ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

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RR団最後の一人、その名もサカキ

謎の多い研究者、アクロマの協力もあり最後のRR団幹部であるゲーチスを元の世界に送り返すことに成功したリーリエたち。彼女たちは最後の一人でありRR団を率いている黒幕を倒すべく最奥の部屋へと辿り着いた。

 

「……開けるぞ」

 

目の前に聳えている大きな扉を手にし呼びかけるグラジオの声にリーリエ、ミヅキ、ヨウ、ハウ、コウタ、コウミの全員が頷いて答える。意を決し扉をゆっくりと開けると、そこはかつてルザミーネがポケモンたちを自分の望む美しい姿で保管しておくために利用していた広い部屋であった。

 

とは言え当時はウツロイドの神経毒で膨れ上がっていた彼女の欲望によって生み出されてしまっていた悍ましい過去であるため、現在では何もない真っ白な部屋となっている。……はずだったのだが、RR団が支配したことによって部屋全体が赤と黒の悪趣味な色に染まってしまっている。

 

そんな部屋の奥に黒服の男が一人椅子に座り、近くには意識を失って倒れているルザミーネの姿があった。

 

「お母様!?」

 

リーリエは溜まらずルザミーネの元へと駆けだした。ようやくやってきたか、と男は薄ら笑いを浮かべながら椅子を立ち上がり彼女たちの前に立ちはだかった。

 

「お母様に……お母様に何をしたのですか!」

「キミたちがウルトラビーストと呼ぶ存在、UBの力を使って彼女には眠ってもらっているだけだ。最も、次に起きた時にはわたしの忠実な部下になっているだろうがな。」

 

男の声は低く静かな部屋に響き渡った。彼の卑劣な行いにリーリエたちは心からの怒りが沸いてくる、はずであった。しかしそれ以上に彼の声からは冷徹さを感じられ、同時に体の芯にまで響く恐怖が伝わってきた。明らかに今まで出会った誰よりも危険な存在であると感じ取ることができた。それ故に彼女たちの心臓は恐怖と緊張からバクバクと煩いほどに鳴り響いていた。

 

「まずは自己紹介をしよう。わたしの名はサカキ。RR団のリーダーだ。いや、こう言った方がいいか。カントー地方で“活動していた”ロケット団のリーダーだ。」

 

その言葉を聞いて全員は目を見開き驚きをあらわにする。カントー地方を旅していたリーリエはもちろんだが、その組織の名はグラジオたちも耳にしたことがあった。特にカントー出身のコウタ、コウミにとってその名を知らないはずもなかった。

 

ロケット団はかつてカントー地方において悪事を働いていた秘密結社である。世界征服や金儲けなどを目論んでおり、組織としての規模が大きい上に隠蔽工作や一般企業としても世間に溶け込んでいたため警察も迂闊に手を出すことができないでいた。

 

しかしそんな彼らにも終わりの時は訪れた。ある一人の少年がたった一人でロケット団を壊滅に追いやったのである。その結果、ロケット団のボスであった元ジムリーダーの男は姿を消し、ロケット団は自然と解散することとなった。その後もロケット団の残党はボスを連れ戻すべく悪事を続けていたのだが、ボスは戻ってくることなく彼らは国際警察やポケモンGメンの活躍によって徐々に数を減らしていくこととなる。

 

彼がもし本当にロケット団のボスであるのならば、何故このタイミングで戻ってきたのだろうか。いや、今までの流れを考えると彼はこの世界とは別の世界からやってきたロケット団のボス、サカキなのだろう。他のリーダーたちにそのような様子はなかったのだが、先ほどの言葉から察するに彼はこの世界のロケット団が壊滅したことを知っている可能性も高い。

 

この男は他のボスたち以上に侮ることできない存在だと警戒するリーリエたち。そんな彼女たちに再びサカキは口を開きその低い声を響かせた。

 

「キミたち子どもにわたしの、わたしたちロケット団の目的を理解できるなどと思ってはいない。わたしの目的を邪魔するのであれば、例え子どもであっても痛い目にあってもらう。」

 

サカキは4体のポケモンを繰り出した。ダグトリオ、ニドクイン、ニドキング、そしてドサイドンである。全てのポケモンがじめんタイプであり、その屈強な肉体と目つきから非常によく育てられているのかが伝わってくる。ポケモンの姿だけを見たらとても悪人とは思えない。それはサカキ自身がジムリーダーとして戦っていたからなのか、それともポケモントレーナーとしては超一流だからなのか。

 

とは言えリーリエたちは誰が相手であっても全力で戦い彼らからアローラを守らなければならない義務がある。ここまで相当疲労が溜まってしまっている彼女たちだが、最後の砦であるサカキを倒すためにモンスターボールを手に取った。

 

「お願いします!シロン!」

『コォン!』

「頼むぞ!シルヴァディ!」

『シヴァア!』

「モクローちゃん!お願い!」

『クロォ!』

「アシレーヌ!」

『シレェヌ!』

「ガオガエン!」

『ガオウ!』

「ジュナイパー!」

『ジュパァ!』

「リザードン!もう一度頼む!」

『ザァド!』

「バシャーモもお願い!」

『バッシャ!』

 

一同は一斉にポケモンを繰り出した。ここまでの連戦で疲労が溜まってきてしまっているが残る敵はラスト一人である。自らの身体を奮い立たせて最後の戦いに挑む。

 

「シロン!こなゆきです!」

「シルヴァディ!エアスラッシュ!」

『コン!』

『シヴァヴァ!』

 

最初はリーリエ、グラジオの兄妹コンビが同時に先制攻撃を仕掛ける。こなゆきとエアスラッシュによる波状攻撃に対し、サカキは怯むことなく冷静に対処していた。

 

「ニドキング、かえんほうしゃ。ニドクイン、10まんボルト。」

『ニドォ!』

 

ニドキングとニドクインはそれぞれ同時に攻撃を放ち、息の合った連携攻撃でシロンたちの攻撃を相殺した。どちらの攻撃も非常に強力で、大会に参加していても一切おかしくないであろう腕前をサカキは有していた。

 

「こっちにもいるよー!ジュナイパー!かげぬいー!」

『ジュッパァ』

 

ジュナイパーはシロンとシルヴァディが先手で気を引いている間に力を溜め、かげぬいの一撃を解き放つ。しかしその攻撃はドサイドンが正面から受け止めるのであった。

 

ドサイドンはその巨腕によってかげぬいを叩きつける。かくとうタイプの強力な技、アームハンマーである。地面に軽くクレーターを作る程の一撃はかげぬいを玉砕するのに充分すぎるほどの威力であった。その威力にはさしものハウも苦笑いをするしかない。

 

ドサイドンの防御を起点とし、ニドキングが隙のできたジュナイパーに接近する。今度は彼を守るように、ガオガエンがニドキングと対峙する。

 

接近戦が得意なガオガエンはニドキングと取っ組み合い両者共に力比べを開始する。どちらも一歩も譲ることなく、互いの力は拮抗している。

 

ならば今の内に後衛を削っておこうとミヅキが動き出す。

 

「アシレーヌ!うたかたのアリア!」

『シレーヌ!』

 

アシレーヌは綺麗な歌声で大きな泡を作り出す。うたかたのアリアはニドクインに迫り、彼女の頭上にまでやってきた。

 

「ニドクイン、もう一度10まんボルト」

 

ニドクインは再び10まんボルトを放つ。10まんボルトによる電撃がうたかたのアリア内を駆け巡り、内部から衝撃を加えることで形状を保つことができずに破壊される。

 

ならば今度はとアクアジェットの指示を出そうとするミヅキ。しかしその瞬間、突如としてアシレーヌの足元が崩れて態勢を崩してしまった。

 

一体なにが起きたのかと確認すると、そこにいたのはサカキのもう一体のポケモンであるダグトリオであった。ニドクイン、ニドキング、ドサイドンと言う超重量級ポケモンたちに気を取られ、ダグトリオから意識が外れてしまっていたのだ。相手の隙を逃すことなく自らの特徴を活かし攻めに転じる。これは紛れもなくサカキがポケモンの育成を疎かにしていない何よりの証拠であるだろう。

 

「ドサイドン、がんせきほう!」

『ドッサァ!』

 

ドサイドンは両手を合わせ両腕の穴から巨大な岩石を生成。そのまま岩石を解き放ち、怯んで動けないアシレーヌにトドメの一撃を加える。

 

「リザードン!ドラゴンクロー!」

「バシャーモ!ブレイズキック!」

『ザァド!』

『バシャ!』

 

リザードンとバシャーモはアシレーヌの盾となりドラゴンクロー、ブレイズキックでがんせきほうを破砕した。強力な一撃でありどちらも疲労が蓄積していたため、両者の力を合わせなければがんせきほうを防ぐことは難しかったであろう。ドサイドンの一撃はそれほどの威力であった。

 

しかしドサイドンの使用したがんせきほうにははかいこうせんと同様に反動で行動できないデメリットが存在している。攻めるならここしかない、とリーリエとシロンが初めに行動を起こした。

 

「シロン!れいとうビームです!」

『コォン!』

 

シロンは動くことのできないドサイドンを狙い撃つ。だが先ほどドサイドンに守られたのと同様に、今度はニドクインがドサイドンの前に出て守りに入る。

 

ニドクインは文字通りまもるでれいとうビームを防ぐ。まもるは相手の攻撃を完全に防ぐことができる防御技だ。これによりシロンのれいとうビームを防御し、お互いの欠点を両者ともに補っている。しかしその攻撃を機にウルトラガーディアンズが動き出した。

 

シロンの攻撃を受け止めているニドクインの懐にバシャーモが潜り込んでいた。これはバシャーモの技であるフェイントだ。

 

『シャ!』

『ニド!?』

 

バシャーモはフェイントをかけて翻弄しニドクインの腹部に蹴りを入れる。フェイントは威力が低いが、相手の守る状態を貫通する特殊な技である。故にニドクインの守を貫通してフェイントが入ったため、そのダメージでニドクインは怯んでしまい守る状態が解除される。ニドクインのまもるが解除されたことにより、れいとうビームが彼女の体を氷漬けにして戦闘不能となるのであった。

 

ニドクインがやられてしまったことによりニドキングが反応して一瞬の隙ができる。その瞬間にガオガエンが力を込めて頭突きで押し返す。ニドキングはその攻撃によるダメージで怯みガオガエンから距離を取る。

 

そして自分の背後から忍び寄る小さな影があることに気づくニドキングだが反応するのが既に遅かった。その気配はヒナのパートナーであるもクローで、モクローのふいうちが彼の背中を突き飛ばした。その瞬間を捉え、今度はジュナイパ―がリーフストームで畳みかけた。

 

怒涛の攻めによりダメージが蓄積したニドキングはニドクインと同様に戦闘不能となって倒れる。見事な連携で強敵を倒すことができたガオガエン、ジュナイパー、モクローはハイタッチをして喜びを分かち合った。

 

「シルヴァディ!ブレイククロー!」

『シッヴァ!』

『ダグ!?』

 

続いて動いたのはグラジオとシルヴァディであった。シルヴァディのブレイククローがダグトリオに直撃し、ダグトリオはその一撃で大きく後退する。先ほどダグトリオによって動きを止められてしまったアシレーヌも立ち上がり、チャンスを逃すことなく動いたのだった。

 

「アシレーヌ!アクアジェット!」

『シレーヌ!』

 

今度こそアシレーヌはアクアジェットを発動しダグトリオに渾身の一撃を加える。倍返しとでも言うかのような鋭い攻撃がダグトリオに突き刺さり、弱点技を浴びたダグトリオも戦闘不能となるのであった。

 

残されたのはサカキのポケモンの中で最も重量級であるポケモン、ドサイドンである。最後のポケモンであるドサイドンは反動から立ち直り、自分の攻撃を受け止めていたリザードンと対峙する。リザードンも強敵であるドサイドンと向かい合い、翼を広げて戦闘態勢を取っていた。

 

「リザードン!ドラゴンクロー!」

『ザァド!』

「ドサイドン、受け止めろ」

『ドッサイ!』

 

リザードンがドサイドンに近接攻撃を仕掛けるも、ドサイドンはその攻撃を正面から受け止める。そしてリザードンを捕まえた状態で彼に対し反撃の構えを取っていた。

 

「そのままメガホーンだ」

「っ!?かえんほうしゃ!」

 

ドサイドンは頭部の角を大きく伸ばして反撃を仕掛ける。マズイと感じ取ったリザードンがかえんほうしゃで反撃するも、その攻撃は止まることなくリザードンの腹部に突き刺さる。

 

リザードンは翼を羽ばたかせて空中で止まり受け身を取る。その姿を見てサカキは流石だと関心していた。

 

「ドサイドン、ロックブラスト」

『ドサッ!ドサッ!』

 

ドサイドンは連続で複数の岩の塊、ロックブラストを放っていた。リザードンは飛び回ることで回避し続けドサイドンに接近していく。次第にリザードンとドサイドンの距離は縮まり、再び目と鼻の先にまで迫っていた。

 

「アームハンマーだ」

「はがねのつばさ!」

 

 

ドサイドンはアームハンマーでリザードンを上空から叩きつける。その攻撃をリザードンは翼を硬化させ丸々ことで防御するのであった。強固なはがねのつばさに阻まれたアームハンマーは弾き返され、動きの鈍重なドサイドンには一瞬の隙が生まれるのであった。

 

「今だ!ドラゴンクロー!」

『ザァ!』

 

リザードンはドラゴンクローを最大限の力でドサイドンに叩きこむ。鋭いツメによって切り裂かれたドサイドンの重い身体が仰向けに倒れ、ドシンッと言う大きな音が部屋に響き渡った。

 

ドサイドンも戦闘不能となり、サカキの手持ちのポケモン4体を倒したウルトラガーディアンズ。サカキは自分のポケモンをモンスターボールへと戻し、笑みを浮かべて称賛の拍手を送っていた。

 

「見事であった。君たちのポケモンはとてもよく育てられているようだな。さすがはRR団の幹部と互角以上に交えた実力者なだけはある。」

 

自分のポケモンたちを倒されたと言うにもかかわらず、サカキの声とその笑みからは未だなお余裕すらも感じられる。それもそのはずだ。今までの戦いから考えるに、サカキにはまだ秘密兵器が残っている。そのことを理解しているリーリエたちは喉を鳴らして緊張から手に汗を握っていた。

 

そう、サカキはまだ伝説のポケモンを繰り出していない。今まで出会ったザオボーを除く幹部たちは全員伝説のポケモンを所持していた。であれば間違いなくRR団のボスであるサカキもまた、何かしらの伝説のポケモンを所有しているに違いない。

 

サカキは紫色のモンスターボールを手にする。それはポケモンを絶対に捕獲できると言われている最高級のモンスターボール、マスターボールであった。サカキはそのマスターボールを投げる。

 

マスターボールが開くと、中から飛び出してきたのは異質な存在であった。人型の姿をしており細い身体に大きな尻尾を靡かせている姿はまさにポケモンと呼んでも可笑しくはないであろう。しかしそれだけではなく、そのポケモンは黒い鎧の様な機械を身に纏っていたのである。まるでそれは人工的に作られたロボットにも思える異様な見た目であった。

 

こんな伝説のポケモンは聞いたことも見たこともないと首を傾げるグラジオたち。しかしリーリエはその姿を見たことがあった。そのポケモンは、ハナダの洞窟で出会った悲劇のポケモンと酷似していたのである。そのポケモンの名前は……。

 

「みゅ、ミュウツー……さん……?」

 

そのポケモンの名前はミュウツーと呼ばれるポケモン。かつて望まれずロケット団に生み出され、誰にも知られることなく人間を恨み続けた悲しきポケモンの姿であった。




はい、サカキ様の使用するポケモンは原作と異なりアーマードミュウツーでした。ポケモンGOには実装されたけど残念ながら原作には登場することなかったので残念です。本来であれば力が強すぎるミュウツーを制御するための装備ですが、オリジナル設定として別の設定に変更しておりますのでご了承ください。


ここから少々自分の話を

ポケモンSVにて色違いニンフィアちゃんを見つけるべく3日間かけて約3年の時渡りをした結果、大量発生にありついて4匹目の色違いでようやくメスの色違いと出会いました。

ラブラブボールでゲットしてテンション上がっていたのですが、個体の確認をしてみたらまさかの冷静な証まで所有していて、頭がどうにかなりそうでした。

確率としては御守りなしの色違いが1/683、メスの確率12.5%、証を所有している確率約3.6%ほどなので相当低いと思います。自分は%の計算ができないので正確な数値は分かりませんが……。

何はともあれ、他にもゲットしたシャワーズやブースターの色違いには何もついてなかったのでニンフィアには運命を感じます。もはやラブラブボール色違い証持ち♀ニンフィアは私しか持っていないニンフィアだと思います。

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