ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

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あけおめことよろです!

新年早々名前の通り未来編突入です。

ここからは気ままに思いついたら投稿する形なのでペース遅くなるかもです。元々定期的じゃなかったって?(´・ω・`)


未来編
約束から幾年・・・


ここはアローラ地方、メレメレ島。そこにあるアローラで最も大きな街、ハウオリシティ。そこから少し離れた街外れに一軒だけ建っている家があった。そこに住んでいるのは一つの変わりない幸せな家族の姿。普通に過ごしているだけの、普通の家族のお話。

 

「よし、朝ごはんはこれでバッチリですね。あとは……」

 

金髪のポニーテールをした女性は朝食を作り終えたことで作業を終了したため、髪留めを外して綺麗な長髪靡かせ着用していたエプロンを脱いで慣れた手つきで折畳む。

 

一息つきエプロンをソファの端に置く。そんな彼女に二人の子どもが笑顔で近付いてきた。一人は8歳ぐらいの黒髪の男の子。短い髪と黒い瞳、どこにでもいそうな普通の男の子である。そしてもう一人は6歳ぐらいの金髪セミロングに緑眼をした元気な女の子。今は6歳であるためまだ幼さがあるが、大人になったら美人になるであろう容姿をしている。髪の色や眼の色に違いこそあれど、顔のパーツや輪郭などを比較してみると二人が兄妹なのだという事がすぐに分かる。

 

女の子は女性の足元に抱き着いてきた。嬉しそうに「お母様!」と口にしているところを見ると、少女は抱き着いている女性の子どもなのだろう。男の子も同じくお母様と呼びかけると、母親の女性は子どもたちの名前を呼んだ。

 

「おはようございます、ロウ、ティア、二人は今日も元気ですね。」

『おはよう(ございます)!お母様!』

 

子どもたちは元気よく挨拶を返す。分かるとは思うが、男の子の名前がロウで女の子の名前がティアである。

 

「お母様、朝ごはんできた?」

 

ロウは母親に疑問を問いかける。母親はその疑問に笑顔で「ええ、できましたよ」と返答すると、二人は満面の笑みで喜びの表情を浮かべていた。それほど彼らは母親の料理が大好きなのだろう。

 

「ではお父さんを呼んで来てくれますか?いつもみたいにみんなで食事をとりましょう。」

『はーい!』

 

そう言って子どもたちはバタバタと二階の父親の部屋に突入していく。案の定彼らの父親は気持ちよさそうにスヤスヤと眠っており、慌ただしく入ってきた子どもたちにも気付いている気配がない。

 

「お父様、朝ごはんの時間だよ。起きて!」

 

そう言ってロウがユサユサと父親を揺らして起こそうとするも、父親は寝返りをうつだけで起きることはなかった。元々父親自身が朝に弱いという事もあるのだが、仕事が多忙で疲れていると言うのもあるのだろう。一家の大黒柱であるためそれ自体は仕方ないことではあるのだが、このままでは折角の朝食も冷めてしまう。

 

事情を知っている子どもたちも本当は大好きな父親を寝かせてあげたいところではあるのだが、このままでは折角母親が作った朝食も冷めてしまって勿体ない。そう思ったティアは、いつもの手段で父親を起こすのであった。

 

ティアは父親の部屋のテーブルに乗ってるモンスターボールを手に取り、中からポケモンを繰り出した。繰り出したポケモンは小さく白色の身体をしており、綺麗な毛並みと大きくもふもふな尻尾。父親のポケモンである色違いのイーブイである。

 

『イブ?』

「イーブイ。いつもみたいにお願いね!」

『イッブ!』

 

ティアがイーブイにお願いすると、イーブイは父親の上に乗っかった。すると尻尾を顔に向けて軽くペチペチと左右に振って叩くのであった。頬に伝わる軽い痛みが父親の脳を覚醒させ、父親はバッと飛び起きるのであった。

 

「いっつつ、イーブイ?もう少し優しく起こしてくれると助かるんだけど……」

『イブ!』

「お父様が早く起きてくれれば助かるんだけどねー。」

「あはは……はい、すいません。」

 

まるで形無し、と言った様子で父親は娘のティアに謝る。親子の立場が逆転しているように見えるがこれがこの家族の日常的な会話。それでもロウとティアは父親のことが大好きであり、父親の事を誰よりも尊敬しているのである。

 

ロウとティアはようやく目覚めた父親に早く降りてくるようにと急かすようにして部屋を出て行った。子どもたちに頼まれたら断れないなと、父親も手早くパジャマから部屋着に着替え準備を済ませ一階へと降りて行った。そしてそこで、父親と母親は顔を合わせ夫婦同士朝の挨拶を交わすのであった。

 

「おはようございます、シンジさん。」

「ああ、おはよう、リーリエ。」

 

そう、この家族とはアローラ地方初代チャンピオンのシンジと、アローラリーグ優勝経験のあるリーリエの家庭である。二人が戦ったあのアローラリーグが終わり二人は正式に付き合うようになった。そして7年の年月が経ち両者が20歳を迎えると二人は結婚。二人には愛の結晶であるロウとティアが生まれ、それ以降は大きな事件が起こることもなく順風満帆、30歳を迎えて二人の子どもを授かり、普通の家庭と同じ幸せな生活を送ることができているのである。

 

また、今もまだチャンピオンであるシンジの座を脅かす者は現れることなく、彼は初代チャンピオンとして君臨し続けている。アローラのトレーナー誰もが憧れ目標としている父親の姿をロウとティアも誇りに思っていて、自分たちも父親のように強い存在になりたいと夢に見ているのである。

 

「子どもたちも待っていますし、早速朝ごはんを食べてしまいましょう。」

「うん、そうだね。」

 

子どもたちが待ち遠しそうに席に座っているのを見て苦笑したシンジとリーリエも一緒に席に着く。四人は同時に『いただきます!』と言うと子どもたちは待っていましたと言わんばかりにすぐさま朝食にかぶりつく。

 

「ん~!やっぱりお母様のご飯はおいしー!」

「そうだね。お母様のご飯はとっても美味しいです。」

「ははは、そう言ってくれると作った甲斐があります。まだお父さんには届きませんけど……」

「謙遜しなくてもいいよ。僕もお母さんのご飯は大好きだからね。」

「もう、シンジさんまで……」

「お父さんとお母さんラブラブー♪」

『っ///』

 

娘にからかわれて顔を赤く染めるシンジとリーリエ。そんな他愛もない会話を交わしながらシンジたち家族の朝の時間は過ぎていく。

 

美味しい朝食の時間が終わり満足した子どもたち。彼らのポケモンたちも朝のポケモンフーズを食し満足して一休みしている。ロウとティアは丁度いいサイズのイーブイを抱きしめてソファーに座りテレビを見ている。イーブイも特に抵抗を見せることなく子どもたちにされるがままになっているのは、彼らの兄貴分になった気でいるためである。どことなく彼の顔がふんすっ、とドヤ顔をしているように見えなくもない。最もロウとティアはイーブイの事を可愛がっているだけなのであるが。

 

ロウとティアはDVDを再生する。今流しているのはかつてシンジとリーリエが対決したアローラリーグの記録である。二人は両親が最高の舞台で戦ったこのバトルを見るのが好きで、視聴回数は既に10回以上を超えているだろう。とは言えシンジとリーリエにとって自分の若い頃の映像を子どもたちに隣で見られるのは少々気恥ずかしく思えてしまうのだが、熱中して見ている子どもたちに見るななどと言えるはずもない。

 

テレビでは視聴するのも何度目かになるシンジとリーリエの激闘の様子が流れていた。若い頃の父と母の熱い戦いに興奮する観客と一緒になって、自分たちも声援をあげる。二人からは「お父様がんばれー!」や「お母様も負けるなー!」といった声が聞こえてくる。結果は何度も見ているため分かり切っているのだが、それでも子どもたちはまるでその場にいるかのように熱中して必死に応援を繰り返していた。子どもらしいその姿に、シンジとリーリエも親としての自覚が生まれてきたのか自然と互いの顔を見合わせ微笑んでいた。

 

「そう言えばお父様。」

「ん?どうかした?ロウ」

「もうすぐお父様のエキシビションなんだよね?絶対応援に行くからね!」

「お父様!頑張ってくださいね!」

「ありがとう。お父さん頑張るよ。」

 

シンジは優しくロウとティアの頭を撫でる。父親の温かく大きな手の平に安心感を抱いた子どもたちは嬉しそうに微笑んだ。その光景を見ていた母、リーリエもまた自然と心の中から幸せいっぱいの温もりを感じていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後――

 

シンジのエキシビションマッチの日がやってきた。毎回チャンピオンへの挑戦者が現れるわけではないため、目標であるチャンピオンの強さを示し、島巡りのトレーナーたちを鼓舞するため定期的に行う必要があるこのエキシビションマッチ。現在シンジは対戦相手とのバトルに奮戦中である。

 

「ニンフィア!ムーンフォース!」

『フィーア!』

 

チャンピオンの相棒、ニンフィアのムーンフォースがアローラの姿をしたゴローニャに直撃。ゴローニャはその一撃によって瀕死のダメージを負い仰向けに倒れ、目を回し戦闘不能状態となってしまった。圧倒的な力の差、そして舞うような華麗なチャンピオンのバトルに観客たちは大興奮。もちろん興奮していたのは観客たちだけでなく、チャンピオンの子どもであるロウとティアも同じであった。

 

「見た見た!お母様!お父様のニンフィアはやっぱり最強だよ!」

「ええ、そうですね。あの人はアローラで最強のトレーナー、チャンピオンですからね。」

 

ロウとティアがそれぞれ興奮しながら今のバトルの感想を言い合っていた。それを見てリーリエは微笑ましいなと優しく見守っていた。恐らく自分の母親も昔はこんな気持ちだったんだろうな、と幼い頃の自分と兄を見ているようでどこか懐かしい気分になっていた。

 

エキシビションの公開が終了し、家に帰宅したリーリエたち。暫くして時刻は夜の10時を過ぎてもうすぐ日も変わろうとしていた頃。チャンピオンの務めを終えたシンジも自宅へと帰還した。

 

「ただいま。」

「おかえりなさい。お疲れ様でした。」

「あれ?ロウとティアは?」

 

いつもなら元気に迎えてくれる二人だが今日はリーリエのみであった。どうしたのかと尋ねると、リーリエは口にすることなくソファーを指差した。するとそこには既にスヤスヤと寝入ってしまっているロウとティアの姿があった。

 

「さっきまではお父様の帰りを待ってる、なんて言ってましたけど、気が付いた時には静かになっていて。」

「そっか。」

 

ロウが寝返りをうったことで毛布がズレてしまったため、シンジは優しく毛布を掛け直す。子どもたちの可愛い寝顔に癒され今日一日の疲れが取れた気がして、起こすのも悪いからこのまま寝かしておこうとソッとしておくことにした。

 

「私、シンジさんと結婚して、二人の元気な子どもに囲まれて、平和な日常が過ぎて……。あの時みたいな冒険はもうないですけど、毎日が楽しくて。私今、とっても幸せです。」

「それは僕もだよ。あの時はまだまだチャンピオンとして駆け出しで、将来家庭を持つことなんて考える余裕もなかった。でも今、大好きな人と一緒にいられて、家族のために毎日を頑張ることができる。これ以上の幸せ他にないよ。」

「あはは、改めて思うとなんだか恥ずかしいセリフ言ってますね、私たち。」

「それは昔からだからね。愛してるよ、リーリエ。」

「はい。私も愛しています、シンジさん。」

 

二人は静かに口づけを交わす。そう、ここからは何もない、ただただ幸せな普通の家族の生活を描いただけの物語である。

 

 




本日息子と娘登場となります。名前の由来はハワイの植物名を調べたので以下の通りです。

ロウ→ヤシ科の『ロウル』

ティア→アカネ科の『ティアレ』

こう言ったものにはあまり詳しくない上にヌシはウマシカであるため人名にしやすそうなものを二つ雑に選びました。

現在レジェンドアルセウス2周目をプレイしてザックリと内容の再確認をしているので、次できたらアルセウス編を進めるかと思います。ただし恐らく内容や進行がオリジナルに変更される可能性があります。主人公がそもそも原作と異なるので。

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