ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

208 / 223
リーリエinカントーできました!後付け設定だのなんだのはよくあることなので気にしたら負けです。

そこそこの長さにはなりました。ざっと17,000字程。

途中自分で妄想、というか所々アレンジ設定もありますがご了承ください。そうでもしないと完結しなさそうだったので。

では1周年記念のリーリエの冒険をご堪能下さいませ。


掲載一周年記念特別編 ~リーリエ IN カントー~

『リーリエ!』

 

『!?……来てくれたのですね、シンジさん。』

 

『本当に……行っちゃうんだね……』

 

『はい。ウツロイドさんの神経毒に侵されてしまったお母様は、今の医学では完全に治すことは困難だそうです。ですが、カントーには一度ポケモンさんと融合してしまっても、元通りに戻ることができた人がいるそうです。』

 

『カントーに……』

 

『私はその人に会って、お母様を必ず治して見せます。シンジさんのように……前に進みたいから……』

 

『……そっか。』

 

『……シンジさん……わたし……私!っ!?』

 

『……ごめんね。不意打ちみたいなことして。でも、どうしても気持ちを抑えられなかったから。……大好きだよ。』

 

『!?……はい!私もシンジさんが大好きです!』

 

『これ……受け取って。』

 

『シンジさん……これって……。』

 

『ポケモンのタマゴだよ。リーリエの最初のパートナーになってくれるポケモン。きっと、お似合いのパートナーになると思うよ。』

 

『シンジさん……私のためにこんなになって……ありがとうございます!大切にしますから!あなたから貰った思い出も……勇気も……それからこの子も!』

 

『うん。』

 

『私からも……受け取ってください。私からの餞別です。』

 

『これは……ピッピ人形?』

 

『少しくたびれていますが、私が使っていたものです。過去の私との決別の意味もありますが……シンジさんには、これを受け取ってほしいと思って。いつまでも、私の尊敬する……大好きなあなたでいて欲しいから。』

 

『リーリエ……。うん。僕もずっと大事にするよ。必ず……』

 

『ありがとうございます。あっ、もうそろそろ行かないと。』

 

『……リーリエ!』

 

『はい?なんでしょうか?』

 

『きっと……いつか……いつか一緒に旅をしよう!僕と2人で!』

 

『っ!?はい!いつか……必ず!』

 

『……行ってらっしゃい!』

 

『はい!行ってきます!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

「どうしたの?リーリエ?」

「お、お母様?いえ、なんでもありません。」

「なんでもないって顔には見えないけど。あなたは顔に出やすいからね。もうすぐカントー地方に着くのだし、そのままじゃ困るわよ?」

「大丈夫です、お母様。お母様は必ず、私が助けますから。」

 

私はウツロイドさんの神経毒に侵されてしまったお母様を助けるため、カントー地方へと船に乗って向かっています。今は自室でゆっくりとカントー地方に着くまで、ベッドで寝ているお母様とお話ししています。無理に動かさなければ、会話ぐらいは大丈夫だとお医者様も言っていました。

 

「……シンジ君の事、考えていたのね?」

「え!?ど、どどどどうしてそれを!?///」

「さっきも言ったでしょ?あなたは顔に出やすいって。彼と何かあったかくらい、私にも分かるわ。それに……」

 

ピンポイントに捉えられた指摘に、私は思わず驚いてしまいました。そしてお母様はそんな私が持っているタマゴに手を伸ばし、優しく撫でるように触れました。

 

「私も、早くこの子の顔が見たいのよ。」

「お母様……。」

「だって……なんだかあなたとシンジ君の子みたいじゃない?」

「……!?///ななななな何を言っているのですか!?私とシンジさんはそんな関係じゃ!?///」

「あら?あなたは彼の事を好きなのだと思ってたのだけれど、違ったかしら?」

「///そ、それは好きですけど///そ、それとこれとは話が違います!///」

 

お母様は微笑みながら私にそんなことを言ってきました。お母様ってこんなに意地悪な方でしたっけ。私が幼いころの記憶しかないので正直昔のお母様のことはあまり覚えがありません。でも……お母様とこんな話ができるのが……夢みたいで嬉しいです。シンジさんには感謝してもしきれません。

 

お医者様が言うには、お母様の体調は元に戻りつつはあるそうです。ですが、現在の医学では完全に治ることは極めて困難だそうです。命に別状はないまでも、このまま放置しておけばまた以前のように暴走してしまう可能性もある。それに、今のままでは自力で歩くこと自体が難しいのだそうです。筋力もはるかに衰えてしまい、このままでは最悪寝たきり状態が続いてしまうとも言われました。そのため、私はカントー地方でポケモンと融合しても元に戻ったと言われる人物の元へと行く必要がありました。

 

シンジさんに頼りっぱなしだった私。不安な気持ちは勿論ありますが……それでも……シンジさんから頂いた勇気が私の心の中にあります。それに……シンジさんから頂いた大切な命も……。

 

私はそう思いながら、抱きしめているポケモンさんのタマゴを優しく撫でました。そしてその時、船内放送が私たちの部屋にも流れてきました。

 

『まもなくカントー地方に到着いたします。降りられる方は、準備をしてください。』

 

どうやらカントー地方は目の前のようです。私はそう思い立ち上がって、自分のリュックサックの中にポケモンさんのタマゴをしまいました。

 

「お母様、折角ですので外に出てみませんか?カントーに降りる前に、一度外の空気を吸っておきましょう。」

「そうね。じゃあお願いするわ。」

 

私はお母様の体をゆっくりと起こし、車椅子に乗せました。一連の作業は力のいる作業ではありますが、今のお母様は私と同じくらいか、もしくは軽いくらいには体重が落ちてしまっているため、私でも持ち上げることができます。

 

私はお母様を連れ、部屋を出て甲板へと向かいました。カントー地方へと向かっている人は多いようで、甲板には既に大勢の人で賑わっていました。

 

「あっ!見えてきました!あれがカントー地方です!」

 

私は見えてきたカントー地方を指さしそう言いました。4つの島で構成されたアローラ地方とは違い、カントー地方は遠くから見ても分かるくらい大きいです。ジョウト地方と隣接しているため、他の地方と比べても大きく見えるのかもしれません。

 

「カントー地方にはアローラ地方とは違ったポケモンが一杯いるわよ。」

「はい、シンジさんから話は聞いてます。」

 

アローラ地方のライチュウさんやコラッタさん、ニャースさんにナッシーさん。それらのポケモンさんも、カントー地方とアローラ地方では全く異なるのだそうです。アローラ地方で出会うポケモンさんは一般にリージョンフォームと呼ばれていますが、カントー地方に生息するそれらのポケモンさんは、あくまで通常の姿なのだそうです。

 

「……あなたはどんな姿で産まれてくるのでしょうか。」

 

私はリュックサックの中で眠っている私のパートナーに、そう語りかけました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遂に来ました……カントー地方!」

 

私はお母様の乗った車椅子を引っ張り、遂にカントー地方へと足を踏み入れました。常夏のアローラとは違い、カントーは涼しいどころか、アローラに慣れ切った私にとっては寒すぎるくらいでした。

 

いま私たちが辿り着いたのは、カントー最大の港町、クチバシティです。港町という事もあり、大勢の人で賑わっています。カントー地方に来たら、殆どの人が最初に足を踏み入れることになるであろう町としても有名なところです。

 

「カントーに着いたわけだけど、先ずはどうするの?」

「はい、ククイ博士がオーキド博士に連絡をして手配してくださると聞いたのですが……。」

 

私がカントーに旅立つと言った際、ククイ博士はポケモン研究の第一人者、オーキド博士に取り合って手を貸してくださるように頼んでみると言ってくださいました。シンジさんは勿論ですが、ククイ博士にもお世話になりっぱなしで、私はその度に色んな人の手を借りて生きているのだと実感されます。

 

「リーリエさんとルザミーネさんですね?」

 

私がどうしようか戸惑っていると、大きな長袖の白衣を着ている男性に声を掛けられました。ククイ博士の着ていたものとは全く違いますが、見た感じでは恐らくオーキド博士の関係者の方でしょう。

 

「は、はい。」

「オーキド博士の使いの者です。こちらへどうぞ。」

 

私たちはその方に案内され、その方が乗ってきたというヘリコプターに乗り込みオーキド研究所と呼ばれる場所へと向かいました。車椅子に乗ったお母様の事も考慮して下さり、ヘリコプターに乗せるのを手伝って下さりました。

 

私たちはオーキド研究所へと辿り着き、広い庭に着陸してそこに降りました。そこには多くのポケモンさんたちが元気な姿で笑顔を見せて走り回っていました。

 

オーキド研究所がある町はカントー地方の中でもかなり小さな町、マサラタウンです。このマサラタウンは始まりの町、とも言われていて、このオーキド研究所で旅に出るトレーナーが最初のパートナーをオーキド博士から頂くことができるのだそうです。そしてここは…………あのシンジさんの出身地でもあります。

 

「さあ、こちらへどうぞ。」

 

オーキド博士の助手だと名乗る方に案内され、私たちは施設の中へと入っていきました。オーキド博士が待っている部屋まで案内されその部屋の扉が開くと、そこにはあの有名なオーキド博士の姿が私の目に映りました。

 

「君がリーリエ君じゃな?」

「は、はい!オーキド博士……ですよね?」

「如何にも!ワシがポケモン博士のオーキド・ユキナリじゃよ!それと、あなたがリーリエ君の母親のルザミーネさんじゃな?」

「はい、そうです。お会いできて光栄です、オーキド博士。」

 

私は初めて会うオーキド博士にどう対応していいのか困惑してしまいました。多くの人たちから尊敬されているポケモン研究の第一人者であり、あのククイ博士も最も尊敬する人物の一人と称するほどの方です。オーキド博士の名前を知らない人は恐らくいないでしょう。そんな方に初めて会えば、緊張してしまうのも仕方のない事だと思います。

 

ですが、お母様は緊張している様子は一切ありません。以前までエーテル財団の代表を務めていた方なので、こういった状況は慣れているのかもしれません。……お兄様はお母様の後継を務めることができているのでしょうか。少し心配です。

 

「長旅で疲れているじゃろ。今日は一先ずここで休むといい。研究所の部屋は自由に使っていいからの。」

「はい、ありがとうございます。」

 

オーキド博士のご厚意に甘え私たちは一度休むことにしました。外を見れば既に薄暗く、日が落ちている時間帯でした。アローラと違いカントーの夜は早いみたいです。

 

オーキド博士の用意してくださったベッドは温かく、不思議と安心感のある心地よいもので、ゆっくりと休むことができました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カントーについて翌日。私は再びオーキド博士と面会し、今後の事について話し合う事にしました。お母様は体に無理がないように、部屋で休んでいただいているのでこの場にはいません。

 

「さてと、君たちの事はシンジから聞いておるよ。」

「シンジさんから?」

 

オーキド博士は私もよく知る人の名前を口にしました。オーキド博士はシンジさんから聞いたことを全て話してくださいました。アローラであった旅の事はもちろん、私たちの訪れた理由まで聞いていたようです。

 

アローラから離れたこの地でもシンジさんのお世話になるとは思っていませんでしたが、それでも私はシンジさんが私の事をそこまで思ってくれていると考えるとすごく嬉しかったです。

 

「リーリエ君の会いたいと言っている人物はマサキという1人の研究家じゃよ。」

「マサキさん……ですか?」

 

マサキさんと呼ばれる方が私の探している方だと言います。ですが、オーキド博士が言うにはマサキさんは研究家としては優秀ですが、少々性格に難があるのだそうです。理由は会ってみれば分かる、とのことですが、現状マサキさんしか可能性が無いので、彼を頼ることにします。

 

マサキさんは“みさきのこや”と呼ばれる場所にいるそうです。ですがそこはマサラタウンからはかなり距離があり、手持ちのポケモンがいない状態で行くには危険だそうです。何故なら歩いていく場合、その道中に野生のポケモンが多く生息しているトキワの森やオツキミやまを通らなければならないからです。

 

私がどうすればいいかと尋ねたところ、助手の方が私を車で送ってくださるのだそうです。何度も世話になって悪い気もしますが、折角の好意ですしほかに手段が無いのでここは送っていただくことにしました。

 

早速私は助手の方の車に乗せていただき、みさきのこやに向かう事にしました。マサラタウンを出てトキワシティ、ニビシティ、ハナダシティを超えた場所にそのみさきのこやはありました。そこには小さな小屋があり、その小屋は失礼かもしれませんがククイ博士の研究所と同じくらいボロボロの家でした。

 

私は助手の方には車で待っていただくことにして、その小屋の前に立ちました。人の気配がしない不思議な感じがしたので、もしかしたら留守の可能性もあります。私はノックをするため扉に手をかけようとすると、自然と扉が開いてしまいました。戸締りをしていないのは少々物騒な気がしますが、私は控えめに声を出した中に人がいないかを確認します。

 

「あの~、誰かいませんか~?」

 

扉をそっと開けてみると、電気は点いているものの人がいる気配は全くありませんでした。部屋の中は散乱状態で、泥棒が入ったのではと錯覚させられる光景でした。ククイ博士から聞いた話では、研究に没頭している人は部屋がどうしても散らかってしまうものもいるのだそうです。実際ククイ博士にもそういうところはありました。

 

私は恐る恐る部屋の中に入りました。部屋の外装から想像してはいましたが、部屋の内部も当然狭く、散らかっているためとても人が住めるものとは正直思えません。

 

「ん?誰かそこにいるんか?」

「ひゃい!?」

 

私が室内を見渡していると、どこからともなく男性の声が聞こえてきました。突然の事で驚いた私ですが、改めて確認してみても周りには人の影は全く確認できません。

 

「こっちやこっち!下や!下見てみ!」

 

その聞こえる声に従い、私は下を見ることにしました。するとそこには、一匹のポケモンさんがいました。

 

「コラッタさん?」

 

そのポケモンさんは間違いなくカントー地方のコラッタさんでした。ですがコラッタさんが人の言葉を話すはずは……。

 

「誰がコラッタやねん!ワイは人間や!」

「……ひゃ!?コラッタさんが喋った!?」

「だから人間や言うてるやろが!正真正銘の人間や!」

「いや、そう言われましても……」

 

私の目の前にいるのは誰がどう見てもコラッタさんです。にわかには信じがたいことです。ですが、コラッタさんが喋るなんてことを聞いたことがないのもまた事実です。もしかしたら、この人……コラッタさんが言っていることは本当の事だという可能性も……あるかもしれません。

 

私が心の中で状況を整理していると、コラッタさんが慌てた様子で声を掛けてきました。

 

「せや!あんたワイがあの装置に入ったらそこのボタンを押してくれへんか?」

「ボタンですか?」

「ほな、今から装置に入るから頼んだで!」

 

コラッタさんはそう言ってすぐに部屋の奥においてあるカプセル型の装置の中へと入りました。その装置は二つあり、コラッタさんが入ったのは向かって右側の装置でした。左側の装置は、既に扉が閉まっていて中の様子が見えないようになっていました。

 

未だに困惑している私は、取り敢えず言う通りにしようとコラッタさんが装置に入るのを確認してからボタンを押しました。

 

ボタンを押すのと同時に装置が起動し、扉がゆっくりと閉まっていきました。その後、ドライアイスのような煙が装置から出て、もう一つの装置も同時に起動しました。そしてしばらく待つと、二つの装置の扉が開き片方からコラッタさんが走って出てきました。しかし、そのコラッタさんは先ほどとは違いどこか様子が違いました。

 

コラッタさんは辺りをキョロキョロと見渡し、現在の状況が掴めないでいるようでした。そしてもう片方の装置からは、煙の奥に人影が確認できました。

 

その人影が前に出てくると、その姿は少しずつ明らかになってきました。その人物は正真正銘の男性であり、煙から姿を現した男性は口を開き、私に話しかけてきました。

 

「いやー、助かったわ。ありがとな嬢ちゃん。」

 

その喋り方にはどこか聞き覚えがありました。そうです、先ほどの喋るコラッタさんと同じ声、同じ喋り方です。

 

「あ、あの……もしかしてあなたがマサキさんですか?」

「せやで。なんや嬢ちゃん。ワイに何か用でもあったんか?」

 

色々と聞きたい事はありますが、そのことは取り敢えず後回しにするとしましょう。今はやるべきことを優先すべきです。

 

私はそう思い、今までの経緯をマサキさんに話しました。アローラであった出来事、それとここを訪れた目的を。

 

「なるほど。つまりリーリエちゃんは母親であるルザミーネさんをそのウツロイドっちゅう奴の神経毒から助けたくてここに来た。そう言うことやな?」

「はい。」

 

私の説明を真剣に聞いて下さったマサキさんは、暫く悩む素振りを見せたのち、申し訳なさそうな表情を浮かべながら口を開きました。

 

「態々アローラから訪ねてきて悪いんやけどな。ワイではその症状はどうにもでけへんな。」

「!?そ、そうですか……。」

 

マサキさんの言葉に私はショックを受けた半面、心の中でなんとなくそんな気がしていました。アローラから遠く離れたこのカントーでは、UB自体が全く浸透していません。その上、お母様がかかってしまった神経毒は他に前例はないでしょう。もしかしたら、という期待感はありましたが……。

 

私がショックで途方に暮れていると、マサキさんは『せやけど』と言葉を続けました。

 

「可能性はないわけではないで?」

「ほ、本当ですか!?」

「ただこれにはリーリエちゃん、君の覚悟と勇気を見せる必要があるんや。……きっと辛い道のりになるで?」

 

マサキさんの言葉に私は喉を鳴らしました。マサキさんが言うからにはそれほどの事が待ち受けているのだろうと。

 

ですが私はここで退くわけには行きません。お母様を助けると誓い、覚悟を決めてアローラを出立しました。それに……シンジさんとも約束しましたから。必ず一緒に旅をすると……。私の答えは決まっています。

 

「はい!どんなことがあっても、必ず乗り越えてみせます!」

 

私の覚悟が伝わったのか、マサキさんは私の目をじっと見て微笑み、言葉を続けました。

 

「分かった。じゃあ今からその方法を伝えるで。」

 

そしてマサキさんが口にしたのは、予想を超えていた答えでした。

 

「君のお母さん……ルザミーネさんを助けられる可能性のある唯一の方法は…………」

「方法は?」

「…………伝説のポケモン、ホウオウの持つ虹色の羽や!」

「!?にじいろの……はね……。」

 

その言葉を聞いた私は絶句しました。本で読んだことがありますが、ホウオウさんは滅多なことでは人の前に姿を現さないポケモンさんで、心の正しい者の前にのみ姿を現すと言われるポケモンさんです。

 

「リーリエちゃんも知ってると思うけど、ホウオウは人前に姿を現すことは滅多にあらへん。せやけど、ホウオウに認められ、虹色の羽を手にすることができれば、ルザミーネさんの病も治すことができるかもしれへん。」

 

とはいうものの、マサキさんも詳しい事はよく知らないようです。マサキさんが言うには、ホウオウさんの資料はオーキド研究所に色々と置いてあるそうです。それを読んで調べてみるのが良いのでは、と提案を下さいました。私も本を読むのは好きなので、是非その資料を読んでホウオウさんと虹色の羽について調べてみたいと思いました。

 

「ワイの方でも色々調べてみるさかい、何かあればまたワイのところにきてや。困ったことがあれば力になるで。」

「はい!ありがとうございました!」

 

私はマサキさんにお礼を言い、みさきのこやを後にしました。その後、長い間待っていただいた助手の方の車に乗り、オーキド研究所へと戻りました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、私はホウオウさんについて資料を読んで調べることにしました。とは言え、ただでお世話になるのも悪いので、オーキド博士のお手伝いをしながら日々を過ごすことにしました。

 

研究所にいるポケモンさんのお世話やポケモンさんの健康チェック、もちろん研究についてや初心者トレーナーさんへの簡単なアドバイスなどもしました。当然偉そうなことは言えませんが、今まで溜め込んだ知識は豊富にあるため、それらを活かしたアドバイスであれば私でもできます。それに、ククイ博士のところでも助手を務めていたので経験は充分にあると思っています。

 

それにしても流石はオーキド博士の研究所です。ホウオウさんの事は勿論、他の伝説のポケモンさんの研究資料も数多くありました。これは色々と勉強になります。

 

私はそれから数か月、必死にホウオウさんの事について勉強しました。お母様のお世話をしながらですが、それでも自分の中に知識を集めることができるのはやっていて楽しいので全然苦にはなりませんでした。

 

私が調べて分かったことは色々あります。ホウオウさんは正しい心の持ち主にしか姿を見せない、というのは知っていましたが、その正しい心の持ち主にしか虹色の羽を渡すことはないのだそうです。また、稀に心の正しい持ち主には虹色の羽を渡し、その人物を試す……いわゆる試練を行うこともあるのだそうです。

 

そして、その虹色の羽には様々な効果があり、心の正しい持ち主がその羽を特定の場所でかざすと、その人の前にホウオウさんが姿を現すのだそうです。ですが汚れた者がその虹色の羽に触れると、羽は色を失い、とんでもないことが起きてしまうのだそうです。かつてはそれが原因で、争いが絶えずホウオウさんが力で彼らを押し込めた、とも記されていました。

 

また、カントー地方の隣にあるジョウト地方ではホウオウさんによる伝承があり、とある塔が焼け落ちた際、三匹の名もなきポケモンさんが亡くなってしまったのだそうです。それを悲しんだホウオウさんが彼らを復活させ、新たな命を吹き込んだのだと言われています。

 

そのポケモンさんは、エンテイさん、スイクンさん、ライコウさんと呼ばれ、ジョウトの三聖獣として崇められることもあるのだそうです。

 

それに、虹色の羽にはホウオウさんを呼ぶ以外にも様々な効果があるのだそうです。人の気持ちを抑制する効果、万病を治す効果、更に言い伝えでは死者を蘇らせることもできるのだそうです。それらの効果を聞いただけでもどれだけ凄いものかが伝わってきます。

 

そんなホウオウさんですが、たった一つだけ、ホウオウさんに会うことができると言われる唯一の方法があると資料に書かれていました。それは、ジョウトとカントーの間にある険しい山、シロガネやまを頂上まで登ることだそうです。恐らくマサキさんの言っていた険しい道とはこのことでしょう。ただし、山を登るのはポケモンさんと一緒にでは問題ないそうですが、1人で登らなければならないようです。つまり、私一人で行く必要があるという事です。

 

明らかに簡単な道ではありませんが、覚悟を決めた以上は登るしかありません。今、お母様を助けることができるのは私しかいないのですから。

 

そしてまたそれから数日が経った時でした。あることに変化が起きました。それは……

 

「お、お母様!」

「どうしたの?そんなに慌てて……」

 

私は慌ててお母様の元へと駆け込みました。休んでいるお母様には申し訳ありませんが、この状況では落ち着いていられませんでした。

 

「こ、この子を……シロンを見てください!」

「あら、これは……」

 

私がお母様に見せたもの……それはシンジさんからいただいたポケモンさんのタマゴです。このタマゴは色が白く、コロンコロンと転がるのでシロンと私が名付けましたが、今までもかすかに揺れたりしてまるで返事をしていたり感情を表現していると思わせるようなことは多々ありました。しかし、今では青白く光りいつもよりも揺れが激しくなっています。

 

私がポケモンさんのタマゴを抱いていると、ピキピキッと言う音共にタマゴが割れ始めました。頭から少しずつ割れ始めたタマゴは、次第に光が強くなり、その光が解き放たれた時にはタマゴの姿はありませんでした。そこにあったのは、一匹の真っ白なポケモンさんの姿でした。

 

「この子は……アローラのロコンね。」

「アローラのロコンさん……ですか?」

 

その子紛れもなくアローラのロコンさんでした。アローラのロコンさんは主にラナキラマウンテンの寒い場所に生息しており、個体数も多くないポケモンさんだと記憶しています。

 

少し間をおいてから、ロコンさんは目をゆっくりと開きました。今までタマゴの中にいたため、光に慣れていないのでしょう。ロコンさんが目を開けると、目の前にいる私と目が合いました。

 

「……ふふ、実際に会うのは初めてですね。私はリーリエです。よろしくお願いします。」

『コォン?コォン!』

 

ロコンさんは私の姿を見ると、すぐさま飛びついてきました。顔も舐められたりして少しくすぐったいですが、それよりもやっぱり嬉しいという感情の方が先に出てきます。

 

「この子、多分リーリエの事を親だと思っているのかもしれないわね。」

「え?そうなんですか?」

「多くの生物は産まれた時に初めて見たものを親だと思う習性があるの。それはポケモンももちろん例外じゃないわ。」

「親……親ですか。ロコンさん……ううん、シロン!」

『コォン?』

 

私がシロンと呼んだことに疑問を感じたのか、シロンは不思議そうに首を傾げました。そこで私は、シロンにあることを…………大切なことをお願いしました。

 

「……私の……最初のパートナーになってくれませんか?」

『コォン?』

「私はポケモントレーナーではありません。正直、まだ戦うのは怖いです。ですが、いつまでも守られる側でいるのは嫌なんです。私は……あの人に追いつきたい……一緒に並んでいたいから……。」

 

私がそうシロンに告白すると、シロンは私の顔を舐め、笑顔で答えてくれました。

 

『コォン!』

「い、いいんですか?私がパートナーに……トレーナーになっても?」

 

シロンは力強く頷いてくれました。私の希望を快く受け入れてくれたようです。ちょっとだけシンジさんの気持ちが分かりました。ポケモンさんが……信頼できるパートナーが近くにいるだけで、こんなにも頼もしく思えるのですね。

 

「はい!これからよろしくお願いします!」

『コォン!』

 

こうしてシロンは晴れて私のパートナーとなりました。私一人で行けなかった場所でも、シロンとならどこまでも行ける……そんな気がします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さ、着いたで。ここがシロガネやまや。」

「はい、ありがとうございます。」

 

準備を整え、マサキさんにシロガネやまの麓まで送ってもらった私たち。今日、遂にホウオウさんに会う為にこのシロガネやまを登る決意をしました。

 

空を見上げると、シロガネやまの頂上は全く見えず、果てしない雲が続いているだけでした。こんな山、ラナキラマウンテン以外に見たことがありません。ですが、ここで怖気づくわけには行きません。

 

「気を付けてね、リーリエ。」

「はい!必ずホウオウさんに会って帰ってきますから!」

 

私は見送ってくれるマサキさんとお母様に手を振り、シロガネやまへと足を踏み入れました。

 

(……シンジさん。私に勇気を分けてください。)

 

中は当然薄暗く、不気味さが伝わってきます。ここには私のようにホウオウさんと出会う為に訪れる人もいれば、修行するために山籠もりをする人もいるのだそうです。ですが、ホウオウさんに出会うことができた人は1人もいないそうです。

 

理由は道が険しいだけでなく、道のりが長すぎる、迷子になるなどして意思を折られることが殆どだそうです。なんだかその人たちの気持ちが分かる気がします。それだけ私は困難な道を渡ろうとしているのでしょうが、今の私には怖くはありません。だって……

 

「出てきてください!シロン!」

『コォン!』

 

私がオーキド博士から頂いたモンスターボールを投げると、中からはシロンが元気よく出てきました。シロンはすぐに振り向き、私の元へと飛びついてきました。

 

「正直、私は少し前までは不安で一杯でした。一人で乗り越えられるのか……。でも」

『コォン?』

「今はあなたがいるから不安はありません。全力で乗り越えましょう!」

『コォン!』

 

私の言葉に合わせ、シロンは元気よく返事をしてくれました。やっぱりパートナーがいるだけで、全然気持ちが違ってきます。それと同時に、私も遂にポケモントレーナーになったのだと実感しました。あの人と……シンジさんと同じポケモントレーナーに……。それだけで気が引き締まってきました。

 

しかしその時、なんだか辺りがガサガサと騒がしい気がしました。私はバッグから懐中電灯を取り出し、辺りを照らしてみます。そして懐中電灯を天井に向けると……。

 

『カカッ!』

「!?ゴルバットさん!?」

 

天井にはゴルバットさんが張り付いていました。それも一匹や二匹ではなく、複数体です。私たちが山に入ってきたことで、彼らを目覚めさせてしまったのでしょうか。ゴルバットさんたちは一斉にこっちを向いたため、自然と恐怖を感じました。

 

「と、取り敢えず逃げましょう!」

 

私は一先ずシロンと共に逃げる選択肢を選びました。ゴルバットさんもそれと同時に私たちの方へと飛んできました。ですが山のデコボコ道は足場が悪く、一方ゴルバットさんは空を飛んでいるため、距離は離れるどころか縮まるばかりです。私がどうしようかと焦っているその時……。

 

『コン!コォン!』

 

シロンが振り向き、凍りつく吐息をゴルバットさんたちに放ちました。見た感じあれはこなゆきでした。それを受けたゴルバットさんはすぐさま退散していきました。

 

「た、助かったのですか?」

『コォン!』

「あ、ありがとうございます、シロン。おかげで助かりました!」

 

シロンに咄嗟の行動に助けられた私はシロンに感謝して頭を撫でました。シロンも頭を撫でられ気持ちよさそうにしています。

 

「よし!ではこの調子で進みましょう!」

『コォン!』

 

私は頼れるパートナーと共に、山を進む決意をしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ……はあ……つ、疲れました……。」

 

シロガネやまを大分登ってきましたが、正直疲れ果てました。道が険しいのも勿論ありますが、それだけではなく、この道中にあった出来事にも疲れる要因はありました。山道からゴローンさんが大勢で勢いよく雪崩のように転がってきたり、不意にイワークさんの怒りを買ってしまったり、時には迷子になりかけてしまったり。ついつい自分が方向音痴なのを忘れてしまいます。それもこれも、シロンのお陰で何とかここまで来れましたけど。

 

『コォン……』

「私なら大丈夫ですよ。心配しないでください。」

 

これ以上シロンに心配かけないように、シロンの頭を撫でて気持ちを落ち着かせました。パートナーに心配をかけるようではトレーナー失格ですからね。

 

「さて、では引き続き登りましょう!」

 

私は手にギュッと力を込め、再び歩き出そうと立ち上がります。

 

しかし、少し離れたところから大きな音がして、こちらに近づいてくるのが分かります。

 

「な、なんでしょうか……。」

 

物音は段々と近くなり、次第にその音がなんなのかハッキリしてきました。

 

視線の先にはイワークさんがこちらに向かって勢いよく這いずってきているのが分かります。恐らく先ほどのイワークさんでしょう。さっきはシロンのお陰で助かりましたが、それでも逃げるしか手がないと感じ、私はシロンと共に走り始めました。

 

「マズいです!このままでは!」

 

私がピンチだと思った矢先、シロンが再びこなゆきでイワークさんに攻撃してくれました。しかし、今回はイワークさんは止まる様子はありませんでした。さっきとは明らかに様子が違います。私たちはもう逃げるしか手が残されていませんでした。あわや圧し潰されてしまうのでは、そう思った時でした。

 

『イワーク!』

 

イワークは何かに驚いてこの場を去っていきました。その時、私の目の前には一筋の炎が通り過ぎました。その炎は神々しく、まるで神の力を宿しているかのようでした。

 

私は何者かの気配がして、その気配のする方へと振り向きました。するとそこには、一匹のポケモンさんがいました。しかし洞窟の薄暗さのせいで姿がハッキリとは見えませんでした。なんだかポケモンさんの姿が波打っているような気がしましたが、姿までは見えませんでした。

 

そのポケモンさんは私の姿を確認する素振りを見せると、私の目の前へと降り立ち、その場をすぐに立ち去っていきました。私はなんだか無視してはいけないような気がして、そのポケモンさんの後を追う事にしました。

 

暫く後を追いかけると、洞窟の外に出ました。そこには一面に綺麗なお花畑が広がっており、幻想的な光景がありました。

 

「す、すごいです。こんなにきれいな場所が山にあるなんて思いませんでした。」

 

私が振り向いて空を見上げると、山頂は見える場所まで来ていました。ですが先ほどのポケモンさんはどこにも見当たりませんでした。疲れて幻覚でもみたのでは、と思ってしまう出来事でした。

 

「あれ、霧が……」

 

私が自問自答を繰り返していると、今度は霧が出てきました。次第に霧は濃くなってきて、前が見えないほどまでになってきました。

 

しかし、その霧の中にはさっきと似た違和感を感じました。なんだか不思議な力を感じる。そんな気がします。

 

私が霧の中に目を凝らすと、そこには先ほどのポケモンさんと似た形状のポケモンさんを発見しました。しかし、先ほどのポケモンさんは力強さが感じられたのに対し、今度のポケモンさんは神秘的なオーラのようなものを感じます。

 

そのポケモンさんも、先ほどのポケモンさんと同様に、私の姿を確認するような素振りを見せるとそのまま走り去っていきます。私も見失うと行けない気がしてしまったので、急いで後を追いかけます。

 

そのポケモンさんはふわりふわりと不思議な感覚で走っていき、追いかけている最中に霧の中を抜けました。霧を抜けた先には、そのポケモンさんの姿はありませんでした。

 

しかしいつの間にか、私は山の頂上の付近まで近づいていました。もしかしたら、先ほどのポケモンさんたちが私を道案内してくれたのでしょうか。

 

私がそんなことを考えていると、今度は黒い雲が怪しく周囲を覆いました。すると突然、目の前に落雷が落ちました。私はあまりの眩しさに目を腕で守るように塞ぎました。すると目の前には、かすかですがポケモンさんの姿が確認できました。もしかしたら先ほどのポケモンさんたちと関係があるのかもしれません。

 

そのポケモンさんは落雷の中を素早く駆け抜けたためハッキリと確認することは出来ませんでしたが、私は夢我夢中で追いかけました。

 

そしてポケモンさんを追いかけていると、既にそこは山の山頂でした。案内されている、というよりもなんだか不思議な空間を駆け巡っていたような味わったことのない感覚でした。ですがやはりそこにはポケモンさんの姿はありませんでした。でも、何者かに見守られている感覚だけはありました。

 

私は周りを見渡し、ホウオウさんがこの場にいないか確認しました。伝承ではシロガネやまの山頂に着くとホウオウさんが姿を現す、と書いてありました。伝承通りであれば、この場に姿を現してくれるはずです。

 

ですが、ホウオウさんは一向に姿を現そうとしません。大声で呼びかけても、やはり姿を現しません。結局、伝承もあくまで伝説だったという事なのでしょうか。

 

私が諦めかけたその時、先ほどまで黒雲だった空に一筋の光が差し込み雲を晴らしていきました。私は眩しさのあまり、目を開けることができませんでしたが、私の目の前にヒラヒラと何かが落ちてきました。私はそれを優しく包むように受け取りました。するとそれは暖かく、逆に私が包み込まれるのではと思わせる程不思議なものでした。

 

勇気をだして私はそれが何なのか確認すると、それは虹色に輝くものでした。紛れもなくそれは……

 

「にじいろの……はね……。」

 

そうです、紛れもなくそれは資料で読んだ虹色の羽そのものでした。私は空を見上げ、その光を見つめると、そこには信じられない光景が広がっていました。

 

「あ、あれは……ホウオウさん!?」

 

そう、そこにいたのは黄金色に輝く、あの伝説のポケモン、ホウオウさんの姿だったのです。ホウオウさんはゆっくりと羽ばたきながらシロガネやまの空を飛び去って行きました。

 

「私が触れても色を失わない……認めて下さった……のでしょうか。」

 

虹色の羽は私が触れても色を失う事はありませんでした。それどころか、寧ろ色の輝きが増している気さえしました。私は、大きな試練を乗り越えることができたのだと実感しました。もちろんそれは…………

 

『コォン!』

 

私の大切なパートナーと共に乗り越えた証です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

虹色の羽を手に入れた私は、お母様たちの元へと戻りました。

 

虹色の羽を手にした私は、その羽をお母様に翳すと、不思議なことにお母様がみるみると元気になっていきました。残念ながらやつれてしまった姿までは元に戻りませんでしたが、これほどまでの効果があるとは正直驚きです。伝説のポケモンさん、その力の一端を見せられ私は言葉にすることができませんでした。

 

お母様はすっかり元気になり、私は神経毒に悩まされることのなくなったお母様に思わず抱き着いてしまいました。その時、私は涙を流して今まで甘えられなかった分、甘えてしまっていたのを記憶しています。

 

そして無事私たちは親子として、家族として再開することができ、マサラタウンで新しく家を建てそこに住むことにしました。

 

はじめは慣れない暮らしで大変なことばかりでしたが、それでもお母様と共に過ごせるというだけで苦を一切感じませんでした。

 

お母様とのカントーでの暮らしに慣れ始めた私は、シンジさんに手紙を書きました。私がカントーで体験したこと、シロンの事、お母様の事、新しい生活の事、もちろん私の事も。シンジさんからも手紙が届き、お兄様やミヅキさん、シンジさんも元気よくやっていけているそうです。私はそれが聞けただけでも充分嬉しかったです。

 

そして暫くの年月が経ち、アローラを発ってから2年がたとうとしていました。

 

私はある時、お母様に言われました。充分体調が戻ってきたから、旅に出てみてはどうだ、と。私は最初お母様を残してまで旅に出るかどうか悩みました。ですが、やはり私の脳裏にはシンジさんの姿がちらついてしまいます。あの人に並びたい、追いつきたい、そんな感情ばかりが頭を過ってしまいます。

 

私は自分の欲望に負け、旅に出る決意もしました。もちろん、シンジさんやお兄様たちにも旅立ちの件を伝えました。

 

そして私は遂に、あの日から丁度2年が経った日に旅立つことにしました。私は旅立ちのためオーキド博士の元へと立ち寄りました。お母様の件で色々お世話になったこと、新しい環境に慣れない私たちを色々サポートしてくれたこと。他にも感謝するべきことがあるかもしれませんが、多すぎて言葉が出てきません。

 

オーキド博士は旅立つ私に餞別として、初心者用のポケモンを一匹選ぶといいと言ってくれました。私もその言葉に甘え、2匹目のポケモンを選ぶことにしましたが、どの子も魅力的で悩みました。

 

カントー地方ではほのおタイプのヒトカゲさん、みずタイプのゼニガメさん、くさタイプのフシギダネさんから選ぶことになります。シロンとの組み合わせで言えばみずタイプのゼニガメさんがいいかもしれません。ですがヒトカゲさんの力強さも捨てがたかったです。

 

私は悩みに悩んだ結果、くさタイプのフシギダネさんを選びました。理由は、ただ単純に自分が一番可愛いと思ったからです。これから苦楽を共にする仲間なのですから、論理的な考えよりも、素直に考えた方がいいかと思ったのです。

 

私はフシギダネさんを新たに仲間に加え、2匹の大切なパートナーたちと共にマサラタウンを旅立ちました。

 

そして旅に出たすぐの町、トキワシティへと立ち寄りました。トキワシティにはポケモンジム、所謂アローラで言う試練のような施設がありましたが、今の私では自信が無いので立ち寄らないことにしました。それに旅に出たはいいものの、私はまだ目的を決めていません。これから何がしたいのか、どうするべきなのかもじっくりと考えていきたいと思います。

 

そして…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う~、迷ってしまいました。」

 

私は見事にトキワの森で迷子になってしまいました。トキワシティで聞いた話によれば、トキワの森の中は複雑で、野生のポケモンも多く生息しているそうです。

 

私がどうしようかと迷っている時、近くの茂みにてなにかが動く音がしました。私はそれが何なのか気になったため、警戒しながら近づきました。

 

『スピ!』

「!?す、スピアーさん!?」

 

茂みから飛び出してきたのは複数のスピアーさんでした。スピアーさんはカントー地方では珍しくないポケモンさんで、恐らくここはスピアーさんの住処だったのでしょう。私が近づいたからか、どことなく気が立っているように思えます。

 

「ってそんなこと考えている場合ではありません!早く逃げなければ!」

 

私は急いで振り返り、全力で逃げました。しかしスピアーさんのスピードは素早く、全力で逃げても追いつかれてしまいそうでした。このままではマズイ、私はそう思いました。しかしその時……

 

「10まんボルト!」

 

鋭い電撃がスピアーさんの目の前を横切りました。何が起きたのか分からなかった私は、その場でへたり込むように座りました。そんな私の耳に、一人の男性の声が入ってきました。

 

私はその声の主を忘れません。いえ、忘れることができません。だってその人は……

 

「リーリエ!」

 

だって、その人は……私にとってとっても大切な方で、憧れを抱いている方で……

 

「リーリエ!大丈夫だった!?」

 

私の…………大好きな方なのですから…………

 

「……シンジさん……なぜ、ここに……?」

「約束したからね。必ず一緒に旅をするって。」

「!?シンジさん!」

 

私は嬉しさのあまり、涙を流しながら私の一番大好きな方、シンジさんに抱き着きました。私との約束を……覚えてくださっていたのですから……。

 

「リーリエ……」

「シンジさん……。会いたかったです。」

 

私は抱き着きながらシンジさんの顔を見つめました。間違いなくシンジさんです。間違えるはずがありませんが、シンジさんが確かに目の前にいる。シンジさんの温もりがする。それだけで現実ではない気がしてなりません。

 

シンジさんはそんな私の戸惑いを吹き飛ばすように、優しく口づけをしてくれました。アローラで別れた時と同じように……。

 

「また、しちゃいましたね///」

「いやだった?」

「いいえ、嫌なはずありません……。だって……」

 

だって、私はこんなにも幸せなのですから。

 

私達は幸せを確かめるように、再び口づけをしました。好きな人と一緒にいられるだけでこんなにも幸せだなんて、まるで夢みたいです。

 

こうして私の新しい冒険、新しい挑戦が始まりました。これからもシンジさんと、それから頼れるポケモンさんと一緒に、がんばリーリエ!です!




ホウオウや虹色の羽の設定にはちょこちょこ主の妄想も入ってます。勿論公式設定も混ざってますが、伝説のポケモンでしかもホウオウならできそうだなと思ったりして書いてました。書いてて楽しかったので満足ですが。

伝説、幻のポケモンに関しては謎に包まれたまま終わる方がそれっぽい気がします。リーリエの見た謎のポケモンたちに関しても同じです。

因みにルザミーネさんに関してもほぼオリジナル設定です。原作では昏睡状態でしたが、この小説では普通に会話はしています。ただ神経毒の所為で体が弱っているからすぐに疲労してしまう、赤子のように歩くことが困難、栄養不足でやつれてしまっている等、身体に影響が出てしまっている、という設定です。まあ結局は二次創作ですしこんなもんでしょう。二次創作作品に公式設定を求めるのはご法度です。



さてと、今日で丁度掲載1周年と言う事で頑張ってまいりましたヌシですが、これも応援してくださった皆さんのおかげです。正直ここまでやれるとは思ってませんでした。自分でも驚きです。

初めは自己満足で書き始めた小説ですが、これからも是非応援よろしくお願いします!

そう言えばリーリエの中の人はXYのミルフィ(二代目)と同じなのは有名ですが、オーバーロードのエントマの中の人でもあるんですよね。因みに先週やっと出てきたアルシェとも同じ人だそう。まあ後の結末的に考えれば妥当なのですが。

それはそうと、レッツゴーイーブイのイーブイ役はあおちゃん(悠木碧さん)だそう。ポケモン好きの方にも分かりやすく言えば、BWのアイリス、バージルのブラッキーの進化前だったイーブイ、イーブイフレンズのブースターです。つまり俺得。

それにオーキド博士の中の人(石塚運昇さん)が亡くなってしまったのが残念です。後任が気になりますが、まずは石塚さんにお疲れさまでしたと言いたいです。

と最後は湿っぽくなってしまいましたが、雑談をしたところで本日はサヨナラです。また次回お会いしましょう!
ではではノシ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。