ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

203 / 223
完成しました!当然のように長いのでご了承ください。

こんな長いの流石に一日では書き上げられないので何日かに分けて書いてました。ですので少々文が意☆味☆不☆明になっているかもしれません。ここまで長くするつもりは全くなかったのですがね。……イイワケジャナイヨ?

取り敢えず楽しんでいただければ幸いです。一つ言っておきます。アニポケ時系列ではほしぐもちゃん編ですが、ほしぐもちゃんの出番は少々少ないかもです。メイン(?)がバトルになってしまっています。ヌシの力ではこれが限界かと……。


アニポケコラボ特別編 ~再会~

アローラ地方のメレメレ島。そしてメレメレ島のとある通りに一つの屋台があった。その屋台にはキテルグマのイラストが描かれており、二人の男女と二匹のポケモンが同じくキテルグマ柄の帽子とキテルグマをイメージして作られたであろうピンク色の衣装を着て宣伝している様子が目立っていた。しかし…………

 

「ああ~、全然売れない……」

 

今怠そうに椅子にもたれながらぼやいた一人の女性。帽子を被っているため髪は綺麗に纏められていて、髪色は赤である。瞳の色は髪色に反して青色であり、女性のツリ目が彼女の印象を表しているようにも見える。

 

「まあそう言うなってムサシ。頑張って活動資金集めてボスに認められようぜ?はい、ドーナツ揚がります!」

 

そう言って揚がったドーナツをムサシと呼んだ女性の元へと運ぶ男性。彼の髪は女性とは対照的な青色であり、瞳は綺麗な緑色である。男性の顔立ちは非常に整っており、イケメンと呼ばれてもおかしくはないだろう。彼にとある趣味が無ければの話だが……。

 

「でも売れないのは事実じゃないのコジロウ。あーあ、誰か早く買いに来てくれないかしらねー。」

 

ムサシは怠そうにしながらも、男性……コジロウの揚げてくれたドーナツにハニーミツをたっぷりとかける。その動作は売れていないとボヤキながらも、非常に手慣れた動作のように思えた。そのドーナツからは香しい香りが漂い、一目見るだけでも食欲が溢れてくることだろう。なぜこれが売れていないのかが疑問に残る所でもある。

 

「だからこそニャースが外で声を出して宣伝してくれているんだろ?」

「キテルグマ印のおいしいハニーミツドーナツにゃー!おいしいのにゃー!」

 

屋台の外ではカントー地方でおなじみのニャースが元気よく声を出して宣伝している。この姿を見て疑問に思った人もいるであろう。そう、なんとニャースが普通に人間の言葉を話しているのだ。確かにポケモンたちは頭もよく、人間の言葉や思考を理解する者も数多く存在している。しかし、人間の言葉をしゃべるポケモンは一部の特殊なポケモンのテレパシーを除けば前例がない。とは言え彼の過去を知れば誰しも納得しそうな気はするが、一番の疑問は何故道行く人に正体がバレないのか、と言う部分だと思われるが……。

 

「あっ、美味しそうなドーナツ!」

「本当ですね。すごくいい香りがします。」

『!?いらっしゃいませ!』

 

そこには一人の少年と一人の少女がやってきて、二人の視線はドーナツに釘付けになる。ムサシとコジロウも珍しくやってきた客を逃すわけにはいかないと、すぐさま態度を切り替えて喰らいつくように応対する。

 

「すみません。このハニーミツドーナツ2つください。」

「・・・・・・へ?」

「え?」

 

(初めてきた)客にどうやってドーナツを買わせようか考えていると、少年がノータイムでドーナツの購入を決めた。予想外の答えだったのか、ムサシたちは全員素っ頓狂な声を出す。しかし、予想外の答えだと感じたのは少年も同じようで聞き返してしまう。

 

「あ、あの~、何かまずかったですか?」

「あ、いえいえいえ!なんでもありません!ハニーミツドーナツ2つですね?まいどあり!」

 

少年の問いかけに、コジロウは慌てて首を振り接客モードへと戻る。その手際は見事と言うほかなく、先ほどの変な声が嘘のように素早く対応した。少年はお礼を言いながらお金を払い、購入したドーナツの入った袋を受け取る。

 

「はい、こっちがリーリエの分。」

「ありがとうございますシンジさん。」

 

シンジと呼ばれた少年は、リーリエと呼んだ少女に片方のドーナツを渡す。リーリエの手が汚れないように、自分の分のドーナツを取り出してから袋ごと渡すことにした。そのことも含めてリーリエはシンジに感謝しながらそのドーナツを受け取る。

 

そう、彼らはアローラ初代チャンピオンであるシンジと、皆の良く知るがんばリーリエである。そして彼らのいるこの世界は彼らのいた元の世界とは違う世界……過去にシンジが迷い込んだもう一つの世界である。なぜ彼らがこの世界にいるのかと言うと、その出来事は少し前に遡る。

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

リーリエの島巡りの旅も無事に終え、アローラで開催されたリーグ戦も幕を閉じた頃。これからリーリエは自分がどうすればいいかシンジに尋ねにやってきた。シンジもリーリエと接する時は、チャンピオンとしてではなく一人のトレーナーとして接することにしている。勿論不公平な行為を嫌う彼は、島巡りの時に限っては彼女と共に旅をすることもなく、個人的に接することも少なかった。それゆえ、二人にとっては久しぶりに何時もの関係に戻れたと言えるだろう。

 

「シンジさん。私は無事島巡りの試練を達成することができました。でも……」

「これからどうすればいいか目的が分からない?」

「はい……お恥ずかしながら……」

 

リーリエは顔を赤くしながら俯いてそう答える。あまり彼ばかりを頼るのも迷惑かとも思ったが、本人は無意識にシンジと久しぶりに接したかった、と言う気持ちもあったのかもしれない。シンジはリーリエの為に次の目標を見つけようと一緒に頭を悩ませて考える。すると自分が経験した一つの出来事を思い返す。

 

「そうだ!リーリエに紹介したい世界があるんだ!」

「世界……ですか?」

 

思い出したように相槌を打つシンジに対し、リーリエは何の事かさっぱり分からずに疑問符を浮かべる。そんなリーリエに対し、シンジはその時経験したことを一から話す。普通ならこのような非現実的な事を信用する人はそういないだろうが、リーリエは真剣に彼の話を興味深そうに聞いていた。彼がそんな嘘を言う人間ではないことを良く知っているし、彼女が大切にしていたソルガレオ…………ほしぐもちゃんの力を目の当たりにしたため、寧ろ信じない方が不可能と言うものだろう。

 

「シンジさんはそんな貴重な経験をしていたのですね。私もその世界に興味が出てきました!」

「じゃあ試しに行ってみようか。ほしぐもちゃんに相談してみないことには始まらないけど、リーリエに会えると知ればほしぐもちゃんも絶対に喜ぶよ。」

 

そうして二人はかつて共に訪れた場所、ポニ島へと足を踏み入れた。しかし今回はあの時のような焦りや不安などと言った感情は一切なく、寧ろ新しく始まる冒険にワクワクを心の中で感じていた。初めて訪れる世界、久しぶりに会える仲間、お互いに違った期待、同じ思いを胸に秘めながら。

 

「……なんだか懐かしいね、ここ。」

「そうですね。今回はあの時と訪れた理由が違いますが。」

 

二人は懐かしの日輪の祭壇へと辿り着いた。すると二人が訪ねてきたことに反応するかのように、太陽から何かが近づいてくるのが見える。白く輝く立派なたてがみ、神秘的に煌めく額、空を駆ける逞しい脚、間違いなく彼がソルガレオの姿をしたほしぐもちゃんだ。

 

「ほしぐもちゃん……会いたかったです……。」

 

ほしぐもちゃんは久しぶりに会ったリーリエと額を合わせ、懐かしの再開を果たした。その姿を見たシンジは、この二人には切っても切れない絆があるのだと目に見えて感じることが出来た。

 

「ほしぐもちゃん……あなたにお願いがあります。」

 

リーリエは先ほどシンジと話していたことをほしぐもちゃんに話そうとする。しかしその前にほしぐもちゃんがテレパシーで彼らに先に話しかけてくる。太陽の化身であるソルガレオはリーリエたちの事を…………このアローラの出来事を全て見ている。そしてアローラにおいて、リーリエたちの事を最もよく知る存在でもあるだろう。故に言葉にしなくてもリーリエが何を言いたいのかがすぐに分かるのだ。

 

「……ありがとうございます、ほしぐもちゃん。」

 

ほしぐもちゃんはリーリエの頼みを快く承諾した。いや、正確に言えば、シンジの時と同じようにいずれはリーリエもあの世界に連れて行き彼らに会わせるつもりだったのだろう。

 

シンジとリーリエはソルガレオの背に跨る。ソルガレオが雄叫びをあげると、空間に歪みが現れ、ソルガレオは眩い光を身に纏いその歪みへと突入する。そしてかつてシンジが体験した不思議な世界へと二人で入り込むこととなったのである。

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

そして先ほどこちらに辿り着き、現在に至ると言うわけである。

 

しかしその時、ムサシたちはと言うと……

 

「ねえ、さっきあのジャリボーイ、確かリーリエって言わなかった?」

「ああ、言った。」

「リーリエって確か白ジャリガールの名前だったはずにゃ。」

『ソーナンス!』

 

ムサシたちはシンジたちにバレない様にヒソヒソと話し始める。しかし、その後の彼らの言葉によりその思考は吹き飛んでしまった。

 

「うん、これすっごくおいしい!」

「本当ですね。ふわふわの生地にカリッとした食感。それにこの甘く蕩けそうなハニーミツは絶妙にマッチしています!」

 

彼らの心からの感想に満面の笑みを浮かべるムサシたち。ここまでの高評価は今まで貰ったことがないため驚き以上にとても嬉しいのだろう。しかしそれならば何故売れないのかが余計疑問である……。

 

「ふぅ、美味しかったね。」

「はい、とっても。ごちそうさまでした。」

『またのお越しを~!』

 

ドーナツを心底美味しそうに食べ終えたシンジたち。ムサシたちもそんな彼らに感謝しながら再び来ることを願って見送る。その時、彼らがドーナツを食する姿を見ていた人たちがやってきて、次々にハニーミツドーナツを注文し始めた。

 

「すみませーん!俺にもハニーミツドーナツくださーい!」

「あっ、私もお願いします!」

 

突然次々とやってきたお客に彼らは戸惑いながらも、接客に気合を入れ丁寧かつテキパキと素早く対応する。

 

「いや~、さっきのお客様様ってかんじよね~。」

「ホントだな。この調子でがっぽりと活動資金を稼ごうぜ!」

「ニャーたちに不可能はないのにゃ!」

 

彼らはこの調子で商売繁盛を胸に秘めお客の対応をしていく。

 

『いらっしゃいませー!』

 

そう言って彼らが次にやってきた客の対応をするために振り向く。しかしそこには客の顔がなく、見えたのは何者かの腹部だった。その正体を確認すべく、覗き込んで顔を確認する。するとその正体は予想外の者だった。

 

『キイイイイイイィィィィィィィィ!』

『キイイイイイイィィィィィィィィ!?』

 

その正体は何とキテルグマだった。彼らは予想外の客の姿に驚きのあまり、キテルグマと同じ声の悲鳴をあげてしまう。そしてキテルグマは屋台の中から彼らを引きずり出して抱きかかえたまま走り去っていく。

 

『なにこのかんじ~……』

 

その信じられない光景を目の当たりにした他の客は、呆然と立ち尽くすほかなかった。この日が彼らの商売が繁盛した最後の日だったという。これがカントー地方で悪事を働いていたロケット団のなれの果て(?)である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはポケモンスクール。生徒たちがポケモンたちと共に学び、成長するために作られた場所である。ここでは今日も生徒たちが楽しく授業を受けているのだが、今はどうやら休憩中のようだ。

 

『コッグ!』

「お?金平糖が欲しいのか?」

 

帽子を被った少年、サトシは机の横に置いていたカバンから飛び出してきた星空が描かれた雲の様なポケモン、コスモッグに金平糖を差し出す。コスモッグは以前サトシが拾ってきたポケモンであり、サトシ本人はとある夢で見たと言う約束のため彼の世話をしていると言う訳だ。因みに、カバンの中にはもう一匹のポケモン、モクローがすっぽりと綺麗に入った状態で気持ちよさそうに寝ている。

 

「ほしぐもちゃんは今日も元気ですね。」

『モッグ?』

 

金髪の少女、リーリエがコスモッグの事をほしぐもちゃんと呼び近づく。この名前はコスモッグが図鑑にも登録されていない未知のポケモンであったため、リーリエが自ら咄嗟に名付けた名前である。しかし、コスモッグは彼女の存在に近づくと彼女に向かって飛びついてしまう。リーリエは一部のポケモン以外に触れることができないため、その場で硬直してしまう。

 

「リーリエ、大丈夫?」

「ドンマイ、リーリエ。」

 

緑髪でツインテールの褐色肌の少女、マオが心配そうにリーリエに近づく。同時に青い髪に小柄の少女、スイレンも少し困った顔で声をかける。サトシは硬直しているリーリエに謝りながらコスモッグを抱きかかえる。

 

「ごめんな、リーリエ。ほしぐもにも悪気はないと思うんだ。」

「い、いえ!大丈夫です!ちゃんと分かっていますから。」

 

サトシの言葉にリーリエもそう答える。彼女自身ポケモンが好きではあるものの、過去のとある事件を機にポケモンが触れなくなってしまったのだ。その時の事件がきっかけとなり、トラウマとして彼女に植え付けられてしまって以降、当時の記憶も思い出せないでいる。彼女なりに努力はしているものの、当時の経験がよほどのショックだったのか未だに克服できないでいる。それでもサトシのピカチュウや自分のパートナーであるロコンには触ることが出来るため、少しずつだが進歩はしているのだろう。

 

「少しずつ慣れていけばいいだろう。時間はまだいっぱいあるんだしな。」

「そうそう!リーリエなら絶対大丈夫だって!」

 

日焼けしたような黒い肌の少年、カキが励ましの言葉を伝える。その言葉に続き、小太りで小柄な少年、マーマネが笑顔でカキに同意する形で励ます。自分のクラスメート達が優しく声をかけてくれたことに安らぎを感じ、リーリエは笑顔を取り戻す。その時、白衣を羽織ったサングラスをかけた男性が教室に入ってきた。

 

「アローラ!みんなは今日も元気そうだな!」

『アローラ!ククイ博士!』

 

みんながククイ博士と呼んだ人物は軽く手を上げていつものように挨拶をする。みんなも答えるように挨拶をし、急いで自分の席につく。ククイ博士はこのクラスの担任であり、全員がククイ博士の事を慕っているようだ。

 

「博士!今日の授業は何をやるんですか?」

 

サトシが今日の授業が待ちきれないようにククイに尋ねる。ククイもそんなサトシの姿に笑いながら答える。その笑顔はまるで、自分の子どもを見守る父親の様な優しい笑顔だった。

 

「サトシは今日もやる気満々だな。今日はみんなでポケモンバトルの練習だ!」

「やった!バトル!」

 

ポケモンバトルの授業と聞き、バトルが大好きなサトシとその相棒、ピカチュウは立ち上がり同じように喜びを示す。サトシと同じようにバトルが好きなカキとその相棒、バクガメスも同じく喜ぶが、その他のメンバーも普段経験できない授業に嬉しさを感じていた。特に室内でなく天気の良い日に外で受ける授業と言うだけで嬉しいと言う気持ちもあるのだろう。

 

『ビビッ!ポケモンバトルと聞いたら黙っていられないロト!バトルの映像の記録は任せるロト!』

「頼むぜ、ロトム!」

 

ククイにそう言われたロトムは胸を張って『任せるロト!』と息巻く。このロトムは外見こそポケモン図鑑だが、中にはロトムが入って生み出された最新の図鑑なのだ。その名もロトムポケデックスフォルムという名前だ。但し名前も長く、覚えられない人も(約一名)いるため簡単にロトム図鑑、又はロトムと呼ばれている。とあるアニメにどっぷりハマっていると言う変わった一面も持っている。当然図鑑であるため、ポケモンの詳細や生態などにも目がない。

 

「ポケモンバトルはポケモンとの息を合わせることが重要となってくる。バトルに熱くなることも結構だが、自分のパートナーの事をよく理解し、ポケモンの技や特性の知識を身につけることが目的だってことを忘れるなよ?」

『はい!』

 

ククイの言葉にみんなが一斉に返事をする。そしてみんなで校庭に移動することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「博士!まずは誰の組み合わせでやるんですか?」

「最初はバトル慣れしているカキとサトシに実践をしてもらおうと思う。二人もそれで構わないか?」

『はい!』

 

マオの質問にククイが答えると、指名されたカキとサトシの二人も待ってましたと言わんばかりにいい返事を返す。そして二人はバトルフィールドにて互いに向かい合い、カキはモンスターボールを手にする。

 

「いけ!バクガメス!」

『ガメース!』

 

カキがモンスターボールを投げると、中からバクガメスが堂々と登場する。彼の相棒だけはあり、バクガメスの纏う雰囲気には貫禄と言うものを感じさせる。

 

「やっぱりバクガメスか!ピカチュウ!君に決めた!」

『ピカッチュー!』

 

サトシは自分の足元で準備万端と言った様子で構えていたピカチュウを繰り出した。授業とは言え、二人の相棒であるバクガメスとピカチュウがぶつかることに対し、皆は思わず息を飲み込む。二人は学園内でも屈指の実力者であり、Z技を扱える数少ないトレーナーであるため見ている側が緊張してしまっても仕方ないだろう。

 

「じゃあフレアドライブの様に熱いバトルを開始してくれ!」

 

ククイの合図に反応し、最初に動き始めたのはサトシとピカチュウだった。

 

「ピカチュウ!10万ボルト!」

 

サトシは挨拶代わりとして10万ボルトを選択した。ならばこちらも答えなければと言う形で、カキも同じような技で対応する。

 

「バクガメス!かえんほうしゃ!」

 

バクガメスは口からかえんほうしゃを放ち、10万ボルトを相殺する。互いに手の内を知り尽くしているとはいえ、バトルにおいて相手の手札をどれだけ掴めるかと言う点も重要になってくる。カキとサトシはバトルの基本を理解していると言う証拠だろう。クラスメート達も二人の戦いを観察しながら、バトルの奥深さを改めて理解していく。疑問を抱く生徒たちには、博士が自ら解説をして説明をしている。

 

「アイアンテール!」

「バクガメス!ブロックだ!」

 

尻尾を硬化させ、アイアンテールによる追撃をしようと接近したピカチュウに対し、バクガメスは背を向け受けの姿勢に入る。バクガメスの背、甲羅にある黒い棘は、触れると大爆発を起こし接触した相手に大ダメージを与えるバクガメス最大の武器ともなっている。これは一般的にトラップシェルと呼ばれる技であり、今も接近してくるピカチュウに背を向けた状態で万全の態勢をとっている。

 

しかしピカチュウは背を向けたバクガメスの棘に触れず、棘のない部分を踏み台とし高く飛び上がる。この光景は皆も一度は見た光景であり、ピカチュウとバクガメスの戦いにおける定番でもある。

 

「まだだ!ドラゴンテールで迎え撃て!」

 

バクガメスは尻尾に力を溜めアイアンテールを振り下ろしてくるピカチュウを迎え撃つ。両者の尻尾が交わった瞬間、地面に穴が開きピカチュウとバクガメスはその穴に落ちてしまう。衝撃により勢い余って空いてしまったのかと思いきや、どうやら様子が違うようだ。

 

「ピカチュウ!?」

「バクガメス!?」

 

サトシとカキが自分のパートナーの安否を心配して呼びかける。それと同時にみんなも立ち上がり二人の傍まで駆け寄る。するとピカチュウとバクガメスは鋼鉄の檻に入れられ引き上げられる。檻が吊るされている方を確認すると、太陽の光で見にくくなっているが、そこには一つの気球が浮かんでいた。

 

「一体何なの!?」

 

マオの言葉と同時に気球から三人組……もとい、二人と二匹のポケモンが顔を出した。

 

「『一体何なの!?』と言われたら」

「聞かせてあげよう我らが名」

「花顔柳腰 羞月閉花 儚きこの世に咲く一輪の悪の花……ムサシ!」

「飛龍乗雲 英姿颯爽 切なきこの世に一矢報いる悪の使途……コジロウ!」

「一蓮托生 連帯責任 親しき仲にも小判かがやく悪の星……ニャースでニャース!」

「ロケット団!参上!」

「なのニャ!」

「ソーナンス!」

 

ムサシ、コジロウ、ニャースが順番に名乗りを上げ、最後にソーナンスが相槌を打つかのように声を出す。実は彼らは先ほどのキテルグマのハニーミツドーナツを販売していた店員と同一人物である。普段はこのように、サトシのピカチュウを筆頭とした人の持つポケモンを狙って悪事を働いているのである。

 

「ロケット団!?またお前たちか!」

 

サトシが懲りないやつだと言いたげな顔でそう言う。それもそうだろう。なんと言ったって、ロケット団はサトシがカントー地方を旅している時から常にピカチュウを狙っているほど執着しているのだから。だがそのせいで出世の機会も逃してしまったのは、彼ら自身気が付いていないのだが……。

 

「ピカチュウ!アイアンテールだ!」

 

サトシの指示でピカチュウはアイアンテールを檻に向かって振り下ろす。しかし思いの外檻は頑丈に出来ており、アイアンテールは難なく弾かれてしまう。

 

「ならバクガメス!かえんほうしゃ!」

 

物理がダメなら炎で溶かそうと、続けてバクガメスが自慢のかえんほうしゃで攻撃する。しかし、それでも効果がないようでバクガメスの炎が掻き消されてしまう。

 

「無駄無駄無駄ぁ!そんな攻撃じゃ、この特殊な素材でできた鋼鉄の檻を破ることは不可能さ!」

 

コジロウは得意げな笑みを浮かべる。対するカキは自慢のパートナーの攻撃でも歯が立たないことに悔しさと呼べる感情をあらわにする。周囲のメンバーも戦いに慣れていないため、こういった時にどう対処すればいいのかわからず戸惑ってしまう。

 

「今日はとってもいい感じー!」

「折角だからもう一匹頂いときますか!」

「了解ニャ!といニャ!」

 

ニャースは自らの掛け声とともにミサイルのようなものを取り出し、それを構え発射した。発射した弾は一直線に飛んでいき、対象のポケモンへと接近していく。その先にいたものは、なんとコスモッグであった。コスモッグはサトシのバッグの横でぐっすりと眠っており、この状況にも全く気付いていないようだった。

 

危ないと思った矢先、すぐに庇う様に飛び出したのはリーリエだった。彼女の心には恐怖があったが、それでもコスモッグ……ほしぐもちゃんを守りたいと思う意思が強く、体が勝手に動いていた。親友であるリーリエが危険だと感じたマオはリーリエの前に飛び出そうとする。しかしそんなマオの横を、風を切るかの如く素早く駆け抜けた影があった。

 

「え?」

 

そんな声を出したのはリーリエだ。何が起きたのか分からず目の前を見ると、そこには優雅にも美しく立っていたポケモンの姿があった。そのポケモンは……

 

「アローラの……キュウコン?」

 

そう、そのポケモンはアローラの姿をしたキュウコンだった。リーリエのパートナーであるロコン、シロンの眼にも憧れのようなものが宿っていた。キュウコンはロコンの進化形であるため、その憧れの感情は当然と言えば当然と言うべきものである。

 

「なになに?あのポケモン?」

「えーと待てよー。あ、あれはアローラのキュウコンみたいだぞ。」

「アローラのキュウコン?って事はレアなポケモンってこと?じゃあ頂くしかないじゃない!」

 

コジロウがアローラのガイドブックを見てポケモンの名前を伝える。ムサシは謎のキュウコンゲットに息巻いているなか、ニャースだけは嫌な予感が頭を過っていた。何故か手を出してはいけないものに手を出そうとしているような、不思議な感覚だった。

 

「ロトム、あのポケモンは?」

『任せるロト!キュウコン、アローラの姿。きつねポケモン。こおり、フェアリータイプ。ロコンの進化形。性格はとても穏やかで遭難した人を助けてくれることもある。』

 

サトシがあのポケモンの詳細を尋ねると、ロトムは図鑑を見せながら説明する。サトシも初めて見るアローラの姿をしたキュウコンに感動しているようだ。

 

「でもなんでキュウコンがここに?」

 

マオの疑問も最もである。アローラのキュウコンはこおりタイプであるがゆえに、主に雪山であるラナキラマウンテンに生息しているポケモンだ。と言う事はこのキュウコンにはトレーナーがいると言う事。しかし周囲にはそれらしいトレーナーは見当たらない。

 

「何故……助けてくれたのですか?」

 

リーリエがふと思った疑問を問いかける。なぜ見ず知らずの自分を助けてくれたのかと。その問いに答えるように、キュウコンは無言でリーリエの後ろを見つめた。その視線はコスモッグでもリーリエの持つシロンでもない。何を見ているのかと気になったみんなは後ろへと振り返る。その先には一人の人が走ってきている姿が見えた。このキュウコンのトレーナーだろうか、と疑問に思ったみんなはその人物の姿が明らかとなった時、驚かずにはいられなかった。

 

「もう!シロン!急に走り出さないで下さいよ……。」

 

一人の少女がはぁはぁ、と息を切らしながら走ってきた。その少女は白い服と白いスカート、金髪の髪をポニーテールに纏めた容姿をしており、皆も自分たちのよく知っている人物に似ていた。

 

「りー……りえ?」

 

誰が声を出したのか分からないが、彼女は紛れもなくリーリエにそっくりなのだ。雰囲気や声、それに今名前を出したシロンと言う言葉さえも同じなのだ。まるで鏡を見ているかのように、リーリエも信じられない光景を見ているかのように驚いている。

 

「あ、皆さん初めまして。リーリエです。やっぱりシンジさんに聞いた通りですね。」

 

その言葉を聞いた瞬間、ロケット団(とロトム)以外のこの場にいる者たちが納得した。忘れる事のできぬ名であり、自分たちと約束を交わした仲間であると。

 

「なに話してるか知らないけど、そのキュウコンとプチドガスは頂いていくわよ!」

「ニャース!もう一度捕まえろ!」

「分かったニャ!」

 

コジロウの指示に従い、ニャースは再び捕獲用ミサイルを発射する。捕獲用ミサイルはキュウコンへと向かって一直線に飛んでいくが、それに動じることなくリーリエはパートナーに指示をだす。

 

「シロン!れいとうビーム!」

 

その姿は落ち着いていて、勇ましく、頼りになれるトレーナーであると皆は感じた。それと同時に、自分の知っているリーリエとはやはり違うのだと言う事も。

 

キュウコン……シロンは口から放った冷気、れいとうビームによっていとも容易く捕獲用ミサイルを凍らせてしまう。それを見れば、どれだけよく育てられているかが伝わる。

 

「なに!?」

「これってヤバい雰囲気?」

「お、大人しく撤収した方がいいんじゃニャいだろうか……。」

「ソ、ソーナンス……。」

 

何だかヤバそうな雰囲気に襲われたロケット団一同は、早々に撤収することを決意し振り返ろうとする。「待て!」とサトシが一喝した次の瞬間、キュウコンとはまた違った影がサトシの頭上を勢いよく飛び越えていった。それはどこか懐かしい気がサトシには感じられた。

 

その影はピカチュウたちが捕らわれていた檻に突撃していき、それを容易く砕いた。内側からピカチュウのアイアンテール、バクガメスのかえんほうしゃさえも無力化してしまった頑丈な檻を破壊したその威力に、ロケット団を含む全員が驚いた。最も、もう一人のリーリエは「流石ですね」と呟き当然と言わんばかりの表情を浮かべている。

 

その影はそのまま優雅に降り立ち、笑顔を浮かべて元気よく皆に振り替える。攻撃の衝撃によりロケット団は気球ごと墜落してしまう。よくある光景ではあるが、初めてみるリーリエにとっては大丈夫だろうか、と少し心配になる。そしてロトムはそのポケモンの詳細を調べる。

 

『ニンフィア、むすびつきポケモン。フェアリータイプ。イーブイの進化形。人に懐きやすく、大好きなトレーナーの腕にリボンを巻きつける。触れるだけでトレーナの気持ちが分かる。』

 

そのポケモンの正体はニンフィアだった。ピカチュウとバクガメスはそれぞれ自分のトレーナーの元へと駆け寄る。そして、サトシたちの横を一人の人物がゆっくりと通り過ぎ、ニンフィアの前で屈み頭をなでた。

 

「うん、よくやったね、ニンフィア。」

『フィーア!』

 

頭を撫でられたニンフィアは嬉しそうに微笑み、頭を擦り付ける。一度は見た懐かしい光景、それだけで皆にはその人物が誰なのか分かった。

 

『シンジ!』

 

もう一人のリーリエ(とロトム)以外の皆が懐かしの人物、大切な仲間の名前を呼ぶ。呼ばれた人物、シンジは立ち上がったのち振り向き軽く挨拶をする。

 

「みんな、久しぶりだね。」

 

その後、墜落したロケット団は気球の残骸から抜け出し立ち上がる。

 

「なんなのよアイツ!」

「クッソー!もうちょっとだったのに!」

 

ムサシとコジロウは計画を邪魔したシンジに激昂する。そして自分の持つポケモンの入ったモンスターボールを取り出して投げる。片方はゴージャスボールと言う珍しいボールだが。

 

「行け!ミミッキュ!」

「頼むぞ!ヒドイデ!」

 

ムサシはミミッキュを、コジロウはヒドイデを繰り出した。しかし、ヒドイデは飛び出した瞬間、コジロウの頭に食らいつく。コジロウは少し抵抗するが、しばらくすると力尽きたように膝をつき、ヒドイデが頭から離れる。コジロウの頭部はまるでヒドイデの様な見た目になっており、毒状態を浴びたかのような姿になってしまった。その光景にシンジとリーリエは苦笑をするしかなかった。

 

「はあ、何やってるのよ。」

 

ムサシは呆れたようにそう呟くが、ムサシの指示を待たずに今度はミミッキュが飛び出した。

 

「あっ!ちょっとミミッキュ!?」

 

ミミッキュはピカチュウに向かいウッドハンマーを振り下ろそうとする。ミミッキュはピカチュウに恨みを持っているようだ。いつものことではあるが、それを見る限りある意味ムサシは苦労人のように思える。

 

ミミッキュのウッドハンマーは確実にピカチュウを捉えていた。しかしミミッキュのウッドハンマーは空を切り、その場にはピカチュウがいなかった。何故かいなかったピカチュウはどこに行ったのかとミミッキュは辺りを見渡す。するとそこにはニンフィアの背に乗ったピカチュウを見つけた。自分の標的であるピカチュウを奪われたミミッキュは、ターゲットをニンフィアに切り替え攻撃を仕掛ける。

 

「まあいいわ!ミミッキュ!やっちゃいなさい!」

 

特に指示も出さずにムサシはミミッキュに呼びかける。ミミッキュに指示を与えたとして、彼が言うことを聞いてくれるとは思えないからだ。それにミミッキュ自身はかなりの手練れだ。ある程度自分勝手にやらせても充分戦闘で活躍する。実際、ミミッキュはヌシポケモンであるラッタを倒した実績もある。

 

「ヒドイデ!お前も行け!」

 

向かってくるヒドイデとミミッキュに対し、シンジとニンフィアは身構える。相手が二体であるため、リーリエもシンジの横に立ちパートナーであるシロンと共に立ち向かう。

 

「じゃあやろうか、リーリエ。」

「はい!」

 

二人からは信頼を超えた絆をサトシたちは感じた。

 

ミミッキュはシャドークローによりニンフィアを攻撃をする。しかしニンフィアはその攻撃を避ける様子を見せず、シロンがニンフィアの前に立ち構えた。

 

「シロン!こおりのつぶて!」

 

こおりの欠片を複数口から放ち、ミミッキュを迎撃する。そのこおりのつぶては鋭く、そして素早くミミッキュを捉えた。ミミッキュは首元がコテッと力なく倒れる。が、これはあくまでミミッキュの特性“ばけのかわ”であり、決してミミッキュの首が圧し折れたわけではないため心配はいらない。

 

ムサシも自慢のミミッキュが簡単に撃墜されてしまったため、苦い顔をする。コジロウも退くわけには行かないと、自分もヒドイデに指示を出す。

 

「ヒドイデ!とげキャノン!」

 

ヒドイデは頭部を相手に向け、鋭い針を無数に発射する。その攻撃を見たニンフィアは、シロンの背後でジャンプし迎撃の態勢をとる。

 

「ニンフィア!シャドーボール!」

 

シャドーボールは、とげキャノンを正面から弾いていき、勢いを殺すことなくヒドイデに命中する。ヒドイデはその場で墜落し、下にいるミミッキュにぶつかってしまう。

 

相変わらず凄いと、サトシたち一同も感心する。それだけでなく、リーリエとの息もバッチリで、互いに信頼し理解しあっているからこそのコンビネーションだと言う事が伺える。

 

「行くよ!」

「はい!任せてください!」

 

シンジが声を出しリーリエに合図を出す。リーリエもシンジの考えが分かっているようで、最後の技の指示を出した。

 

「ニンフィア!」

「シロン!」

『ムーンフォース!』

 

ニンフィアとシロンは共に浮かび上がり同時に月の力を借りてムーンフォースを解き放つ。同時に放たれたムーンフォースは、ミミッキュとヒドイデを吹き飛ばしロケット団の元へと飛ばされる。その勢いに負け、ロケット団も自分のポケモンたちと共に叫び声をあげながら飛ばされる。

 

「ねえ、あいつらってどっかで見なかった?」

「うーん……俺もどっかで見た記憶があるんだけどなー。」

「しかも最近見た気がするニャ」

 

どうやらシンジとリーリエをどこで見たのか覚えてない様子。遠目で見ているからなのか、一度しか会ってないからなのか、はたまた彼らの記憶力が低いからなのか。とは言え飛ばされながら空中で物事を考える余裕があるあたり、相当な大物である。

 

『いやなかんじー!』

『ソーナンス!』

 

ロケット団一味とソーナンスが最後の叫び声のようなセリフを言いながら星となり遠くへと姿を消してしまう。普通だったら大ごとになるであろうが、彼らなら問題ないだろうと言う確信が不思議と感じられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ロケット団は森の中へと真っ逆さまに墜落していく。彼らもやってくるであろう衝撃に備え眼を瞑り力を込めるが、痛みが一切やってこない。それどころか、謎の浮遊感が感じられる。その正体を確認するため3人とソーナンス(ソーナンスは元々目を閉じているように見えるが)は目を開ける。

 

『クゥー』

 

そこにはなんとキテルグマがロケット団を抱きしめ受け止めていたのだ。何故彼らがこの場にピンポイントで落下してくるのが分かったのか不明だが、キテルグマはロケット団たちを抱えながら自分の住処へと入っていく。そしてロケット団は、先ほどとは違うセリフを呟いた。

 

『なにこの感じ~』

 

その言葉にはどこか悲しいような物足りないような、それとも残念そうな何とも言えない感情が込められているように思える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロケット団たちを難なく追い払ったシンジとリーリエは、互いに顔を見合わせ完璧なコンビネーションに満足しながら一緒に頷く。そして振り返り、シンジがかつて出会った仲間たちと懐かしの再会を果たす。

 

「みんな、改めて久しぶり。」

「ほんとだよー!ビックリしたんだから。」

「久しぶりだな、シンジ!」

 

マオとカキが懐かしの出会いに感動的な様子を見せながら挨拶を交わす。シンジは皆が変わらずに元気そうな様子を見て安心したのと同時に、忘れてはいけないことを言葉にする。

 

「みんな、紹介するね。こっちが以前僕の言っていた……」

「皆さん改めまして、シンジさんと同じ世界からやってきましたリーリエです!」

 

シンジの言葉に続くようにリーリエは頭をペコリと下げて挨拶をする。その姿は礼儀正しくお嬢様な雰囲気を感じさせるが、明るく元気な女の子と言う印象も与えさせる不思議なものだった。

 

「へえ、そっちのリーリエは服も髪型も全然違うんだ。」

 

サトシが自分の世界のリーリエとの違いに感心した後、「あっ、忘れてた!」と言いながら自分も自己紹介を始める。さらにサトシに続き、他のメンバーも自己紹介とパートナーの紹介をしていく。

 

「俺はサトシ、そしてこっちが相棒のピカチュウ!」

『ピカ、ピカチュウ!』

「知ってると思うけど、私はマオ!そしてこっちがアママイコだよ!」

『アーマイ!』

「俺はカキ、そしてこっちがパートナーのバクガメスだ。」

『ガメース!』

「私はスイレン!こっちはパートナーのアシマリ!」

『アウアウ!』

「僕はマーマネ!それとパートナーのトゲデマルだよ!」

『マキュキュ!』

「俺はククイ。ポケモンの技の研究をしている、ってもう知ってるよな?」

「わたくしはリーリエです。それとパートナーのシロンです。な、なんだか自分に自己紹介するのって恥ずかしいですね……」

『コォン?』

『そして僕がサトシのサポートをしているロトム図鑑ロト!ヨロトシク!』

 

みんながそれぞれ挨拶をし終える。リーリエは挨拶している相手が自分……厳密に言えば別世界の自分であるため少々気恥ずかしさがあるようだ。もう一人のリーリエは特に気にしてはいないようだが。

 

『ところでサトシ達はこのシンジって人に会ったことがあるロト?』

「ああ、そうか。あの時ロトムはいなかったんだったな。」

 

あの時、がいつなのかは気になるところではあるが、そんなことよりロトムはこのシンジという人物の事が非常に気になるようだ。ピカチュウやバクガメスの攻撃でもビクともしなかった檻をあっさりと壊したのだから、興味に惹かれるのも無理なきことではあるだろうが。

 

「シンジは以前出会った仲間なんだ。俺も詳しくは知らないんだけど、シンジはこことは別の世界からやってきたみたいでさ。」

『理解不能、理解不能』

 

ロトムは頭……なのかはよく分からないがパンクしたように湯気を出し頭を押さえる。ロトムとは言っても現在は図鑑としての機能が強いため非科学的な現象を聞いて理解のできない情報を得て、許容量を超えてしまったのだろう。

 

「それでシンジはその世界のチャンピオンなんだよ!」

『理解ふ……ビビッ!?チャ、チャンピオンロト!?』

 

チャンピオンと聞いて慌ててシンジの姿を記録に収めようと写真を撮影する。突然写真を撮られシンジは困惑する。周りのみんなも苦笑いするしかないようだ。

 

「ほら、ロトム。シンジも困っているだろ?あんまりはしゃぐなよ。」

『あっ、ご、ゴメンロト。つい興奮してしまったロト。反省するロト。』

 

ククイの言葉により写真を撮るのを中断し、落ち込んだ様子で反省するロトムに対し、シンジは全然気にしないでいい、と一声かけてロトムを励ます。チャンピオンは器も広いのか、とロトムは心の中で感心する。

 

「あっ、忘れるところでした。こちらは私のパートナーのシロンです。こっちの世界の私のパートナーと同じ名前ですね。」

 

リーリエは自分のパートナーであるキュウコン、シロンをみんなに紹介する。シロンはリーリエの言葉に合わせて一歩前に出る。みんなもアローラのキュウコンが珍しいようで、頭を撫でて歓迎している。シロンも満更でもない様子で微笑んでいる。

 

『コォン!』

『コォン?』

 

こちらの世界のシロンが憧れの感情を抱きながら進化した自分の元へと歩み寄る。そんなもう一人のシロン……かつての自分の姿にシロンは顔を口で軽く触れて挨拶する。シロンも進化した凛々しい姿の自分に触れて貰ったのが嬉しいようで、共にじゃれついている。

 

「昔のシロンとは少し違いますね。」

「そうなのですか?」

 

リーリエは進化する前の姿をしたシロンを見ながら昔のパートナーの事をこちらの世界のリーリエに話す。リーリエも自分の大事なパートナーであるシロンとはまた違った姿を見ることが出来た気がしてどこか嬉しそうな表情を浮かべる。その時リーリエは見覚えのあるものが目に入った。

 

「あ、あれってもしかして……。」

「どうしたの?リーリエ?」

 

リーリエが目に入ったものに近づきその正体を確認する。シンジもリーリエに釣られる形で後をついていく。リーリエがその場でしゃがむとそれは彼女にとって忘れられない、そしてとても大切な存在であった。

 

「ほしぐもちゃん!?」

「え?ほしぐもちゃん?」

 

リーリエがその存在の名を口にすると、シンジもリーリエの傍でしゃがみこむ。その存在は紛れもない二人の知っているほしぐもちゃんであり、今もぐっすりと眠っている。あれだけの騒動があったにも関わらす眠っているところを見るとよほど疲れているのか、それともいい夢を見ているのか。幸せそうな顔をしているところを見ると、恐らくは後者であろう。

 

リーリエはそんなコスモッグを優しく、丁寧に抱きかかえる。サトシは慌てて止めようとするが、大きな声を出しては余計に起こしてほしぐもの機嫌を損ねる結果となってしまう為強くは言えなかった。誰かに抱きかかえられたためほしぐもは目を覚ましてしまう。ほしぐもは寝ている時に起きてしまうと泣き喚いて周囲の人(主に耳)にダメージを与えてしまう為みんなは慌てて耳を塞ぐ。

 

『コッグ?モッグ♪』

 

しかし、ほしぐもが泣くことはなかった。それどころかリーリエに懐いている様子を見せ、彼女の元に抱き着く。こちらのリーリエとの区別がついているのかは不明だが、それでもほしぐもは懐かしくも安心する気分を抱きながらリーリエに身を委ねる。

 

シンジもほしぐもの頭を撫でる。ほしぐもはシンジに対しても敵対する様子を見せず、それどころか撫でられて嬉しさを感じているようだった。彼の話を聞く限りでは、もう一つの世界はこの世界とそっくりだと言う話だ。もしかしたら彼らはほしぐもの事も何か知っているのかもしれない。それならばダメ元で話を聞いてみようと尋ねることにした。

 

「シンジたちはほしぐもの事何か知っているのか?」

 

サトシの口からほしぐもと聞いて、シンジたちはこちらの世界でも同じくほしぐもと呼ばれていることに何故だか安心する気持ちになった。この世界でもほしぐもちゃんは変わらずやんちゃで元気で、迷惑をかけているかもしれないがそれでも大切にされているのだと言う事が伝わったからだ。

 

「うん、よく知っているよ。でも……」

「はい、ほしぐもちゃんの事は詳しくは言えません。」

 

二人は顔を見合わせ、ほしぐもちゃんのことを彼らに伝えるのは控えようと判断する。ほしぐもちゃんの正体を言っても彼らの態度が変わることはないだろうが、それでももしこの世界の未来が変わってしまっては非常にマズイことになってしまう。ふとしたことで未来が変わる可能性は充分にあり得るため、ほしぐもちゃんの件は黙っているのが無難である。

 

「そっか。まあいいや!正体が何であれほしぐもはほしぐもに変わりないからな!」

 

サトシは相変わらずの笑顔でそう納得する。みんなもサトシの言葉に同じく賛同し頷く。その後、サトシは思い出したようにシンジに一つの頼みごとをする。

 

「なあ、折角だしまたバトルしてくれないかな?」

「ずるいぞサトシ!俺ともバトルしてくれ!」

 

サトシに続きカキもバトルの申し出をする。シンジがどうしようか迷っていると、ククイが1つの提案を出してきた。

 

「じゃあこうしないか?今俺たちはポケモンバトルの授業をしているんだ。だがロケット団の妨害があって中断されてしまってな。そこで他のメンバーとも1体2の形式でバトルをしてやってほしいんだ。」

「ククイ博士それって……」

 

スイレンの言葉にククイは僅かに口角を上げながら言葉を続ける。

 

「スイレンの察している通り、俺の提案は以前カントーのジム体験をした時と同じバトル形式だよ。」

 

ククイのその言葉を聞いたサトシたちは良い提案だと全員が顔を合わせて喜ぶ。シンジもどうやら問題ないようで、そのバトルにはもう一人のリーリエにも参加してもらうこととなった。

 

「じゃあ対戦カードはどうする?」

「私はもう一人のリーリエと戦ってみたいな!あっちの世界のリーリエの強さが気になるし!」

「私も自分と戦ってみたいです。本で読んだこと以外にも学べそうなことは多くありそうですし。」

「僕はシンジと戦ってみたいかな。チャンピオンのデータを取ってみたいし。」

「私、チャンピオンと戦ってみたい!」

 

それぞれの希望を聞き、ククイは対戦カードを頭の中で組み合わせ決定する。

 

「よし、じゃあ決まったな。」

 

そうして、チャンピオンシンジともう一人のリーリエと言う特別講師を参加させたポケモンバトルの授業が始まるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一同はポケモンスクールの中庭にあるバトルフィールドまで移動した。最初はリーリエ対リーリエ&マオである。戦いなれてはいない二人だが、それでも親友同士と言う組み合わせであるため、息の合わせたチームワークによってはいいところまで食らいつけるのではないかと考えている。

 

「リーリエ!頑張ろうね!」

「勿論です!」

 

二人が顔を合わせてこの戦いの意気込みを見せる。その二人の姿を見て、自分たちの知っているマオ、そして自分自身とは違うのだと感じたリーリエだった。

 

「行くよ!アママイコ!」

『アーマイ!』

「お願いします!シロン!」

『コォン!』

 

二人は前に出る自分のパートナーに激励を入れる。リーリエもどのポケモンを繰り出そうか悩んだが、今回はこの子にお願いしようとモンスターボールを握り締める。

 

「お願いします!フシギバナさん!」

『バナァ!』

 

リーリエが繰り出したのは大きくも立派な花を背中に咲かせたフシギバナだった。フシギバナの強大な咆哮に二人は一瞬思わず怯んでしまう。先ほどのキュウコンの優雅さとは裏腹に、フシギバナは迫力が段違いだ。バトル経験の浅い二人にも、対面した瞬間その強さが芯から伝わってきた。

 

『ビビッ!あれはフシギバナロト!』

 

ロトム図鑑はフシギバナの詳細を調べる。カントー地方ではよく見かけるポケモンだが、アローラ地方では滅多に見かけることが出来ないため興奮しているのだろう。

 

『フシギバナ、たねポケモン。くさ・どくタイプ。フシギダネの最終進化形。大きく成長した花からは心を癒す香りが漂う。近年ではメガシンカが確認されたポケモンの一体である。』

 

最終進化形であるフシギバナを持っているという事は、かなり育ててあると言う証明でもある。サトシたちはリーリエがどんな戦いをするのかワクワクして見ている様子だ。

 

「お二人からどうぞ。」

 

リーリエは先に仕掛けてくるように促す。別にこれは二人を舐めて言っている行為ではなく、二人の力量を確認したいと言う彼女の考えからである。マオとリーリエも遠慮なく、と言った様子で先制攻撃を仕掛ける。

 

「アママイコ!マジカルリーフ!」

 

アママイコは手で円を描くようにしてマジカルリーフを放つ。フシギバナは動じることなくマジカルリーフを受ける態勢をとる。寧ろフシギバナの巨体では相手の攻撃を躱すことは難しいだろう。アママイコの放ったマジカルリーフはフシギバナを捉え直撃するが、フシギバナには全く効いていない様子でビクともしていない。

 

「なっ!?全然効いてない!?」

 

確かにくさ・どくタイプであるフシギバナにくさタイプのマジカルリーフは効果は薄い。とは言え全く傷ひとつつかないと言うのは心に来るものがある。

 

「マオ、ここは私に任せてください。シロン!こなゆき!」

 

続いてシロンはこなゆきによる攻撃を仕掛ける。くさタイプにはこおりタイプの技は効果抜群だ。それならば致命傷とはいかなくてもダメージを与えることは可能だろうとリーリエは判断したのだ。しかし……

 

『バァナァ!』

 

フシギバナが咆哮すると同時に、その衝撃によりこなゆきは簡単に掻き消されてしまう。まさに衝撃的な光景だった。シロンはまだ戦いに慣れておらず技の威力もまだ未熟だと言うのは確かにある。だが、だからと言ってたった一つの咆哮により攻撃を無効化されてしまうのは考えられなかった。

 

「はっぱカッターです!」

 

フシギバナは動揺しているシロンとアママイコにはっぱカッターで同時に狙う。そのはっぱカッターは鋭く、同じタイプで効果の低いアママイコにすら大きなダメージをもたらした。

 

「バトル中に動揺を見せてしまっては、今の様にやられてしまいますよ?戦闘中の油断は一切禁物です。」

 

その言葉を聞いたみんなは、やっぱり自分たちの知っているリーリエとは違うんだという事を再認識した。しかしリーリエはその後、小さく呟くように「シンジさんからの受け売りですけど」と呟く。その小さな呟きは誰にも聞こえることはなかったが。

 

「これは完敗だね。もう一人のリーリエには勝てる気がしないよ。」

「そうですね。自分とは言え、力の違いを思い知りました。」

 

流石はチャンピオンと長い間一緒にいただけの事はあると二人は納得する。リーリエもフシギバナに声を掛け、ゆっくりと休むように言いながらモンスターボールへと戻す。そして入れ替わる様にシンジとリーリエがすれ違い準備をする。

 

「次は僕との戦いだね。」

 

シンジのその言葉に合わせて、マーマネとスイレンも準備をする。そして二人はパートナーであるポケモンを繰り出す。

 

「行くよ!トゲデマル!」

『マッキュ!』

「お願い!アシマリ!」

『アウ!』

 

トゲデマル、アシマリを繰り出した二人にシンジはどのポケモンで行こうかを直ぐに決めた。そこでシンジが選んだポケモンは…。

 

「ここは君に任せたよ!ブースター!」

『ブースタ!』

 

『ブースター、ほのおポケモン。ほのおタイプ。イーブイの進化形。体内にはほのお袋を持ち、体温はなんと900度にまで達することもある。』

 

シンジが選んだのはブースターだった。ロトムもいつも通りに図鑑説明を確認する。ブースターはほのおタイプのポケモン。はがねタイプを持つトゲデマルに対しては有利だが、みずタイプのアシマリには当然相性は悪い。そんな中、どうやってバトルするのかみんなは興味が尽きない。

 

「さぁ、どこからでもかかってきていいよ。」

 

シンジのその言葉と同時にブースターも、かかってこいと言う様に構える。相手がチャンピオンという事もあり緊張気味の二人でもあるが、公式試合ではないと気持ちを落ち着かせて胸を借りるつもりでポケモンに指示を出す。

 

「トゲデマル!びりびりちくちく!」

 

マーマネのトゲデマルの代名詞、びりびりちくちくだ。トゲデマルは体に電気を纏った状態でブースターに突撃する。シンジも対抗するためにブースターに指示を出すが、その指示は予想とは全く違いみんなが驚くような内容であった。

 

「回転しながらかえんほうしゃ!」

 

ブースターは体を回転しながらかえんほうしゃを放ち、自分の周囲を守る様に攻撃した。それはまるで炎の鎧をまとっているようにも見えた。そしてトゲデマルはそのブースターの攻撃に成すすべもなく飛ばされてしまう。予想とは遥かに超えるその攻撃に、流石チャンピオンのポケモンは一味も二味もレベルが違うのだとマーマネは感心する。

 

「まだ私がいる!アシマリ!バブルこうせん!」

 

アシマリはバブルこうせんによりブースターに牽制の意味も含む攻撃を仕掛ける。みずタイプの攻撃であれば先ほどの防御も不可能だろ考えての行動だ。しかし……

 

「かえんほうしゃで迎え撃て!」

 

今度は普通にかえんほうしゃでバブルこうせんを迎え撃つ。その攻撃はバブルこうせんと拮抗するどころか、寧ろ凌駕するようにバブルこうせんを次々と撃ち落としていく。アシマリはかえんほうしゃの直撃を受けない様に途中で攻撃を中断し、ジャンプして攻撃を回避する。

 

「なら今度はアクアジェット!」

 

今度はアシマリが水を纏いアクアジェットでブースターに一直線に突撃してくる。そのスピードはなかなかのもので、バトル慣れしていないポケモンの動きとは思えなかった。シンジはそんなスイレンとアシマリに敬意を表し正面から迎え撃つ。

 

「フレアドライブ!」

 

ブースターも同じく炎を体に纏い、全力の力でアシマリを迎え撃つ。正面からぶつかり合う二人だが、やはり力の差が出たのかアシマリが上空に飛ばされてしまいダウンする。致命的なダメージではないが、効果の薄いほのおタイプの技でもかなりのダメージが見られる。それほどまでにブースターの攻撃は凄まじいものだったのだ。

 

「さすがチャンピオン、全然かなわない。」

「やっぱりチャンピオンってすごいんだね。強さが段違いだよ。」

 

どうやらスイレンとマーマネも満足したようだ。シンジは戦ってくれたブースターの頭を撫でて、ブースターに礼を言いながらモンスターボールへと戻す。そしてカキとサトシが勢いよく立ち上がり、遂に俺たちの出番だと意気込む。

 

「次は俺とバトルしてくれ!シンジとバトルしたくてうずうずしてるんだ!」

「それは俺もだ!またシンジと戦えると思うと俺、ワクワクが止まらないんだ!」

 

どうやらカキもサトシもシンジとのバトルが待ちきれないようだ。ならばいい考えがあると、シンジは一つの提案を持ちかける。

 

「だったらタッグバトルをしてみない?カキとサトシ、僕とリーリエのタッグでさ。」

 

シンジの突然の提案に、サトシは面白そうだと更に興奮した様子を見せる。カキもそれはそれで面白そうだと同意する。リーリエもシンジに提案に異議を唱える様子も見せずに賛同する。

 

そしてリーリエはシンジの横に立ち、サトシとカキも二人の前に立つ。

 

「サトシ、足は引っ張るなよ?」

「カキこそ」

 

カキは一見皮肉にも聞こえる言葉を言うが、決してそのような感情はない。それどころか彼のその言葉はサトシに対しての信頼が感じ取れる。サトシもそのことが分かっているからこそ、そう一言だけ返したのだ。いつもは互いに競い合っている二人だが、今回は珍しく共闘……それも相手がシンジとリーリエと言う最強クラスのタッグであるためバトルをしないメンバーたちにさえ緊張が伝わってくる。

 

『これは面白そうなバトルになりそうロト!チャンピオンのバトルは要チェックロト。撮影なら任せるロト!』

 

ロトムは貴重なチャンピオンのバトルを撮影しようと張り切っているようだ。ポケモンスクールでの実力がトップクラスの二人に対し、チャンピオンともう一人のリーリエの試合となれば興味が尽きないのも頷ける。ポケモン図鑑としてのロトムであれば録画したくなるのも仕方のない事だろう。

 

「それにしても、流石はチャンピオンだな。目の前に立っているだけで威圧感が伝わってくる。」

 

前回戦うことが出来なかったカキは、シンジから自然と放たれる威圧感に押しつぶされそうになる。それは多くの強者の纏うオーラのようなものだ。しかし、それはシンジからだけでなくリーリエからも感じ取れる。それだけ彼女も自らに与えられた数多くの試練を乗り越えて辿り着いた境地と言うものなのだろう。

 

「では行きます!シロン!」

『コォン!』

「出番だよ!ニンフィア!」

『フィア!』

 

リーリエとシンジは同時にパートナーであるシロンとニンフィアを繰り出した。その二人のタイミングは完璧で、まるで打ち合わせでもしたのではないかと思わせるぐらい同じ動きだった。

 

「じゃあ俺はこいつで行く!頼むぞ!ガラガラ!」

『ガァラ!』

「なら俺はこいつだ!ルガルガン!君に決めた!」

『ガウ!』

 

カキはガラガラ、サトシはルガルガンを繰り出した。カキの出したガラガラはアローラのすがたであり、ほのお・ゴーストタイプと言う珍しい組み合わせだ。一方、サトシのルガルガンはシンジやリーリエも見たことのない姿をしていた。鮮やかなオレンジ色の体に、澄んだエメラルドグリーンの瞳。真昼の姿とも真夜中の姿とも違い、双方にもある特徴をしたそのルガルガンは、まるで黄昏の姿とでも言いそうな容姿をしていた。

 

「見たことのないルガルガンさんですね。」

「うん、気を引き締めて挑もう。」

 

シンジの言葉にリーリエも頷き、戦闘態勢へと入る。先手必勝と言わんばかりに最初に動いたのはサトシだった。

 

「行くぜ!ルガルガン!キュウコンにいわおとし!」

 

ルガルガンは細かい岩を多数生成し、いわおとしをシロン目掛けて放つ。しかし、シロン目掛けて一直線に迫るいわおとしは、第三者の攻撃によって遮られた。

 

「ようせいのかぜ!」

 

ニンフィアの見惚れるようなようせいのかぜにあっさりと阻まれる。それを見て驚くサトシであったが、そんなサトシたちにシンジが言葉をかける。

 

「これはチーム戦だよ?相手は一人じゃないからね。」

 

シンジの言う通りこれはチーム戦。いかにパートナーをサポートし、コンビネーションを合わせて攻め込むか。当然一人の時とは戦術の幅も違うし、攻め方守り方共に工夫が必要となってくる。シンジとリーリエはそのことがよく分かっており、コンビネーションもばっちりだ。その上互いの事を理解しているため息も合っている。サトシもそのことを理解し、パートナーであるカキとの連携を大事にしようとカキをチラリと見る。カキもサトシの考えを理解したようで目を合わせて頷く。

 

実際、カキとサトシは考え方こそ違うものの、戦闘スタイル自体は似ている。互いに攻撃主体のバトルスタイルであり、強い相手とバトルをするとどちらも燃えるのだ。勿論、サトシの奇想天外な戦い方はカキに真似することは出来ないかもしれないが。

 

「ガラガラ!ニンフィアにシャドーボーン!」

 

ガラガラはニンフィアに向かって走り出し、シャドーボーンによる近接攻撃を仕掛ける。それを防ぐためにシロンがニンフィアの前に出る。

 

「こおりのつぶてです!」

 

こおりのつぶてがガラガラ撃墜しようと正面から迫りくる。しかしガラガラの邪魔はさせないとサトシとルガルガンが動いた。

 

「いわおとしでガラガラを助けるんだ!」

 

ルガルガンは再びいわおとしを放つことでこおりのつぶてを相殺し、ガラガラへの障害を排除する。ガラガラはシロンとルガルガンの攻撃によって発生した煙を突っ切り、正面にいるシロンへとシャドーボーンを振り下ろす。だがそうは問屋が卸さない。

 

「ニンフィア!シャドーボール!」

 

シロンの背後からニンフィアが飛び出し、シャドーボールによってガラガラを迎撃する。これは先ほどのロケット団との戦いでも見せたコンビネーションだ。完全に油断していたガラガラはシャドーボールを正面から食らってしまい攻撃を中断させられた。日頃から強くなる向上心もあり、特訓している成果もあるため受け身をとりダメージを最小限に抑えることが出来た。

 

「ガラガラ!大丈夫か!?」

『ガラガァラ!』

 

カキの声にガラガラは骨を持った右腕を空に突き上げ大丈夫だ、と答える。一方、シンジとリーリエは互いに言葉にしなくとも出来ているサポートに目を合わせて頷き次の行動へと移る。

 

「今度はこっちから!ニンフィア!ルガルガンにでんこうせっか!」

「させるか!ガラガラ!アイアンヘッド!」

 

ルガルガンにでんこうせっかで素早い攻撃を仕掛ける。対してカキは、ルガルガンを守るためにアイアンヘッドで対抗するようにガラガラに指示を出す。ガラガラの頭は瞬時に鋼の様に硬化され、ニンフィアとの距離を縮めていく。

 

「シロン!ニンフィアさんをサポートしますよ!れいとうビーム!」

 

ガラガラにれいとうビームを撃ち、ニンフィアの邪魔をさせないように妨害しようとする。

 

「ルガルガン!アクセルロック!」

 

しかしルガルガンはシロンを標的にしアクセルロックで攻撃する。ルガルガンは風のように素早く駆け抜け、シロンがれいとうビームを撃つ前に止めることに成功する。シロンも不意打ちの攻撃によってダメージはかなりあるようだが、それでも膝をつくことはなく首を振って自らを奮い立たせる。

 

ガラガラとニンフィアは共に正面から勢いよくぶつかる。スペックだけで言えばシンジのニンフィアの方が圧倒的に上だろう。しかしこれはポケモンバトル。ポケモンの強さだけでなく当然タイプによる相性なども関わってくる。ガラガラの攻撃にニンフィアは押し負けてしまい、元の位置まで戻されてしまう。

 

アイアンヘッドははがねタイプの技であり、フェアリータイプのニンフィアには効果抜群だ。その上、シンジの持つニンフィアはフェアリースキン。ノーマルタイプのでんこうせっかがフェアリータイプに変化しているとはいえ、ほのおタイプを併せ持つガラガラには効果が薄い。パワー負けではないかもしれないが、ガラガラに押し負けてしまっても仕方ないことだ。

 

「流石にやるね、あの二人。」

「はい。立っているだけで目の前のお二人の強さは伝わってきます。シンジさんと一緒でも勝てるかどうか不安でした。」

「うん。でも……それでも!」

「はい!私たちは負けません!」

 

サトシとカキの強さを再認識し、余計に負けられない気持ちが溢れてきたシンジとリーリエ。サトシたちもその二人の感情を感じ取り、一層気合を入れ気持ちを昂らせる。

 

「凄いバトルだね。」

 

マーマネが四人の戦いを見てそう呟く。他のメンバーも同じ感想を持ったようでその言葉に同意し頷く。

 

「シンジが強いことは知っていたけど、もう一人のリーリエもこんなに強いだなんて。」

「うん、シンジとのコンビネーションもバッチリ。」

 

マオとスイレンもリーリエの強さに感心している。リーリエも二人の言葉を聞き、自分もあのリーリエの様に強くなれるのだろうか、と頭の中で考える。バトルの事に執着したことは全くないが、あの自分の姿を見ていると自分も強くなれないのかと期待が溢れてしまう。

 

「あの二人はアローラで出会ってから長く一緒にいたと言っていた。そしてシンジもリーリエの事が大事な存在だとも言っていた。だからこそ、彼らは互いの事をよく理解し、言葉にしなくても考えていることが伝わっているんだろうな。」

 

ククイの言葉にみんなは納得したように頷く。ククイの言う通り、彼らは長い間行動を共にしている。しかしそれだけでなく、リーリエにとってシンジは憧れの存在であり、シンジにとってリーリエは背中を追いかけてくるチャレンジャーでもある。二人のその関係こそがバトルにおいてコンビネーションを合わせるキッカケにも繋がっているのだろう。

 

みんながそう考察している間にもバトルは佳境へと進んでいた。互いにかなり激しいバトルを続けているため、体力も少なくなってきているようだ。

 

「くっ、やっぱりこの二人に勝つにはZ技しかない!カキ!」

「ああ、任せろ!しっかり決めろよ?」

 

カキの言葉にサトシは微笑みながら頷いて答える。どうやらサトシがZ技で攻め、カキがサポートをすると言う戦法のようだ。シンジも何かを悟ったように身構える。

 

「リーリエ、そろそろきそうだよ。気を引き締めていくよ。」

 

リーリエもシンジのその言葉に覚悟を決め頷いて答える。その頬には緊張のあまり僅かな汗が滴り落ちる。視聴しているみんなにも緊張が届いているなか、先に動き出したのはガラガラだった。

 

「ガラガラ!ホネブーメラン!」

 

ガラガラは手に持った骨を全力で投合する。その骨は横から薙ぎ払う様にニンフィアとシロンの二体を狙う。シンジとリーリエの指示によりジャンプして回避する。しかしその時にはサトシのZ技の準備がすでに整っていた。

 

「行くぜ!シンジ!リーリエ!これが俺の全力だ!」

 

 

 

 

 

――ワールズエンドフォール!

 

 

 

 

 

空中にはまるでフィールド全体を覆いつくすような巨大な大岩が出来ていた。その真下にはルガルガンの姿があり、ニンフィアとシロンを押しつぶすように投げ捨てる。これがいわタイプのZ技、ワールズエンドフォールだ。その破壊力は見た目に違わずとんでもないもので、流石のニンフィアとシロンでも当たってしまえば一溜まりもないだろう。

 

「リーリエ、まだ諦めてないよね?」

「勿論です!シンジさんも一緒ですから!」

 

フィールドには逃げ道はない。しかし、二人の眼に宿る闘志は一切消えていない。寧ろより一層強くなった気すらあった。一人のトレーナーとして諦めることは許されない。極限の崖っぷちまで追い詰められたからこそ、トレーナとしての本能が逆境を吹き飛ばそうとしているのだろう。あの二人ならばこの逆境すら跳ね返してしまうのではないか、とみんなは心の中で不思議とそう思ってしまった。

 

「ニンフィア!」

「シロン!」

『ムーンフォース!』

 

ロケット団にとどめを刺した時と同じように、ニンフィアとシロンの持つ最大の技による合わせ技を放つ。その攻撃はルガルガンの撃ったZ技に向かっていく。その結果は驚くべきものであった。なんと、二体の撃ったムーンフォースはルガルガンのZ技、ワールズエンドフォールと共に砕け散ったのだ。無残にも散ってしまったその破片は、心なしか美しさすら宿ったように落ちていく。その輝きにはほしぐもも大喜びしているようだ。恐らく何が起こったのか意味は理解していないだろうが。サトシとルガルガンも驚きを隠せない様子だが、それ以上に驚いているのはカキであった。

 

「なっ!?Z技があっさりと!?」

 

カキはZ技と言う存在に誰よりも強い拘りを持っている。そのZ技がZ技同士ではなくニンフィアとシロンによる合わせ技と言う驚くべき攻撃によって相殺されてしまったことにショックを受けたのだろう。だが、それでもあの二人の絆と強さがあれば不可能すら可能になってしまうのかもしれないと、心のどこかでは認めてしまっていた。

 

「リーリエ!」

「はい!任せてください!」

 

カキとサトシが動揺しているなか、今度はリーリエがZ技のポーズをとる。そのZ技はこおりタイプのポーズであり、可憐な姿をした彼女にはどこか様になっていた。

 

「行きます!これが私の全力です!」

 

 

 

 

 

――レイジングジオフリーズ!

 

 

 

 

 

 

リーリエがポーズを決めると、周囲は寒さを感じる程の冷気に包まれた。するとシロンの足元からは氷の柱が現れ、シロンを高い位置へと持ち上げる。シロンはその高度かられいとうビームとは比にならないほどの冷気を放つ。そのZ技は威力もスピードも凄まじく、Z技を撃った反動で体力を消耗しているルガルガンでは回避する力を残していない。ガラガラがそのZ技を代わりに受けようと盾になるも、ガラガラの体力も残り少なく次第に押し負けてしまう。当然後ろにいたルガルガンにも貫通してしまい、二体は共に凍りつきフィールドの外まで飛ばされる。その後は氷から解放され、ガラガラとルガルガンは戦闘不能となってしまった。

 

「ガラガラ!?」

「ルガルガン!?」

 

サトシとカキはそれぞれのパートナーに寄り添い抱きかかえる。やはり激しい戦いだったこともあり、二人ともかなり体力を消耗しているようだ。慌ててこの世界のリーリエが駆け寄り、救急箱を取り出して手当を行う。

 

「……はい、これで大丈夫です。」

「ありがとう、リーリエ。」

「サンキューな。」

 

キズぐすりで丁寧に直してくれたリーリエに二人は感謝する。ルガルガンとガラガラも落ち着いたようで今は二人の腕の中で眠っている。全力で戦ってくれたガラガラとルガルガンに感謝しながら、モンスターボールへと戻す。

 

その後、シンジとリーリエがニンフィアとシロンを連れて二人にゆっくりと歩み寄る。ほしぐもちゃんもリーリエの事が気に入ったようで、腕に抱かれたままどこか嬉しそうな表情を浮かべている。

 

「あ、あの、大丈夫でしたか?」

 

どうやらもう一人のリーリエはルガルガンとガラガラの怪我を心配してくれているようだ。その優しい言葉をかけてくれたリーリエに、二人は「問題ない」と答える。その言葉にリーリエは安心したようにホッと一息つく。

 

「それにしても二人とも凄かったな。完敗だよ。」

「全くだ。完璧なコンビネーションには驚かされることばかりだった。」

『今のバトル、バッチリ録画できたロト!凄まじいバトルを撮らせてくれて感謝するロト!』

 

サトシとカキ、ロトムの素直な感想にリーリエは頬を僅かに赤く染めながら照れる。あまり褒められる事には慣れていないようだ。シンジもそんなリーリエを見て思わず笑顔を零す。

 

「二人はとても仲がいいんですね。」

「シンジさんは、私にとっては憧れの人、そしてかけがえのない人ですから。」

 

リーリエがもう一人のリーリエにそう言うと彼女はそう答えた。その答えに今度はシンジが赤くなりながら照れた表情をして、その様子を見たみんなにも二人の仲の良さが伝わってきた。

 

「そう言えばシンジたちはまだ時間はあるのか?」

「うん、まだ大丈夫だけど?」

 

サトシの疑問にシンジは何も問題ないと答える。すると今度はサトシが一つの提案をした。

 

「だったらさ、もう一つの世界の話、聞かせてくれないかな?ほしぐもの話も少しでもいいから聞いてみたいし。」

「あっ、それ私も興味ある!」

「聞きたい、向こうの世界の事!」

「確かに興味あるよね。僕も聞いてみたいな!」

「ポケモンリーグを建てたあっちの俺の話も気になるな。」

 

サトシの提案にマオ、スイレン、マーマネ、ククイが興味津々な顔で賛同する。カキ、リーリエ、ロトムも同じく興味があるようだ。シンジとリーリエも互いの顔を見て頷き、快く承諾した。ほしぐもちゃんもリーリエに抱かれたまま心地よさそうにしていた。

 

その後、彼らはシンジたちの世界の話で盛り上がった。ここにいるメンバーは向こうの世界では話し方や手持ち、それにやっていることも違うという事。それぞれがキャプテンを務めているという事。チャンピオンとして初めて戦ったのがククイ博士だという事。リーリエとシンジが共にカントー地方で旅をし苦難を乗り越えたこと。そして、その後の長き旅路の事も……。

 

皆、それぞれ興味深そうに聞いており、それぞれが色んな思いを抱いて聞いていた。自分とは全く違う姿の自分。自分に与えられた大切な役割。そして人との繋がりと大きな冒険。冒険が大好きなサトシは目をキラキラさせてシンジの話を聞いており、カキは感動のあまり涙を流している。マーマネは別の世界でもどこか自分に似ている部分もあるなと感じている。

 

スイレンとマオは、リーリエにシンジとの関係性について興味深そうに尋ねていた。リーリエもそのことについては流石に恥ずかしさがあり、終始顔を赤くしていた。こっちの世界のリーリエは、ほしぐもちゃんの話を一片だけでも聞いて彼の正体に興味が湧いていたようだ。彼の力にも謎が多く、それらもいつかは解明出来たらいいなと思った。

 

ククイももう一人の自分が考えられないほどの偉業を成し遂げたことにどこか親近感を感じていた。いつか自分も彼がしたことと同じくらいスケールのデカいことをしてみせると心に誓う。

 

ロトムはロトムで、シンジの持っていたロトム図鑑と共に図鑑内容を比較して競い合っていた。当然と言えば当然だが、シンジのロトム図鑑に比べ、こちらのロトム図鑑は島巡りによる経験が未だないため図鑑登録数が劣っていても仕方のない事だろう。後々、いつかシンジのロトム図鑑を超えて見せようとサトシを急かしていた。

 

シンジとリーリエは、こうして再び非現実的な経験を味わった。同時に、サトシたちもこれ以上に貴重な経験は味わえないだろうと、今回の出来事を深く噛み締める。

 

 

 

 

 

 

 

しかし、これはあくまでもしもの話。実際に起こった出来事かどうかは…………これを見ている皆の想像にお任せする。もう一人の自分との出会い、大切な存在、仲間たちとの再会、そして別世界の友人。次にこれらの不思議な経験を味わうことが出来るのは、もしかしたらあなたなのかもしれない…………。

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 




夢落ちっぽく終わらせてみました。偶にはカッコよく決めてみたかったですの……。決してどうやって終わらせればいいか分からなかったわけではない。ホントダヨ?

そしてリーリエ急成長なり。作中ではシロンとフシギソウが進化していましたが、どこで進化させるかはまだ未定です。少なくともカントー編で進化させることは恐らくないと思われます。まあ流石に最終的には進化させることくらい予想しているとは思うので、ネタバレではない……よね?

キャラが多いと書くの難しいのでアニポケキャラの性格とか喋り方がこれであってるのか分からないです。特にリーリエに「論理的結論として」を言わせたかったのですがタイミングが全く分からなかったです。非力(ry

では次回は本編です。先週の様に予想GUYに忙しくならない限りは書き上げます。ここで書くと言ってしまっては逃げ道がなくなるので(ボソッ

で、ではではまた来週ノシ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。