ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》 作:ブイズ使い
マナーロリーグで優勝し、初代アローラチャンピオンに就任することができたサトシ。長年の夢であったリーグ優勝を果たしたものの、この先に自分が何をしたいのかに迷っていた彼は、クラスメイト達と共にもう一つの世界へと訪れることを決意する。もう一人のアローラチャンピオン、シンジと出会うために。
伝説のポケモン、ソルガレオの力を借りもう一つのアローラ地方へと訪れることのできたサトシたち一行。しかしそこは自分たちの世界のハウオリシティよりも発展しており、どこか様子が違っていた。そこで初めて出会った人物はシンジと共にサトシたちの世界に訪れたことのあるリーリエであった。
だがそのリーリエの姿は以前出会った姿とは異なっており、綺麗な長い髪に大人びた容姿、誰もが見惚れるほど成長した彼女であった。それに加え彼女はどうやら結婚しているらしく、二人の小さな子どもも連れており、サトシたちと久しぶりに出会ったリーリエは彼らを自宅へと案内するのであった。
そして場所は変わり街はずれのリーリエ宅。自宅へと帰ってくると子どもたちは元気よく『ただいま』と家に入っていく。サトシたちも自分の良く見知ったリーリエの家だと分かってはいるのだが、綺麗な大人の女性の家にお邪魔すると言うことで少し緊張している様子で家の中に入っていく。
「こ、ここがリーリエの家なんだね~。」
「すごい綺麗。私の家は妹たちが散らかすから羨ましい。」
スイレンの家にはリーリエの子ども、ロウとティアに近い年の妹がいる。しかし年頃の妹と言うこともあり、妹たちは姉の言うことを中々聞いてくれず部屋が散らかることも少なくないと、スイレンは溜息を吐いていた。
子どもたちは家につくとすぐにテレビの前にスタンバっていた。彼らがテレビをつけると、前もって入っていたDVDが起動する。その内容がテレビに映ると、サトシたちも気になってテレビの前に移動した。
「ロウ君、ティアちゃん、これは?」
「お父様とお母様がバトルした時の試合です。僕も妹もこの試合が好きでいつも見てるんですよ。」
ロウが自慢げにそう話している内に試合が始まる。画面に映っているのはかつて自分の世界に訪れた時の姿をしたリーリエ。そしてその対戦相手は間違いなくアローラチャンピオン、シンジであった。既にティアはテレビの世界に入り込んでおり、何度も見ているはずなのに集中して見入ってしまっている。
そしてロウが言った先ほどの言葉。お父様とお母様の試合。分かってはいたことだが、リーリエの旦那さんは紛れもなくシンジなのであることが分かった。当時の様子から絶対にこうなるであろうとは分かっていたが、それでも未来ではめでたくゴールインしたのかと全員が納得していた。特に結婚と言うものに強く憧れを抱く女性陣は羨ましく思いながら、自分も将来素敵な旦那さんを見つけたいものだとしみじみ思うのであった。
そんなことを考えている間に試合は進んでいく。シンジの強さは身をもって知っているが、そんな彼に一歩も引けを取らず熱いバトルを繰り広げるリーリエ。最初はシンジが一歩リードをするが、決してシンジが優勢な状況を続けるわけではなくリーリエもまた負けじと巻き返していきバトルは盛り上がりを見せていく。
そんな中、特に目を引くものがリーリエのカイリューの快進撃であり、スピードとパワーを兼ね備えた力強いバトルスタイルがシンジたちを追い詰める。そして遂にシンジのポケモンが一体となり、当然姿を現したのは彼の絶対的な相棒、ニンフィアだ。
やはりニンフィアの強さは別格で、弱っていたとは言えあのカイリューを一瞬で倒してしまったのである。そして始まる最終バトル、ニンフィアとキュウコンの戦いが幕を開ける。
驚くことにキュウコンはニンフィアの動きについて行くことができている。テレビ内の観客たちも最高潮の盛り上がりを見せ、サトシたちもその場にいるかのように熱く燃えていた
激戦を繰り広げていたシンジとリーリエのバトルも遂に終わりを迎える。結果はシンジの勝利に終わったが、誰もが認めるほどの最高のバトルがその映像に詰め込まれていた。カメラに映ったリーリエも悔しさ以上に満足そうな笑みを零しており、シンジとリーリエはお互い笑顔で握手を交わしてその映像は終了するのであった。
「すっごい試合だったね!僕思わず喋ることも忘れてたよ!」
「こんなにすごいバトルは中々見られません。とても素晴らしい試合でした!」
マーマネやリリィを始め、シンジとリーリエのバトルの感想を口々にしていた。特にカキに関しては感動のあまり号泣するほどであった。そんな時、玄関の扉がガチャンとする音が聞こえ、一人の男性が家の中に入ってきたのである。
「ただいま、ってあれ?お客さん?」
「あっ、シンジさん!おかえりなさい!」
『お父様!おかえりなさい!』
入ってきたのはこの家の亭主であるシンジであった。リーリエと同じくらいか少し低い程度の身長であった彼は今では高身長になっており、顔も幼い顔立ちから男らしい大人なものへと成長を遂げている。
大好きな父親が帰ってきたことでロウとティアも笑顔で彼の事を出迎える。最愛の息子、娘が出迎えてくれたことにシンジも笑顔で彼らの頭を撫でてもう一度ただいまと口にする。そんな彼の顔は今や立派な父親のものなのだと伝わるものであった。
「はい、実は――」
リーリエは今までにあったことを説明する。以前自分たちが訪れた別の世界で出会ったサトシたちが態々やってきてくれたこと。そんな彼らと昔の映像を見ていたこと。
一方でサトシたちも自分たちの世界であったことをシンジたちに話した。過去に自分たちの世界のほしぐもの事も含め、アローラリーグのこと、サトシもまた初代アローラチャンピオンに就任したことも。そのことを聞いてシンジたちからは祝福の言葉が伝えられ、サトシ自身も感謝しながら少し照れくさそうにしていた。そんな彼に一つ、シンジは提案するのであった。
「サトシに一つ、お願いしてもいいかな?」
「お願い?」
「実は今日、本来僕とエキシビションで戦う相手が急遽出られなくなったんだ。そこでもしよかったら君に相手をしてもらいたいんだけど、いいかな?」
「そ、そりゃあ嬉しいけど。でもいいのか?そんな急に誰も知らないような俺が対戦相手になっても……。」
「実際にバトルするのは僕自身だから、僕からのお墨付きがあれば大丈夫だよ。それに僕も、チャンピオンになった君とバトルしてみたいからね。」
サトシにとっては願ってもない申し出であった。何より彼の瞳は昔と何一つとして変わっておらず、ただ一人のトレーナーとしてサトシと戦いたい、そんな感情が彼の瞳から感じられた。彼はどれだけ強くなっても、チャンピオンとして成長しても、少年のように純粋にバトルを楽しみたいと言う気持ちは失っていないのである。
「……分かった!そう言うことならバトルしようぜ!」
『ピカ!ピカチュ!』
サトシと一緒にピカチュウもやる気満々と言った様子で答えていた。シンジとサトシは公の舞台で早速バトルをすることとなったのである。ロウとティアはその急な決定に興奮しバトルを今か今かと楽しみにしていた。他のメンバーたちも現場でバトルを見られるように、シンジはすぐ特別な席を用意するのだった。
そしてやってきたリーグ会場、ラナキラマウンテン。シンジとは何度かバトルをしてきたサトシだが、それでもこれだけの舞台でバトルをするのは初めてである。自分も彼と同じアローラチャンピオンにまで上り詰めることは出来たが、それでも現在彼は10年以上もチャンピオンの座を守り続けているベテランであり、サトシにとっては先輩にあたる。その上以前戦った時とは間違いなく別格であり、流石のサトシであっても少なからず緊張する。
一方カキたちはシンジに用意された指定席で観戦している。しかし当のカキは少々不満そうにしていた。
「ったく、俺もシンジとバトルしたかったぜ。」
「仕方ない。私たちはこの世界だと有名人みたいだし。」
「あはは。この世界だとキャプテン、だっけ?私たち。」
「僕でさえキャプテンになってるらしいからね。」
そう、この世界ではカキ、マオ、スイレン、マーマネはこの世界でキャプテンを務めている。島巡りをするトレーナーたちに顔を知られている彼らが若い頃の姿で公の場に出てしまったら騒ぎになってしまうのは明白だ。もちろんリリィも同じで、彼女の見た目はシンジの妻であるリーリエと瓜二つ。そんな彼女もバトルに参加することなどできない。シンジの要望でチャンピオンであるサトシが選ばれたのもあるが、他のメンバーがバトルに参加するのはそもそも不可能なのであるため、カキたちには我慢してもらうしかない。
「それではこれより!チャンピオンシンジによるエキシビションマッチを始めます!本日の挑戦者はなんと!チャンピオン直々の推薦により対戦相手が決定いたしました!」
まさかチャンピオン直々に推薦されるとは、と観客の皆は驚きと同時により一層楽しみな様子で待ち望んでいた。チャンピオンからの推薦とあれば間違いなく相応の実力者であることは間違いない。そんな人物と我らがチャンピオンがどのようなバトルを繰り広げるのか、ワクワクが止まらないのであろう。ここにはそれだけチャンピオン、シンジのバトルに魅了された人たちが揃っているのだ。
「ではまず挑戦者の入場です!チャンピオンからの推薦で本日挑戦するのは!サトシ選手だ!」
サトシの登場と共に観客たちからの歓声があがる。サトシに大きな期待が寄せられるが当のサトシはプレッシャーに圧されるほど軟なトレーナーではない。サトシとピカチュウは観客たちの期待に応えて笑顔で手を振っていた。流石はいくつもの修羅場を乗り越えてきたトレーナーなだけはあると称賛に値する。
「では続きまして我らがチャンピオン!シンジの入場だ!」
その紹介と共にサーチライトの先からチャンピオン、シンジが入場する。彼の登場に観客たちからはサトシ以上の声援が降り注いでいた。むしろ黄色い声援も幾つか聞こえてきていたため、観客と言うよりもファンからの声援、と言った方が正しいかもしれない。
「す、すごいですね、シンジの声援。」
「当然、お父様は19年もの間チャンピオンに君臨していましたからね。誰よりも強くて尊敬できるお父様です!」
「お兄様ずるいです!お父様のすごさは私が最初に言いたかったのに!」
ロウとティアは二人でお互い尊敬する父親の事を言い合っていた。19年も王座を譲らずチャンピオンとしてアローラを引っ張ってきたのだから尊敬しないはずもない。それに手元に渡されたチャンピオンの経歴を見ても、彼は幾度となくこのアローラの危機を救ってきたと紹介されているため、尊敬しない理由が見当たらないと納得している。彼こそまさに絵に描いたかのようなチャンピオン像であると言えるだろう。
一方、リーリエはどことなく笑顔でシンジの事を優しく見つめていたのであった。
「リーリエ……さん。なんだか嬉しそうですね?」
「リーリエでいいですよ。ただ、なんだかシンジさん、いつも以上に楽しそうにしていたので私も嬉しくなっただけです。」
「へぇ~、相変らずよく見てるんだね。」
「お父様とお母様は今でもラブラブですから~♪」
「うっ、も、もう、そう言うことは恥ずかしいから言わなくていいですっ///」
娘ティアの言葉に顔を赤くしてそう言った。大人びた雰囲気を纏っていた彼女だが、相変らずシンジとの恋愛模様の事となると少女の時と同じような反応をするところか彼と同様、昔と変わらないのだなと感じられた。
シンジとサトシの紹介が終わり、いよいよバトルが始まろうとしていた。あくまでエキシビションマッチであるためルールは1対1のシングルバトル。対戦相手であるサトシが最初にポケモンを繰り出すのであった。
「よっしゃ!頼むぜ!ピカチュウ!」
『ピッカァ!ピカチュ!』
サトシの合図と共に彼の肩に乗っていたピカチュウが頬の電気袋をバチバチと鳴らしながら勢いよく飛び出した。そして当然シンジが繰り出したのは……。
「出番だよ!ニンフィア!」
『フィア!』
シンジが繰り出したのは彼の相棒のニンフィアであったニンフィアの華麗な登場で着地した瞬間、会場は大盛り上がり。まさにリーグのアイドルとも言った存在だ。歓迎されているとはいえ圧倒的アウェイな状況であるサトシとピカチュウ。そんな状況で彼らが一体どんなバトルをするのか期待がより一層高まる。
ニンフィアはシンジの足元に歩み寄り、彼はそんなニンフィアの頭を優しく撫でる。チャンピオンとニンフィアの恒例行事であり、その光景に毎回気持ちが落ち着かされる観客たち。彼らの深い絆が感じられる光景だ。
「それではバトル開始!」
バトル開始の合図が宣告される。最初に動き出したのはサトシとピカチュウである。
「ピカチュウ!でんこうせっかだ!」
『ピッカァ!』
ピカチュウは目にも止まらぬ勢いでニンフィアに突っ込んでいく。小柄で小回りも利くピカチュウは素早い動きでニンフィアを翻弄しながら突撃していく。その状況でシンジは……。
「……」
『……フィア』
シンジはアイコンタクトでニンフィアに合図を送る。ニンフィアもシンジの意図を読み取り、リボンの触角で接触してきたピカチュウに軽く触れる。そしてピカチュウを軽くいなして回避するのであった。
「っ!?これは!?」
そう、先ほど見たテレビ映像でカイリューに対し行っていた回避手段である。リボンから伝わる波動で相手の攻撃技の威力を削ぎ、その一瞬でピカチュウの攻撃を受け流したのである。以前出会った時はしてこなかった手段であり、それはシンジとニンフィアがチャンピオンとしてより一層成長した証拠でもあった。
「ニンフィア!こちらもでんこうせっか!」
『フィア!』
『ピカァ!?』
今度は攻守交代で、ピカチュウの背後を取ったニンフィアが打って変わってでんこうせっかで攻撃に転じていた。慌てて振り返るピカチュウだが、ニンフィアのでんこうせっかは更に磨きがかかっており、振り返った瞬間には時すでに遅し。もはやピカチュウの眼前まで迫っていた。
ピカチュウは当然回避することなどできずニンフィアのでんこうせっかを直撃してしまう。基本的な技であるでんこうせっかのはずなのに、体の芯まで響くその威力にピカチュウは苦い表情を浮かべていた。
「ピカチュウ!大丈夫か!」
『ピッカァ……ピカチュ!』
サトシの声にピカチュウは態勢を立て直し再びニンフィアを捉える。
「今度はアイアンテールだ!」
『ピッカァ!ピカピッチュ!』
ピカチュウは尻尾を硬化させニンフィア目掛けて振り下ろす。はがねタイプの技はフェアリータイプのニンフィアに効果抜群だ。まさにセオリー通りの選択肢である。しかし……
「ニンフィア!」
『フィイア!』
ニンフィアは再び触角を利用する。驚いたことにピカチュウのアイアンテールに巻き付ける形で受け止めたのである。いわばニンフィア流の真剣白刃取りである。この状況には流石のサトシたち自身も驚きだ。
「ようせいのかぜ!」
『フィアアァ!』
『ピカァ!?』
ニンフィアはすかさずようせいのかぜでピカチュウを吹き飛ばす。その上空中ではニンフィアにとっていい的となってしまう。
「そのままシャドーボール!」
『フィイア!』
ニンフィアはシャドーボールを放った。シャドーボールは一直線にピカチュウに迫っていき、このままではマズいとピカチュウは空中でなんとか態勢を立て直す。
「ピカチュウ!エレキネット!」
『ピッカ!』
ピカチュウは咄嗟にエレキネットでシャドーボールを包み込んだ。電気に包まれたシャドーボールは勢いを失いピカチュウの元で止まる。
「アイアンテールで弾き返せ!」
『ピカチュッピィ!』
なんとピカチュウはニンフィアのシャドーボールを利用し、更に威力を引き上げて弾き返した。ニンフィアは一瞬だけ驚くものの、ピカチュウの反撃をバックステップで回避する。だがピカチュウの反撃は止まることはない。
「10まんボルト!」
『ピィカァチュウ!』
『フィ!?』
ピカチュウの10まんボルトがニンフィアにヒットする。まさかあの態勢から反撃をしてくるなど誰も想像しておらず、驚きの声があがっていた。ニンフィアを包み込んだ電撃が爆発し、彼女の姿を包み隠してしまった。
よし、と思わずガッツポーズするサトシ。手ごたえを感じ嬉しいのだろう。しかしシンジとニンフィアがそう簡単にやられることなどあるはずがなく、舞い上がった土煙からピンク色の光が飛び出してきた。
『ピィカ!?』
「ピカチュウ!?」
飛び出してきたのはニンフィアの大技、ムーンフォースであった。ムーンフォースがピカチュウに直撃し、ピカチュウは地上に墜とされてしまった。そしてニンフィアの身体から光が放たれ、土埃を全て薙ぎ払い会場全体に光輝いていた。
「この光りはっ」
「サトシ。君たちはすごいよ。こんなに僕たちを本気にさせるのは久しぶりだ。だから僕たちも本気で応えるよ。」
シンジがしようとしていること。それはZ技。アローラにおいて伝わる最強の技でサトシに応える。それがシンジの出した答えである。ならばサトシもそんな彼に自分の全力で応えるしかないと、自分の帽子を取りピカチュウに被せる。
「ピカチュウ!俺たちの全力、シンジたちに全てぶつけてやろうぜ!」
『ピカ?ピカッチュ!』
サトシの左手とピカチュウの尻尾はハイタッチをして互いのZパワーを高める。
「10まんボルトよりでっかい100まんボルト!いや、もっともっとでっかい俺たちの超全力!受け止めろ!シンジ!」
サトシたちの高まってくるZパワー、それと同時にシンジとニンフィアもZパワーを高める。膨れ上がったZパワーが強大な光となり、眩い光が会場全体に広がっていく。
――1000まんボルト!
――ラブリースターインパクト!
虹色に輝く光の電撃がニンフィアを逃がさないと言わんばかりに彼女の周囲を包み込んでいく。一方でニンフィアは強大な敵に立ち向かうように空を優雅に駆ける。お互いのZ技がぶつかろうとしている緊張感に、会場中が喉を鳴らす。
刹那、ピカチュウとニンフィア、二人のZ技が中央にて交わりあう。その瞬間、会場全体を白い光が包み込みあまりの眩しさに全員思わず目を瞑る。一瞬何がと疑問に感じる瞬間、シンジとリーリエ、そしてサトシとリリィの脳裏に映像が流れ込んできた。
「こ、これは……」
その映像は一瞬であった。シンジとリーリエの脳裏にはこれからサトシたちが経験する未来の映像。サトシとリリィの脳裏にはシンジたちが経験した過去の映像。
すると光は収まり、光から解放されたみんなが目にしたのは疑うべき光景であった。するとそこにはサトシとピカチュウの姿はなく、シンジとニンフィアだけが残されただけであった。そしてリーリエたちの横にいたはずのリリィたちもその場から姿を消していたのだ。まるで最初からいなかったかのように跡形もなく。
「あれ?お姉さんとお兄さんたちは?」
「いつの間にかいなくなってる?」
ロウとティアはもちろん、会場中の人たちも軽くパニックになっているようだ。しかしそれでもシンジとリーリエはなんとなく理解していた。
「答え、見つけたのかな。」
「頑張ってくださいね、リーリエ。」
そう言って空を見つめ、もう一人の自分たちの未来を願うのであった。
「っ、こ、ここは?」
サトシたちが気付いた時にはハウオリシティの外れまで来ていた。先ほどまでラナキラマウンテンでシンジとバトルをしていたはずなのに、急に何故ここに移動してきていたのかと疑問に思った。
「え?さ、さっきまで会場にいたはずなのに?」
「よく分からないけどいいところで終わっちゃったね。」
「残念、盛り上がってたのに。」
「くっ、今度は絶対俺もシンジとバトルしてやる!」
原因はよく分からないがバトルが中断されたことに少々ガッカリする面々。一部は自分もシンジとバトルしたいと息巻いているが、当のサトシ、それからリリィ、いや、リーリエは決意を込めた表情をしていた。
「……俺、決めた!」
「決めたって何を?」
「昔シンジと戦った時、あいつは誰よりも強かった。でも今日またあいつと戦って前よりもはるかに強くなってることが分かった。だから俺ももっともっと強くなれるんだって思ったんだ!だから俺ももっともっともーーーっと強くなってあいつに勝つ!それが俺の目標だ!」
「相変わらず単純だねー」
「でもそれがサトシらしいな。」
「うん、サトシっぽい。」
サトシは念願のリーグ優勝を決め、トレーナーとして間違いなく大きく成長することができた。しかしそれは決して終着地点ではなく、更に上を目指すための目標ができたスタート地点なのだ。
そしてサトシだけでなくリーリエもまた、手をギュッと握りしめて何か決意を決めた眼差しをしていた。
「リーリエも、なんだか吹っ切れた顔してるね。」
「……はい!わたくしも、これからの目標が見えてきましたので!」
リーリエの目標。マギアナをなんとしてでも目覚めさせる。そしてその先のことも、リーリエは必ず成し遂げて見せると決意をあらわにしていた。
『グルゥ』
「おっ、ソルガレオ!もう大丈夫なのか?」
『ガウゥ♪』
ソルガレオはサトシに擦り寄りもう体力は回復したと意思表示をする。それを見て安心したサトシは彼の頭を優しく撫でる。
「よし!戻ろう!俺たちの世界へ!」
『おう!』
そう言ってサトシたちはこの世界から姿を消した。異世界に赴きこれからの目標を見つけたサトシたち。そしてシンジたちもまた、サトシとの戦いを経て更に一つ成長することができた。今回もまた決着を着けることができなかったが、いつか彼と本気の決着が着ける日を夢見て、アローラの青い空を見つめ彼の姿を思い浮かべるのであった。
「またいつか、会う日まで」
時を超えた出会いは、またいずれあるのかもしれない……
最新のアニポケも普通に面白いと思うの
リコちゃんの中の人が鈴木みのりさんなのは嬉しい。因みにロイ君の中の人はXYのコルニちゃん。なによりホゲータの中の人がゴウ君なのが一番の驚きだけども……。