ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

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一度別の話を書いた結果なんか違うと思い書き直しました。その結果全く違う内容になりましたが。
なんか結局アルセウス編をガッツリ進める雰囲気になっていますが、これから書く話も特にあるわけではないので、未来の話や番外編、アルセウス編などを適当にかつ気ままに書いていきます。

実はアルセウス編ではポケモントレーナー自体が浸透していないため、なるべくトレーナーと言う単語は使用しないように心がけていたりします。


人間とポケモン、それぞれの関係

人間とポケモンが共存して暮らすよりもずっと大昔。現代では多くの者たちに忘れられてしまった時代、ヒスイ地方。のちにシンオウ地方と呼ばれるようになる場所である。

 

そして現代から記憶を失いこの時代にやってくることになった少年、シンジ。この世界のポケモンを調査しているギンガ団のシマボシ隊長、ラベン博士たちの計らいによってギンガ団に入団することとなり、同じく隊員であるテル、ショウと共にポケモンの調査に出かけていた。

 

シンジは現在相棒であるニンフィアと野生のポケモンに対峙している。相手はせんこうポケモンのコリンクである。コリンクは気性が荒く、敵とみなした者には容赦なく襲い掛かる習性がある。

 

彼の実力を知るための試験みたいなものではあるが、その戦いを見てテルとショウは改めて驚いていた。それはシンジの実力が高いから、と言う理由ではない。そもそもこの時代の人々はポケモンバトルに精通しているものが少ないためバトルの評価などを正確に測ることができないだろう。

 

なら一体なにに驚いているのか。それはニンフィアがシンジの指示を正確に聞いているからである。シンジがコリンクの攻撃を躱せと言えば確実に回避し、攻撃の指示を出せばその通り攻撃している姿が何よりも輝かしく羨ましいと思い、同時に彼らのことが怖いと感じてしまっていた。

 

特にテルはピカチュウとの連携が全くとれておらず、彼自身ピカチュウのことを全くと言っていいほど理解できていない。そんな彼は自分のポケモンを理解し、互いに意思疎通できているシンジとニンフィアがどうしても解らなかった。この時代の人間にとって、解らないということが何よりも恐ろしいものである。何よりそれは謎多き生物、ポケモンが証明している。

 

しかし、だからこそテルは興味を持ちシンジのことをじっと観察していた。シンジの指示に従ったニンフィアがコリンクを倒す。戦闘続行不可能となったコリンクを確認したシンジは、ラベン博士から預かったモンスターボールを投げる。そのモンスターボールがコリンクに命中し、コリンクが中に収納される。ポフッと言う音と共にコリンクをゲットすることに成功した。

 

それも見たテルとショウがまたも驚きの表情を浮かべる。シンジは簡単にしてみせたが、モンスターボールを的確にポケモンに命中させるのは当然難しい。それを難なく成したシンジはポケモンを操るだけでなく、モンスターボールを投げる技術さえも有している。現役のギンガ団にもこれほどの使い手はいないだろう。

 

シンジはモンスターボールを回収する。彼が任務を無事達成したのを見届けたテルはあることを決意し、ショウを連れてコトブキムラへと帰還するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンジ、テル、ショウはコトブキムラにあるギンガ団の拠点に帰還し任務報告を済ませる。隊長であるシマボシからは労いの言葉をもらい休息するように言われ、これからどうしようかとシンジ、ショウは会話していた。そんな彼にテルはある提案をしてみる。

 

「……シンジ!」

「テル?どうかしたの?」

「俺と……俺とポケモン同士で戦ってほしい!」

「て、テル先輩!?」

 

普段ポケモン同士の戦いが怖くて好まないテルが言い放つ予想外の言葉に、ショウは驚き目を見開いた。一方シンジは、どうして急にそんなことを言い出したのか気になりテルに問いかけた。

 

「ここでは何だし、あっちに移動しよう。」

 

そう言ってシンジたちはテルの案内に従い場所を移動する。そこはポケモンバトルを行うためのフィールドであった。ここは調査隊が万が一に備えポケモンバトルの練習をするためのフィールドであるが、そもそもポケモンバトルをできる人が限られているためほとんど使われることはなかったのであるが、シンジがいるのであれば話は別である。

 

「ピカチュウ、出てきてくれ。」

『……ピッ』

 

ピカチュウはモンスターボールから姿を現すと、テルのことが気にいらないのか彼と目を合わすことなくぷいっと目を逸らした。

 

「御覧の通り、ピカチュウと俺は仲がよくない。それに俺も、正直言ってピカチュウが……いや、ハッキリ言えばポケモン自体が苦手だ。」

 

ショウはテルがポケモンの事が苦手なのを知っていた。シンジも驚く様子を見せることなくテルの話を黙って聞き続けている。

 

「だってこいつ……イカヅチを出すんだぜ?普通あり得ないだろ?当たったら痛いどころの話じゃない、下手をすれば死にかねない。そんなポケモンたちが怖くないわけがない!なのになんでシンジは平気なんだ?怖くないのか?どうしてポケモンと一緒にそんな仲良くいられる?」

 

テルは任務の時からずっとシンジの隣で彼の手にリボンを巻き付けて歩くニンフィアを見て手を握り締める。それは異端なシンジたちを恐れてのものか、それとも彼らに対しての嫉妬のようなものか。いずれにせよ、彼の答えを導き出せるのは一つしかないとテルに呼びかける。

 

「分かった。だったらバトルしよう。その中でキミ自身の答えを見つければいい。」

「俺……自身の?」

「僕もここに来た時、自分自身の記憶が殆どなくなっていた。正直に言えばニンフィアとの記憶も曖昧なんだ。でも、この子を見た瞬間に確信めいたものがあったんだ。」

 

シンジは屈んでニンフィアの頭を優しく撫でる。ニンフィアも彼の手の温もりに触れ笑みを浮かべ嬉しそうな声を出していた。

 

「ニンフィアは紛れもなく僕にとって最高の相棒であり、生涯のパートナーなんだって。それは例え記憶をなくしても、世界が変わったとしても変わることはないって。それに……」

 

シンジは立ち上がってテルの瞳を真っ直ぐと見つめる。

 

「野生のポケモンとバトルしてる時、不思議と気持ちが落ち着いたんだ。楽しい、とかそう言うのじゃなくて、なんだかしっくりとくるような不思議な感覚が。だからテルとバトルすれば僕の記憶にも直結するかもしれないし、テルも僕のバトルで何かヒントを得られるかもしれない。都合がいい解釈かもしれないけど、僕でよければテルの相手になるよ。」

「シンジ……ありがとう。よろしく、お願いします。」

 

ギンガ団としてはテルの方が先輩ではある。しかしポケモンを操る者としては間違いなくシンジの方が圧倒的に上である。テルは胸を借りる気持ちで挑むために、シンジに頭を下げて感謝を示すのであった。

 

シンジとテルはお互いフィールドの外に立ち向かい合う。ショウは不安そうにしながらも二人のバトルを外野から静かに見守ることにする。

 

ピカチュウは早速戦闘態勢に入る。しかしバトルが精通していないこの時代ではバトルのルールなどまともに定められているはずもない。そこでシンジはテルにルールの提案をする。

 

「ルールはどちらかのポケモンが戦闘不能になったら、もしくは僕の判断で中断させてもらうよ。それでいいかな?」

「分かった」

 

テルは冷静に答えたものの、内心では緊張で汗の湿る手を強く握りしめていた。彼自身調査団としてピカチュウを連れてはいるが、他の人間が連れているポケモンと戦うのはこれが初めてである。それに野生のポケモンと戦ってもまともに勝利したことが殆どない。しかも一番の懸念点でもあるピカチュウがちゃんと指示に従ってくれるのかと言うのも問題であった。

 

だが原因はそれだけではない。一週間ほどシンジと共に過ごしてはいるが、今正面に立っていると、彼からは不思議といつものような優しさではなく押しつぶされそうな威圧感を感じてしまう。シンジは一体何者なのか。更に謎が深まるが、今は彼の正体を考えている余裕など微塵も存在しなかった。

 

「ピカチュウ!今回は――」

『ピッカァ!』

「っ!?ピカチュウ!」

 

ピカチュウはテルの指示を待つことなくニンフィアに突っ込んでいく。テルの指示には一切従う気はないようだが、それでもピカチュウは素早さは本物であるすぐにニンフィアの眼前へと接近していた。

 

ピカチュウがニンフィアにでんこうせっかを決める直前、ニンフィアは触角のようなリボンを優しく触れて受け流した。テルたちと同様にシンジの指示を待たず行った行為だが、明らかに違うのはシンジもそれが当然であるかのように堂々と構えていたことであった。まるで互いの考えを理解しあっているかのような、テレパシーでもして意思疎通しているのではないかと思わせるような不思議な感覚に、テルだけでなくショウも包み込まれていた。

 

ピカチュウはニンフィアに躱されたことで勢い余って転んでしまう。急いで立ち上がり振り向きニンフィアを睨め付ける。

 

『ピカッ……ヂュウ!』

 

ピカチュウはでんきショックを放った。バトルに一切慣れていないのにちゃんと技を使用できるのは凄いと素直に関心しながら、シンジはニンフィアに指示を出す。

 

「ニンフィア!シャドーボール!」

『フィァ!』

 

ピカチュウのでんきショックに向かってニンフィアはシャドーボールを放ち迎え撃つ。ニンフィアのシャドーボールはあっさりとでんきショックを打ち破り、ピカチュウの足元に命中して彼を吹き飛ばした。

 

「ピカチュウ!?」

『ピカァ……』

 

ピカチュウは立ち上がろうとするが足に力が入らず立ち上がることができない。そんなピカチュウにトドメを刺すべく、シンジはニンフィアに最後の攻撃の指示をだした。

 

「ニンフィア、でんこうせっか!」

『フィイア!』

 

ニンフィアはでんこうせっかで一気にピカチュウとの距離を詰める。ヤバイと直感したピカチュウはなんとか立ち上がろうとするが、それでもやはり動くことができない。

 

もうダメかと目を瞑るピカチュウ。しかしそんな時にシンジが別の指示をニンフィアに出す声が聞こえた。

 

「ニンフィア!ストップ!」

 

シンジの指示に従いニンフィアはでんこうせっかをピカチュウに当てることなく横を素通りし急停止する。元よりボロボロになってしまっているピカチュウにトドメを刺すつもりなどなく、バトルを終わらせるための決定打にするためだけの一撃だったのである。

 

「取り敢えずバトルは中断。これ以上はピカチュウも戦えないから。」

 

バトルで疲弊したピカチュウをテルは抱きかかえる。怖いとは言え、自身のパートナーが傷ついてしまったら当然の反応であるだろう。ショウも心配そうに彼らに近付き、シンジとニンフィアも一緒になって歩み寄った。

 

「……お疲れ様、ピカチュウ。」

『……ピィ』

 

結局ピカチュウはテルの言うことを聞くことはなかった。それどころかバトルが終わっても互いの関係はギクシャクしたまんまだ。一体シンジたちと何が違うんだ、と考えるテルに、シンジは呼びかける。

 

「テル」

「……シンジ」

「やっぱりキミ、ピカチュウのこと今でも怖がってるね。」

 

図星を突かれビクッと体が震えるテル。

 

「確かにポケモンは人間に無い驚異的な力を持ってる。それは僕でも思うよ。人間にはない力を持っていて、時には人間の命を脅かす可能性のある力を行使してしまう。知らない人からしたら恐怖の対象と見てしまっても可笑しくない。だからさ……ピカチュウのこと、褒めてやってくれないかな?」

「褒める?」

 

何か有用なアドバイスを貰えるのかと思ったら、まさかの答えにテルは拍子抜けをして思わず尋ね返してしまった。テルのそんな返答にシンジは頷いて答える。

 

「二人に足りないのは互いに必要としあう信頼関係。だけど信頼関係は人間同士でも簡単に築けるものではない。それぞれが互いに理解し合い、時間をかけて築き上げるのが信頼関係。それは人間同士だけでなく、人間とポケモンでも同じだよ。」

「人間とポケモンでも……同じ……。」

「人間もポケモンも違いはあれど、どちらも同じ世界に住む生き物であるのに変わりはないよ。だから、時間さえかければお互いに理解し合うことも難しくない。僕はそう思う。」

 

そう口にしながら、シンジは不思議と脳裏に浮かぶかつての記憶を呼び覚ましていた。。そう、かつてシンジとニンフィアが出会った時のことである。

 

ニンフィアは元々進化前のイーブイの時、元のトレーナーに捨てられ、裏切られたショックで彼に対しても反抗していた。しかし彼の優したと温もりに触れ、共に過ごしていく内に彼の事を信頼し、進化して元のトレーナーと和解した際もシンジにずっとついて行くと決めたのである。それはシンジとニンフィアが長い時をかけて築き上げた絆であり、数々の思い出が記憶を失くした今でも彼らの支えとなり続けているのである。

 

「だからこそまずはピカチュウを褒めるところから始めるといいよ。焦らなくたっていい。ゆっくりとピカチュウのことを、ポケモンのことを知っていればいいと思うよ。」

「ゆっくりと……か。」

 

シンジと出会ってまだ短いが、それでも彼の言葉は不思議と説得力があった。彼が口にした言葉は何故か信じることができて、どうにかなるのではないかと思わせてくれる。まるで優しく包み込んでくれるかのような不思議な感覚。テルはシンジの言葉を信じ、ピカチュウの頭を優しく撫でた。

 

「ピカチュウ、お疲れ様。」

『……ピィ』

 

頭を撫でられたピカチュウはほんのり顔を赤くして目を逸らす。正面から褒められたため素直になれないピカチュウは少し照れくさかったのだろう。そんなピカチュウにテルはまだ信頼が足りないのだと思い、自分の思いを口にした。

 

「……正直まだ俺はポケモンの事が怖い。でも、いつまでもこのままじゃダメだって思ってる。今はまだ頼りないパートナーだけど、いつかはお前のパートナーとして相応しい人間になってみせるから。」

『……ピカァ』

 

ピカチュウはそんなテルの言葉を聞いて意味を理解しているのか不明ではあるが、今日初めて彼と一瞬だけでも目を合わせた。そんな彼らを見て、これなら心配無さそうだなとシンジは優しく見守っていた。

 

だが彼らは見ていたのはシンジとショウだけでなく、影から覗く怪しげな瞳がじっと見つめていた。その人物の瞳には光が無く、テルたちと言うよりも他の何かを見つめているようにも感じた。まるで品定めでもするかのような冷ややかな眼。彼らの知らないところで、穏やかではない空気が静かに流れているのであった。




新作のFE(エンゲージ)ガッツリプレイ中
ストーリー面白いぞー!あとセリーヌちゃん可愛いぞー!属性がリーリエに似てるからか凄い好き。
金髪、妹、お兄様呼び、丁寧語、王女(リーリエはお嬢様)と共通点が多い気がする。

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