ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》 作:ブイズ使い
リーリエ、ヒナの二人は目的地まで辿り着くと、そこで待ち構えていたマグマ団のマツブサ、アクア団のアオギリと名乗る二人とバトルを繰り広げていた。
「サメハダー!アクアジェットだ!」
『サダァ!』
「フシギバナさん!つるのムチで抑えてください!」
『バナァ!』
サメハダーは自分の背後に水ジェットを噴射し、目にも止まらないスピードで突撃してくる。フシギバナはつるのムチを構えてサメハダーを抑えるも、どこか苦しそうな表情を浮かべ体が少し傷付いていった。
「サメハダーの特性はさめはだ。触れればそれだけお前さんのポケモンにダメージが入って身体を徐々に痛めつけていくぜ?」
「っ!?」
今すぐにでも離さなければフシギバナの身体はサメハダーによって傷つけられ続けてしまう。しかしサメハダーの攻撃性能が想定よりも高く、フシギバナも抑えるので手一杯だ。
「アマージョちゃん!トロピカルキックです!」
『アッジョ!』
『ッ!?サッダ!』
アマージョはトロピカルキックを放ちサメハダーを攻撃する。アマージョの接近を察知したサメハダーは咄嗟にフシギバナから離れて距離を置いた。
「大丈夫ですか!リーリエさん!」
「はい、ありごとうございます!」
お互いに助け合い上手く連携がとれているリーリエとヒナのタッグ。それに対してアオギリとマツブサのタッグはと言うと……。
「おいマツブサァ!俺一人に任せてないでてめぇも戦え!」
「わたしはただ突っ込むことしか脳のない君とは違うのだよ。」
「あん?喧嘩売ってんのかてめぇ!」
絶賛言い争い中の真っ最中であった。マグマ団、アクア団と正反対の思想を掲げているからか、リーダー同士の仲は非常に不仲なようである。連携の取れていないタッグであれば、どれだけ強力な相手であっても脅威とはならない。
タッグバトルはそんなに甘いルールではないのだ。
「行きますよ!ヒナさん!」
「はい!リーリエさん!」
「フシギバナさん!はっぱカッターです!」
「アマージョちゃん!リーフストーム!」
言い争いをしている今の内に、とリーリエ、ヒナは一斉攻撃を仕掛ける。同時に放たれた無数の葉がサメハダー、バクーダの二体に襲い掛かった。
「チィ!サメハダー!あくのはどう!」
「バクーダ!かえんほうしゃ!」
『サダ!』
『バック!』
サメハダーとバクーダは両者共に技を放ってフシギバナ、アマージョの連携攻撃を相殺する。両者の連携は未だ息が合っていないが、それでもやはりリーダーと言うだけあって実力は伴っていて非常に強敵であることは間違いないとリーリエたちは再認識する。
「バクーダ、ふんかです。」
「なっ!?てめぇ!」
マツブサの指示に従いバクーダはその山にも似た背中から文字通りの噴火を放った。不動の巨体から放たれるふんかは強力で、周囲にいるフシギバナ、アマージョだけでなく味方のはずのサメハダーにも襲い掛かった。
サメハダーは自慢のスピードで間一髪その攻撃を回避している。対してフシギバナ、アマージョはそれぞれつるのムチ、自慢の脚力で対応している。しかしどちらもくさタイプであるがゆえ、いくら攻撃を躱したとしてもその熱量で体力は着実に蝕まれてしまっている。
「どういうつもりだマツブサァ!てめぇ、俺のサメハダーまで焼くつもりか!?」
「君のサメハダーはみずタイプ。対して相手のポケモンはどちらもくさタイプ。この状況で最良の判断をしたまでだ。」
「てめぇ……相変わらずムカつくやろうだなぁ!」
相変らず喧嘩を繰り返すマツブサとアオギリ。確かにマツブサの判断は合理的ではある。しかしタッグバトルは味方と息を合わせるのが基本であるため、戦術としては明らかに間違っている。ポケモントレーナーからしたら間違いなく反感を買う者も多い。
しかしこの状況はリーリエたちからしたら好都合であった。今なら彼らの隙を突くチャンスだとリーリエとヒナは互いに目を合わして頷いた。
「ソーラービーム!スタンバイです!」
『バナバナァ!』
「アマージョちゃん!バクーダにふみつけです!」
『アッジョ!』
『バクッ!?』
フシギバナは自身の背に咲く大きな花に光を集める。そしてアマージョは自身の脚力を利用して地面を蹴り、バクーダに接近して連続で踏みつける。鈍足なバクーダは対応することができず、されるがままに踏みつけを浴びてしまう。
「チィ!油断してんじゃねぇ!」
「君がバトルに集中しないからだろう!」
「癪ではあるがしかたねぇ。サメハダー!こおりのキバ!」
『サダー!』
サメハダーはバクーダを救出するために横からこおりのキバでアマージョに対して攻撃する。しかしその攻撃をアマージョは横目で確認し、当たる直前にふみつけの反動を利用して即座にバクーダを蹴り飛ばし離脱した。そこにアマージョの姿はなく、当然サメハダーの攻撃はアマージョにヒットすることはなく逆にバクーダに命中する結果となってしまった。
「リーリエさん!」
「任せてください!フシギバナさん!ソーラービーム発射です!」
『バァナァ!』
その瞬間、チャージの終わったフシギバナのソーラービームがフルパワーで解き放たれた。お互い攻撃し合ってしっていたサメハダーとバクーダは回避することができず、ソーラービームの直撃を受けてしまう。その強力な一撃を浴びて、両者共に目を回して戦闘不能状態となってしまっていた。
「サメハダー!?」
「ふんっ、君が集中しないからこの様な結果を招いてしまったのだ。」
「てめぇが協調性なかったからだろうが!」
バトルが終わってからもいがみ合うマツブサとアオギリ。そんな二人を見かねて、リーリエは二人に声をかけるのであった。
「あなた方の負けです。早くお母様のところに案内してください!」
「ルザミーネさんは一体どこにいるんですか!?」
「はっ!勝った気でいるようだが、まだ終わっちゃいないぜ?本当は使うつもりじゃなかったんだがな。」
「……不本意だが、相手も相当な手練れ。この際仕方がないか。」
エースと思われるバクーダ、サメハダーを失ってもなお二人はいまだ余裕を見せている。二人の様子から察するに彼らには別の最終兵器があるように思われる。そんな二人の不穏な空気と異様な威圧感が放たれていた。
二人はモンスターボールをそれぞれ構える。そして二人はモンスターボールを投げると、中からは想定を遥に超える驚愕のポケモンが姿を現した。
『グルオオオオォォォ!!』
『キュオオオオォォォン!!』
超古代ポケモンと呼ばれる伝説のポケモン、グラードンとカイオーガの姿だったのである。
リーリエとヒナがマツブサ、アオギリと戦っている一方、幼馴染三人トリオであるハウ、ヨウ、ミヅキもまたアカギ、フラダリを相手に奮戦していた。
「ジュナイパー!かげぬいー!」
『ジュパァ!』
「メタルクロー」
『ニュッラ』
ジュナイパーの得意技、かげぬいをマニューラはメタルクローで簡単に弾いてしまう。感情をこの世界から抹消する、と言うからなのか、アカギからは生物感を感じられず寧ろ人間ではない無機質な印象すら感じてしまい不気味に思う。
「ガオガエン!かえんほうしゃ!」
『ガウッ』
「カエンジシ、こちらもかえんほうしゃだ。」
『ジシィ!』
ガオガエンとカエンジシ、両者の炎がぶつかり合う。しかし威力はほぼ互角で部屋の中央にてはじけ飛ぶ。
「アシレーヌ!うたかたのアリア!」
『シレーヌ!』
アシレーヌは美しい歌声と共に2つの大きな水玉を創り出しマニューラ、カエンジシ双方に飛ばした。マニューラとカエンジシはどちらも冷静に回避し、反撃の態勢へと移行した。
「マニューラ、つじぎり。」
「アクアジェットで迎え撃って!」
マニューラのつじぎりによる反撃を、アシレーヌはアクアジェットで迎え撃ち交差する。どちらの技の威力も高く、ぶつかり合うたびに火花が散るほどであった。
「カエンジシ、ハイパーボイス。」
『ジシィ!』
カエンジシのハイパーボイスが放たれ、その攻撃を察したマニューラは即座にその場から離れる。そしてカエンジシのハイパーボイスがアシレーヌ、ガオガエンに命中し両者が苦しみ始める。しかしその場には一体だけ姿が見えないポケモンがいた。
そのポケモン、ジュナイパーは音もなくカエンジシの背後に回り込んでいた。さすがの冷静なフラダリであっても、ジュナイパーの瞬間移動にも近い動きには驚きを隠せない。
「ふいうちー!」
『ジュッパァ!』
『ジシ!?』
ジュナイパーのふいうちがカエンジシにヒットする。カエンジシの放ったハイパーボイスはノーマルタイプであり、ゴーストタイプであるジュナイパーに対して効果はない。だからハイパーボイスの影響を受けずに動くことができたのだろう。
カエンジシは吹き飛ばされるが、それと変わるようにマニューラがジュナイパーに立ち向かう。こおり・あくタイプであるマニューラはくさ・ゴーストタイプであるジュナイパーに対して非常に相性がいい。その上接近戦が得意なマニューラと違いジュナイパーは遠距離戦が得意なポケモンだ。懐に潜り込まれてしまうと展開としては非常にマズいものとなる。
「れいとうパンチ」
『ニュッラァ!』
『ジュパァ!?』
ジュナイパーは回避しようと翼を羽ばたかせるが、マニューラのスピードは非常に早く、一瞬で懐に潜り込まれてしまいれいとうパンチを叩きこまれる。効果抜群の技を受け、ジュナイパーは苦しみに顔色を歪める。
「ガオガエン!マニューラにニトロチャージ!」
『ガオウ!』
ガオガエンは炎を纏いスピードを上げ、マニューラに接近する。しかしその攻撃はマニューラにヒットせず、今度はカエンジシが体でそのニトロチャージを受け止めていた。
「なっ!?」
「カエンジシ、もう一度ハイパーボイスだ!」
『ジッシィ!』
『ガオ!?』
カエンジシはニトロチャージを受けながら至近距離でハイパーボイスを放つ。これだけの至近距離で鼓膜が破けるかのような声を聞いてしまえば、ガオガエンと言えどただでは済まない。ニトロチャージは撃ち返されてしまい、ガオガエンの攻撃がマニューラに届くことはなかった。
アカギとフラダリは似た思想を持つ者同士だからなのか、連携が非常によく取れている。お互いの弱点をカバーし合い、それぞれが味方のピンチをフォローしている。このような強敵を相手にするには、やはりあの技しかないだろうと三人は目を合わし頷いた。
「ガオガエン!かえんほうしゃ!」
「ジュナイパー!かげぬいー!」
意図を理解しあった三人は、ヨウ、ハウのコンビネーション技で勝負に出た。ガオガエンのかえんほうしゃによってかげぬいが強化され、炎を纏った鋭い一矢に姿を変えた。これにはアカギとフラダリも驚きのあまり目を見開いた。
「メタルクロー」
「かえんほうしゃ」
両者メタルクロー、かえんほうしゃでヨウとハウの攻撃を受け止める。強力な合わせ技であるためアカギとフラダリの実力があると言っても苦戦してしまうのは必然。暫くの鍔迫り合いを制し打ち破ったものの、彼らは目の前の光景を見ると流石にピンチを悟り顔色を変えた。
「それだけで十分だよ。この技を使うにはね!」
目の前には自信の腕のリングとパートナーであるアシレーヌと共に光輝いているミヅキの姿があった。アローラ地方のトレーナーである彼女の秘奥義とも言える技、Z技である。
ミヅキとアシレーヌをZパワーが包み込む。そして両者の気持ちが一つになり、彼女たちが編み出したZ技が解き放たれるのであった。
「これが今私たちのできる、全力全開!」
『シレィヌ!』
――わだつみのシンフォニア!
ミヅキとアシレーヌのZ技、わたつみのシンフォニア。先ほどのうたかたのアリアとは大きく異なり、超巨大な水玉を超えた大量の水がマニューラ、カエンジシの上空に浮かんでいた。
そのあまりの巨大さはすさまじく、例えマニューラであっても回避は困難なサイズであった。アシレーヌの合図とともに、大量の水がマニューラとカエンジシを包み込み水が降り注いだ。Z技が決まったアシレーヌはまるで指揮者のようにお辞儀をしてフィニッシュする。
さしものアカギ、フラダリのエースであるマニューラ、カエンジシであってもZ技を耐えきることは出来ず、同時に目を回して倒れてしまっていた。その姿を見たアカギ、フラダリはパートナーをモンスターボールへと戻していた。
「見事だ。君たちの実力、本物だという事がよく分かったよ。」
フラダリの称賛にミヅキたちは悪い気はしなかった。しかしその称賛からはどこか彼らに余裕が感じられ、ミヅキたちは警戒を解くことは一切なかった。まだ彼らは何かを隠しているのではないか、とポケモントレーナーとしての感がそう告げていたのだ。
「感情があるからこそ希望を抱き、その後に感じる絶望は計り知れない。それを今から味合わせてあげよう。」
「後悔と言う邪念を抱いてももう遅い。」
そう言ってアカギとフラダリは懐からモンスターボールを取り出し、それを正面に投げる。すると中から出てきたのは、まさに絶望と言う名に相応しいポケモンであった。
『グギャアアアアァァァ!!』
『キュアアアアアァァァ!!』
モンスターボールから飛び出してきたのは、空間を司ると言われる伝説のポケモン、そして破壊の化身とも恐れられる伝説のポケモン、パルキアとイベルタルであった。
アカギさんとカエンジシさんの伝説ポケモンがパルキア、イベルタルの理由
→ポケマス