ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

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マスターデュエル1周年、プリコネ5周年おめでとー!


子どもたちの一日

アローラ地方メレメレ島にあるポケモントレーナーズスクール。ここではポケモンについての知識を身につけたい人が学ぶために通う施設である。そしてこの小等部ではまだ年齢制限の関係でトレーナーになれていない子どもたちが、立派なトレーナーとなるために今日も楽しく学び舎へと通っている。

 

そこにいる一人の少年もまた立派なトレーナーを目指している一人である。その少年の名はロウ。チャンピオンシンジの息子である。ロウは今日も妹のティアと共にトレーナーズスクールで勉学に励んでいる。

 

今日の授業はポケモンのタイプについての問題だ。ポケモンバトルにおいてポケモンのタイプ相性というのは最も基本的かつ最も重要な項目であることは言うまでもない。例えばほのおタイプはくさタイプに強く、くさタイプはみずタイプに強く、みずタイプはほのおタイプに強い、と言った具合にだ。

 

ポケモンバトルをメインとしないポケモンブリーダーになった場合でもタイプを知識として取り入れるのは重要なことである。ポケモンのタイプをしっかりと把握しておくことでそのポケモンに必要な栄養、好みの味、健康状態のチェックなど、幅広い分野で役立たせることができる。ポケモンにおいてタイプとは、人間における血液型や細胞などの遺伝子情報に近しい重要性があるのである。

 

「ではここで問題です。チャンピオンのパートナーであるニンフィアはフェアリータイプです。フェアリータイプに効果が抜群な技はほのおタイプですか?それともはがねタイプですか?」

 

この問題の答えに子どもたちは頭を悩ませる。まだこの問題は難しかったかと先生は苦笑するが、その問いに一人だけ手を挙げている者がいた。先生はその生徒の名を呼び指名する。

 

「ではロウ君。この問題に答えられる?」

「はい。フェアリータイプに弱点のタイプははがねタイプです。」

「その通り!よくできました。」

 

ロウは簡単に問題の答えを言い当てる。その答えに流石はチャンピオンの息子だとかの称賛を贈られる。同じクラスで授業を受けている妹のティアモ、鼻高々と言った様子で「流石はお兄様」と称賛の声を贈っていた。

 

実はこのクラスの生徒たちは皆、ロウとティアがチャンピオンの子どもたと言うことを認知している。しかしチャンピオンの子どもだからと言ってクラスメイトは特別な扱いをすることはなく、精々先ほどの様な賛辞を与える程度であったためロウたちにとっても居心地は悪くないと感じている。

 

答えを言い当てたロウは自分の席に着席する。先ほどの問題に先生は補足説明を入れるのであった。

 

「フェアリータイプのポケモンにはがねタイプは効果抜群です。対してほのおタイプの技はフェアリータイプのポケモンに対して効果は普通ではありますが、フェアリータイプの技はほのおタイプに対して効果はいまひとつです。このように必ずしもお互いが抜群、いまひとつの関係と言うわけではありませんので気を付けてくださいね。」

 

先生の言葉に生徒たちも「はーい」と元気よく答える。ポケモンの相性は絶対的に相反作用があるわけではなく、時には片方のみに影響を及ぼしたり、またある時は同じタイプ同士で弱点であったりとかなりややこしい関係で成り立っている。覚えるまでには時間がかかるが、一度覚えてしまえば忘れることは中々ないであろう項目だ。

 

授業が終わり移り変わってグラウンドに集合する生徒たち。今度は座学ではなくポケモンバトルに関しての実技試験だ。

 

とは言えポケモントレーナーではない彼らには自分のポケモンを所有することは許されていない。そこでスクールで使用するのはここで管理している貸し出し用のポケモンたちである。ちゃんとしつけも済ませているため、ポケモンと日常的に触れ合ったことのない子にも言うことを聞く扱いやすいポケモンたちばかりである。

 

万が一危険がないために二人一組で順番にバトルをしていき先生がちゃんと監督する形式となっている。そして順番が流れていき、いよいよロウの出番となった。しかし……。

 

「イワンコ!かみつく!」

「ガーディ避けて!」

 

ロウがイワンコにかみつくの指示を出すが、相手のガーディはその攻撃は横に飛んで回避する。攻撃を躱されたことに隙が生じたイワンコにガーディはすかさず反撃をする。

 

「ひのこ!」

『ワウ!』

『イワッ!?』

 

ガーディのひのこがイワンコに直撃する。効果はいまひとつではあるもののどちらもバトル用に育成した個体ではないため今の一撃でガーディは大きく弱る。無理にバトルを継続させて無茶をさせるわけにはいかないので、審判も務めていた先生はそのバトルを中断する。結果的にロウは残念ながらバトルに負けてしまったのである。

 

「ごめんね、イワンコ。君の力を活かせなくて。」

『イワッ』

 

謝るロウにイワンコは身体を擦り付けて笑顔を見せる。どうやら彼は特に気にしておらず、ただただロウに甘えているようだ。そしてロウはイワンコを連れてフィールドから出て、次の出番となる妹のティアと交代する。

 

「お兄様の敵は私がとるよ!」

 

敵と言っても対戦相手は別人ではあるのだが、兄であるロウが負けたことでティアの心に火がついたようである。ティアのパートナーとなったポケモンはコリンク。コリンクは元々気性の荒いポケモンではあるが、人に慣らせば忠実に従ってくれる頼れるパートナーとなるポケモンである。

 

そして対戦相手はノーマルタイプのエイパム。動きが身軽で素早いことで有名なポケモンだがイタズラ好きで、言うことを聞かせられるようになるまでは少々慣れと時間がかかる。だがそこはスクールが選んだポケモン。先ほど説明した通りちゃんと子どもでも扱えるようにしつけられているため問題はない。

 

ロウに続いてティアの対戦が開始される。しかし開始早々、すぐに動き出したのはティアではなく対戦相手のエイパムであった。

 

「エイパム!スピードスター!」

『エイパッ!』

 

エイパムは星型の弾幕、スピードスターで先制攻撃を仕掛ける。攻撃は最大の防御、を体現するかのように放たれる無数のスピードスターがコリンクに襲い掛かるが、ティアは意外にも冷静にこの攻撃を対処する。

 

「コリンク!後ろに避けて!」

『リンクゥ』

 

コリンクはティアの指示に従いバックステップで回避する。初心者とは思えない冷静な対応力に、観戦していたクラスメイトたちは感嘆の声をあげていた。

 

「っ!?エイパム!みだれひっかき!」

『エパァ!』

 

あっさりと躱されてしまい、対戦相手の生徒はしびれを切らして接近戦に移行する。しかしそれは悪手であり、初心者によくある失敗だ。ティアはその行動を読み切っており、再びコリンクに回避の指示をだした。傍から見たら劣勢な状況に見えるものの、ティアは的確な指示を出してエイパムの攻撃を回避していた。

 

するとすぐにエイパムの状態に変化が訪れる。エイパムは息を切らし、明らかに疲労を見せている状態になる。バトル用に育成が充分にされていないレンタルポケモンであるため、体力なども一般のポケモンに比べて少ないだろう。ティアはそのことをバトル前から既に読み切っていたのである。

 

その隙を見たティアはチャンスだと思い、遂にコリンクに攻撃の指示を出した。

 

「コリンク!かみなりのキバ!」

『コリンッ!』

 

エイパムの動きが遅くなり攻撃が大振りになった隙を見つけ、ティアはコリンクにかみなりのキバの指示をだした。コリンクは鋭いキバに電撃を纏い、エイパムの腕に噛み付いた。エイパムはコリンクの鋭い電気に体が痺れ動くことができず、痛みと共に膝をついた。

 

「そこまでです!」

 

これ以上の続行は不可能と判断し、先生は二人のバトルを止める。ティアは無傷で完璧な勝利を掴み、クラスメイトたちからは流石だと言った称賛の声を多く飛び交っていた。ロウも同じく戻ってきたティアを褒めるのであった。

 

「流石だねティア。やっぱりバトルは君の方が上みたいだ。」

「ありがとうお兄様!でも勉学ではお兄様に勝てないから。」

 

今のバトルを見て分かる通り、バトルに関してはティアの方が上だ。ティアは大人しくしているのが苦手で本などもじっくりと読むことができない。一方でバトルに関するセンスはピカイチであり、ポケモンと息を合わせて戦う姿は将来性を感じさせるものがある。天性の天才肌なのか、はたまたただの感覚派なのか。

 

ロウはバトルは妹に比べて苦手なものの、勉学による記憶力はクラスメイトの中でも群を抜いている。

読書が趣味であり過去のバトルを見返したりなど真面目で努力家なのだが、真面目過ぎるのが仇となりバトルの時に臨機応変な立ち回りができないのである。また本番には弱く、彼自身が緊張してしまうのかバトルでは本領を発揮することなく負けてしまうのだ。

 

それでも互いの夢は正反対であり、ロウはバトルは苦手だが将来両親の様な立派なトレーナーになることを夢見てバトルのことも勉強している。ティアはバトルのセンスがあるのだが特にトレーナーになりたいと言った夢は持っておらず、女の子らしく母親のような綺麗で大人の女性になり、父親のような立派で素敵な男性と結婚することを夢見ている一人の少女である。

 

どちらもお互いに持っていないところを羨ましがっているが、だからこそ互いに支え合ってお互いを参考にしようと努力している。もちろん彼らはまだ幼い子どもであるためまだまだその努力が実るのは先になりそうではあるが。

 

バトルの授業も終了し、今日一日の終わりのチャイムが鳴り響く。先生の挨拶でスクールの一日が終了し、さようならと先生や同じクラスメイトたちに別れを告げる。ロウとティアも帰り支度をし、家への帰路を辿る。

 

「今日も楽しかったねお兄様!」

「まあね。でもまたバトルに勝てなかったんだよな~。」

「それを言ったら私も先生の質問に答えられなかったし。あーあ、やっぱり私は考えるより体動かす方が好きだなー。」

 

いつものように今日の振り返り、そして他愛のない話、それから家族の話をしながら歩みを進めていく。そして家に着くと、家の外ではロウとティアの大好きな人たちが二人の帰りを待っていてくれたのである。

 

「あっ!お父様!お母様!」

 

そこにいたのはロウとティアの両親、シンジとリーリエであった。ティアは二人の姿を見つけるとすぐに二人に抱き着きシンジとリーリエは愛娘のことを抱き留めた。ロウもティアの後を追いかけて父親に疑問を問いかけた。

 

「お父様、今日はお仕事大丈夫なのですか?」

「うん。今日は昼に終わったからね。折角だからロウとティアの帰りをここで待ってたんだ。」

「じゃあじゃあ!今日はずっと一緒にいられるね!私お父様といっぱいお話ししたい事あるの!」

「こらこらティア。あんまりお父さんを困らせちゃだめですよ。」

 

普段シンジは夜遅くまで仕事をしていることが多いため、子どもたちとはほとんどお話をする機会がない。それ故にこのような休みは貴重で、ティアは嬉しさのあまり落ち着きがない状態となってしまった。しかも休みの日であっても緊急で仕事が入ることもあり、彼自身がゆっくりと過ごす日も少ない。大好きな父親と共に長い時間を過ごせるのだから嬉しくないわけがない。もちろんそれはロウも同じで、少々もじもじとしているようにも見える。

 

「大丈夫だよリーリエ。じゃあ今日は学校で何をしたのか教えてもらおうかな。」

 

シンジのその言葉に子どもたちは元気で答え、その様子を見たリーリエは微笑ましいものを見て笑みを浮かべる。そしてシンジたちは全員家の中に入り、家族全員で仲良く話し続けていた。

 

こうしてシンジ一家の長いような短いような一日が過ぎていく。疲れて幸せそうに眠る我が子を見て、シンジとリーリエは共に優しく微笑むのであった。




やさいせいかつ

明日からニンフィアのレイドが始まるのでちょっと本気出す。

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