志のあらわれであるが、彼の全力が解放された。
マーシャドーの連続パンチにより強力な攻撃が繰り出され全力のマークが刻まれる。そんな彼に対抗するため、イーブイとピカチュウは力を合わせ同時に突撃する。マーシャドーは最後に全力の飛び蹴りで対抗する。
ピカチュウとイーブイは必死にマーシャドーに抵抗する。だが、彼の力が余りにも強すぎ次第に力の差が現れ爆発し弾かれた。その衝撃はすさまじく、周囲にすら影響を及ぼすものであった。
『うわあ!?』
サトシとシンジはその衝撃によって一緒に吹き飛ばされる。
爆風が収まると、そこには傷だらけのピカチュウとイーブイの姿があった。
「イーブイ!」
「ピカチュウ!」
シンジとサトシは慌てて駆け寄る。どちらも息はしているが、これ以上の戦闘は難しい。それどころかマーシャドーの強力な一撃で立つことすらできない。
そんなサトシたちを、ポケモンたちはゆっくりと歩み寄り追い詰める。サトシとシンジは必死にパートナーを抱え逃げるが、ここは山の頂上。すぐに崖に追い詰められ逃げ道を失う。
だがパートナーを必死に守りたいため、なんとかしてでも逃げようとする。しかしポケモンたちの攻撃により技僅かな逃げ道すら絶たれてしまった。それだけならまだいい。ポケモンたちの攻撃がシンジとサトシを捉えてしまったのだ。2人はパートナーを守るために自らの体を盾にして守った。
2人が心配になった仲間たちは近づこうとするが、それすらもポケモンたちが許すことはなかった。
パートナー同様、サトシとシンジもボロボロだ。体を這いずってでも近づこうとし、パートナーに手を伸ばす。このままではマズいと感じた2人は、懐からパートナーのモンスターボールをとる。
「ピカチュウ……これにはいれ……」
「イーブイも……お願い……」
モンスターボールをパートナーの前に転がす。
「入るのが嫌いなのは分かってる。でも、これに入ればお前たちは助かるかもしれないんだ!」
「君たちだけでも助かる道があるなら、僕たちはその道を選ぶ……。」
サトシとシンジはそこで立ち上がり、ポケモンたちへと振り返る。
「お前たち……俺を、俺たちを誰だと思っているんだ……!」
「僕はマサラタウンのシンジ!」
「俺はマサラタウンのサトシ!」
『世界一のポケモンマスターになるんだ!こんなことには負けない!』
シンジとサトシのその言葉と同時に、ポケモンたちの技が放たれる。目の前で自分のパートナーがやられてしまう。そんなことを黙ってみていることは出来なかった。イーブイとピカチュウは彼らの前にでて必死に彼らを守ろうとする。
シンジとサトシはそんな彼らの行動に気付き、彼らを庇ってポケモンたちの攻撃を受ける。
「お、お前たち……」
「ど、どうして……」
サトシとシンジがなぜモンスターボールに入ってくれないのかと疑問に思い尋ねる。するとピカチュウとイーブイは同時に彼らへの思いを告げた。
『ずっと……ずっと一緒に……いたいから……』
「!?ピカチュウ……」
「!?イーブイ……」
シンジとサトシは目を見開く。そして覚悟を決め、モンスターボールを手に取った。そんな彼らを、ポケモンたちの攻撃が容赦なく襲った。
ピカチュウとイーブイをモンスターボールにいれ、2人はパートナーたちを庇いポケモンたちの攻撃を受ける。その衝撃で2人は吹き飛ばされ、その場にモンスターボールが落ちる。
その時、すぐにピカチュウとイーブイはモンスターボールから出てきた。だが、彼らの目に映ったのは、信じられない光景だった。
『ピカピ!?』
『イブ!?』
そこには体が徐々に薄くなり、消えていってしまう2人の姿であった。ピカチュウとイーブイは彼らの帽子を持ち近付き被せようとするが、その時には2人は粒子となり消えていく。その時、ピカチュウとイーブイには2人のかすかな声が聞こえた。
『キミに出会えて……良かった……』
それと同時に彼らは粒子となって完全にいなくなる。そしてマーシャドーの持つ虹色の羽も消滅する。ピカチュウは帽子を手に取りサトシの存在がないか確認するが、結果は変わらない。イーブイも涙を流して信じたくないその光景を悲しむ。
ピカチュウは悲しみのあまり、強力な電撃を繰り出す。その衝撃はこの場にいるポケモンたちを巻き込み、彼らを正気に戻す。だが、サトシたちが戻ってくることはなかった。
ピカチュウとイーブイの叫びが、ライゼン山脈に響き渡った。
サトシとシンジは目を覚ます。目の前にはピカチュウとイーブイが泣いている姿があった。
ピカチュウとイーブイの言葉が聞こえる。サトシとシンジはその言葉に従い走る。
「俺たち、こうやって一緒に走ったよな!」
「うん!僕たちはいつだって一緒だった!」
彼らはただひたすらに走る。映る光景は花畑、空、それ以外変わりない。だが、それでも走らなきゃいけないと思ったのだ。
「もう二度と離さないって決めたんだ!」
「もう二度と忘れないって決めたんだ!」
2人は走る。すると空に2つの粒子が集い、それがやがてハッキリとした形を映し出す。2人にはそれがなんなのかすぐに分かった。だってそれは2人にとって…………
「ピカチュウ!」
『ピカピ!』
「イーブイ!」
『イブイ!』
2人にとって、決して忘れることのできない宝物なのだから。
気が付くとサトシとシンジは、自分のパートナーと共に現実の世界へと戻っていた。この場にいるすべてのものが信じられない光景を見ていると口を開けている。死んだと思われたものが粒子となり集まり、またこの世に姿をあらわしたのだから。
サトシとピカチュウ、シンジとイーブイはお互いに確かにここにいると確かめ合う。確かに2人はここにいる。確かに僕たちはここにいる。その存在が、決して偽りのものではないと確かめる事ができた。
「サトシ!」
「シンジ!」
仲間たちも戻ってきたサトシとシンジを笑顔で迎える。
「マコト!」
「ソウジ!」
サトシとシンジも2人の名を口にした。その時、サトシとシンジの元にある物が現れた。
それを手にしたサトシとシンジは、それから暖かさを感じた。それは紛れもなく虹色の羽。消えたと思われた虹色の羽も、虹の勇者の元へと再び現れたのだ。
その光景を見たボンジイは、ホウオウの伝説を口にして2人に言った。
「行くのじゃ少年たちよ!」
2人はボンジイの言葉に頷き、羽をホウオウの待つ場所、虹の導きの場所へと向かう。
「シンジ!」
「サトシ!」
2人は頷き、一緒に虹色の羽を翳した。すると先ほどの禍々しい光とは対照的に、神々しい光と共に虹が空に渡る。まるで何かを導くように。
暫くすると、その虹の先から伝説のポケモン、ホウオウが姿をあらわす。それは紛れもなく旅に出た時見たあの時のポケモンそのものであった。
ホウオウが鱗粉のような不思議な力を振りまく。するとこの場にいる全てのポケモンの傷がたちまちに治る。伝説のポケモン、ホウオウの力を目の当たりにする一行。それを見たシンジとサトシは覚悟を決め、パートナーと顔を合わせて共に前に出る。
『ホウオウ!』
ホウオウは静かにサトシとシンジの目を見る。
「俺たちと!」
「僕たちと!」
『バトルしようぜ!』
ホウオウは頷く。そしてここに、選ばれし2人の勇者と、伝説に語り継がれしポケモンとの戦いの火蓋が、切って落とされたのだった。
「ピカチュウ!」
「イーブイ!」
『キミにきめた!』
『ピカチュウ!』
『イーブイ!』
サトシとシンジは、ボロボロになったバートナーを連れ、ポケモンセンターを立ち寄る。
『お願いします!』
「あら、バトルしたのね。相手は誰?」
サトシとシンジは、ジョーイの質問に対し笑顔でそのポケモンの名を口にした。
『ホウオウです!』
「へぇ~。え?」
2人はボロボロになりながらも、どこか幸せそうな笑みを浮かべていた。
ポケモン達を回復させた後、サトシたちはクロスと別れた。今までのギスギスした雰囲気は一切なく、クロスも考えを改めた。そして次会うまで、絶対に誰にも負けるなとサトシに告げる。サトシももちろんだと強く答えた。その後、シンジとも再会したらバトルをしようと約束した。シンジも絶対に負けないよ、と答える。その2人の姿は、旅に出た時よりも大きく、逞しく成長していた。
翌日、サトシとシンジも、ソウジとマコトと別れることとなった。ソウジはファイヤー、フリーザー、サンダーの伝説を調べるために旅を続ける。
マコトは一度家に帰ると言う。口うるさく言われるのが嫌で飛び出したマコトだが、ふと母親に会いたくなったのだとか。
サトシは目指せポケモンマスター。シンジもサトシと共に旅をして成長できることを願う。その時、ソウジが旅のどこかでまた出会えたら、と言うと、全員が顔を合わせて同時に口を開いた。
『バトルしようぜ!』
全員の気持ちは同じで、それはポケモンたちも同じだ。トレーナーと共に、パートナーたちも笑いあう。仲間との約束を交わし、4人はそれぞれの道を進むのであった。
「シンジ、これからどこに行こうか。」
「僕たちの行く場所は決まってるでしょ?」
「……ああ!そうだな!」
『風の向くまま!夢に向かって!』
「行こう!ピカチュウ!」
『ピカピ!』
「行こう!イーブイ!」
『イブイ!』
ポケットモンスター。縮めてポケモン。この世界の不思議な不思議な生き物。空に、海に、森に、町に、この世界のいたるところでその姿を確認できる。
人とポケモンは調和し、仲良く暮らしていた。
そしてこの2人の少年、マサラタウンのサトシとシンジ。相棒のピカチュウ、イーブイと共にポケモンマスターを目指し修行の旅を続けている。
ポケモンの数だけの夢があり、ポケモンの数だけの冒険が待っている。
2人の歩む物語は、まだまだこれからなのだ!
to be continued…
いかがでしたでしょうか?劇場版と大きく変えているつもりはありませんが、キャラの感情とか上手く演出できてればいいのですが。映像と文章ではやはり表現の仕方が違うので難しいですね。まあそれらを考えるのも楽しみの一つなのですが。
では昨日がイーブイの日でもあったので早速ピカブイの報告をば!(因みに今日はいい夫婦の日)
とりあえずヌシはストーリークリアしてポケモン図鑑完成、イーブイの色違いゲット、ブイズ3種の厳選まではやりました。残念ながら第二世代以降のブイズが出ないので4匹でバトルするしかありません。対戦潜ったら辛そう……。
従来通りピカチュウ版もしなくては図鑑埋めれなかったので兄貴から拝借してやりました。ただ化石復元までめんどくさかったので、ヤマブキとセキチクジムだけ飛ばしてグレンまで行きました。もしかしたら秘伝技が存在しないのでニビ以外飛ばせる可能性あります。また別のデータでイーブイのみの縛りをやるつもりなのでその時に確認してみますが。(とは言っても1週目もイーブイだけみたいなものでしたが……)
因みにヌシのイーブイは女の子で、耳にピンクの花飾り、胸にピンクのキュートリボン、尻尾に白の花飾りと、シンプルかつ可愛らしいコーデにしてます!髪は基本的に通常が好みなので変えていません。他の髪型も可愛かったけど、イーブイにもパッツンほしかったなあ……。
それにやっぱり自分のイーブイが一番可愛く感じるよね!突っついたら嫌がるところとか、呆れてジト目で見るところとかもう可愛くて顔がにやけちゃうよ。更にいいのは仲が最大まで良くなると嫌がることが一切なくなり、凄く愛で甲斐のある素直な子になるところだよ。嫌がるところもいいけど、じゃれてくるところも好きで、特に(ry
これいじょう は じがかすれて よめない!