ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

184 / 223
一度作ったはいいものの誤って消してしまいもう一度作る羽目になってしまいましたorz


交差する思惑、それぞれの目的のために

「マリルさん!アクアテールです!」

『リルゥ!』

「ルカリオ!はどうだん!」

『バウッ!』

「アマージョちゃん!トロピカルキック!」

『アッジョ!』

 

リーリエ、グラジオ、ヒナの三人はルザミーネを救出するべく妨害するロケット団員たちを蹴散らしながら前へ前へと突き進んでいく。しかしロケット団員の数は底が知れず、倒しても倒しても次々と現れ妨害の手が止むことがない。

 

「チッ……いくら倒してもキリがないな……」

 

グラジオは次々と現れるRR団員たちに嫌気がさし舌打ちをする。これではいつまでたっても前に進むことができず、ただただ体力を蝕まれていくだけでありジリ貧だ。

 

こうなったらこの手しかないとグラジオはまずルカリオに攻撃の指示をだした。

 

「ルカリオ!正面に向かって全力ではどうだんだ!」

『バウッ!』

 

ルカリオははどうだんで正面のRR団のポケモンたちを一気に排除し、真っすぐの道が切り開かれた。

 

「リーリエ!ヒナ!走れ!」

「っ!?は、はい!」

「分かりました!」

 

グラジオの指示に従い三人は切り開かれた道を駆け抜けるRR団員たちは突破されたことを驚きながらも、彼らを逃がすわけにはいかないと背後から追いかける。

 

そんな彼らに対抗するべく、グラジオはRR団員たちを突破した先で振り向き対峙する。

 

「お兄様!?」

「お前たちは早くいけ!ここは俺が引き受ける!」

「でもそれではお兄さんが!?」

 

無数に出現するRR団員たちを自分が相手をするといいグラジオはリーリエ、ヒナの背中を押す。そんな無茶なことをさせるわけには行かないと二人も止めるが、グラジオはそれでも早くいけと大声で怒鳴りつけた。

 

「っ!?ヒナさん……行きましょう。」

「で、でも……」

「お兄様なら大丈夫です。私たちは私たちにできることをしましょう。」

「リーリエさん……。」

 

一番辛い立場であるはずの妹が口を噛みしめて前に進むことを決断したのだ。ならば自分はそれに従い彼女と前に進むべきだと、振り向くことなくリーリエと共に走り出した。

 

「……ふっ、俺もあいつに感化されすぎたか。」

 

そう言いながらグラジオは微笑み、二つのモンスターボールを同時に投げた。

 

『カカッ!』

『ニュッラ!』

 

その中から飛び出したのは彼の仲間であるクロバットとマニューラであった。グラジオはルカリオ、クロバット、マニューラの三匹を従え、無数のRR団員たちと迎え合う。

 

「お前たちの相手はこの俺だ。ここから先、絶対に通しはしない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方同じころ。ミヅキ、ヨウ、ハウの三人はRR団の妨害を受けているのではなく、謎の迷宮へと迷い込んでいた。

 

「なんなのこの迷路……全然先が見えないんだけど!」

「いくら歩いても先に進めないな。まるで同じ場所をグルグルと回っているみたいで気味が悪い。」

 

いい加減終わりの見えない迷路に飽き飽きとしていたミヅキ、ヨウ。そんな時ハウが一つの提案をする。

 

「じゃあさー、もうポケモンの技で一気に突破しちゃおうよー。先を急いだほうがいいと思うしそっちの方が楽じゃない?」

「こんな狭いところで技なんか使ったら私たちも危ないわよ。」

「そもそも人の家を勝手に破壊するな。」

「そっかー。いい方法だと思ったんだけどなぁー。」

 

ハウの提案はミヅキ、ヨウの二人に却下された。しかしこのままでは一向に前に進むことができず足止めを喰らってしまう。最悪の場合は先ほどのハウの提案を採用するしかないが、可能な限りは避けたいところだ。

 

ならばどうするかと三人は考える。そこであることを閃いたとヨウはハウに声をかける。

 

「ハウ、お前ってオンバーン持ってたよな?」

「うん、持ってるけどー?」

「だったらここはオンバーンの力を借りよう。オンバーンは超音波が使える。」

「ああ!なるほどー!出てきてー!オンバーン!」

『バオォン!』

 

ヨウの意図を理解したハウはモンスターボールを投げる。するとオンバーンが待ってたと言わんばかりに元気よく咆哮をあげて登場する。

 

「オンバーン!君の超音波でこの迷路の出口に案内してくれる?」

『バオン!』

 

ハウの指示に従い、オンバーンは超音波を発生させる。オンバーンの発した超音波が壁と壁の間を反射し、反射した音波がオンバーンの大きな耳に返ってくる。

 

『バオン!バオォン!』

 

オンバーンは超音波の反射を聞き分け、出口の場所を見つけ出した。出口を見つけたオンバーンはミヅキ、ヨウ、ハウの三人についてこいと言い案内を始める。

 

「ヨウにしてはいい考えを思いついたね♪」

「一言余計なんだよお前は……。」

 

幼馴染同士がそんな会話をしながら迷宮の中を突き進んでいく。オンバーンの案内の元三人は無事に迷宮を抜け出すことに成功した。

 

迷宮を脱出した三人は目の前に続く道を真っ直ぐと突き進んでいく。しばらく走っていくと三人の前に大きな扉が姿を現した。その扉はまるで彼らのことを待ち構えていたかのような威圧感を放っており、不思議と三人に緊張が走っていた。

 

しかもおかしなことに今まで来た道だけでなく、扉の周辺にすら誰も配置されていなかったことが三人には気がかりであった。

 

考えられる可能性としては、この先には特に彼らが守るべきものが存在しないのか。それとも守る必要がないのか。ミヅキたちを誘い込むための罠、という可能性も考えられる。

 

しかしもとよりここは敵地であるため危険などは承知の上。たとえ何が待っていようとも、彼らの目的はエーテルパラダイスの救出とアローラを守ること。ミヅキ、ヨウ、ハウの三人は覚悟を決め、大きな扉をゆっくりと押し開ける。

 

そこに広がっていたのはまるで格納庫のように広い一つの部屋。絵画以外ほとんど何も置かれておらず、生活のための部屋では全くない、というのが最初に抱く印象だった。

 

しかしその部屋には別の違和感を感じさせる異端な存在が二人ほどいた。一人は青い髪に黒い服と銀の上着。胸元には黄色でGの文字が描かれている。目の下には隈があり、頬には窪みができていて少々やつれている印象だ。

 

もう一人は対照的な逆立った赤い髪。黒と赤を基調としたスーツに、首元にはファーがついている服。しかし一番特徴的なのはたてがみにも見える髪と繋がった顎髭であろう。

 

彼らから放たれる威圧感は彼らがただものでないことを証明していた。彼らはおそらくRR団の下っ端とは比較にならない強さを持っているのは間違いない。ミヅキたちは覚悟をして前へと進む。そんな彼女たちを見た青髪の男が口を開いた。

 

「君たちが来た、ということは計画も最終段階に突入した、ということだな。」

「そうでしょうね。彼らが持つものか持たざるものか。我々が判断すると致しましょう。」

 

そう言いながら赤髪の男は見た目とは裏腹に、紳士的な態度で一歩前に出て頭を下げ自己紹介を始める。

 

「はじめまして。わたしの名はフラダリと申します。現在ではRR団の一人として活動しています。」

「……わたしの名前はアカギ。君たちに質問がある。」

「質問?」

「君たちはこの世界をどう思う?」

 

アカギと名乗る青髪の男が突然質問を投げかけてきた。内容のスケールがデカすぎてミヅキはイマイチ彼の真意が理解でずに戸惑ってしまう。

 

「君たちには早すぎた質問だったか。わたしはこの世界を不完全だと思っている。」

「ふかんぜんー?」

「感情などと言うものがあるから人間は苦しみ、余計な情を抱き、そして争いが繰り返される。だからこそわたしは、“新世界を創り出した”のだ。」

「一体何を……。」

 

ヨウはアカギが何を言っているのかさっぱり理解できず彼に疑問を投げかける。それはミヅキ、ハウも同じで一緒に疑問符を浮かべていた。

 

新世界を創り出した?それはまるで実際に世界を創ったかのように思わせる言い回しであった。それも自分が神にでもなったかのような、ミヅキたちにとっては気が触れた人間の狂言に聞こえてしまう。

 

そんなミヅキたちを他所に、今度は赤髪の男、フラダリが口を開いた。

 

「わたしからも一つ問おう。君たちは明日、この世界で何が起こるか分かるか?」

 

フラダリの質問も突拍子もないものであった。明日何が起こるかなんてわかるわけがない。人間は明日の事なんて一切分からないし、未来を見る力もない。だからこそ今を必死に生きて、毎日が変わらない日々をただひたすらに望む生き物である。だからこそ自分たちは変わらない明日を守るために今を生きる、そうフラダリに強い意思を示し答えた。

 

「守る……か。一体何を守ると言うのだね?今日よりも悪くなる明日か?」

 

フラダリの表情からは複雑な感情が見え隠れしていた。怒りや悲しみ、色々なものが混ざり合ってしまい、彼の考えを正確に読み取ることができない。

 

「確かに人間は明日何が起こるか分からないからこそ今を必死に生きている。それは間違いない。だが、だからこそ人間は資源を無駄に浪費し、奪い合い、争いごとを引き起こす。だからこそ私は世界を破壊し、全てをリセットする。“どの世界”であっても、わたしのやるべきことは変わりはしない。」

 

フラダリは真剣な表情のまま自分の考えをミヅキたちに説明する。その説明は非常に長いものではあったが、内容としてはアカギのものに類似している。彼らは人間を、世界そのものに深い憎しみを抱いている。しかしそれは悪意からではなく、彼らの行き過ぎた正義感の歪み故の負の感情。最も悲しいのは、彼らの争いごとを嫌う感情が連鎖し、結果的に自らも争いの火種となってしまっていることである。

 

だからこそ、ミヅキたちは彼らを止めなければならない。でなければ彼らは本当のこの世界を破壊し、新しい世界を創るためにリセットを行おうとするだろう。そんなこと、させるわけにはいかない。

 

ミヅキ、ヨウ、ハウは同時にモンスターボールを構える。それが彼らの意思だと判断したアカギ、フラダリもまたモンスターボールを構えた。

 

「これで君たちにも戦う理由ができた。わたしたちを倒さなければわたしたちはこの世界をリセットする。」

「わたしはこの世界を元のあるべき“はじまり”に戻す。人間から感情を消し、わたしの望む争いごとのない世界を創る。」

「そんなことはさせない!」

「俺たちは自分の生きるこの世界を守る!」

「勝手に自分たちの価値観で決めつけないでほしいなー!」

「行くよ!アシレーヌ!」

『シレーヌ!』

「頼むぞ!ガオガエン!」

『ガオウッ!』

「ジュナイパー!出番だー!」

『ジュッパァ!』

「君たちの希望は何一つとして残らない。行け、マニューラ。」

『マニュ!』

「わたしたちは自分の任務を遂行する!ゆけ!カエンジシ!」

『ジッシィ!』

 

世界の命運をかけた戦いが、幕を開けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グラジオRR団員たちと戦い足止めをしている間にリーリエとヒナはひたすら真っ直ぐと前へ進んでいた。辿り着いたのはミヅキたちが見たのと同じようにそびえ立つ大きな扉であった。

 

間違いなくここが自分たちの目的である部屋である。急いでルザミーネを救わなければと、二人は勢いよく扉を開けた。その先に待っていたのはまたしても非常に広い一室であった。

 

その奥で待ち構えているのは二人の男性。一人は黒ぶちの独特な眼鏡を身に付け、七三分けの赤い髪、同じく赤いスーツを着用した男性。もう一人は日焼けした健康的な肌に胸元を開けた海賊風の衣装。頭部にはバンダナを身に付けており、服の上からでも分かるほどの筋肉を持ち合わせていた男性であった。

 

「ちっ、まさかお前と同じ部屋に配置されるとは思ってなかったぜ。」

「それはこちらのセリフだ。わたしもお前と共に戦うなど人生で最大の屈辱だ。」

 

その二人はどうやら仲があまりよろしくないようだ。犬猿の仲、とでも言うべき関係だろうか。

 

「おっと、悪いな。俺はアオギリ。今はまあRR団として活動しているが、元はアクア団のリーダーだ。」

「わたしはマツブサ。わたしは元マグマ団のリーダーだが……アクア団のこの男とは正直関わり合いたくもない。」

「それはこっちのセリフだ。っと、いちいち絡んでたら進まねえな。お前たちは人間やポケモンたち、生物がどこで生まれたか知っているか?」

「それは……海、ですか?」

 

突然の質問に戸惑うリーリエたちだが、アオギリと名乗る男の質問にリーリエは一般常識的な回答で答えた。その回答にアオギリは満足そうに満面の笑みで大笑いしていた。

 

「そうだ!生き物は全て母なる海から生まれた!それは人間たちも周知の事実。しかし現状はどうだ?人間たちは海への感謝も忘れ、汚し続けている。そんな穢れた行為にポケモンたちは苦しみ続けている。罪のないポケモンたちが苦しむ世界なんてあっちゃいけねぇ。許されるわけがねぇ!だからこそ俺は、“俺の世界”を海で沈めポケモンたちが苦しむことのない世界にした!こうなってしまった以上、この世界も同じようにするしか俺の進む道はねぇ!」

 

アオギリの語った内容にリーリエは疑問を浮かべた。彼が言ったのは“俺の世界”と言う言葉である。その言葉はまるでこの世界とは別に自分の世界、とでも言っているようにも聞こえた。UBの件がある以上、全く信憑性がない、などと思えるはずもない。もしかしたら彼らはこの世界とは別の世界から来た人物なのか、とありえない仮説が頭の中を過ってしまう。

 

「ふん。お前の考えにはやはり賛同しかねるな。」

「あん?」

「ポケモンたちが苦しまない世界?そんなものになんの意味がある?我々は人間で、人間が生きているのは海ではなくこの地上だ。であるならば我々がするべき行為はただ一つ。人類が住みやすい環境を作るため、世界の全てを陸地で埋める事。人類にとっての理想郷を作ることだ。ポケモンとの共存などバカバカしい。」

 

しかしマツブサの考えはアオギリとは正反対であり、マツブサはポケモンのことを毛嫌いし人間よりも下の存在であると見下している。所詮ポケモンは人間の道具でしかないのだと考えている歪んだ思想の持ち主だ。

 

かたやポケモンたちの理想の為に海で世界を覆い、かたや人類のために陸地を世界中に広げる、と言う歪んだ考えを持つ男たち。その考えにリーリエとヒナは自然と恐怖を感じてしまう。

 

それもそうだろう。二人はポケモンが大好きであり、彼女たちのポケモンも彼女たちが大好きである。まさに今共存し、互いに人生を生きていくために必要不可欠な存在である。マツブサとアオギリは互いに相容れぬ関係であるものの、それはリーリエ、ヒナとも同じく相容れぬ関係であるのは間違いない。

 

世界を陸、または海で埋め尽くすなど現実的に考えて不可能な行為であるが。このまま放置していては彼らがこの先何をしでかすかが不明である。アローラが、いや、世界中が陸か海で埋め尽くされるなど、考えただけでもゾッとする。だからこそリーリエとヒナの答えは決まっていた。

 

――彼らを止める。

 

彼女たちは互いにその考えに至りモンスターボールを構える。その構えが彼女たちの意思だと判断したマツブサとアオギリもまた、ポケモンの入ったモンスターボールを手にしたのであった。

 

「はっ!いいじゃねぇか!少しは抵抗してくれなきゃ面白くねぇ!」

「わたしとしては不本意だが、君たちがわたしに楯突こうと言うのであれば容赦はしない。」

「私たちはあなたたちを止めて見せます!」

「この世界をあなたたちのエゴで好きになんてさせないんだから!」

「お願いします!フシギバナさん!」

『バァナァ!』

「アマージョちゃん!出番だよ!」

『アッジョ!』

「マツブサァ!俺の邪魔はするんじゃねぇぞ!サメハダー!」

『サッダ!』

「それはこちらのセリフだ、アオギリ。バクーダ!」

『バクッ!』

 

ミヅキ、ヨウ、ハウの三人に続き、リーリエ、ヒナもまた、世界を守るための戦いを始める。彼女たちの肩に、世界の未来が託されたのであった。




割と自己解釈な部分も混じり混じりで書いていきます。原作ではニンフィアが無双して終わりましたけど、この物語ではどうなるでしょうか。

それと誤字・脱字報告非常に助かっております。自分で偶に見直した際にも見つけた時は修正していますが、それでも抜け落ちている部分があるみたいなので、これからも気になる部分があれば報告していただけると大変助かります。


あとピクミン4発売決定おめでとう!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。