ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

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悩んだ結果アルセウスのお話を進めることに。思いの外未来編のお話が思いつかずに四苦八苦しています・

最近プライベートだけでなくお仕事も忙しくなる日々。楽しいからいいけども


シンジュ団とコンゴウ団と異変の始まり

シンジがこの世界にやってきてから2週間が経過し、順調に調査範囲も拡大していき今まで停滞していたポケモン調査もシンジのおかげでかなり進んできている。ギンガ団としての活動でもある人助けも順調であり、今まで正体不明のシンジの事を警戒していた村の人々も彼に色々と助けて貰い今ではすっかりとこの村に打ち解けている。

 

シンジ、テル、ショウが調査から帰還し村へと戻ってくる。調査の報告をしようとシマボシ隊長の元へ向かおうとすると、ギンガ団本部の前にて二人の男女が言い争いをしているのが目に入った。

 

一人は短い金髪で少し露出の高い赤い服を着用している少女。南国っぽい衣装は冷え込むヒスイ地方においてかなり珍しく、ひとり異彩を放っているように感じさせる。

 

もう一人は少女とは対照的に青色のジャケットを着用しておりかなりの厚着。同じく青を基調としてはいるが黄色、緑色も混じった特徴的な髪色で後ろで束ねている独特な髪型は、少女とはまた違った意味で異彩を放っているとも言える。

 

「なんであんたと鉢合せちゃうのかしらね。全く、嫌になるわ。」

「それはこっちのセリフだ。毎度毎度お前と話してたら時間が勿体なくて仕方ねぇ。」

「言っとくけど、わたしはあくまでデンボクさんに呼ばれたから来ただけで、あんたと慣れ合うつもりはないから。」

「それは俺だって同じだ。そもそも俺はお前が突っかかってこなければ言い争いなんかする気はねぇよ。」

「は?わたしが悪いっていいたいわけ?大体、あなたたちコンゴウ団はシンオウ様の事を全く理解していないわ。」

「それを言ったらシンジュ団こそ違う。シンオウ様は我々に貴重な時間を与えて下さった。それを無駄にするなんて失礼だろう。」

 

二人は仲が悪いのか両者共に悪態が止まらない。共に言い争いをしながらギンガ団本部へと入っていく。

 

「えっと……今の二人は?」

「女の子の方はカイちゃんって言って、シンジュ団の長を務めてるんだ。」

「もう一人の男の人はセキさん。カイと違ってコンゴウ団の長を務めているんだけど……。」

 

どうやら二人の話によると彼らの率いる組織であるシンジュ団、コンゴウ団は思想の違いから対立をしているらしい。先代の時代では仲が悪いという事はなかったそうだが、セキとカイの世代になってから神として崇めるシンオウ様の姿がも異なる、と言う考えから次第に仲が拗れてしまったそうだ。

 

何故かギンガ団が仲介役となっているため両組織が争うことはないが、何分長が顔を合わせるたびに言い争いをしているため両者の溝が埋まるどころが広がる一方で一向に関係性が改善されない。今のところ大きな問題はないが、いつかは何とかしないといざという時に協力することができないのではないか、と言うことが最近のギンガ団の悩みでもあるらしい。

 

とりあえず報告を済ませようと本部に入室するシンジたち。そこではギンガ団隊長であるシマボシからある言伝が伝えられた。

 

「調査ご苦労であった。だが報告の前に、デンボク団長が君たちを……正確にはシンジを呼んでいる。」

「僕を、ですか?」

 

先ほどカイも口にしていたデンボク団長。ギンガ団結成のきっかけとなった人物でギンガ団の団長その人。シンジも一度あったことはあるが、「ポケモンの考えていることなぞ人には分からん」とシンジの考えを否定する考えを口にしていた。彼自身悪い人ではないのであろうが、正反対の考えを持つ彼のことをシンジは少々苦手意識を持っている。

 

デンボク団長が呼んでいるなら早く行った方がいいと、テルとショウはシンジに団長の元へと急ぐよう誘導する。隊長への報告は彼らに一任し、シンジは急いでデンボク団長のいる3階へと向かった。しかしそこでは……。

 

「ったく、シンジュ団は自分のポケモン管理もできないのかよ。」

「うっさいわね!あなたにとやかく言われる筋合いなんてないわよ!」

 

案の定そこでは先ほどの二人、カイとセキが相も変わらず言い争いをしており、黒い着物にファーコートを羽織ったガタイの言い男性、デンボク団長が呆れかえっている様子があった。

 

「二人とも、いい加減にしなさい。もう彼が来ておる。」

「ん?おお!あんたが噂の優秀な新人か。」

「ふぅん、この子がねぇ。」

 

シンジの姿を確認したセキはなるほどと頷くようにしてシンジのことを凝視していた。先ほどまで悪態をついていた時とは裏腹に、快くシンジを迎え入れている姿にこれが本来の彼なのかとシンジは安堵する。

 

しかし一方で、カイは警戒した様子でシンジと少し距離を置いているように感じる。セキはシンジの事を受け入れていたが、本来であれば身元が不明の人物が目の前にいたら警戒するのが普通であるだろう。それも組織のリーダーともなれば当然の対応である。その辺はシンジも理解しているため彼女に対して嫌悪感を抱くことは一切なかった。

 

「シンジ、来てくれたか。感謝するぞ。」

「いえ。それより自分に用件とは……」

 

シンジは早速本題に入ろうとデンボクに用件を尋ねる。デンボクは「うむ」と頷くとシンジにある質問をする。

 

「シンジ。君は先日大きな雷が落ちたのを知っているかね?」

「いえ、ですがテルやショウたちから話は聞いています。」

 

実は先日の夜中に大きな落雷がこのヒスイ地方に響いたのである。コトブキムラの人間たちはその落雷に気付いていたのだが、何故かシンジだけはその落雷に気付くことがなかったのである。

 

デンボクはそのことに少し違和感を感じながらも、今は急を要するため気にすることなくシンジに今回の用件を伝える。

 

「実はその落雷が落ちてからこの黒曜の原野に住むキングに異変が起きたのだ。」

「キングに、ですか?」

 

キングとはこの地方に存在する通常の個体よりもひと際強力な個体のポケモンである。この世界の神にも等しいシンオウ様より力を授かり、より強力な力を所有しているキング・クイーンと呼ばれる個体。本来であれば周辺のポケモンたちに比べ圧倒的な力の差を持っていることから、縄張り争いの必要もないため比較的温厚な性格のはずである。

 

しかし、デンボクの話によると各地に点在する彼らは突然凶暴化し、周辺のポケモンだけでなく人間にさえ危害が及ぶ危険が高まってしまっているらしい。そこでポケモンの扱いに長けているシンジに彼らを鎮めるための任務を依頼したいとのことであった。

 

ショウやテルはと尋ねてみたが、彼らはモンスターボールを投げることすらままならず、ポケモンの捕獲成功率がかなり低い。実際モンスターボールを動く的、つまり生きたポケモンに当てるのは本来非常に困難で、それをいとも容易く熟してしまうシンジの方が異端であると言われても、正直彼には反論が難しかった。

 

シンジとしてはこの任務を断る理由はなく、ポケモンや人間に危害が及ぶ前に早急に対処したい気持ちでいっぱいであった。セキはそんな正義感の強いシンジに対して嬉しそうに笑い声をあげていた。

 

「気に入ったぜシンジ!お前に任せれば安心だろうな!」

「ちょっと待って!わたしはまだ認めてないわよ!」

 

そこに待ったをかけたのはカイであった。黒曜の原野の担当管理者はシンジュ団。その組織の長となれば自分の管轄エリアで見ず知らずの余所者に好き勝手されるのは気に入らないのだろうか。

 

「いいじゃねぇかカイ。どうせお前じゃキングであるバサギリを止められるわけないだろ?」

「っ!?言い方は気に食わないけど、否定できないわね……。」

 

カイはセキの言葉にぐうの音も出ないと言った様子で悔しそうに唇をかみしめる。カイは悩んだ末、一つの結論を出しシンジにある提案をする。

 

「シンジ、だったかしら。わたしと勝負しなさい!もしあなたが勝ったらキングの件、あなたに任せてもいい。」

「じゃあカイさんが勝ったら?」

「そうね……今回の件は見送りにして、長であるわたしに任せてもらいましょうか。」

 

この手のタイプは口だけで聞くタイプではないとシンジも理解している。故にカイの提案を承諾し、彼女との対決を受け入れるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって修練場。バトルフィールドにてシンジとカイは自分のポケモン、ニンフィアとグレイシアを携え向かい合うのであった。

 

「あー、審判は俺が務めよう。どちらかのポケモンが戦闘続行できなくなるか、もしくは危険だと判断したら俺が止める。異論はないな。」

「はい。」

「カイ、安心しな。俺が審判するからには公平な判断するからよ。」

「当たり前じゃないの。寧ろ納得できない判定したら潰すわよ。ナニをとは言わないけどね。」

「普通にこえぇこと言うなよ……。じゃあ早速、はじめ!」

 

そうしてセキの合図とともに勝負が始まる。そこで初めに動き出したのはカイであった。

 

「グレイシア!れいとうビーム!」

『グレイ!』

「ニンフィア躱して!」

『フィア!』

 

グレイシアはれいとうビームで率直に攻撃を仕掛けてくる。しかし直線的単調な動きではシンジとニンフィア相手に通用するはずもない。

 

「もっともっと!攻撃は最大の防御!連続でれいとうビーム!」

『グレイ!グレイ!』

 

彼女の性格に違わぬ真っ直ぐな攻め。しかしポケモン勝負はそんな簡単な戦術で通用するほど甘いものであはない。だがこの世界の人間はバトルなど慣れているはずもないため、効率的な戦い方もできず戦術もバラバラ。

 

シンジとニンフィアはグレイシアの攻撃を冷静に次々といなしていく。そんな中、ニンフィアが手を出す間もなくセキのストップが入った。

 

「そこまでだ。これ以上は無意味だな。」

「なっ!?なんでよ!まだわたしのグレイシアはダメージを受けてないわよ!」

「よく見て見ろ。グレイシアの様子を。」

「グレイシアの?……っ!?」

 

カイの瞳に映ったのは肩で息をして汗をかいているグレイシアの姿であった。確かにグレイシアはダメージを受けていないどころか、ニンフィアから攻撃を仕掛けることすら無かった。しかしグレイシアは無暗に攻撃を出し過ぎた結果、普段から慣れていないバトルであったためにスタミナ不足になってしまったのである。

 

「分かったか?俺も決してポケモン勝負に慣れてるわけじゃねぇ。けどよ、それでも今の手合いを見ればシンジは只者じゃないってことぐらいお前も分かったはずだぜ?」

「……」

 

カイと言い争っていた時のセキとは思えない発言にシンジは驚いていた。カイの話を聞いていたらセキはせっかち、又は落ち着きがない人間だと認識していた。しかしそれはあくまでコンゴウ団の方針、引いては信仰しているシンオウ様が理由である。本来のセキは冷静で大人びていて、分析能力の高い面倒見のいい兄貴肌の長なのだろう。

 

シンジからは一切手を出していない。傍から見たら防戦一方だが、逆に言えば冷静に躱せるだけの余裕があったと言う事。実際シンジはギンガ団の調査に大きく貢献しているほどの実績がある実力者。正直カイそんなことは最初から理解している。

 

しかし認めたくなかった。自分たちシンジュ団、コンゴウ団の長に出来ないことが余所者にできてたまるかと。見ず知らずの彼の事を信用してもいいものかと。

 

だが短い間とは言え手合いしてみて不思議と理解した。彼は決して根拠のないことを言うような人間ではないと。二つ返事で今回の任務を引き受けたのもきっと彼に何かしらの考えがあるからなのだろう。ただのお人好しな可能性もあるがそれでも彼は信用できる。なんとなくだがそんな気もする。

 

カイは立ち上がって覚悟を決める。シンジに向き合い、彼の眼を見て自分の知っているあることを話した。

 

「キングバサギリの面倒を見ているのはキャプテン、キクイ。あの子はまだ若けど優秀、なのはいいんだけど強くてかっこいいバサギリに憧れてて、凶暴化したバサギリに対しても心酔していて興奮してるの。だから今回のことにも納得してないと思うけど……わたしが話をつけてあげる。」

 

今日は休んで準備ができたら明日にでも来て、とだけ伝えてカイはその場から立ち去っていく。そんな彼女の姿にやれやれ、と呆れた様子でセキは溜息をついていた。

 

「全く、あいつは相変わらず素直じゃないな。まあ俺も人の事言えないか。」

「セキさんはカイさんと長い付き合いなんですか?」

「まあそうだな。以前はああでもなかったんだが、シンジュ団を任されるようになってから女らしさがまるっきりなくなったな。多分長としての責任を感じてるんだろうな。」

 

カイはまだ少女と呼べる年齢だ。そんな彼女は一つの組織を背負う長として責任を背負っているためにピリピリとして、常に緊張感を持って長の仕事に務めているのだろう。特に長として能力の高いセキを意識しているが故に長としての責任感が彼女にのしかかっているのだ。

 

そんな彼女の姿がなんとなく自分と重なった気がした。記憶がない自分に虚ろと浮かんでくる微かな光景。自分には何か守らないといけないものがあるような気がしてならなかった。何よりも大切なもの、そして多くの何かを守る存在だったのではないか。まだハッキリと思い出せてはいないが、自分は彼女の力になる必要がある。そんな気がした。

 

「まああいつが言ったように今日はゆっくり休め。今日は調査やらカイの相手やらで疲れただろ?」

 

セキは優しい声でそう言った。ならば今日はゆっくりと休むことにしようと、セキに感謝の言葉と別れを告げていつものあの場所に向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンジは一日の終わりに必ず向かうところがある。そこは茶屋であり、そこでイモモチを注文するのが日課だ。

 

「ムベさん、いつものお願いします。」

「あいよ。ちょっと待ってな。」

 

茶屋の主人、ムベがシンジの注文に答えイモモチの準備をする。その声を聞いた一人の少女が茶屋から姿を現した。

 

「シンジさん。今日も来てくれたのですね。」

「うん、サレナ、こんばんは。」

 

普段は物静かで落ち着きのある可憐な少女、サレナはシンジの顔を見るとパァと表情が明るくなった。シンジの日課とは、一日の出来事や調査で調べてきたポケモンの生態を彼女に話すことである。

 

サレナ自体危険と言われているため外の世界に出ることはなかった。しかし彼女も年頃の少女。ポケモンと言う未知の存在に彼女は非常に興味を示している。だからこそシンジの好意に甘え、彼から様々な話を聞くことで知識を蓄えているのである。

 

ムベが注文したイモモチを二人分持ってきてくれる。若い者の邪魔にならないようにと空気を呼んで茶屋の中へと戻っていった。

 

「なるほど、そのような生態のポケモンもいらっしゃるのですね。」

 

興味深そうにシンジの話を聞いて頷くサレナ。そんなサレナが珍しく悩む素振りを見せると、シンジは彼女の様子が気になって彼女の顔を覗き込んだ。

 

「サレナ、どうかしたの?」

「い、いえ、なんでも、ありません///」

 

夕焼けで分かりづらいが、サレナは頬を少しだけ赤く染めて否定する。これを伝えたらシンジが困ってしまうだろうと思い言い留まるサレナ。しかしそれでもやはり伝えたいと思ったためシンジにあることを伝えた。

 

「シンジさん……明日、危険な任務に挑むんですよね?」

「え?う、うん。そうだけど。」

 

なんでサレナがそんなことを知っているのだろうと疑問に思い尋ねる。するとどうやらテルとショウが愚痴をこぼしにやってきたらしい。彼らもギンガ団の先輩としてのプライドがあるのか、それともシンジに対してのライバル心が芽生えているのか、彼らにも思うところがあるのだろう。だからと言って無関係の人物に任務について口走ってしまうのはどうなのかとも思ってしまうが。

 

「危険な任務であるためにお二人が付いていけないのは承知しています。ですが私、外の世界に興味があるんです。シンジさんからお話を聞くたびに、ポケモンたちへの興味が尽きないどころか、どんどんと溢れてくるんです。それに……」

 

あなたのことが心配だから、と言いたかったが、直前でなんだか恥ずかしくなってしまいその言葉を呑み込んだ。無理な願いだとは彼女も重々承知しているが、それでも彼女はシンジに付いて行きたいと懇願する。

 

当然シンジも対応に困惑してしまう。正直凶暴化したキングの傍まで連れて行けば彼女に危害が及ぶ危険がないとも言い切れない。万が一のことがあれば、と不安を感じるシンジ。

 

シンジはサレナの瞳を見る。サレナの綺麗な緑色の瞳は真っ直ぐとシンジを見つめていた。その瞳にはどこか見覚えがあった。一瞬だけ、サレナと見ず知らずの少女の姿が彼の記憶の中で重なった。その瞳を見たシンジは、不思議と彼女の願いを断ることができなかった。

 

「……分かった。ただし何があっても前に出ないこと。僕の指示には従うこと。それだけは約束して欲しい。それでもいい?」

「はい!もちろんです!」

「じゃあ明日の朝出発するから、その時また呼びに来るよ。」

 

そうして今日のところはとイモモチを食し終えた二人は別れを告げる。もしシマボシ隊長にバレたら大目玉だなと、シンジは心の中で自分の甘さに溜息をついたのだった。




シーズン3は秘伝スパイスが報酬に来てたのでブイズでマスターボール級に到達
ニンフィアとブラッキーが活躍したのは当然として、後半から草テラス根性ブースターと地面テラススカーフグレイシア大活躍して嬉しかった。意外と物理受けリーフィアも頼りになったよ。

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